「敬愛する金正恩元帥様が新たに建設された銀河科学者通りを視察された 2013.9.8」:恐ろしき馬息嶺速度、科学重視、労農赤衛軍閲兵、建国節中央報告大会の金永南演説 (2013年9月9日 「朝鮮中央TV」)
今日は「建国節」だ。午前には9時半頃から11時半頃まで「労農赤衛軍閲兵式と平壌市群衆示威」の模様を「朝鮮中央TV」は生中継していた。これまでにどこかで明らかにされているのかも知れないが、今日の放送のナレーションでは「1959年に首領様が創設された労農赤衛隊を、将軍様が軍にされた」と言っていた。2010年から「赤衛軍」と呼ばれるようになったのは、金正日さんの正式な指示があったということのようだ。
労農赤衛軍が掲げる金日成旗・金正日旗に敬礼をする金正恩

Source: KCTV,2013/9/9放送
生中継のタイトル通り、閲兵式は労農赤衛軍が中心で、陸海空及び反航空軍の儀仗兵は軍旗を持って参加したものの、派手な武器のパレードはなく、労農赤衛軍らしく、農耕用トラクターで引っ張る連射砲などが僅かに登場しただけであった。

Source: KCTV,2013/9/9放送
ナレーションでは数えただけでも5回以上「平和」とか「平和を愛する」という表現が使われており、「我々の銃隊の上に平和がある」は行進曲として使用されてはいたものの、「銃隊」はあまり強調されていなかった。さらに、「核抑止力」、「核保有国」、「衛星発射国」といった用語も聞いていた限りではナレーションで使われていなかった。最近の記事には何回も書いているが、北朝鮮は今、明らかに「平和・対話モード」に入っている。
それを反映してか、金正恩さんも労農赤衛軍のパレードよりも、平壌市民のパレードを見て喜んでいた。特に、教員や科学者が行進しながら入場してくると、とても嬉しそうな顔をして手を大きく振っていた。12年制義務教育の実施状況や科学技術重視政策に満足しているのであろう。

Source: KCTV,2013/9/9放送
教員のパレード、「未来を愛せ」というプラカード

Source: KCTV,2013/9/9放送
昨日、「建国節中央報告大会」が開催され、金永南演説があったのだが、こちらはまだ途中までしか聞いていない。特記しべき事項があれば、追記することにする。
<追記>
遅ればせながら、金永南演説を聞いた。彼の演説からも、「核保有国」、「核威力」、「衛星発射国」という言葉は消えていた。これらは金正日の業績とされるところであるが、彼の業績については「先軍革命思想を定立体系化され、先軍政治を社会主義基本政治方式として打ち立てられ、国防委員会を中軸とする新たな国家管理体系を確立され、全ての事業を軍事先行の原則で進行していくようにされ、共和国の強化発展において革命的転換をもたらされた」こと、「苦難の行軍、強行軍の試練と難関を打ち破り、社会主義守護戦で百勝」したこと、「記念碑的創造物を多く建設」したことなどは挙げたが、「核・ミサイル開発」には触れなかった。
そして、「金正日愛国主義は、父なる将軍様が我々に残して下さった精神的遺産であり、富強祖国建設の偉大な原動力です」と金正日時代と金正恩時代を結びつけながら、「自衛的防衛力の強化」をしつつも「郡代と人民が不屈の精神力を発揮し、経済強国建設と人民生活向上のための今日の総進軍において新たな高揚をももたらし、軍民共同作戦の威力で万年大系の創造物をさらに多く打ち立て」と経済建設の重要性を強調している。そしてそのためには「科学技術を早く発展させ、全民科学技術人材化を実現し、我が国を知識経済強国として打ち立て」と科学技術の発展に一層力を入れるべきだということを強調している。海外ではあまりいわれないが、北朝鮮にとって「核やミサイル」は軍事力の誇示であるのと同時に、特に対朝鮮人民では科学技術力の誇示でもある。
米国に対しては、「今日、朝鮮半島とアジア太平洋地域の常時的な緊張と刺々しい情勢は、平和と安全を願う世界の進歩的人民の大きな憂慮」であるとし、「米国は、大勢の流れを正しく見て、時代錯誤的な敵対観念から抜け出し、朝鮮半島の平和と安全を保障することに実践的に寄与をする道を選ばなければならない」とした上で、「共和国政府は、朝鮮半島と地域の平和と安定を守護し、世界の自主化を実現するために、全ての努力をする」と述べている。「全ての努力」に「核についての話し合い」も含まれているのかについては言及していないが、「朝鮮半島と地域の平和と安定」は中国政府の朝鮮半島政策と一致しており、これを受けたものであれば、当然、核問題の話し合いも含まれることになる。
『労働新聞』、「위대한 김 일 성―김 정 일주의기치높이 나아가는 우리 공화국은 끝없이 강성번영할것이다
중앙보고대회에서 한 조선로동당 중앙위원회 정치국 상무위원회 위원이며 조선민주주의인민공화국 최고인민회의 상임위원회 위원장인 김영남동지의 보고」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-09-09-0046&chAction=T
さて、記事の「銀河科学者通り」の話であるが、金正恩時代らしく視察の1日後に「記録映画」が放送された。実は、7月上旬に金正恩さんは科学者住宅の建設状況を視察しており、この時の様子が「録画報道」で紹介されている。同報道では、「あと2ヶ月で科学者住宅を完成させる」と言っていたが、とても2ヶ月で完成しそうな進捗状況ではなかった。
7月上旬の建設状況「敬愛する金正恩元帥様が科学者住宅建設場を視察された」

Source: KCTV,2013/7/2放送
『労働新聞』、「경애하는 김정은원수님께서 과학자살림집건설장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-07-02-0003&chAction=S
科学者住宅の室内を視察する金正恩

Source: KCTV,2013/7/2放送
ところが、今日放送された表題の「記録映画」では、少なくとも外面的には建設が完了している。科学者住宅群。複数の場所で別々に建設をしているということはないと思うのだが。

Source: KCTV, 2013/9/9放送
満足げに笑いながら視察をする金正恩

Source: KCTV, 2013/9/9放送
目を疑うほどの完成度である

Source: KCTV, 2013/9/9放送
全景と室内図面

Source: KCTV, 2013/9/9放送
キッチン「家庭の主婦が喜ぶだろう」と金正恩

Source: KCTV, 2013/9/9放送
科学者住宅には、保育園・幼稚園、小学校なども建設されている。それにしても、7月からわずか2ヶ月でここまで仕上げるというのは、軍人建設者の馬息嶺速度には脱帽する。心配なのは、「質的な保障」はできているのかということだ。韓国でもかつて、地下鉄工事現場の陥没事故から始まり、橋の崩落、デパートの崩壊など、手抜き工事に起因すると思われる大事故が発生した。北朝鮮の場合、そのような事故が発生しても報じないか、韓国と比して建設工事の件数が絶対的に少ないので、幸いにもそのような事故が発生していないのかも知れないが、どうなのであろうか。
馬息嶺スキー場も、数日前に「朝鮮中央TV」で放送された番組を見る限りでは、まだまだこれからという感じがする。しかし、科学者住宅建設における「馬息嶺速度」で工事を続ければ、今年、雪が降る頃には完成するのかも知れない。
「人民の食の問題も解決しないで」という批判も聞かれるが、金正恩時代の「記念碑的建造物」は、どれだけの人民が利用できるかは別とし、金正日時代に造られたようなただ大きな「建造物」ではなくなっているのではないだろうか。
少なくとも、教育や科学の振興を喜ぶ指導者は歓迎されるのではないだろうか。
軍部との関係も含め、平和と戦争の間で揺れる(それが意図的であるか否かにかかわらず)北朝鮮は、やはり注意深くワッチするに値する。
労農赤衛軍が掲げる金日成旗・金正日旗に敬礼をする金正恩

Source: KCTV,2013/9/9放送
生中継のタイトル通り、閲兵式は労農赤衛軍が中心で、陸海空及び反航空軍の儀仗兵は軍旗を持って参加したものの、派手な武器のパレードはなく、労農赤衛軍らしく、農耕用トラクターで引っ張る連射砲などが僅かに登場しただけであった。

Source: KCTV,2013/9/9放送
ナレーションでは数えただけでも5回以上「平和」とか「平和を愛する」という表現が使われており、「我々の銃隊の上に平和がある」は行進曲として使用されてはいたものの、「銃隊」はあまり強調されていなかった。さらに、「核抑止力」、「核保有国」、「衛星発射国」といった用語も聞いていた限りではナレーションで使われていなかった。最近の記事には何回も書いているが、北朝鮮は今、明らかに「平和・対話モード」に入っている。
それを反映してか、金正恩さんも労農赤衛軍のパレードよりも、平壌市民のパレードを見て喜んでいた。特に、教員や科学者が行進しながら入場してくると、とても嬉しそうな顔をして手を大きく振っていた。12年制義務教育の実施状況や科学技術重視政策に満足しているのであろう。

Source: KCTV,2013/9/9放送
教員のパレード、「未来を愛せ」というプラカード

Source: KCTV,2013/9/9放送
昨日、「建国節中央報告大会」が開催され、金永南演説があったのだが、こちらはまだ途中までしか聞いていない。特記しべき事項があれば、追記することにする。
<追記>
遅ればせながら、金永南演説を聞いた。彼の演説からも、「核保有国」、「核威力」、「衛星発射国」という言葉は消えていた。これらは金正日の業績とされるところであるが、彼の業績については「先軍革命思想を定立体系化され、先軍政治を社会主義基本政治方式として打ち立てられ、国防委員会を中軸とする新たな国家管理体系を確立され、全ての事業を軍事先行の原則で進行していくようにされ、共和国の強化発展において革命的転換をもたらされた」こと、「苦難の行軍、強行軍の試練と難関を打ち破り、社会主義守護戦で百勝」したこと、「記念碑的創造物を多く建設」したことなどは挙げたが、「核・ミサイル開発」には触れなかった。
そして、「金正日愛国主義は、父なる将軍様が我々に残して下さった精神的遺産であり、富強祖国建設の偉大な原動力です」と金正日時代と金正恩時代を結びつけながら、「自衛的防衛力の強化」をしつつも「郡代と人民が不屈の精神力を発揮し、経済強国建設と人民生活向上のための今日の総進軍において新たな高揚をももたらし、軍民共同作戦の威力で万年大系の創造物をさらに多く打ち立て」と経済建設の重要性を強調している。そしてそのためには「科学技術を早く発展させ、全民科学技術人材化を実現し、我が国を知識経済強国として打ち立て」と科学技術の発展に一層力を入れるべきだということを強調している。海外ではあまりいわれないが、北朝鮮にとって「核やミサイル」は軍事力の誇示であるのと同時に、特に対朝鮮人民では科学技術力の誇示でもある。
米国に対しては、「今日、朝鮮半島とアジア太平洋地域の常時的な緊張と刺々しい情勢は、平和と安全を願う世界の進歩的人民の大きな憂慮」であるとし、「米国は、大勢の流れを正しく見て、時代錯誤的な敵対観念から抜け出し、朝鮮半島の平和と安全を保障することに実践的に寄与をする道を選ばなければならない」とした上で、「共和国政府は、朝鮮半島と地域の平和と安定を守護し、世界の自主化を実現するために、全ての努力をする」と述べている。「全ての努力」に「核についての話し合い」も含まれているのかについては言及していないが、「朝鮮半島と地域の平和と安定」は中国政府の朝鮮半島政策と一致しており、これを受けたものであれば、当然、核問題の話し合いも含まれることになる。
『労働新聞』、「위대한 김 일 성―김 정 일주의기치높이 나아가는 우리 공화국은 끝없이 강성번영할것이다
중앙보고대회에서 한 조선로동당 중앙위원회 정치국 상무위원회 위원이며 조선민주주의인민공화국 최고인민회의 상임위원회 위원장인 김영남동지의 보고」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-09-09-0046&chAction=T
さて、記事の「銀河科学者通り」の話であるが、金正恩時代らしく視察の1日後に「記録映画」が放送された。実は、7月上旬に金正恩さんは科学者住宅の建設状況を視察しており、この時の様子が「録画報道」で紹介されている。同報道では、「あと2ヶ月で科学者住宅を完成させる」と言っていたが、とても2ヶ月で完成しそうな進捗状況ではなかった。
7月上旬の建設状況「敬愛する金正恩元帥様が科学者住宅建設場を視察された」

Source: KCTV,2013/7/2放送
『労働新聞』、「경애하는 김정은원수님께서 과학자살림집건설장을 돌아보시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-07-02-0003&chAction=S
科学者住宅の室内を視察する金正恩

Source: KCTV,2013/7/2放送
ところが、今日放送された表題の「記録映画」では、少なくとも外面的には建設が完了している。科学者住宅群。複数の場所で別々に建設をしているということはないと思うのだが。

Source: KCTV, 2013/9/9放送
満足げに笑いながら視察をする金正恩

Source: KCTV, 2013/9/9放送
目を疑うほどの完成度である

Source: KCTV, 2013/9/9放送
全景と室内図面

Source: KCTV, 2013/9/9放送
キッチン「家庭の主婦が喜ぶだろう」と金正恩

Source: KCTV, 2013/9/9放送
科学者住宅には、保育園・幼稚園、小学校なども建設されている。それにしても、7月からわずか2ヶ月でここまで仕上げるというのは、軍人建設者の馬息嶺速度には脱帽する。心配なのは、「質的な保障」はできているのかということだ。韓国でもかつて、地下鉄工事現場の陥没事故から始まり、橋の崩落、デパートの崩壊など、手抜き工事に起因すると思われる大事故が発生した。北朝鮮の場合、そのような事故が発生しても報じないか、韓国と比して建設工事の件数が絶対的に少ないので、幸いにもそのような事故が発生していないのかも知れないが、どうなのであろうか。
馬息嶺スキー場も、数日前に「朝鮮中央TV」で放送された番組を見る限りでは、まだまだこれからという感じがする。しかし、科学者住宅建設における「馬息嶺速度」で工事を続ければ、今年、雪が降る頃には完成するのかも知れない。
「人民の食の問題も解決しないで」という批判も聞かれるが、金正恩時代の「記念碑的建造物」は、どれだけの人民が利用できるかは別とし、金正日時代に造られたようなただ大きな「建造物」ではなくなっているのではないだろうか。
少なくとも、教育や科学の振興を喜ぶ指導者は歓迎されるのではないだろうか。
軍部との関係も含め、平和と戦争の間で揺れる(それが意図的であるか否かにかかわらず)北朝鮮は、やはり注意深くワッチするに値する。