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    「政権、日朝協議再開で調整 飯島氏が首相に訪朝報告」 (2103年5月21日 「朝日新聞デジタル」)

    飯島さんの訪朝報告を受け、「安倍晋三首相は対話を通じた日本人拉致問題の解決に強い意欲を示している。ほかに核開発やミサイル問題の包括的な解決を目指す」ことにしたと21日付けの「朝日新聞デジタル」が報じた。

    『朝日新聞デジタル』、「政権、日朝協議再開で調整 飯島氏が首相に訪朝報告」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130521-00000039-asahi-pol

    内閣官房長官は、20日午前の記者会見で飯島さんから訪朝報告を受けた上で記者の質問に答えている。北朝鮮とのやりとりの内容については相変わらず「事柄の性質上」を理由に明らかにしていないが、今後の展開に結びつくような発言はしている。

    まず、安倍政権の対北朝鮮政策基本方針として「我が国の対北朝鮮政策は、日朝平壌宣言に基づいて包括的に取り組んでいく」、「拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はない」、「対話と圧力の方針を貫き、国家の責任として、全ての拉致被害者の安全確保、即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しに全力を尽くす」という3点を挙げている。これは、従来の政権と変わることはない。

    ところが、21日午前の記者会見では「拉致・核・ミサイルの包括的解決」と「拉致問題」を分けて北朝鮮と交渉を進めていくと受け止められるような発言をしている。「包括的解決」と「拉致問題だけを個別に解決」するという立場の表明は、言い替えれば「先に拉致問題を解決し、後で核・ミサイルを解決する」、つまり「包括的解決」を行うにしてもそれをパッケージにして一度にではなく、優先順位を付けて解決していくという考えの表明であろう。

    官房長官は「対話と圧力」を繰り返し強調したが、「圧力」では拉致問題解決に結びつかなかったので「対話」に転じようということであろう。しかし、このタイミングで「対話」に転じる理由は国際的には説明が難しいはずである。官房長官は「我が国は対話のドアは常にオープンにしている」ともいっているが、同じことは米国もいっており、その条件は北朝鮮が「非核化に向けて誠実な姿勢を示す」ことであったはずである。これは、安倍政権も対北朝鮮政策は「日米連携」あるいは「国際社会との連携」の中で行うとしながら同調してきたはずである。

    北朝鮮は連続3日「短距離ミサイル発射」といわれていたが、先ほど「朝鮮日報日本語版」が「韓国政府は21日、短距離地対地ミサイルではなく、口径300ミリ以上の新型放射砲(多連装ロケット)という結論を下したという」と報じた。

    『朝鮮日報日本語版』、「北朝鮮の飛翔体は新型ロケット、最大射程200キロ」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130522-00000404-chosun-kr

    実は、私はこの記事に「北朝鮮は、連続3日短距離『ミサイル』を発射しながら日本と国際社会を試している」と書こうとしていたのだが、これが「ミサイル」ではなくて「ロケット砲」であるとすると、「弾道ミサイル技術を使った発射」には該当しなくなる。短距離「ミサイル」発射が安保理決議違反になるのかについては、20日の米国務省定例記者会見でも質問が出され、報道官は「そうは認識していない(not aware of)」と発言している。「朝鮮日報の記事」では、米国防省報道官も類似した発言をしているが、この時点で米国が発射されたものがミサイルではなくロケット砲であると確認できていたのかどうかは分からない。

    北朝鮮が発射した「飛翔体」が「ミサイル」ではないとすると、安倍政権にとっては都合がよい。つまり、「挑発的な行為」であれ、北朝鮮が発射したものはミサイルではないのだから、安保理決議には反しない。私は依然として北朝鮮が国際社会を試すためにミサイルを発射したと思っているが、発射された「飛翔体」がミサイルであったのかロケット砲であったのかという真実は、軍事情報なので当分の間は分からない。北朝鮮は、20日に発表した「祖国平和統一委員会書記局報道第1038号」で「ロケット発射訓練」をしたと述べている。北朝鮮がこれまでミサイルやロケット砲をどのように表記してきたかについての確認をする余裕はないが、北朝鮮には「戦略ロケット軍」が存在するということからすれば、いわゆる「ミサイル」もロケットと呼んでいる可能性は高い。

    もし、米韓の両政府がミサイルをロケット砲と言ったのであれば、これは明らかに安倍政権の対北朝鮮外交に配慮したものである。単純に両国のインテリジェンス能力の違いによるものなのかも知れないが、米韓で「ロケット砲」とするタイミングが微妙にずれている。安倍政権が米国には迅速に、あるいは事前に説明したものの、韓国への説明は遅れたのか。それとも、同時に説明はあったものの、韓国政府が日本の北朝鮮接触についての態度を決めかねていたのかは分からない。韓国はこれについて「不快感」を表明して以降、何ら変化は見られていないが、今後の動向に注目する必要はある。

    私の推測通りに北朝鮮が発射したものがミサイルであったとすれば、ロケット砲と言い替えて米韓は安保理決議違反で北朝鮮を非難する道を選ばなかったということになる。すると、日本が対話を始めようとしていることを評価する、逆に言えば日本との対話に北朝鮮が乗りだしたことを評価するというシグナルを北朝鮮に送ったことになる。米韓は「核・ミサイル放棄」を対話の前提条件としつつも、「拉致という人道問題」について「核・ミサイルと切り離して」日本が北朝鮮と対話をすることをどこかで認めることになるであろう。もちろん、「人道問題」といっても、北朝鮮で有罪判決を受けた韓国系米国人の釈放交渉とはまったく重さの違う問題である。

    日本政府もいっているように「拉致・核・ミサイルは包括的」問題であり、「日朝平壌宣言」に基づいて解決していくべき問題である。米韓両国が日本の北朝鮮との交渉を公式に歓迎する立場を取るとすれば、当然それが「核・ミサイル」に繋がるという認識に立ってのはずである。

    国際社会が日本にそれだけの期待をしているとすれば、安倍政権は参院選挙の点数稼ぎ程度の安易な考えで北朝鮮との交渉に臨むべきではない。残念ながら、官房長官は「安倍政権は拉致問題を自らの手で解決しようという強い責任感と決意を持っている」を繰り返し強調しているが、政権として上に書いたような国際的な責務まで強く認識している様子はあまり感じられない。また、国際交渉が双務的であるということも忘れてはならない。特に「日朝平壌宣言」に基づいてというのであれば、同宣言の冒頭に記されている「過去の清算」についても真剣に考えておかなければならない。同宣言の2には「国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施」すると記されているので、実際にお金が出ていくのは「国交正常化後」であり、日本政府の「拉致問題解決なくして国交正常化はあり得ない」という立場からすれば、まず拉致問題を解決する順序でよいことになるが、そんなことで北朝鮮との交渉がまとまるはずがない。

    ともかくも、国際社会を巻き込んで安倍政権が動き出したのであれば、是非とも成果を出してもらいたいものである。その成果は、小さくは小泉訪朝で実現した「拉致被害者の一部帰国」でもよいが、究極的には「核・ミサイル問題解決い向けた糸口」になって欲しいと考えている。

    金正恩体制発足後、金正日の遺訓を引き継いだ米朝接触(2.29合意)を除けば、金正恩体制として初めての国際交渉となる。繰り返すが、日本(安倍政権ではない)の責務は重い。

    「朝鮮中央TV」は、昨日、「追憶に残る映画<朝鮮芸術映画>私が見た国」という映画を昼12時少し前から放映していた。この映画は、日本の新聞記者が北朝鮮を訪問し「北朝鮮の真実を知る」という内容の映画であるが、このタイミングでこうした映画を放映するのも実に意味ありげである。また、「朝鮮中央通信」は21日、福島県沖で発生した震度5強の地震について報じている。「朝鮮中央通信」は各国の自然災害についてのニュースはしばしば流しているので、これが特別な話ということではないが、タイミングとしては気になる。

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    コメント連投失礼。
    金正恩第一書記の特使として崔龍海総政治局長が北京へ。ついに動き出した感じがしますね。

    崔龍海

    コメントありがとうございます。2連でも3連でも結構ですから、いろいろとコメントをいただければ幸いです。崔龍海さん北京へ、ですか。知りませんでした。

    > コメント連投失礼。
    > 金正恩第一書記の特使として崔龍海総政治局長が北京へ。ついに動き出した感じがしますね。

    どうも。私も動きが目まぐるしくてよくわからなくなっています。

    確か21日とか一のつく日?は農民の日か何かで9時からだったような気もします。

    以前金永南氏との会談の会話内容をコメントしたつもりなのですが、もしかしてちゃんとコメント書き込めてなかったかなと思い、連投失礼としましたm(_ _)m

    金永南コメント

    コメントありがとうございます。金永南コメントはサイトの方に送信されていません。お手数でなければ、要旨だけでも結構ですから頂戴できれば幸いです。

    「農民の日」というのがあるのですか。最近は、農作業についてのスローガンや教養番組が増えているようですが、田植えの時期だからなのでしょうね。

    > どうも。私も動きが目まぐるしくてよくわからなくなっています。
    >
    > 確か21日とか一のつく日?は農民の日か何かで9時からだったような気もします。
    >
    > 以前金永南氏との会談の会話内容をコメントしたつもりなのですが、もしかしてちゃんとコメント書き込めてなかったかなと思い、連投失礼としましたm(_ _)m
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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

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