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    「火星砲-17型」整理 (2023年3月18日)

    「火星砲-17型」はこれまで3回発射されたことになっている。その内の1回は失敗しており、「火星砲-15型」の発射をもって「火星砲-17型」だったと主張しているという見解がある。拙ブログでも影の方向などから北朝鮮が公開した「火星砲-17型」とされる動画を分析し、2回の異なる発射を合わせて作成した動画であるという推測している。

    http://dprknow.jp/blog-entry-5086.html

    2022年11月18日の「火星砲-17型」発射の際には、「娘様」の同行があり、ミサイルよりもそちらに注目してしまった。そのため、発射地点や格納庫についてきちんと確認することなく、1度目の発射の際に公開された動画と同地点であることを前提としていた。ところが、今回、きちんと調べてみると、2022年11月の発射では格納庫も発射地点も異なることが分かった。

    まず、2022年3月24日とされる「火星砲-17型」発射とされる動画から推測した格納庫と発射地点である。過去記事では発射地点に近い青い屋根の建物を格納庫としていたが、ミサイル搭載車両を収納するには小さすぎる。Google Earthを見ていたら、「ICBM facility」とマークされており、同発射の際に公開された動画と照合したところ下の写真の格納庫からTELが出てきたものと推測できる。

    202220324 hw-17 move

    TELは車輪の向きから左折しようとしており、北に向かって出てきていることがわかる。西方向から撮影された影像では「3」と記された格納庫の東側にある白い建物が確認できる。
    20220325 hw-17 out

    この時、「元帥様」は車両の中から発射を見ている。車両の窓の外には空港敷地と農地を分ける柵が見えている。ミサイルの背景に丘があるので、この車両はミサイルの北方で東か西向きに止まっていると推測できる。木立や飛行機に遮られるに見られる地点は下の地図に示した地点だけであろう。
    20220318 ob site

    20230318 miage3333

    1回目の発射の際、TELは格納庫から約1300m移動しており、発射地点と「元帥様」がいる場所は約1700m離れている。この発射の際には、「元帥様」が発射地点に停止したTELの周辺を歩いている。気象庁によると、この日、平壌の平均気温は9℃、最高と最低がそれぞれ13.2℃と6.8℃になっている。防衛省の発表では、発射時刻は「14時33分頃」とされている。

    20230318 hasshajunbikanryo

    次に2022年11月18日の発射である。発射地点は空港内となり、格納庫も航空機整備用の格納庫を使ったものと推測される。
    20221118 hw-17 move

    下は公開された格納庫から出てくるTELの影像である。1回目と異なる色の格納庫から出てきており、左折しようとしている。後ろに木々が見えることから、当該格納庫と推測した。
    20221118 hw-17 hanger

    この発射の際の「元帥様」の視察地点は下の地図に示した地点と推測され、発射地点から約1300m離れている。
    20230318 kansi 11gatsu

    発射地点と視察地点はそれぞれ下の影像から推測した。発射地点は道路の曲がり具合と草面にある四角形、視察地点は周辺にある小高い丘であること、滑走路の設置方向、そしてミサイルが見える方向が根拠になっている。
    20230318 hassha11 kcv

    20230318 kansi343242

    2022年11月の発射の際、TELは約3800m移動している。冒頭にも書いたように、「元帥様」は「娘様」と一緒に発射体制にあるミサイルの近くを歩いている。気象庁によるとこの日の平均気温、最高気温、最低気温はそれぞれ、9.6℃、15.8℃、5.6℃で、防衛省が発表した発射時刻は「10時14分頃」とされている。

    そして、今回、2023年3月16日の発射である。今回の発射も空港内から行われており、格納庫は2022年11月に使用された格納庫の隣のものを使っていると推測している。これらの地点を基準にすると、TELの移動距離は前回の約2倍となり、6300mに達している。
    20230316 hw-17 move

    発射地点の根拠については既に過去記事に書いたが、格納庫は以下の影像による。格納庫の形状は2022年11月と同じように見え、TELはやはり左折している。東の空が明るいので、東方向への転回と考えられる。また、格納庫の左隣には建物がないので、2022年11月に使われたものの隣の格納庫と推測した。
    20230318 kakunousaigo
    Source: KCTV, 2023/03/17

    視察地点は過去記事に書いたとおり、下の地図の地点となり、発射地点から約1700m離れている。
    20230318 ob3gatus

    3月16日の発射の際、「元帥様」はミサイル付近を歩いていない。直接、視察場所に行ったのであろう。この日の気温は、平均、最高、最低、それぞれ2.3℃、8℃、-3.2℃となっており、発射時刻は「7時9分頃」とされている。

    今回、視察地点までの距離や発射時刻、そして発射日の気温に拘ったのは、16日の発射の際、「元帥様」がミサイルに近づかなかったからだ。単に薄暗いので良い影像にならないというような理由なのかも知れないが、これまで2回の発射ではTELで移動した後に燃料を注入しており、「元帥様」がミサイル付近にいる時点は燃料が入っておらず安全だったが、今回は燃料を入れて移動したので危険回避のために「元帥様」が近づかなかったのではないのかと考えたからだ。

    16日の平壌の気温は-3.2~8℃で発射時刻はほぼ最低であったと考えられる。オランダ国防大のサベルスブルグ氏によると、液体燃料の酸化剤( N2O4 )は、この温度帯域では「液体」なので、「理論上では数時間、移動できる」としている。しかし、依然として危険であることは変わりなく、燃料注入後の移動は気温という要因の他に「燃料タンクの構造」と「どれほど危険を冒すのか」次第だとしている。

    北朝鮮は、液体燃料の安全性を確保するために「アンプル化」ができたとしているが、実際のところ「アンプル」なるものがどれほど安全なのか、さらにミサイルの飛行性能に影響を与えないような重量の素材で頑丈な「アンプル」を作ることができたのかは分かっていない。

    これまで、「火星砲-15型」と「火星砲-17型」の発射は全て平壌空港付近で行った。デモンストレーション用の場所としては最も都合が良いのだろう。しかし、もしかするとこれらのICBMはこの場所にしか展開できていない可能性も排除できない。だから、北朝鮮としては、展開できているのかいないのかは不明確にしておくのが良い選択肢だと言える。

    固形燃料ICBM用のTELではなく、ミサイル本体はいつ登場するのだろうか。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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