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    「南朝鮮傀儡当局の態度如何により我々が先に断固たる重大措置を取るであろう」:開城工団事態悪化へ (2013年4月27日 「労働新聞」)

    開城工団について韓国・統一部が北朝鮮に対して対話を呼びかけたところまでは記事にした。対話呼びかけに対する北朝鮮の回答期限は翌日(26日)昼までとされていたが、北朝鮮は対話呼びかけを拒絶する国防委員会政治局スポークスマンの回答を出した。26日夕方には「朝鮮中央通信」で報じられていたが、同内容が27日の「労働新聞」に掲載された。

    「回答」では、「南朝鮮傀儡当局の『対話提案』が誠実なものであるならば、それを実践行動で立証しなければならない」にもかかわらず、「我々の建国節を狙って悪質保守チンピラ共を動員し、再び我々を悪辣に誹謗中傷するビラ散布行為を躊躇することなく行った」と韓国当局を非難しながら始まっている。

    ビラ散布は民間人が行ったものであるが、北朝鮮は「散布した人間の屑が公式メディアに登場し、奴らが傀儡当局に阻止されることなく『民統線(民間人が通常行くことができる北朝鮮との境界の限界線)』一帯に接近し、思うままに敵対行為を行った」と民間人によるビラ散布を韓国当局が阻止しなかったことを非難している。過去にも類似した事例について記事にしたことがあるはずだが、北朝鮮は自国を基準に韓国当局に統制を求めているのか、あるいは韓国で軍事政権時代のような強権が通用すると考えているのか、それとも実態を十分理解していながら民間人の行動への統制を求めているのかよく分からない。朴槿恵政権も民間人による北朝鮮を刺激する行為を実力で阻止したというニュースは読んだことがあるが、民主主義が定着した同国ではこうした行為を政府が繰り返し行うことは困難である。

    続いて「回答」では、韓国が6.15共同宣言や10.4宣言を履行しなかったと非難し「青瓦台の部屋の主人は、公式な席上では我々に北南合意を遵守しなければならないと騒ぎ立てながら、その裏では汚い人間の屑を動員してビラまで散布して」いるとビラ散布についての非難を続けて展開し、さらに米韓合同演習で上陸訓練を行っていることが敵対行為であると非難している。

    そして、「今日、開城工業地区が風前の灯火という危機に至ったのは、全的に傀儡一味の無謀な戦争狂気のためである」と決めつけている。

    また、開城工団は6.15南北共同宣言の産物であり、「李明博逆徒の極悪無道な『5.24対北措置』にも開城工業地区だけには手を付けられなかった」し、「我々は傀儡一味が極右保守政治家とメディアを動員し、耐えがたいほど騒ぎ立てたときですら、南側の人員に対する強制追放や開城公団地区の完全閉鎖のような重大措置は取らなかった」とし、「しかし、我々の努力と忍耐は限界に至った」としている。

    北朝鮮が開城工団の操業を中断するという措置を取った理由を「米国と傀儡軍部チンピラ共により開城工業地区が任意の時に全面戦争挑発の口実に悪用される事実上の『人質』に転落したことと関連し、我々はやむを得ず南側人員の身辺の安全保障のために同工団に入る人員の通行を遮断し、工業地区の企業活動を暫定的に中断」したとしている。

    そして、開城工団に残っている韓国側人員が心配ならば「全ての人員を全員撤収させれば良いことだ」とし、「撤収と関連し提起される身辺の安全保障対策を含む全ての人道主義的措置は、我々の関連機関に責任を取らせる」と撤収については制約を与えないことを繰り返し主張している。

    そして、「回答」は、「万が一、南朝鮮傀儡一味が現実を直視せず、継続して事態の悪化を悪化させるのであれば、傀儡当局ではなく、我々が先に最終的で決定的な重大措置を取らざるを得ない」と結んでいる。

    『労働新聞』、「남조선괴뢰당국의 태도여하에 따라 우리가 먼저 단호한 중대조치를 취하게 될것이다」、
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-04-27-0017

    これを受けて、韓国統一部は26日、次のような「声明」を出した。

    1.今日、北朝鮮は我が政府が開城工団問題を解決するために公式に提案した当局間実務会談を拒否した。
    2.北朝鮮が開城工団に対する通行を遮断し、勤労者を一方的に撤収させることで、去る10年間運営されてきた開城工団の稼働が不可能になった。
    3.政府は、この間、対話を通じて開城工団問題を解決しなければならないという立場を繰り返し表明してきた。
    4.それにもかかわらず、北朝鮮は我々の対話提案に応じることなく、開城工団の運営を中断する措置を持続しており、我々の企業家の訪北さえ許可していない。
    5.これにより、南北間の合意と北朝鮮の約束を信じて開城工団に投資した我々の企業家は、深刻な被害と苦痛をなめている。
    6.特に、北朝鮮が開城工団を最後まで守ろうとした国民に対する食材や医療支援など、最小限の人道的措置さえ許可しておらず、我々が提案した当局間の対話まで拒否したことは、如何なる理由であれ正当化することはできない。
    7.このような北朝鮮の不当な措置で開城工団に在留する我々の国民の困難が加重されており、政府は我々の国民を保護するために在留人員全員を帰還させる不可避な決定を下した。
    8.北朝鮮当局は、南北間の既存の合意と開城公団関連法令に基づき、我々の国民の安全な期間を保障し、投資企業の財産を徹底して保護しなければならない。
    9.政府は、投資企業が正常な企業活動を継続できるよう汎政府的な支援をする。

    とし、開城工団に残っている韓国人を全て撤収させることにした。撤収は既に始まっており、多くの荷物を積んだ車が韓国側に戻ってきている映像が日本のメディアで紹介されている。

    韓国・統一部、「대한민국 정부 성명」、http://www.unikorea.go.kr/CmsWeb/viewPage.req?idx=PG0000000344&boardDataId=BD0000225510&CP0000000002_BO0000000027_Action=boardView&CP0000000002_BO0000000027_ViewName=board/BoardView

    これに対して北朝鮮は、「中央特区開発指導総局」が「スポークスマン回答」を出した。この回答は、2時間ほど前に「朝鮮中央TV」で報じられていたが、今、「朝鮮中央通信」を見たら既に「開城工業地区が完全に廃止される責任は全的に傀儡一味に取らせる」という記事として配信されていた。

    「回答」では、韓国側が「全員撤収」を決定したとし、これまでの開城工団問題の成り行きを見ると「その全てのことは、傀儡共の対話提案騒ぎと人員撤収決定というものが、開城工業地区を破産に追いやるため、事前に計画された脚本によるものである」ことが分かると、韓国側が意図的に開城工団を閉鎖に追いやったと主張している。

    また、韓国側が開城工団に残った韓国人員に対する食料供給を求めたことに対して「工業地区で食材が底をついたから取った措置のように言っているが、工業地区で現実的に食べるものがなくなったわけではない」と「食べるものがある」と主張している。北朝鮮が主張するように「食べ物はある」のかもしれないが、韓国民が口にする「食材」と朝鮮人民が口にする食材では違いがあるので、韓国側が食材搬入を求めたということであろう。

    ただし、北朝鮮は未だに開城工団が「閉鎖された」とは言っていない点に注意しておく必要がある。つまり、「回答」では、「傀儡保守一味の悪辣な策動により10年間、民族の祝福と全世界の関心の中で上手く回ってきた開城工業地区がついに機械の音を止め、今、完全閉鎖は時間の問題となっている」としており、「完全閉鎖」に至るまでには多くはないが「時間はある」という認識を示している。

    「回答」では、開城工団が閉鎖されて損をするのは韓国側であり、「むしろ我々は、その間提供してきた開城工業地区の広い地域を軍事地域として再び占有し、ソウルをまっすぐに狙うことができるようになり、南進の進撃路が開けて、祖国統一大戦にさらに有利になる」と開城工業団地からソウルに至る整備された道路を南進攻撃に使うと威嚇している。

    しかし、こうした責任を前政権から留任された金寛鎮国防部長官になすりつけ、「青瓦台の主人が、対決狂信者たちに踊らされて、民族共同の協力事業として唯一残った開城工業地区さえ対決政策の犠牲にするつもりがあるのかどうか、我々は注視している」とし、朴槿恵さんには再考の余地を残す形を取り、「極悪無道な先行保守『政権』の時にも生き残ってきた工業地区が、ここにきてついに崩壊することになれば、現『政権』は李明博逆賊一味よりも対決『政権』と烙印を押され」るであろうと警告しながら「回答」を結んでいる。

    『労働新聞』、「남조선괴뢰당국의 태도여하에 따라 우리가 먼저 단호한 중대조치를 취하게 될것이다 조선민주주의인민공화국 국방위원회 정책국 대변인담화」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-04-27-0017&chAction=L

    別記事で、北朝鮮は対話モードに入りつつあると書いたが、開城工団についてはなかなか良い落とし所が見いだせないようだ。しかし、強烈に韓国を非難する「声明」や「回答」の中に、北朝鮮としても開城工団を何とか残したいという意思が見え隠れしている。韓国側の全員撤収は既に開始されたが、韓国側が要求した「財産保護」については北朝鮮は何も触れていない。金剛山観光施設のように北朝鮮が没収するつもりなのかもしれないが、金剛山の場合、現代財閥1社の投資であったのである意味没収されてもその損失は現代という企業規模からすれば些細なものであったが、今回は多くの韓国中小企業が巻き込まれることになる。韓国政府は「支援」を表明しているが、「支援」と「補償」では意味が違う。

    繰り返し書いてきたが、開城工業団地はこれからの朝鮮半島において、必ず存在し続けなければんらない重要な南北の接点である。賃金や政治制度のことははさておき、南北の人が一つの場所で共に働き、日常的な人間関係が形成されていく場として、非常に重要であることはいうまでもない。

    南北共にあまり慌てた行動に出ることなく、見えてきた対話ムードの中で開城工団問題も解決していくことが望まれる。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

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