「朝鮮民主主義人民共和国外務省スポークスマン談話」:米「2012年人権報告書」の評価に反発 (2013年4月23日 「朝鮮中央通信」)
今のところ「朝鮮中央通信」HPは正常に動いている。「労働新聞」HPも若干重いが、30分ほど前から今日の記事が見られるようになっている。昨日までは、トップページの写真が一部表示されないなどの障害があったが、現時点では両サイトとも問題ない。この障害について北朝鮮はまだコメントを出していない。uriminzokkiriについては、依然として接続不可の状態が続いている。
「朝鮮中央通信」が、昨日表題のような記事を配信した。米国務省が「2012年 人権報告書」の中で北朝鮮の人権状況について厳しく指摘していることに反発したものである。
Bureau of Democracy, Human Rights and Labor, Department of State, "Country Reports on Human Rights Practices for 2012", DPRK, http://www.state.gov/documents/organization/204420.pdf
同報告書を一通り読んでみたが、基本的には昨年記事にした「国連人権委員会」の報告書の内容と変わっていない。金正恩政権になってからの変化としては、中朝国境での脱北者取り締まり強化、12年制義務教育制度導入などが挙げられているが、外国人の携帯電話持ち込みについては依然として「空港預かり」になるという記述もあり、北朝鮮のSIMを挿入することで北朝鮮国内での使用が可能になったという点はフォローしていないようである。携帯電話についてこの報告書を読みながら思ったのは、北朝鮮SIMを挿入(購入)することを持ち込みの条件としているのか、それとも携帯電話の持ち込み自体を許可しているのかは分からない。私が北朝鮮当局者であるとすれば、SIMの「挿入」を条件とし(場合によっては、海外のSIMは預かりとして)、SIMを抜けないように封印し、出国時にその封印が破られていないか確認の上、海外のSIMを返却するという方法を取るであろうが、実態については伝わってきていない。拙ブログにもiPhoneを使った接続と思われるKP-Starプロバイダーからのアクセスが確認されているが、もしかすると在朝外国人(中国人?)によるものなのかもしれない。
話がそれてしまったが、米国務省報告書に書かれているのは、北朝鮮憲法など、法制上は人権問題にならないようよく整備されているが、実態が法制上の規定と大きく乖離しているということである。もちろん、その実態についてはNGOや研究機関の報告、またはこれらのグループによる脱北者からの聞き取り情報に依拠しているので、どこまで正確なのかは分からないし、現状ではそれ以上の実態解明が難しい状況であろう。
北朝鮮は、同「談話」の中で「結局、米国の『人権』騒ぎは、我が人民が選択した社会主義制度を崩壊させようとする対朝鮮敵対視政策を実現するための陰謀的手段」であると非難した上で、「敬愛する金正恩元帥様の周りに千万軍民が一心団結しており、現代的な自衛的核抑止力を保有する我々式の社会主義社会には、米国が念仏のように唱える『人権』は絶対に通用しない」と米国を非難している。
今更という感もあるが、そもそも北朝鮮では「金正恩元帥様の周りに千万軍民が一心団結」した「社会主義制度」の上に「人権」があるわけで、「一心団結」や「社会主義制度」に反対しようとすること自体が「千万軍民」の人権を侵害する行為と捉えているのであろう。だから、憲法やその他の法律にある立派な「人権」規定もこの条件において適用されるという解釈なのであろう。
ちなみに、日本の主要な人権問題については、起訴前の逮捕・拘留、子供に対する搾取、就職における女性に対する社会的差別、非嫡出子の人権、少数民族の人権、障害者の人権、永住者を含む外国人の人権などが指摘されており、刑務所や拘置所の基準以下の状態、検察権の誤用、報道の自粛、汚職、女性に対する家庭内暴力及びセクシャル・ハラスメント、人身売買、外国人企業研修生に対する搾取なども挙げられている。
Bureau of Democracy, Human Rights and Labor, Department of State, "Country Reports on Human Rights Practices for 2012", Japan, http://www.state.gov/documents/organization/204416.pdf
米国務省による他国に対する「評価」だからであろうが、米国に対する評価はこの報告書には含まれていない。「人権蹂躙の親分」と北朝鮮に言われないよう、米国も自己評価をした方がよい。
『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 외무성 대변인담화」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-04-24-0038&chAction=L
「朝鮮中央通信」が、昨日表題のような記事を配信した。米国務省が「2012年 人権報告書」の中で北朝鮮の人権状況について厳しく指摘していることに反発したものである。
Bureau of Democracy, Human Rights and Labor, Department of State, "Country Reports on Human Rights Practices for 2012", DPRK, http://www.state.gov/documents/organization/204420.pdf
同報告書を一通り読んでみたが、基本的には昨年記事にした「国連人権委員会」の報告書の内容と変わっていない。金正恩政権になってからの変化としては、中朝国境での脱北者取り締まり強化、12年制義務教育制度導入などが挙げられているが、外国人の携帯電話持ち込みについては依然として「空港預かり」になるという記述もあり、北朝鮮のSIMを挿入することで北朝鮮国内での使用が可能になったという点はフォローしていないようである。携帯電話についてこの報告書を読みながら思ったのは、北朝鮮SIMを挿入(購入)することを持ち込みの条件としているのか、それとも携帯電話の持ち込み自体を許可しているのかは分からない。私が北朝鮮当局者であるとすれば、SIMの「挿入」を条件とし(場合によっては、海外のSIMは預かりとして)、SIMを抜けないように封印し、出国時にその封印が破られていないか確認の上、海外のSIMを返却するという方法を取るであろうが、実態については伝わってきていない。拙ブログにもiPhoneを使った接続と思われるKP-Starプロバイダーからのアクセスが確認されているが、もしかすると在朝外国人(中国人?)によるものなのかもしれない。
話がそれてしまったが、米国務省報告書に書かれているのは、北朝鮮憲法など、法制上は人権問題にならないようよく整備されているが、実態が法制上の規定と大きく乖離しているということである。もちろん、その実態についてはNGOや研究機関の報告、またはこれらのグループによる脱北者からの聞き取り情報に依拠しているので、どこまで正確なのかは分からないし、現状ではそれ以上の実態解明が難しい状況であろう。
北朝鮮は、同「談話」の中で「結局、米国の『人権』騒ぎは、我が人民が選択した社会主義制度を崩壊させようとする対朝鮮敵対視政策を実現するための陰謀的手段」であると非難した上で、「敬愛する金正恩元帥様の周りに千万軍民が一心団結しており、現代的な自衛的核抑止力を保有する我々式の社会主義社会には、米国が念仏のように唱える『人権』は絶対に通用しない」と米国を非難している。
今更という感もあるが、そもそも北朝鮮では「金正恩元帥様の周りに千万軍民が一心団結」した「社会主義制度」の上に「人権」があるわけで、「一心団結」や「社会主義制度」に反対しようとすること自体が「千万軍民」の人権を侵害する行為と捉えているのであろう。だから、憲法やその他の法律にある立派な「人権」規定もこの条件において適用されるという解釈なのであろう。
ちなみに、日本の主要な人権問題については、起訴前の逮捕・拘留、子供に対する搾取、就職における女性に対する社会的差別、非嫡出子の人権、少数民族の人権、障害者の人権、永住者を含む外国人の人権などが指摘されており、刑務所や拘置所の基準以下の状態、検察権の誤用、報道の自粛、汚職、女性に対する家庭内暴力及びセクシャル・ハラスメント、人身売買、外国人企業研修生に対する搾取なども挙げられている。
Bureau of Democracy, Human Rights and Labor, Department of State, "Country Reports on Human Rights Practices for 2012", Japan, http://www.state.gov/documents/organization/204416.pdf
米国務省による他国に対する「評価」だからであろうが、米国に対する評価はこの報告書には含まれていない。「人権蹂躙の親分」と北朝鮮に言われないよう、米国も自己評価をした方がよい。
『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 외무성 대변인담화」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-04-24-0038&chAction=L