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    「朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議常任委員会政令第3111号 2013年4月11日 朝鮮民主主義人民共和国原子力工業省を設立することについて」 (2013年4月13日 「労働新聞」)

    13日付けの「労働新聞」に表題のような記事が掲載された。記事の内容は以下のとおりである。

    「朝鮮民主気人民共和国最高人民会議常任委員会は、国家の原子力工業を現代化、科学化し、最先端科学技術の土台の上に確立し、核物質の生産を増やし、製品の質を高める手、自律的な核動力工業をさらに発展させるために次のように決定する。

    1.朝鮮民主主義人民共和国原子力工業省を設立する。
    2.朝鮮民主主義人民共和国内閣と当該機関は、この政令を執行するための実務的対策を徹底して打ち立てる。」

    この政令は、3月に開催された労働党全員会議の「結論」を受けて制定されたものである。全員会議での原発開発再開決定や寧辺施設の再稼働、そしてこの「政令」が、一連の挑発の一部とだけ受け取られる向きもあるが、電力不足は依然として北朝鮮にとって深刻な問題であるので、挑発的な性格があるにしても、純粋な経済的性格も内包していると考えるべきである。「20時報道」などでインタビューに答える朝鮮人民は、しばしば「電力問題さえ解決されれば」と口にする。彼らが原稿を読まされているのか、はたまた日頃の「教養」事業で教えられていることを話しているのかは別とし、それほど電力が経済開発のネックになっていることは事実であろう。

    過去記事でも触れた記憶があるが、どうも原発開発に関するこうした決定は94年の核危機時に未完で終わったこと、つまりKEDOの事業を取り付けることを再度試みているように思えて仕方がない。もちろん、当時と現在の決定的な違いは、北朝鮮が「核保有国」となったことであるが、北朝鮮としては「核保有国」の立場を利用しながら、うまくKEDOのような事業を取り付け、平和的核利用への道を開き、それに伴う支援を得ようとしているのではないだろうか。問題は、現存する核爆弾をどのように扱うかであるが、北朝鮮が直ちにそれを放棄するはずはないので、2.29合意にあったように「核活動の中断」から入るしかないであろう。また、核とミサイルがセットになっているが、北朝鮮が「核活動の中断」という約束を一定期間守っていることを条件に、ロケットの発射を認めることも必要となる。彼らのロジックによれば、今回の「危機」は12月12日のロケット発射に対して制裁決議が出されたことに端を発しているわけで、その口実を与えないためにも安保理決議1874にある「弾道ミサイル技術を利用した発射」禁止条項は、緩めることも考えた方が良い。

    北朝鮮のロケット技術(ミサイル技術)の進歩を一番警戒しているのは米国なので、なかなか難しい部分があるかもしれないが、北朝鮮のロケット技術は現状のままでもどのみち進歩していく(過去10年を振り返ればその事実は証明されている)ので、核とミサイルを分けて核の方を排除することから始めるべきである。そもそも、周辺国にとって、北朝鮮のロケット技術は十分に危険なレベルで完成しているわけで、日本や韓国にとっては北朝鮮の核爆弾が増えることの方が今後増大する脅威となる。

    もちろん、中国が北朝鮮を締め上げれば、北朝鮮は今までのように核やミサイルを開発し続けることは困難になるはずだが、その時に北朝鮮がどのような行動に出るのか、これが問題である。今、北朝鮮は国際社会に対する威嚇のレベルを上げているが、過去記事にも書いたとおり、表向きは米日韓に対する威嚇ではあるものの、名指しはせずとも中国を強く威嚇しているはずである。つまり、中国が「米日韓に乗って北朝鮮を締め上げれば、朝鮮半島や東アジアは大きく混乱し、経済開発どころではありませんよ」という威嚇である。今の北朝鮮であれば、自滅覚悟でその状況を作り出すことは可能である。

    「20時報道」を見ていると、太陽節に向けて北朝鮮は着々と準備を進めている。太陽節関連の行事については、昨年、拙ブログでいくつか紹介したが、それも昨年同様開催されている。金日成花のニュースが少ないと書いたことがあるが、金日成花の展覧会も始まっている。このようすを見て、日米韓が「口だけだ」と言うと、北朝鮮は「我々は戦争前夜の午前0時までハンマーの音が工場から鳴り響き、農民は鍬を持って働き、学校からはペンで字を書く音が聞こえてきても翌日は戦争をする。それが我々式だ」(字句は記憶によるものなので、正確ではないが意はこういうこと)と反論するが、戦争はする気もないしやりたくもないのであろう。金正恩さんに経験もなく金日成総合軍事大学で「北朝鮮は米国との戦いで絶対に勝つ」と教え込まれているから、本当にそう思っているという記事をどこかで読んだが、彼と彼の側近たちはもっと大胆な計算をしているはずである。

    注意すべきは、「朝鮮はやると言えばやる」という威嚇(国内向けには「スローガン」)の落とし所を国内向けにどこに求めるのかということである。その系で、昨日の記事にも書いたが、スカッドを日本海の公海部分に向けて発射する可能性は十分にある。その際の、米日韓、そして中国の対応が今後の展開を左右する一つの鍵になる。「北朝鮮は正しい方向に道を変えるべきである」と米国は繰り返し主張するが、「正しい道に変えさせる」ような巧みなモメンタムを造り出さず、彼ら自らにそれをやらせようというのはなかなか困難である。

    問題は、そのようなモメンタムを造り出し、彼らがそれに乗ったとき、過去のようなミスをしないことである。「北朝鮮が嘘をついた」、「北朝鮮が約束を守らない」と非難することは実に簡単であるが、我々は北朝鮮にそれをさえないような仕組みを作っておくべきである。

    国際ルールを守ることの重要性は論を待たない。しかし、国際ルールとまったく別のロジック、あるいはずれた(意図的如何に関わらず)ロジックで動く国に対して外交で何ができるのかということは重要である。

    アフガニスタンやイラクではそれができなかった。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 최고인민회의 상임위원회 정령 제3111호 주체102(2013)년 4월 11일 조선민주주의인민공화국 원자력공업성을 내옴에 대하여」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-04-13-0004&chAction=L

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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