北朝鮮のミサイルが日本上空を通過するまでの時間、Jアラートは有効 (2022年11月4日)
4日、政府がJアラートを発したことについて色々と言われているが、Jアラートの機能と限界からすれば、問題はない。それは、繰り返し書いているように、迎撃ミサイルであれ、ましてや「敵基地攻撃能力」であれ、北朝鮮のミサイル攻撃から日本を無傷で守る手段など存在しないからだ。つまり、Jアラートもその被害、とりわけ人的被害を減らす手段の1つであり、昨日の状況からすれば、日本上空を通過してもしなくても、発したのは適切だったと考える。昨夜あった北朝鮮のミサイル発射と関連して「オオカミ少年効果」と書いたが、Jアラートも発しすぎると「オオカミ少年効果」に至ってしまうので、その点についてはある程度慎重であるべきだが、発射後に考えている余裕など無いはずなので、一定の要件を満たせばほぼ自動的に発するように設定されているのは当然である。
オランダ国防大のミサイル学者サベルスブルグ氏に10月4日に日本上空を通過した「新型」ミサイルの弾道軌道と時間の相関関係に関するグラフをお願いしておいたら、送られてきた。

Source: Ralph Savelsburg, Netherlands Defence Academy
サベルスブルグ氏のグラフから得られる時間データを地図上に書き込んでみた。

この時の事例からすると7時27分にJ-Alertが発せられてから約4分後に日本の上空を通過していることになる。J-Alertを7時27分に聞き、2分以内に北朝鮮の核ミサイル攻撃の被害を最小化する人はゼロではないはずなので、その点からは十分に意味はある。
10月4日に発射された「新型」ミサイルは、4500km離れた海上に落下していることから分かるように、日本を目標とした軌道で発射されたミサイルではない。そこで、サベルスブルグ氏に日本を標的として発射されたミサイルについてもグラフを描いてもらった。
下のグラフは北朝鮮の任意の地域から三沢基地を標的として発射された弾道ミサイルを想定している。ノドンミサイルが三沢基地を攻撃するための最適発射角で発射されたという想定である。

Source: Ralph Savelsburg, Netherlands Defence Academy
上記グラフから得られた時間データを地図に入れてみたの下の図である。

北朝鮮の任意の場所から1200km先の三沢基地までの到達時間は10分以内となっている。10月4日に発射された「新型」ミサイルが日本上空を通過するよりも3分ほど時間がかかっているが、最適発射角で大気圏内を通過する時間が長いからなのか、ノドンという古いミサイルを使っているからなのかはサベルスブルグ氏の意見を聞いてみたいと思う。また、このミサイル攻撃に対して発されるJ-Alertが「新型」の時と同じであれば5分ぐらい後に発され、3分だけ退避時間は増えることになる。しかし、これも低発射角で発射された場合、水平線通過までの時間が長くかかり発令時間が遅くなる可能性がある(日本のミサイル監視システムについては無知なので仮定)。
以上のことから、J-Alertは、一人でも二人でも人的被害を減らすには有効であることが分かる。しかし、上の仮想攻撃はノドンという古く配備数が多いと想定されるミサイルである点からすれば、今回北朝鮮がやっているように複数のミサリルを同時多発的に発射し、ミサイル監視能力を混乱させることも可能となる。さらに、変則軌道で飛行するミサイルも使われてば、その予測はますます難しくなる。
「敵基地攻撃能力」を高める理由として「抑止力」が上げられているが、北朝鮮が日本「だけ」と戦争をする理由は全くない。朝鮮半島で米国も含めた戦争が勃発した際に日本に向けてミサイルを発射するわけで、その意味からすれば日本が「抑止力」を高めることが日本に向けて発射されるミサイルの数を減らすことには繋がらない。朝鮮半島で戦争が勃発し、北朝鮮が核ミサイルを韓国に向けて発射した時点で北朝鮮は滅亡する。絶対に口にしないが、「元帥様」そのことはよく分かっているはずである。だから、その際、日本の「抑止力」など計算しないし、「抑止」にもならない。もちろん平時の米・韓・日トータルでの「抑止力」を強化することには繋がるが(一方で北朝鮮による攻撃対象も増える)、「敵基地攻撃能力」を議論する際にはそれをきちんと分けて議論すべきである。
オランダ国防大のミサイル学者サベルスブルグ氏に10月4日に日本上空を通過した「新型」ミサイルの弾道軌道と時間の相関関係に関するグラフをお願いしておいたら、送られてきた。

Source: Ralph Savelsburg, Netherlands Defence Academy
サベルスブルグ氏のグラフから得られる時間データを地図上に書き込んでみた。

この時の事例からすると7時27分にJ-Alertが発せられてから約4分後に日本の上空を通過していることになる。J-Alertを7時27分に聞き、2分以内に北朝鮮の核ミサイル攻撃の被害を最小化する人はゼロではないはずなので、その点からは十分に意味はある。
10月4日に発射された「新型」ミサイルは、4500km離れた海上に落下していることから分かるように、日本を目標とした軌道で発射されたミサイルではない。そこで、サベルスブルグ氏に日本を標的として発射されたミサイルについてもグラフを描いてもらった。
下のグラフは北朝鮮の任意の地域から三沢基地を標的として発射された弾道ミサイルを想定している。ノドンミサイルが三沢基地を攻撃するための最適発射角で発射されたという想定である。

Source: Ralph Savelsburg, Netherlands Defence Academy
上記グラフから得られた時間データを地図に入れてみたの下の図である。

北朝鮮の任意の場所から1200km先の三沢基地までの到達時間は10分以内となっている。10月4日に発射された「新型」ミサイルが日本上空を通過するよりも3分ほど時間がかかっているが、最適発射角で大気圏内を通過する時間が長いからなのか、ノドンという古いミサイルを使っているからなのかはサベルスブルグ氏の意見を聞いてみたいと思う。また、このミサイル攻撃に対して発されるJ-Alertが「新型」の時と同じであれば5分ぐらい後に発され、3分だけ退避時間は増えることになる。しかし、これも低発射角で発射された場合、水平線通過までの時間が長くかかり発令時間が遅くなる可能性がある(日本のミサイル監視システムについては無知なので仮定)。
以上のことから、J-Alertは、一人でも二人でも人的被害を減らすには有効であることが分かる。しかし、上の仮想攻撃はノドンという古く配備数が多いと想定されるミサイルである点からすれば、今回北朝鮮がやっているように複数のミサリルを同時多発的に発射し、ミサイル監視能力を混乱させることも可能となる。さらに、変則軌道で飛行するミサイルも使われてば、その予測はますます難しくなる。
「敵基地攻撃能力」を高める理由として「抑止力」が上げられているが、北朝鮮が日本「だけ」と戦争をする理由は全くない。朝鮮半島で米国も含めた戦争が勃発した際に日本に向けてミサイルを発射するわけで、その意味からすれば日本が「抑止力」を高めることが日本に向けて発射されるミサイルの数を減らすことには繋がらない。朝鮮半島で戦争が勃発し、北朝鮮が核ミサイルを韓国に向けて発射した時点で北朝鮮は滅亡する。絶対に口にしないが、「元帥様」そのことはよく分かっているはずである。だから、その際、日本の「抑止力」など計算しないし、「抑止」にもならない。もちろん平時の米・韓・日トータルでの「抑止力」を強化することには繋がるが(一方で北朝鮮による攻撃対象も増える)、「敵基地攻撃能力」を議論する際にはそれをきちんと分けて議論すべきである。