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    「朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議法令 自衛的核保有国の地位をさらに確固たるものにすることについて」 (2013年4月2日 「労働新聞」)

    「労働新聞」に掲載された標記法令の内容は以下のとおり。

    1.朝鮮民主主義人民共和国の核兵器は、我が共和国に対する米国の持続的に強まる敵対視政策と核威嚇に対処し、やむを得ず保有することになった正当な防衛手段である。
    (1.조선민주주의인민공화국의 핵무기는 우리 공화국에 대한 미국의 지속적으로 가증되는 적대시정책과 핵위협에 대처하여 부득이하게 갖추게 된 정당한 방위수단이다.)

    2.朝鮮民主主義人民共和国の核武力は、世界の非核化が実現されるときまで、我が共和国に対する侵略と攻撃を抑止、撃退し、侵略の本拠地に対する殲滅的な報復打撃を加えることを本務とする。
    (2.조선민주주의인민공화국의 핵무력은 세계의 비핵화가 실현될 때까지 우리 공화국에 대한 침략과 공격을 억제,격퇴하고 침략의 본거지들에 대한 섬멸적인 보복타격을 가하는데 복무한다.)

    3.朝鮮民主主義人民共和国は、強まっている敵対勢力の侵略と攻撃威嚇の厳しさに対処し、核抑止力と核報復打撃力を質量的に強化するための実質的な対策を立てる。
    (3.조선민주주의인민공화국은 가증되는 적대세력의 침략과 공격위험의 엄중성에 대비하여 핵억제력과 핵보복타격력을 질량적으로 강화하기 위한 실제적인 대책을 세운다.)

    4.朝鮮民主主義人民共和国の核兵器は、敵対的な他の核保有国が我が共和国を侵略したり攻撃する場合、それを撃退し報復打撃を加えるために、朝鮮人民軍最高司令官の最終命令によってのみ使用することができる。
    (4.조선민주주의인민공화국의 핵무기는 적대적인 다른 핵보유국이 우리 공화국을 침략하거나 공격하는 경우 그를 격퇴하고 보복타격을 가하기 위하여 조선인민군 최고사령관의 최종명령에 의하여서만 사용할수 있다.)

    5.朝鮮民主主義人民共和国は、敵対的な核保有国と野合して我が共和国に反対する侵略や攻撃行為に荷担しない限り、非核国に対して核兵器を使用したり核兵器で威嚇したりしない。
    (5.조선민주주의인민공화국은 적대적인 핵보유국과 야합하여 우리 공화국을 반대하는 침략이나 공격행위에 가담하지 않는 한 비핵국가들에 대하여 핵무기를 사용하거나 핵무기로 위협하지 않는다.)

    6.朝鮮民主主義人民共和国は、核兵器の安全な保管管理、核実験の安全性確保と関連した規定を厳格に遵守する。
    (6.조선민주주의인민공화국은 핵무기의 안전한 보관관리,핵시험의 안전성보장과 관련한 규정들을 엄격히 준수한다.)

    7.朝鮮民主主義人民共和国は、核兵器やその技術、兵器級核物質が非合法に流出しないよう、徹底して保障するための保管管理体系と秩序を打ち立てる。
    (7.조선민주주의인민공화국은 핵무기나 그 기술,무기급핵물질이 비법적으로 루출되지 않도록 철저히 담보하기 위한 보관관리체계와 질서를 세운다.)

    8.朝鮮民主主義人民共和国は、敵対的な核保有国との敵対関係が解消された後、互恵と平等の原則から核拡散防止と核物質の安全な管理のための国際的な努力に協力する。
    (8.조선민주주의인민공화국은 적대적인 핵보유국들과의 적대관계가 해소되는데 따라 호상존중과 평등의 원칙에서 핵전파방지와 핵물질의 안전한 관리를 위한 국제적인 노력에 협조한다.)

    9.朝鮮民主主義人民共和国は、核戦争の危険を解消し、究極的に核兵器がない世界を建設するために闘争し、核軍備競争に反対して核軍縮のための国際的な努力を積極的に支持する。
    (9.조선민주주의인민공화국은 핵전쟁위험을 해소하고 궁극적으로 핵무기가 없는 세계를 건설하기 위하여 투쟁하며 핵군비경쟁을 반대하고 핵군축을 위한 국제적인 노력을 적극 지지한다.)

    10.当該機関は、この法令を執行するための実務的対策を照ってして打ち立てる。
    (10.해당 기관들은 이 법령을 집행하기 위한 실무적대책을 철저히 세울것이다.)

    これは、「法令」というよりも「声明」に近いものである。1では、従来の北朝鮮の主張でもある「北朝鮮の核武装は、米国の敵対視政策の結果」であるとし、2で「世界の非核化が実現するときまで」核武力を保有するとしている。世界の非核化など遠い将来に至るまで実現するはずもないので、この限りでは後任の核保有国同様、核保有を続けるという意思を示している。さらに、3で「核報復打撃力を質量的に強化する」とし、核軍事力を強化している方針を示している。

    4は核保有国の「侵略や攻撃」に対する核での報復は「最高司令官の最終命令による」という規定であるが、核保有国の核による「侵略や攻撃」とは言っていない。つまり、通常兵器による侵略や攻撃に対しても、「最終命令」があれば核での報復も辞さないということである。さらに強い威嚇は5である。5では非核保有国であっても「核保有国と野合して」北朝鮮を「侵略したり攻撃」すれば、核攻撃の対象となると言っている。つまり、非核国である日本も韓国も通常兵器による北朝鮮と米国との戦闘に巻き込まれれば、核攻撃の対象となるということである。問題は、ヨンピョン島事件の拡大版のような局地戦が発生し、米軍の直接的な参戦がない状態で南北間の交戦があった場合である。米国と「野合」しているのかどうかは北朝鮮の判断次第なのであろうが、これもこうした局地戦に米軍が参戦しないようにするための装置として設けた規定であろう。

    6は核実験や核管理に関する規定である。第3回核実験でも空気中からは核物質は採取できなかったので、大気への拡散は秘密保持のためにも非常に厳重に行っているようである。

    7は、第三国やテロリストへの核兵器や核物質の提供はしないという規定である。ただし、「兵器級核物質」と言っているので、原発用の低濃縮ウランなどはこれに含まれないと言うことになる。北朝鮮は、ウラン濃縮施設を拡充し、民生用低濃縮ウランの輸出を念頭にいれこのような規定を設けた可能性がある。

    8では「敵対的な核保有国との敵対関係が解消された後」には核拡散防止等の「国際的な努力に協力」すると言っている。北朝鮮が「敵対関係が解消」というのをどのように定義しているのかは分からないが、究極的には米国との平和協定締結である。かつて北朝鮮は「敵対的な関係が解消」、つまり平和協定が締結されれば核は放棄すると言っていたが、この「法令」では「国際的な努力に協力」とハードルを高めている。現段階では、北朝鮮が即座に核放棄をする可能性はないが、少なくとも「敵対関係の解消」の足がかりとして「国際的な努力に協力」、つまりIAEAによる査察受け入れなどから始めなければならないことは言うまでもない。2.29合意はその第一歩だったはずなので、何とかそこに引き戻す努力が必要である。ましてや9では「核軍縮を支持する」と言っているのだから、「世界の非核化が実現されるまで」などと非現実的なことを言うのはやめなければならない。

    この「法令」もそうであるが、ヨンビョンの原子炉再稼働のように次々と核に関する「声明」を出している。どうも見ていると、北朝鮮もこれまでどおりの瀬戸際戦術が通用しなくなったと認識しており、次々といろいろな危機を醸し出して危機のレベルを上げ、譲歩の条件を出しやすいようにしている感じがする。ヨンビョンの再稼働などその良い例で、しばらく放置しておいたものをまたやると言い出しているわけで、「では、ヨンビョン再稼働は止めました」と譲歩したところで、北朝鮮にとっては何のダメージもない。

    4月2日に米国を訪問していた韓国の尹炳世外交通商相と米国のケリー国務長官の共同記者会見が開かれ、韓国人の記者がケリーさんに「どのような状況になれば、米国は北朝鮮との対話の準備に入るのか。あなたにはそのための特定の条件があるのか」と質問している。これは実に的を得た質問で、北朝鮮が「核・ミサイルを放棄する」ことなどを条件としている限りは、対話が始まらないことは誰も分かっている。では、現実的にどこでというのがこの質問の趣旨であるが、ケリーさんは「北朝鮮は、非核化についての真剣な議論をする準備をすることが必要である。彼らはそのゴールが何であり、その条件が何であるかも知っている」とし、「(オバマ大統領が述べた通り)彼らが挑発を止め真剣な対話を約束するのであれば、(米国は)対話による交渉に入る準備がある」としている。

    「挑発を止め」ることを一つの条件としている。これを上に書いたことと結びつけて考えれば、北朝鮮がこのところ挑発の度合いを高めているのは、そもそもなかった緊張関係を作り出しておき、それを一つ一つ引っ込めることで「挑発を止めた」と主張する材料となるわけである。上述したヨンビョン原子炉再稼働だけではなく、「休戦協定白紙化」、「南北通信遮断」、「開城遮断」など、全て北朝鮮が最近作り出した「造成された」状況である。

    もちろん、米国がその作戦に簡単に踊らされることはないと思うが、「核・ミサイル問題」を対話で解決するための口実になることは間違いない。

    危険なのは、こうした北朝鮮による挑発に対し米国が全く応ぜず、北朝鮮が出した「挑発」を引っ込められなくなってしまう状況に至る場合である。日本時間昨夜の米国務省定例記者会見でも「北朝鮮によるホワイトハウスを狙うという通告は、報道以外でも行われたのか」という記者の質問に対し、国務省報道官は「ない」としている。北朝鮮がロケット発射や核実験を行った際には、報道以外にも直接米国務省に対してその旨通達があったとのことなので、事態はそこまで緊迫していないと言えるが、とはいえ安全とはとても言い難い状況であることは間違いない。

    ケリーさんは、来週、日中韓を訪問し、特に中国では北朝鮮問題について集中的に中国側と協議するとのことなので、どこかで落としどころを見いだしてくれることを希望する。北朝鮮とて、あと10日もすれば太陽節を迎えることになるので、戦争ムードを下げて迎えた方が良いのではないだろうか。気のせいかもしれないが、北朝鮮の報道を見ていても、今年は金日成花の話が少ないような気がしてならない。戦争よりも平和な金日成花の方がよほど良い。

    『労働新聞』、「조선민주주의인민공화국 최고인민회의 법령 자위적핵보유국의 지위를 더욱 공고히 할데 대하여」、http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-04-02-0015&chAction=L

    U.S. Department of State, "Remarks With Minister of Foreign Affairs of the Republic of Korea Yun Byung-se After Their Meeting", http://www.state.gov/secretary/remarks/2013/04/207011.htm

    U.S. Department of State, "Daily Press Briefing", http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/04/207080.htm#DPRK

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    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
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