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    「新冷戦:欧州にさらなる核兵器配備か?」:北朝鮮は核実験をするのか、「戦術核」実験、中期戦略 (2022年5月8日 「DW」)

    8日、ドイツの放送局DWがYouTubeにアップロードした「新冷戦:欧州にさらなる核配備か?」という動画を見ていた。


    Source: DW, YouTube, 2022/05/08

    番組は欧州の核配備に関する内容で、北朝鮮については一切触れていないが、北朝鮮が「戦術核」に焦点を移している背景との関連から興味深いものだった。

    38th Northは、2018年に爆破したプンゲ里核実験場の復旧作業を北朝鮮が進めていると報じている。

    38th North, Punggye-ri Nuclear Test Site: New Activity at the Command Center Area, https://www.38north.org/2022/05/punggye-ri-nuclear-test-site-new-activity-at-the-command-center-area/

    過去記事にも書いたとおり、プンゲ里核実験場の復旧作業は、直ちに核実験に繋がるものではない。それは、北朝鮮が核・ICBM実験中断を破棄した状況で、核実験中断の「象徴」であったプンゲ里核実験場を「実験中断破棄」の「象徴」として復旧していると考えられるからである。いわば、「現時点ですら強力な核戦力であるが、継続的に強化していく」という「元帥様」の「演説」を行動で示しているのである。

    では、復旧されたプンゲ里で第7回核実験を行うのか。韓国メディアでは「行う可能性が高い」という報道が多いし、日本の防衛大臣も「今月中にも核実験を実施するための準備が整う可能性はある」と言っている。

    『朝日新聞DIGITAL』、「北朝鮮ミサイル、岸防衛相が非難 核実験の準備は「米国と同じ認識」、2022/05/07、https://news.yahoo.co.jp/articles/c78fae9f935c3ca647131153c245af058521be4d

    プンゲ里の復旧作業は間もなく終わるり、核実験ができる状態にはなるであろう。しかし、北朝鮮が核実験に踏み切るか否かの鍵となるのは米国ではなく、ひとえに中国の態度如何だということは何回も書いてきた。現在、北朝鮮が置かれている状況からして、中国を怒らせてまで核実験を強行するメリットはない。バイデンや尹錫悦に対するメッセージの有効性と中国の怒りによるダメージを比較すれば、後者が圧倒的に大きいことは明らかである。

    「核保有国」である北朝鮮は、「水爆」レベルの核実験まで行ったことになっている。だとすると、「水爆」以上の爆発力の核実験を行う必要はなく、するのであれば爆発力が弱い「戦術核」レベルの核実験ということになる。そうだとして、中国が「戦術核」レベルの核実験であれば認めるのかどうかというところが問題となる。中国の基本的なスタンスが北東アジア地域における核拡散に反対ということであれば当然反対することになろうが、小規模を理由に黙認する可能性もゼロではない。

    北朝鮮とすれば、プンゲ里の復旧や核実験を準備する様子を米国に見せておき、「戦術核」に応用するための極小規模の核実験が「完全成功」と発表することはできる。どのレベルの核実験から地震計で探知できるのかは分からないが、地震計に探知されないぐらいの小規模の「核」実験を「したこと」にすることも可能である。プンゲ里の実験場で「水爆」レベルの実験をした際、米軍などが空気中の放射性物質を回収を試みたが、回収することはできなかったはずなので、小規模であれば、なおさら地震計による検出以外の方法はなかろう。

    やったかやらなかった確認できない実験であれば、中国が黙認することも容易になる。北朝鮮にしてみれば、国内的には「戦術核実験大成功」を宣伝できるし、バイデンや尹錫悦には一定のプレッシャーをかけることができる。中国さえ怒らなければ、バイデンや尹錫悦を怒らせたところで失うものはほとんどない。

    「閲兵式」で公開した弾道ミサイルやSLBMの発射について「通常配備兵器の訓練」という位置づけで特段の報道をせず、米国がよく使う「rediness」を示しつつ、「戦術核」能力を示していく行動をしばらく続け、中期的には米国との交渉に持ち込む戦略なのであろう。米国は今、ロシアとの「proxy(代理)」戦争で忙しく、北朝鮮どころではない。北朝鮮もそれは十分に分かっているからこそ、中期的な戦略を立てているのであろう。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
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