FC2ブログ

    北朝鮮の「偵察衛星運搬ロケット」追記、ミサイルの日本落下の可能性 (2022年3月12日)

    11日に書いた発射が予想される北朝鮮の「偵察衛星」運搬ロケットについて、サベルスバーグ氏とやりとりをした。

    まず、米韓日の防衛当局が、なぜ最近の2回の発射がICBMだったとしたことについては、高度と飛行距離からして理由が分からないということだった。また、「元帥様」が見ているスクリーンの軌道図で飛行距離が300kmではなく500kmになっていることについては、スクリーンに出ているのは「予定」であり、実際には300kmしか飛ばなかった可能性があると指摘した。

    まだ記事にはしていないが、「火星-12」の2回目の発射(2017.8)は失敗だったという話もサベルスバーグ氏としている。本来は3回目の発射(2017.9)の飛行距離である3700kmを出す「予定」であったが、失敗して2700kmになってしまったという見立てである。失敗原因については、サベルスバーグ氏は2回目の発射では燃料が予定よりも早く燃え尽きる(burnout)したのではないかとしている。

    サベルスバーグ氏に描いてもらった図であるが、赤いラインが予定軌道、黄色いラインが「失敗」した2017年8月に発射された「火星-12」の実際の軌道。
    aug_2017_visualisation_wtext.jpg
    Source: Ralph Savelsburg

    インドのミサイルが誤射され、パキスタン領内に着弾したというニュースが流れている。

    JIJI.COM, 「インドがパキスタンにミサイル誤射 技術的不具合、人的被害なし (2022.03.11)」, https://www.jiji.com/jc/article?k=2022031101345&g=int

    「火星-12」の話を今更していたのは、北朝鮮のミサイルのミサイル発射が失敗するのが一番、日本にとっての脅威ではないのかと話がサベルスバーグ氏との間で話題になっていたからだ(北朝鮮が今年「火星-12」と思われるミサイルをロフテッド軌道で発射した理由についてやり取りしている過程で)。「火星-12」のバーンアウトが極端に短くなり、北朝鮮が自爆等で破壊できなくなり、制御不能になれば、「火星-12」は日本に落下する(米国などは衛星を使って宇宙空間からミサイルを制御できるシステムがあるようだが、北朝鮮は地上のステーションしかない)。

    サベルスバーグ氏による日本付近(1500km)への落下を想定した軌道図である。注目すべきは、燃焼時間が「僅か」15秒短くなるだけで、ミサイルは日本付近に落下するという点である。ミサイル技術的に15秒が「僅か」と評価されるのかどうかはさておき、失敗は付きものであるとすれば、非常に危険であることは間違いない。(青いラインは予定された軌道、緑のラインは2017年8月に「失敗」した軌道)
    Hwasong12_plots_Japan_v2.jpg
    Source: Ralph Savelsburg

    上に書いたインドのミサイル誤射の詳細についてはきちんと調べていないが、北朝鮮のミサイルも機械的、人為的エラーは十分にあり得る。もちろん、こうしたエラー発生の可能性があるのは北朝鮮に限った話ではないが、日本を飛び越す「予定」で発射されるミサイルが最も「脅威」であることは間違いない。何回も書いているが、北朝鮮は米国が北朝鮮を攻撃し、自滅を覚悟したとき以外、日本に向けて「意図的に」ミサイルを発射することはない(「最高領導者」が精神に異常を来したときにどうなるかという可能性は残っているが、プーチンの例からしても)。しかし、インドで発生したエラーや実験失敗により、ミサイルが日本に落ちる可能性は米国が北朝鮮を攻撃する可能性よりも高いと言えのではないだろうか。

    話がそれたが、昨日書いた「偵察衛星」運搬ロケット記事の中にいくつかの(いくつもの)間違いがあった。まず、「太陽同期軌道」への衛星投入は、既に「光明星-4」で成功している。また、「光明星-4」を運搬した「銀河-4」は、2段ではなく、3段であるとサベルスバーグ氏らは下の記事で分析している。

    Breaking Defense, Was North Korea’s July 4th Surprise A Mobile Launched ICBM? , https://breakingdefense.com/2017/07/was-north-koreas-july-4th-surprise-a-mobile-launched-icbm/

    また、高度500kmについてはとんでもない勘違いをしていた。下の図は、サベルスバーグ氏に書いてもらった弾道ミサイルの最適軌道(青いライン)と運搬ロケットの軌道(赤いライン)の違いである。弾道ミサイルで最少の燃焼時間で最長の飛距離を出すためには、衛星を太陽同期軌道に投入するための運搬ロケットよりもはるかに高高度まで打ち上げる必要があるようだ。
    slv_vs_bm_1.jpg
    Source: Ralph Savelsburg

    偶然当たっていたのは、日本のイプシロンロケットの例から推測した1段目と2段目の落下地点ぐらいしかなかったが、素人の浅知恵で書くとろくなことはない。

    「光明星-4」打ち上げに際して北朝鮮により事前通告された落下予想区域から作成された図。今回、「偵察衛星」が発射されるのであれば、やはりこうした事前通告があるのだろう。
    20220312 kms4path-512x475
    Source: SPACEFLIGHT 101, Controversial Rocket Launch: North Korea successfully places Satellite into Orbit (2016.02.07), https://spaceflight101.com/north-korea-kms-4-launch-success/

    さて、北朝鮮が既に「太陽同期軌道」に衛星投入を成功させているとすると、今度の発射では、何をもって技術力を誇示するのであろうか。視覚的には、これまでにない大きな機体のロケットを発射することであろう(火星-17(仮称)のように)。しかし、機体を大きくすることにより質量や重量が増える分だけエンジンの性能は高まっているにしても、より注目されるのは搭載している衛星の質量と重量ということになる。「光明星-4」の写真は公開されていないが、上のSPACEFLIGHT 101の記事中で「光明星3-2」とされる衛星の写真は見られる。今回は軍事衛星なので衛星の写真は公開しない可能性が高いが、そうなると何か新しいことに成功したという証明は衛星から撮影した写真だけということになる。だとして、「試験」の段階で「盗用疑惑」があるお粗末な写真を公開してしまったのだから、本衛星ではどうするつもりなのだろうか。

    コメントの投稿

    非公開コメント

    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


    YouTube dprknow

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    Visitors
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    QRコード
    QR