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    北朝鮮の「偵察衛星運搬ロケット」とイプシロンロケット3号機比較 (2022年3月11日)

    北朝鮮が「西海衛星発射場」から「偵察衛星運搬ロケット」を実際に発射するとどのようになるのか考えてみた。北朝鮮は「太陽同期軌道」投入を目標としているので、日本のロケットの中で「太陽同期軌道」に衛星を投入させた実績があるロケットを探してみたら、イプシロンロケット3号機が出てきた。イプシロンロケット3号機は3段構造で固形燃料を使用するなど、北朝鮮が計画していると推測される2段式液体燃料ロケットとは仕様が異なるが、偶然データも見つけたということで、これと比較することにした。

    参照したデータは2017年8月に宇宙航空研究開発機構により出された「イプシロンロケット3号機の打上げに係る
    飛行安全計画」というものである。

    上記資料:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/060/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/09/04/1394447_3.pdf

    さらに発射方向について調べてみると、北海道経済連合会が出した「宇宙で変わる北海道の未来、日本の未来」という資料が出てきた。

    上記資料:http://www.dokeiren.gr.jp/assets/files/pdf/topics/201902vision_55.pdf

    北海道経済連合会の資料によると「地球観測衛星によく用いられる太陽同期軌道の場合は、ロケットの発射方位角を南南西(180°以上)に取ることが望ましいとされている」と書かれている。西海衛星発射場から発射するとして、180°以上になるのは「銀河ロケット」発射した際に使った石垣島周辺を通過するコースとなるので、今回も同方向に向けて発射することになろう。

    20220311 isigakijima

    この角度は中国、韓国、日本の上空を通過しない角度でもある。

    続けて、飛行軌道について見ることにするが、前出の宇宙航空研究開発機構の中に出ている「イプシロンロケット3号機飛行計画概要」が参考になる。

    20220311 jaxsa siryo
    Source: 宇宙航空研究開発機構、「イプシロンロケット3号機の打上げに係る飛行安全計画」、p.5、https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/060/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/09/04/1394447_3.pdf

    北朝鮮は最近の2回の実験での到達高度は500km~600kmだったと防衛省が発表しており、昨日公開された「盗用疑惑」がある写真にも「5x1km」より撮影したというような記述があるように見える。こうしたことからすると、本発射でも高度は500kmに設定されることになろう。上のイプシロンの資料を見ると、やはり高度は約500kmに設定されており、「太陽同期軌道」に衛星を投入させるにはこの高度が適切であることが分かる。

    次に飛行距離であるが、上掲の資料によると衛星切り離しまで約19000km飛行している。資料をきちんと読んではいないが、イプシロン発射の際、最適高度と最適距離を設定したすれば、北朝鮮も同様の飛行距離を出す必要がある。「火星-15」の飛行距離は11000~12000km以上とされているが、19000km飛行させるには別のロケットが必要となり、それが11軸TELに搭載されていた一回り大きなミサイルとなる可能性は高い。

    構造が異なるので直接比較はできないのだろうが、イプシロンの場合は1段目と2段目の落下海域を下の図のように設定している。
    20220311 rakkabubun
    Source: 同上、p.8

    まず、イプシロンの飛行計画で設定されている落下地点をGoogle Earthで見ると下の海域付近となり、種子島から500km付近となる。
    20220311 ipusiron 1danme

    ロケットの仕様が異なるので参考程度の比較しかできないが、同じ距離付近に「偵察衛星ロケット」の1段目が落下するとなると、韓国沖の黄海となる。「銀河」ロケットの発射でもこの海域に1段目が落下し、韓国が回収している。

    20220311 teisatsu1danme

    この付近に落下するのであれば、1段目に関しては取りあえず他国の陸地に落ちる可能性は少ない。

    次にイプシロンの2段目について見ると、下のようになる。
    20220311 ipusiron2danme

    1900km付近となるが、2段目に関しては3段式ロケットのイプシロンと2段式と思われる「偵察衛星ロケット」ではかなり異なるような気がする。しかし、「銀河」ロケットの時もフィリピン沖に2段目が落ちたと記憶している。
    20220311 teisatsu2damei

    このような飛行・切り離しパターンだと仮定すれば、2段目に関しても取りあえずは他国の陸地に落ちる可能性は少ない。

    「偵察衛星」ロケットは、2段目から切り離されてから、どのような推力で軌道進入を試みるのか、私では分からない。しかし、イプシロンに搭載されているPBS(Post Boost Stage)のような推進力を使って軌道を修正しながら「太陽同期軌道」への進入を図るのだろう。サベルスバーグ氏に質問してみないとよく分からないが、弾道ミサイルの場合は、2段目から切り離された弾頭部は慣性で上昇を続け、ある地点で落下フェーズに入ってくはずである。この辺りが衛星発射技術と衛星発射技術の異なる部分なのだろうが、いずれにせよ、PBSによる調整は微調整程度なのだろうから、2段目切り離しまでのフェーズでどれだけ正確に制御され、予定軌道を飛行するのかがポイントとなろう。もし、北朝鮮が「太陽同期軌道」へ「偵察衛星」なるものを投入できれば、それはICBMにも十分利用できる技術力の誇示となる。

    また、500kmという飛行高度も米国に火星-15を理想的に到達させられるための高度だったような記憶がある(サベルスバーグ氏がプロットした図があったのだが、直ぐには見つからない)。

    本発射は「偵察衛星発射」として発射するので「西海衛星発射場」から発射するだろうが、もし周辺国の防衛当局が言うように最近2回の発射が「西海衛星発射場」から発射される飛翔体の予備実験だったとするのであれば、TELからの発射も可能なミサイルということになる。

    日本が当面できることは、1段目が落下する周辺海域や空域を通過する日本船舶や航空機への注意喚起ぐらいであろう。「銀河」ロケット発射の際には石垣島に迎撃ミサイルを配備したが、事実上、ミサイルの残骸を迎撃することは不可能に近いとしても、持っている装備なのだから万が一に備えて配備しておくのは悪くないと思う。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
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