「国家宇宙開発局と国防科学院、偵察衛星開発のための重要試験実施」:通信と制御システムの過大をクリアか、「太陽節」前に11軸TELからの本衛星発射か、ウクライナ進攻とは関係ない (2022年3月6日 「朝鮮中央通信」)
Source: KCTV, 2022/03/06
6日、「朝鮮中央通信」などに以下。
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国家宇宙開発局と国防科学院、偵察衛星開発のための重要試験実施
국가우주개발국과 국방과학원 정찰위성개발을 위한 중요시험 진행
(평양 3월 6일발 조선중앙통신)
朝鮮民主主義人民共和国宇宙開発局と国防科学院は、3月5日、偵察衛星開発計画に従い、再び重要な試験を実施した。
조선민주주의인민공화국 국가우주개발국과 국방과학원은 3월 5일 정찰위성개발계획에 따라 또다시 중요시험을 진행하였다.
試験を通して国家宇宙開発局は衛星資料送受信及び調整指令システムと様々な地上衛星管制システムの信頼性を確証した。
시험을 통하여 국가우주개발국은 위성자료송수신 및 조종지령체계와 여러가지 지상위성관제체계들의 믿음성을 확증하였다. (끝) www.kcna.kp (주체111.3.6.)
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5日に発射された飛翔体は「偵察衛星」運搬ロケットだった。同じような角度と飛行距離だったので、前回発射された「運搬ロケット」と同種のものではないかと思っていたが、やはりそうだったようだ。
実は、前回の「運搬ロケット」が発射された際、サベルスバーグ氏とスパイ衛星に関するメールでのやり取りをした。その中でサベルスバーグ氏は、
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1.カメラを地球の特定地点に向けなければならない。
2.そのためには、高度制御、適切なカメラ、地球に画像を送信するための送信機が必要となる。
3.高解像度の画像を撮影するためには、大型レンズとミラーを持つカメラが必要となり、重量は非常に重くなり、形も大きくなる。
4.米国のKH-11スパイ衛星の例では、ハッブル宇宙望遠鏡と同じようなサイズとなり、重量も11トンになると予想されている。
5.これまで北朝鮮が打ち上げたとする衛星の重量は数十キロと思われ、非常に小型である。
6.軌道が高くなるほど、重量とサイズの問題をクリアするのは難しくなる。それは、低高度では朝鮮半島の真上に長時間滞在することは困難だからである。
7.低高度の場合、限られた時間内に撮影し画像データを伝送する必要があり、もし米国など離れた地域を撮影したければ、撮影されたデータを衛星に蓄積しておき、朝鮮半島上空を通過する際に地上局に送信する必要がある。
8.米国などはこの問題を解決するために、リレー衛星を用いて伝送している。
9.「火星-15」に使われた1段目は「銀河運搬ロケット」よりも強力なので、本番の衛星打ち上げでは、それが使われる可能性がある。
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要約するとこのようなやり取りをしていたわけだが、今回の実験は2と7辺りの「信頼性を確証」することを目的としたようだ。米国は、情報収集システム(艦船、航空機、地上局、衛星)などを使って、この衛星と地上局との通信を傍受しているはずであるが、どの程度のことが分かっているのであろうか。
北京冬季パラの最中であるが、「衛星運搬ロケット」の発射なので、ミサイル発射とは異なるというところで中国も納得しているのであろう。今後、「太陽節」に至る期間内に本番の発射が行われることになろう。その際、米国などのスパイ衛星に察知されることを前提に西海宇宙管制センターで「衛星運搬ロケット」を組み立てた上で発射するのか、一連の発射のようにTELからと推測される発射となるのかは分からない。
「閲兵式」で公開されただけの11軸TELに登載された「火星-16」(仮称)型の「衛星運搬ロケット」を使い、大型で重量のある「偵察衛星」を発射すれば、「太陽節」の祝賀ムードは一気に高まる。
一連の発射をロシアのウクライナ侵攻と結びつけようとする論調も見られるが、そもそも「太陽節」のために準備された「偵察衛星開発計画に従」って行っていると考える方が妥当であろう。