「朴槿恵新大統領就任演説」 (2013年2月25日 「韓国政策放送 KTV」)
YouTube上でストリーミングされた朴槿恵新大統領の就任演説を聞いた。最近、金正恩さんの演説ばかり聞いており、韓国の大統領の演説は久しぶりに聞いたが、少しずつ北朝鮮方言に慣れてきているものの、やはりソウル方言の方が聞きやすい。それだけではなく、やはり演説は金正恩さんよりも朴槿恵さんの方が数段上だ。しかも、ペーパー原稿を読むのではなく、投影機(正式名称は分からない)を使って正面を見て演説を行っている。幾らするのか知らないが、金正恩さんもこればかりは早く手に入れた方が良い。また、金正恩さんの「微笑」よりも朴槿恵さんの「笑み」の方が上である。初の女性大統領であるということと共に、歴代大統領の中で、彼女のような「笑み」を見せた大統領はいない。政策その他はさておき、彼女の「笑み」は本当に素晴らしい。
会場には、李明博さんはもちろん、金泳三さん、全斗煥さん、金大中夫人もいた。金大中夫人は、北朝鮮関係の映像でもしばしば見ていたが、全斗煥さんは本当に久しぶりに見た。帽子をかぶっていたので、トレードマークの禿頭は見られなかったが、年を取ったものの元気な様子だった。金泳三さんは、居眠りをしているようにも見えた。皆、年を取ったのであろう。
久しぶりに韓国の番組を見て驚いたのは、会場のアナウンスで大統領に対して依然として敬語を使っていることであった。「大統領様」と彼女を呼び、最大の敬語を使っていた。
さて、就任辞では、経済、教育、安保などについて触れた。演説の冒頭で「漢江の奇跡で始まった発展」という言葉を使って、「第二の漢江の奇跡」を実現すると数回強調している。やはり、自分と父親の連続性を強調しているようであった。そして、当選後後退したと批判された「経済民主化」についても、複数触れていた。
教育については、「学閥ではなく実力で評価される社会」を創造しようとしていたが、「学閥=学力」、「学閥=実力」、「学力=実力」をどのように分けて考えているのかを尋ねてみたい。教育の機会均等にも触れていたが、韓国も含む「迷走する資本主義社会」(そして「迷走する社会主義市場経済社会」ではさらに酷く)では「学力=資力」の関係がはっきりと成り立っており、それをどのように打破するのか、打破できるのかはなはだ疑問である。課外教育を禁止し教育の場を「学校」に限定していた独裁政権の時代ですら、その末期には江南地域に富裕層が集住するようになり、そこを学区とする高校が一流大学入学者を多数輩出する優秀校となった。その結果、一流大学とその高校が登竜門のセットのようにさえ言われるようになった。
北朝鮮との関係では、「信頼造成プロセス」を重視し「対話」をしていこうと呼びかけた。同時に北朝鮮には「有限の資源を核・ミサイル開発に使わずに」、そして「国際社会にルールを遵守する」ことを求めたが、これらが「対話」の前提条件なのかどうかは演説でははっきりしなかった。朴槿恵さんも「核・ミサイル放棄」を前提条件とすれば、北朝鮮との関係において前任の李明博さんと同じ道を歩むことは分かっているはずなので、今日の演説を聞いた限りでは、あくまでも国際社会と協調しながら核・ミサイル放棄をもとめつつも、それを前提とすることなく対話を再開したいという意図を感じた。
北朝鮮がこれをどう受け止めているのか。北朝鮮は、板門店で3月より開始される米韓合同軍事演習の中止を求める電話通知文などを送っているが、李明博さんが「国民の審判を受けて、監獄行きだ」などという李明博攻撃こそあれ、朴槿恵さんについてはずっと触れていない。金正恩さんも彼女の演説はライブで見ていたはずだ。朴槿恵新大統領就任について、遅かれ早かれ北朝鮮はコメントを出すであろうが、その中に彼女の呼びかけに対する答えが見られるであろう。就任早々、「朴槿恵逆徒一味」となじるのかどうかが見物だ。
朴槿恵さんは、北朝鮮との関係を除いて国際関係には深く触れなかった。ただ、関係国との協力関係を発展させなければ行けないという話の中で、「米、中、日、そして露」と日本を3番目に持ってきた。前任の李明博さんがどの順で言っていたのか分からないが、韓国にとっての日本の外交優先順位は中国の下位に置かれていることを示すものであろう。韓国が、北朝鮮問題だけではなく経済関係においても、日本以上に中国を重視するのは分からないでもないが、やはりつきあいの長い間接的同盟国たる日本を3番目に持ってきたのは、ある意味残念である。
就任演説をした朴槿恵さん、カーキ色のコートを着ていた。それが北朝鮮との関係で「有事」だからだというのは深読みしすぎであろうが、この色も気になった。
就任式関連の動画はまだ続いている。今は、ストリームなのでダウンロードできないが、そのうちにダウンロードできるバージョンがアップロードされると思う。そうしたら、演説スクリプトと見比べながら、もう一度ゆっくりと聞いてみたいと思う。
YouTube, 「대통령 취임식 생중계」、
http://www.youtube.com/user/chKTV520/featured
会場には、李明博さんはもちろん、金泳三さん、全斗煥さん、金大中夫人もいた。金大中夫人は、北朝鮮関係の映像でもしばしば見ていたが、全斗煥さんは本当に久しぶりに見た。帽子をかぶっていたので、トレードマークの禿頭は見られなかったが、年を取ったものの元気な様子だった。金泳三さんは、居眠りをしているようにも見えた。皆、年を取ったのであろう。
久しぶりに韓国の番組を見て驚いたのは、会場のアナウンスで大統領に対して依然として敬語を使っていることであった。「大統領様」と彼女を呼び、最大の敬語を使っていた。
さて、就任辞では、経済、教育、安保などについて触れた。演説の冒頭で「漢江の奇跡で始まった発展」という言葉を使って、「第二の漢江の奇跡」を実現すると数回強調している。やはり、自分と父親の連続性を強調しているようであった。そして、当選後後退したと批判された「経済民主化」についても、複数触れていた。
教育については、「学閥ではなく実力で評価される社会」を創造しようとしていたが、「学閥=学力」、「学閥=実力」、「学力=実力」をどのように分けて考えているのかを尋ねてみたい。教育の機会均等にも触れていたが、韓国も含む「迷走する資本主義社会」(そして「迷走する社会主義市場経済社会」ではさらに酷く)では「学力=資力」の関係がはっきりと成り立っており、それをどのように打破するのか、打破できるのかはなはだ疑問である。課外教育を禁止し教育の場を「学校」に限定していた独裁政権の時代ですら、その末期には江南地域に富裕層が集住するようになり、そこを学区とする高校が一流大学入学者を多数輩出する優秀校となった。その結果、一流大学とその高校が登竜門のセットのようにさえ言われるようになった。
北朝鮮との関係では、「信頼造成プロセス」を重視し「対話」をしていこうと呼びかけた。同時に北朝鮮には「有限の資源を核・ミサイル開発に使わずに」、そして「国際社会にルールを遵守する」ことを求めたが、これらが「対話」の前提条件なのかどうかは演説でははっきりしなかった。朴槿恵さんも「核・ミサイル放棄」を前提条件とすれば、北朝鮮との関係において前任の李明博さんと同じ道を歩むことは分かっているはずなので、今日の演説を聞いた限りでは、あくまでも国際社会と協調しながら核・ミサイル放棄をもとめつつも、それを前提とすることなく対話を再開したいという意図を感じた。
北朝鮮がこれをどう受け止めているのか。北朝鮮は、板門店で3月より開始される米韓合同軍事演習の中止を求める電話通知文などを送っているが、李明博さんが「国民の審判を受けて、監獄行きだ」などという李明博攻撃こそあれ、朴槿恵さんについてはずっと触れていない。金正恩さんも彼女の演説はライブで見ていたはずだ。朴槿恵新大統領就任について、遅かれ早かれ北朝鮮はコメントを出すであろうが、その中に彼女の呼びかけに対する答えが見られるであろう。就任早々、「朴槿恵逆徒一味」となじるのかどうかが見物だ。
朴槿恵さんは、北朝鮮との関係を除いて国際関係には深く触れなかった。ただ、関係国との協力関係を発展させなければ行けないという話の中で、「米、中、日、そして露」と日本を3番目に持ってきた。前任の李明博さんがどの順で言っていたのか分からないが、韓国にとっての日本の外交優先順位は中国の下位に置かれていることを示すものであろう。韓国が、北朝鮮問題だけではなく経済関係においても、日本以上に中国を重視するのは分からないでもないが、やはりつきあいの長い間接的同盟国たる日本を3番目に持ってきたのは、ある意味残念である。
就任演説をした朴槿恵さん、カーキ色のコートを着ていた。それが北朝鮮との関係で「有事」だからだというのは深読みしすぎであろうが、この色も気になった。
就任式関連の動画はまだ続いている。今は、ストリームなのでダウンロードできないが、そのうちにダウンロードできるバージョンがアップロードされると思う。そうしたら、演説スクリプトと見比べながら、もう一度ゆっくりと聞いてみたいと思う。
YouTube, 「대통령 취임식 생중계」、
http://www.youtube.com/user/chKTV520/featured