韓国の羅老号ロケット打ち上げ成功 (2013年1月30日 U.S. Department of State)
1月30日、韓国の羅老号ロケットが打ち上げられ、衛星の軌道進入、衛星との交信に成功した。この点について、北朝鮮は今のところ一切のコメントを出していないが、彼らの主張通りであれば「同じ民族がロケットの打ち上げに成功したのだから、祝賀」すべきところであるが、「南朝鮮」が祝賀どころか非難をしたのだから、我々もしないというスタンスであろう。
しかし、北朝鮮としては、このタイミングで韓国にロケットを打ち上げられ、そしてそれが成功してしまったということについて相当に神経を苛立たせているはずである(北朝鮮が同じことをやれば、米国はprovocative act、つまり挑発的行為と非難するであろう)。特に、自国の発射について新しい安保理制裁決議まで出されているのに、韓国の発射については誰も何も言わない、彼らの主張からすればダブルスタンダードについて、腹立たしく思っているに違いない。
この問題について、米国務省の定例記者会見で興味深いやりとりが行われた。
U.S. State Department, "Daily Press Briefing",
http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/01/203538.htm#ROK
質問者は「日韓を含む全ての国が北朝鮮の弾道ミサイル技術を脅威と感じているのに、北朝鮮は韓国の弾道ミサイル技術を脅威と感じていないのだろうか」と質問している。これに対しヌーランド報道官は韓国と北朝鮮を比較しながら「韓国は完全に国際的な(大量破壊兵器)非拡散活動に参加しているので、皆、韓国がその技術を使って何をしているのか知っているし、韓国は拡散防止ための明確なプロトコルに従い、拡散させないことを保障し、それが軍事目的ではないということを世界に確信させている。この点において、北朝鮮の行動とは全く異なっている」と答弁している。
記者が「だからこそ北朝鮮は脅威と感じるのではないか」とたたみかけると、報道官は「北朝鮮はそれを脅威と感じるべきではない。それは、北朝鮮も我々と同じような透明性をこの計画について確保すれば、ロケット発射の自由を享受できるからである。今の北朝鮮の行動はそれと全く違っている」と応じている。報道官は北朝鮮が核開発に関する「透明性」を確保すれば、つまり核開発をやめれば、韓国のようにロケット発射の自由を享受できると言いたいのであろう。
さらに記者は、北朝鮮の衛星は結局死んだのではないかとした上で、「そうであれば、北朝鮮によるロケット発射による脅威は減少したのではないのか」とたたみかけている。これに対し報道官は「北朝鮮はそれを完成させるための制裁で禁止された努力を続けているので、その見方には反対である」と応じている。
この質問をしている記者は、いつも執拗に食い下がるMattという記者であるが、やはり北朝鮮に対する制裁のダブルスタンダード的な側面に疑問を感じているのかもしれない。果たして米国は、北朝鮮が核放棄をしたとき、ロケット発射を認めるのであろうか。それとも、また別の理由を引き出して、それをさせないのであろうか。
これと関連して、日本の対応も実に奇妙である。北朝鮮のロケット発射に際しては、自衛隊のパトリオットPAC3を沖縄に配備して厳重な警戒態勢を取ったにもかかわらず、韓国のロケット発射に対しては、少なくとも公には、このような体制は全くとっていない。警戒態勢をとった理由は「国民の安全と財産を守るため」であったはずだが、その前段にあるのは「北朝鮮のミサイルの部品等が日本の領域に落下する可能性」があったからのはずだ。
今回、韓国が発射したロケットの飛行コースを調べようと、色々検索してみたが、信頼しうるデータは見つけることができなかった(韓国のロケット発射を総括する韓国教育科学技術部のホームページにも掲載されていないようだ。一方で、北朝鮮の飛行コースは同国が公開した図面を中心に山ほど出てくる)。そのため、韓国のロケットが日本の領域を通過したのどうかは分からないが、北に向かって発射はしていないので、日本の領域は通過しているはずである。韓国とて、過去に数回ロケット発射に失敗している国である。韓国が相対的に友好的な国であるかにかかわらず、同国のロケットが日本の領域を通過するのであれば「国民の安全と財産を守るため」に何らかの措置を講ずるべきではないのだろうか。これは、北朝鮮に対してではなく日本国民に対するダブルスタンダードであるといわざるを得ない。そうでないというのであれば、北朝鮮のロケット発射であれだけの警戒態勢を敷いたのは空騒ぎであり、無用に国民の不安を煽った責任は政府にある。それとも、韓国のロケット発射に対して警戒措置を講じなかったのは、韓国を刺激しないための外交的な判断だったとでも釈明するのであろうか。
安保理決議に反した北朝鮮のロケット発射を正当化するつもりはないが、何かが変な気がする。
ちなみに、種子島からのロケット発射は特に外国の領域を通過していないようだが(あるとすれば、米国の諸島地域か)。
JAXA, 「H-IIBロケット試験機 ロケットの飛行計画」
http://www.jaxa.jp/projects/rockets/h2b/zoom2_j.html
しかし、北朝鮮としては、このタイミングで韓国にロケットを打ち上げられ、そしてそれが成功してしまったということについて相当に神経を苛立たせているはずである(北朝鮮が同じことをやれば、米国はprovocative act、つまり挑発的行為と非難するであろう)。特に、自国の発射について新しい安保理制裁決議まで出されているのに、韓国の発射については誰も何も言わない、彼らの主張からすればダブルスタンダードについて、腹立たしく思っているに違いない。
この問題について、米国務省の定例記者会見で興味深いやりとりが行われた。
U.S. State Department, "Daily Press Briefing",
http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/01/203538.htm#ROK
質問者は「日韓を含む全ての国が北朝鮮の弾道ミサイル技術を脅威と感じているのに、北朝鮮は韓国の弾道ミサイル技術を脅威と感じていないのだろうか」と質問している。これに対しヌーランド報道官は韓国と北朝鮮を比較しながら「韓国は完全に国際的な(大量破壊兵器)非拡散活動に参加しているので、皆、韓国がその技術を使って何をしているのか知っているし、韓国は拡散防止ための明確なプロトコルに従い、拡散させないことを保障し、それが軍事目的ではないということを世界に確信させている。この点において、北朝鮮の行動とは全く異なっている」と答弁している。
記者が「だからこそ北朝鮮は脅威と感じるのではないか」とたたみかけると、報道官は「北朝鮮はそれを脅威と感じるべきではない。それは、北朝鮮も我々と同じような透明性をこの計画について確保すれば、ロケット発射の自由を享受できるからである。今の北朝鮮の行動はそれと全く違っている」と応じている。報道官は北朝鮮が核開発に関する「透明性」を確保すれば、つまり核開発をやめれば、韓国のようにロケット発射の自由を享受できると言いたいのであろう。
さらに記者は、北朝鮮の衛星は結局死んだのではないかとした上で、「そうであれば、北朝鮮によるロケット発射による脅威は減少したのではないのか」とたたみかけている。これに対し報道官は「北朝鮮はそれを完成させるための制裁で禁止された努力を続けているので、その見方には反対である」と応じている。
この質問をしている記者は、いつも執拗に食い下がるMattという記者であるが、やはり北朝鮮に対する制裁のダブルスタンダード的な側面に疑問を感じているのかもしれない。果たして米国は、北朝鮮が核放棄をしたとき、ロケット発射を認めるのであろうか。それとも、また別の理由を引き出して、それをさせないのであろうか。
これと関連して、日本の対応も実に奇妙である。北朝鮮のロケット発射に際しては、自衛隊のパトリオットPAC3を沖縄に配備して厳重な警戒態勢を取ったにもかかわらず、韓国のロケット発射に対しては、少なくとも公には、このような体制は全くとっていない。警戒態勢をとった理由は「国民の安全と財産を守るため」であったはずだが、その前段にあるのは「北朝鮮のミサイルの部品等が日本の領域に落下する可能性」があったからのはずだ。
今回、韓国が発射したロケットの飛行コースを調べようと、色々検索してみたが、信頼しうるデータは見つけることができなかった(韓国のロケット発射を総括する韓国教育科学技術部のホームページにも掲載されていないようだ。一方で、北朝鮮の飛行コースは同国が公開した図面を中心に山ほど出てくる)。そのため、韓国のロケットが日本の領域を通過したのどうかは分からないが、北に向かって発射はしていないので、日本の領域は通過しているはずである。韓国とて、過去に数回ロケット発射に失敗している国である。韓国が相対的に友好的な国であるかにかかわらず、同国のロケットが日本の領域を通過するのであれば「国民の安全と財産を守るため」に何らかの措置を講ずるべきではないのだろうか。これは、北朝鮮に対してではなく日本国民に対するダブルスタンダードであるといわざるを得ない。そうでないというのであれば、北朝鮮のロケット発射であれだけの警戒態勢を敷いたのは空騒ぎであり、無用に国民の不安を煽った責任は政府にある。それとも、韓国のロケット発射に対して警戒措置を講じなかったのは、韓国を刺激しないための外交的な判断だったとでも釈明するのであろうか。
安保理決議に反した北朝鮮のロケット発射を正当化するつもりはないが、何かが変な気がする。
ちなみに、種子島からのロケット発射は特に外国の領域を通過していないようだが(あるとすれば、米国の諸島地域か)。
JAXA, 「H-IIBロケット試験機 ロケットの飛行計画」
http://www.jaxa.jp/projects/rockets/h2b/zoom2_j.html