FC2ブログ

    労働党創建75周年「元帥様」演説に思うこと (2020年10月11日)

    10日、「朝鮮中央TV」での放送後ぐらいに、『労働新聞』に「演説」全文が掲載された。その内容については、下に訳出してある。

    「演説」を聞きながら書いたように、これまでの「元帥様」の「演説」としては、極めて異例だった。内容は「人民」に対する「感謝」と人民生活を向上させる誓いで80%以上を占めていた(印象として)。残りは「核抑止力」に関する部分であるが、「閲兵式」ではあるものの、軍事に関する発言は極めて少なく、軍を絡めても「自然災害復旧戦闘」や「防疫戦闘」についてであった。では、なぜこのような「演説」をしたのか考えてみる。

    まず、現実として、「元帥様」も言っているように恒常的な制裁に加えて、コロナと自然災害が北朝鮮を襲うという異例の年となった。その中で、これも「元帥様」言うように、様々な形で人民に苦労を強いてきたのであろう。一方で、これらの影響を受け、10月10日を目指して進めてきた記念碑的建造物、すなわち「平壌総合病院」や「カルマ海岸観光地区」を完工することができなかった。前者については、「元帥様」がほぼ完工した時点で視察したので完工に至るのかと思ったが、やはり「自然災害復旧戦闘」に建設にこれらの建設に動員された資材や労力を回したのであろう。もちろん、正しい判断だし、人民には歓迎されることは間違いない。

    さらに、人民軍人も「首都党員師団」も災害復旧の期限を「10月10日」としていた。過去記事にも書いたように、「朝鮮中央TV」で放送された現場の中には、あと数日で完工できないような現場も見られた。これについても、「元帥様」は責めることなく、人民軍人や「首都党員師団」のメンバーを労っている。彼らが「戦闘場」で「元帥様」の演説を聞いて、涙を流すシーンを紹介する放送は必ず放送されるはずだ。もちろん、その効果を狙っているわけではないが、「元帥様」も彼らに本当に苦労をさせていると思っているのであろう。ともあれ、目標が達成できなかったことは間違いない。

    「80日戦闘」が宣言されたが、これは、現実的には「10月10日」までに達成できなかったこれらの目標を達成するための猶予期間と見ることができると今回の「演説」を聞いて思った。一応、「5カ年計画」云々もその理由となっているが、80日で達成すべき課題の優先順序は災害復旧であり、党第8回大会を盛大に慶祝するのなら、平壌総合病院完工も良いであろう。

    「元帥様」の演説には、「防疫戦」と人民軍人を結びつける部分が何カ所かある。「人民軍人」はそもそも「防疫戦」の前線に立つ任務はないのだが、やはり国境警備、さらにはNLL付近で発生した韓国公務員射殺事件を意識しての発言だった可能性がある。

    一方で、韓国と交流ができていない理由をコロナと結びつけている点も注目される。これまで北朝鮮は、韓国との関係を遮断した理由として米国追従を挙げてきたが、今回はそれに言及することなく、理由をコロナとし、さらにコロナが終息すれば手を取り合うとまで言っている。この辺りに文在寅に送った「親書」の内容が反映されていると考えられる。

    ところで、「元帥様」の言葉にもあるように、見る限りではミサイルに限らず、人民軍の装備は向上しているような感じがする。この辺りは、軍事の専門家に分析を委ねたいが、素人目ではそのように思われる。ということは、世界の普通の人も朝鮮の普通の人も、今回の軍事パレードを見て、朝鮮人民軍の装備が向上したと思うことは間違いない。そして、「北極星-4ㅅ」を出しておき、クライマックスで「火星-16(仮称)」を見せている。「元帥様」が退場シーンでガッツポーズをr繰り返していたが、恐らくは「火星-16」に対するものであったのだろう。

    しかし、上に書いたように、その効果は「思わせる」ところにあるのであり、現時点で報じられている米国の反応などを見ると大成功と言える。つまり、「北極星-4」であれ、「火星-16」であれ、実験を一度もやっていないミサイルである。しばしば、北朝鮮が嫌いな「専門家」なる人々は、北朝鮮が新兵器を出してくると「モックだ」と騒ぐが、今回は、私もモックの可能性は十分にあると思っている。つまり、今回は米国に対して新兵器があることを示せば、二重の効果に期待できる。まず、トランプに有利に働く可能性だ。つまり、北朝鮮はこれらの新兵器があるいもかかわらず、発射はしていない、それはトランプとの約束を守っているからだという説明が可能になる。もちろん、反トランプ派は、それみたことか、北朝鮮など裏で何をやっているのか分からないと批判するだろうが、実験をやらずに完成させることができるミサイルなどない。これについては、オランダ国防大のミサイル学者も確言している。一方、バイデンに対する威嚇効果にもなる。もし、バイデンが当選し、北朝鮮をさらに強く圧迫するようになれば、北朝鮮が準備しているこうした新兵器を実際に発射する可能性を示すことができるからだ。ともかく、「元帥様」のガッツポーズまで含めて、「思わせる」ことにその目的を置いたのであろう。もちろん、朝鮮人民は素直に「元帥様」の言葉を受け、朝鮮の軍力は強大なったと、「元帥様」の業績を称えるであろう。

    今回の「閲兵式」はノーマスク、「社会的距離」が維持されることなく実施された。屋外とはいえ、大声で叫ぶ行為は感染の大きな要因となっていることは十分承知しているはずだ。もちろん、コロナに対する一定の警戒はあったようで、金日成広場に花を持った人民は動員されていたが、行進はなかった。「元帥様」が自分の声で「ありがとう」とまで言いながら、北朝鮮で「悪性ウィルス被害者が一人もなく」と言っているので、コロナの「被害者」は出なかったのだろうが、「被害者」が「感染者」なのか「死者」なのかは不明確だ。ともあれ、「死者」を出さなかったのであれば、北朝鮮のコロナ対策は大成功であったといえよう。もちろん、それが可能であったのは、そもそも北朝鮮が国際的にも国内的にも分断された国であることは繰り返し書いてきた。ともかく、「被害者が出なかったこと」が、「10月10日の名節」をコロナ感染対策なしの状態で慶祝できるようにしたとも言えよう。

    再び「人民」の話しに戻るが、朝鮮語を訳出しながら感じたのが、「人民」に対して非常に丁寧な尊敬語法を多く使っている点である。それが、訳出の中でどれほど上手に日本語化されているかはさておき、さらに驚いたのは、これまで人民が「元帥様」に使って来た表現をそのまま人民に適用している点である。さらに、人民に対する呼びかけなども、韓国大統領の演説と間違うよな感じの部分さえある。

    過去記事で紹介した、北朝鮮の流行とされる、明るい色系のスーツを着て登場した「元帥様」。グレーのスーツはdprknowのロゴのモデルになった時も着ていたが、久しぶりである。

    まだ他にも書きたいことがあったような気がするが、思い出したら追記することにする。

    <追記>
    書き忘れたことを思い出した。昨夜、寝る前にオランダ国防大のミサイル学者と「火星-16」のペイロードについてやり取りをした。彼のシミュレーションによると、「火星-15」は十分なペイロードを確保した上で、米東海岸に到達する能力を持っているのだから、「技術的には」、仮に「火星-16」の発射が成功したとしてもあまり意味がないと言っていた。もちろん、「政治的」には上に書いたように別の意味合いはあるのだが、その「技術的」実証があるのかないのかは、米大統領選の結果次第ということになろう。

    コメントの投稿

    非公開コメント

    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.

          dprknow

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    Visitors
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    QRコード
    QR