「20時報道」:党細胞代表会議招集、くず鉄収集支援、直流溶接機新開発 (2013年1月19日 「朝鮮中央TV」)
この日の「20時報道」では、全党党細胞秘書大会が平壌で開催されることになったことをトップニュースで伝えている。しかし、開催日については明確にしていない。「朝鮮中央TV」は、この日「我々の党細胞」という「記録映画」を放映した。この1994年に制作された映画は、昨年10月初旬にも放映されている。94年の制作なので、内容的にも古いが、朝鮮人民に「党細胞」の意味や意義を「教養」するための映画と思われる。
「<記録映画>我々の党細胞」
flv_000014360s.jpg)
Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13195
「20時報道」の報道内容と同じ『労働新聞』の記事「전당당세포비서대회가 혁명의 수도 평양에서 진행된다」
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-01-18-0002&chAction=D
党細胞秘書大会をこの時期に開催する意義は、全国各地の末端労働党組織の代表を平壌に招き金正恩さんの「恩情」を施すという意味と、彼らに労働党の新しい政策や方針について伝えるためであろう。党細胞の代表がどれほどの地位にある人なのかは分からないが、代表とはいえ自由に平壌に行くことができないような立場であれば、平壌行きは大きな「楽しみ」であるはずだ。
地方の朝鮮人民にとって平壌行きがどれほど大きなことであるのかということは、1月11日に放送された「<短幕劇>愛の島」を見ていても分かる。この「短幕劇」は、西海最前線に位置するソン島が舞台になっており、この島を視察に訪れた金正恩さんがこの島の学生たちを平壌に招いたという話が背景にある。ただし、ストーリーは自分のアコーディオン演奏能力を向上させるためにソン島を離れて本土(地名を行っているのだがよく分からない。平壌ではなく、本土の少し大きな学校のように思われる)の学校に行ったが、再びこの島に戻ってきた女子学生の故郷を捨てた苦悩と友人や家族との関係の中で進んでいく。アコーディオンの演奏能力を上げるために本土の学校に行ったというのは、別に悪いことではないはずなのだが、やはり表面的には郷土である島を愛する、内心ではこの学生に対して嫉妬する学友たちとこの学生のやりとりがおもしろい。
話がそれたが、ソン島の学生で平壌に招待された学生たちは、平壌に行ってやりたいことを色々という。しばらく前に見たので全ての希望は忘れてしまったが、「テレビで見た遊園地に行って遊具に乗ってみたい」というようなことも言っていた。そして、平壌に行くに際してどんな靴を履いていくのかという話もし、「普段履いている運動靴ではかっこわるいから、革靴を履いていくことにする」というようなことも言っていた。
ソン島に戻ってきた女子学生も招待されているのだが、自分は金正恩さんがソン島を訪問した時に島にいなかったばかりか、島を捨てた人間なので平壌に行く資格はないと言い、自分の革靴を平壌に招待された友達(だったか妹だったかは失念した)に貸してやるようなことも話している。
結末は、島を離れた学生が植樹した松の木に友達がこの学生の名前を書いた名札をぶら下げておいてくれ、それを金正恩さんが見て云々という話であったが、ともかくもみんな仲良く平壌旅行に出発することになったというストーリーである。
長々と書いたが、地方の朝鮮人民にとっては、平壌訪問というのがそれほど大きな意味があるものだと言うことをこの劇を見て感じた(で、記事にしようと思っていて今日に至った)。
花を持った島を離れた学生、島の学校の先生、島を離れた学生に嫉妬した学生。2人が仲直りする場面。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-01-11-21.flv
この「短幕劇」は、12月27日に放送され、1月11日に再放送された。ストーリーは、北朝鮮の劇としては教条的ではなく、なかなかおもしろいので、朝鮮人民から再放送を求めるリクエストが多かったのだろうか。この作品には、平壌演劇映画大学の学生たちが出演している。
話を「20時報道」に戻す。このところ、セポ台地の牧草地造成作業のニュースと並んで多いのが、くず鉄収集のニュースである。昨年、この時期のニュースをざっと眺めてみたが、この時期にくず鉄を収集するということは、特に年間行事ではないようである。
くず鉄を収集して製鉄所に運ぶトラック

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13197
鴨緑江にかかる中朝友誼橋を行き交うトラックの積み荷を見ていると、北朝鮮側からは石炭など鉱物を積んだトラック、中国側からは消費財を運ぶトラックと共にくず鉄を運ぶトラックが北朝鮮に向かって走っていく。
北朝鮮で鉄が不足していることの表れであるが、国内にも相当に使われていない鉄、つまりくず鉄が眠っておりそれを掘り起こしているようだ。恐らくは、様々な理由で事実上稼働していない企業所の老朽化した機械類などを全部回収して製鉄所に運んでいるようである。そうだとすると、こうした形ばかりの工場を潰してくず鉄を回収し、その鉄を用いて実用可能な機械を製作し新たな工場に設置するという経済改革の一環なのかもしれない。潰された工場の身の処し方が問題となるが、当面は突撃隊員にでもして建設工事に当たらせるのではないだろうか。もしかすると、工場を放置して「革新者」の気風を持てなかった工場のイルクン(幹部)たちも一緒に突撃隊送りになっているのかもしれない。
続いて、電子技術製品研究所が直流溶接機を新たに開発したというニュースを伝えている。
新型直流溶接機

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13197
製造現場

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13197
溶接機など作業を見たことこそあれ、自分では触ったこともない。しかし、このニュースでおもしろかったのは、新型溶接機自体の話よりも、北朝鮮の電力供給事情が分かったことである。研究所所長の崔デソンさんが新型溶接機の特性についていろいろと述べているが、その中で「この溶接機は家庭で使う単三220Vを使えば、三相をを使う一般の溶接機よりも効果的に溶接できる」と述べていることである。北朝鮮の家庭用電源の電圧が220Vであることは知っていたが、三相交流電源、いわゆる動力線があるというのが、当たり前の話かもしれないが、初めて聞いたのでおもしろかった。
家庭用の単三220Vでも効率的に稼働する

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13197
「<記録映画>我々の党細胞」
flv_000014360s.jpg)
Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13195
「20時報道」の報道内容と同じ『労働新聞』の記事「전당당세포비서대회가 혁명의 수도 평양에서 진행된다」
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-01-18-0002&chAction=D
党細胞秘書大会をこの時期に開催する意義は、全国各地の末端労働党組織の代表を平壌に招き金正恩さんの「恩情」を施すという意味と、彼らに労働党の新しい政策や方針について伝えるためであろう。党細胞の代表がどれほどの地位にある人なのかは分からないが、代表とはいえ自由に平壌に行くことができないような立場であれば、平壌行きは大きな「楽しみ」であるはずだ。
地方の朝鮮人民にとって平壌行きがどれほど大きなことであるのかということは、1月11日に放送された「<短幕劇>愛の島」を見ていても分かる。この「短幕劇」は、西海最前線に位置するソン島が舞台になっており、この島を視察に訪れた金正恩さんがこの島の学生たちを平壌に招いたという話が背景にある。ただし、ストーリーは自分のアコーディオン演奏能力を向上させるためにソン島を離れて本土(地名を行っているのだがよく分からない。平壌ではなく、本土の少し大きな学校のように思われる)の学校に行ったが、再びこの島に戻ってきた女子学生の故郷を捨てた苦悩と友人や家族との関係の中で進んでいく。アコーディオンの演奏能力を上げるために本土の学校に行ったというのは、別に悪いことではないはずなのだが、やはり表面的には郷土である島を愛する、内心ではこの学生に対して嫉妬する学友たちとこの学生のやりとりがおもしろい。
話がそれたが、ソン島の学生で平壌に招待された学生たちは、平壌に行ってやりたいことを色々という。しばらく前に見たので全ての希望は忘れてしまったが、「テレビで見た遊園地に行って遊具に乗ってみたい」というようなことも言っていた。そして、平壌に行くに際してどんな靴を履いていくのかという話もし、「普段履いている運動靴ではかっこわるいから、革靴を履いていくことにする」というようなことも言っていた。
ソン島に戻ってきた女子学生も招待されているのだが、自分は金正恩さんがソン島を訪問した時に島にいなかったばかりか、島を捨てた人間なので平壌に行く資格はないと言い、自分の革靴を平壌に招待された友達(だったか妹だったかは失念した)に貸してやるようなことも話している。
結末は、島を離れた学生が植樹した松の木に友達がこの学生の名前を書いた名札をぶら下げておいてくれ、それを金正恩さんが見て云々という話であったが、ともかくもみんな仲良く平壌旅行に出発することになったというストーリーである。
長々と書いたが、地方の朝鮮人民にとっては、平壌訪問というのがそれほど大きな意味があるものだと言うことをこの劇を見て感じた(で、記事にしようと思っていて今日に至った)。
花を持った島を離れた学生、島の学校の先生、島を離れた学生に嫉妬した学生。2人が仲直りする場面。

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2013-01-11-21.flv
この「短幕劇」は、12月27日に放送され、1月11日に再放送された。ストーリーは、北朝鮮の劇としては教条的ではなく、なかなかおもしろいので、朝鮮人民から再放送を求めるリクエストが多かったのだろうか。この作品には、平壌演劇映画大学の学生たちが出演している。
話を「20時報道」に戻す。このところ、セポ台地の牧草地造成作業のニュースと並んで多いのが、くず鉄収集のニュースである。昨年、この時期のニュースをざっと眺めてみたが、この時期にくず鉄を収集するということは、特に年間行事ではないようである。
くず鉄を収集して製鉄所に運ぶトラック

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13197
鴨緑江にかかる中朝友誼橋を行き交うトラックの積み荷を見ていると、北朝鮮側からは石炭など鉱物を積んだトラック、中国側からは消費財を運ぶトラックと共にくず鉄を運ぶトラックが北朝鮮に向かって走っていく。
北朝鮮で鉄が不足していることの表れであるが、国内にも相当に使われていない鉄、つまりくず鉄が眠っておりそれを掘り起こしているようだ。恐らくは、様々な理由で事実上稼働していない企業所の老朽化した機械類などを全部回収して製鉄所に運んでいるようである。そうだとすると、こうした形ばかりの工場を潰してくず鉄を回収し、その鉄を用いて実用可能な機械を製作し新たな工場に設置するという経済改革の一環なのかもしれない。潰された工場の身の処し方が問題となるが、当面は突撃隊員にでもして建設工事に当たらせるのではないだろうか。もしかすると、工場を放置して「革新者」の気風を持てなかった工場のイルクン(幹部)たちも一緒に突撃隊送りになっているのかもしれない。
続いて、電子技術製品研究所が直流溶接機を新たに開発したというニュースを伝えている。
新型直流溶接機

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13197
製造現場

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13197
溶接機など作業を見たことこそあれ、自分では触ったこともない。しかし、このニュースでおもしろかったのは、新型溶接機自体の話よりも、北朝鮮の電力供給事情が分かったことである。研究所所長の崔デソンさんが新型溶接機の特性についていろいろと述べているが、その中で「この溶接機は家庭で使う単三220Vを使えば、三相をを使う一般の溶接機よりも効果的に溶接できる」と述べていることである。北朝鮮の家庭用電源の電圧が220Vであることは知っていたが、三相交流電源、いわゆる動力線があるというのが、当たり前の話かもしれないが、初めて聞いたのでおもしろかった。
家庭用の単三220Vでも効率的に稼働する

Source: KCTV, http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?ptype=movie2&no=13197