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    丁世鉉前統一部長官、『聯合ニュースTV』で海外に蔓延する北朝鮮偽情報を批判 (2020年5月5日 「聯合ニュースTV」)

    5日、『聯合ニュースTV』に韓国の丁世鉉前統一部長官が出演し、今回の偽金正恩死亡説を流布した海外メディアを批判する話などをした。丁世鉉前長官の話を聞いていて、まさに我が意を得たりという気がしたので、同長官の話を訳出しておくことにする。

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    Source: 『聯合ニュースTV』、https://www.yonhapnewstv.co.kr/news/MYH20200505003000038?srt=l&d=Y

    アンカー:金委員長が公式席上に姿を現さなかった期間、色々な説が言われた。しかし、前長官は一貫して金委員長の復帰を展望していたが、その理由は何か。

    丁世鉉前長官:政府当局は、特に変わった動きはないと言っていたにもかかわらず、それを信用せず、外信の無責任な報道に踊らされた側面がある。韓国政府がそのような発表をする際は、自国の偵察機や偵察衛星で撮影や声を聞きながら動向を把握している。また、韓米間でそうした情報は確実に共有されている。メディアが当局の発表を信じないので、当局がメディアから信用を失ったのかと思った。しかし結局、メディアが間違っていたことが確証されたので、今後、北朝鮮の内部状況の情報に関しては、国民が政府の発表を信じるようになるのではないかと思っている。

    アンカー:金委員長が20日間なぜ姿を現さなかったのか。そして、どこで何をしていたのか。

    丁世鉉前長官:4月11日に政治局会議を主催し、その場で妹の金ヨジョンを政治局候補委員に選任した。そして、12日から最高人民会議が開かれたが、最高人民会議には現れなかった。北朝鮮の最高人民会議の代議員数は687人と多いので、(コロナ)感染の危険性があった。最近は、ソーシャル・ディスタンスという表現を使っているが、昔も疫病が発生すると王は非難し、国外に出た。だから、平壌市内にいたり、多くの人と接する行事には行かず、空気が良いところ、人が少ないところにしばらく留まることにしたはずだ。金委員長は元山が好きだ。元山で生まれ、幼少期はそこで育ったと言われている。元山は故郷のようなものだ。そして、そこに執権後に観光団地を開発し、カルマ空港も建設した。また、海岸にノンサシムリという有名な場所があり、別荘も建てたので、そこにいたのだろう。そこにいるということが、衛星でも確認され、専用列車も確認され、歩く姿も衛星で確認されたにもかかわらず、なぜ信じないのか理由が分からない。

    アンカー:金委員長も自分の死亡説や異常説を聞いていたからか、杖を使わず歩く姿や喫煙する姿が公開された。

    丁世鉉前長官:そのような報道を見たので、わざわざ杖を使わず歩いたり、喫煙する姿を見せたわけではないだろう。杖を使う必要がなかったから使わなかったのだし、喫煙する姿は、心臓系統に疾病があるのではと韓国側が心配したが、タバコを吸えるほど健康だということだが、それも誇示するために見せたわけではなかろう。喫煙は彼の習慣だ。その間、歩けないだの99%死亡しただのという話は消息筋を引用していたわけだが、それらは消息筋を明らかにできない無責任なものだった。消息筋がいたとしても、中国にいる接触者を通して携帯電話で「何か噂はないか」と尋ねた程度ではないだろうか。そのように尋ねられれば、情報源となっている人々は話を合わせて、「そうでうね、最近姿を見ないので、死んだのかもしれません」といった具合に答える。そして、電話が通じる地域は(中朝)国境地帯、それ以上遠くには電波が届かない。特に、平壌にある金正恩の宿所や元山の別荘を一般人が知るよしもない。つまり、消息筋としての資格がない人々と話をしている。また、北から来た言えば、その言葉を信じる人は多い。私の経験からしてもそうだ。私は77年から統一研究院で北朝鮮研究をし、南北会談にも参加した人物だ。それにもかかわらず、「お前は、ファン・ジャンヨプよりも詳しいのか」、「お前は、テ・ヨンホよりも詳しいのか」と言われた経験がある。北から来たとしても、北朝鮮という社会では、自分の領域以外の領域については知らない。上から降りてくる話しだけで、水平的な協力ができていない。韓国とは異なる。だから、北朝鮮で高官だった人で、自分の領域以外のことは全く知らない。

    アンカー:閉鎖されているので、西側は多くの報道をし、北朝鮮も沈黙を維持してきた。その理由は何か。

    丁世鉉前長官:「よく騒ぐいでいるな。どこまでとんでもないことを言い出すか見ていよう」だろう。だから、「心配してくれてありがとう」と現れる必要もない。そして北朝鮮は、対外宣伝・煽動をするとき、対南、対米で交渉をする場合、海外メディアを利用する方法についての研究を進めていると思う。このようにすれば、我々の太鼓に合わせて奴らを踊らせることができる、と。北の人がよく言うのは、「南側に政策があるなら、我々には対策がある」ということだ。今回、メディアが騒ぐのを見ていると、北朝鮮が適当に「消息筋」となっている在中朝鮮人にちょっとした話をすれば、大きく拡散してワシントンもひっくり返るんだと思ったことだろう。

    アンカー:場所と時期についてはどうか。5月1日にスンチョン燐肥料工場を選択した理由は何か。

    丁世鉉前長官:社会主義国では5月1日はメーデーという重要な日だ。スンチョン燐肥料工場は、実際、2017年に準備されていた。北朝鮮は肥料を十分に生産できなかったので、食糧増産が思い通りにできなかった。彼らは私に、米を10万トンくれるよりも、肥料を10万トンくれる方が我々にとっては遙かに役立つと言った。米は食べればなくなるが、肥料10万トンは30万トンの増産効果があるから、可能なら肥料が欲しいと言った。スンチョン燐肥料工場は、以前はスンチョン窒素肥料工場だった。私が98年に北京で南北肥料会談をした際、肥料に関する勉強もしてみたが、燐肥料は植物の実を大きくし、結実数を増やし、花をしっかりと咲かせる。肥料の三大要素として窒素、燐酸、カリウムがあるが、最も効果があるのが燐酸工場を3年近く努力した末に竣工し、5月1日に竣工式をすることにしたのではないか。それ以前に金正恩が登場すれば、登場に関する価値が落ちるからその価値と、今年からは食糧増産が円滑にできることを人民、労働者に示す大きな行事として計画したのであろう。

    アンカー:ウラン抽出可能性について、前長官は強く批判されているが。

    丁世鉉前長官:シンガポール朝米首脳会談とハノイ会談が結局決裂ししたが、米国が北朝鮮の寧辺にあるプルトニウム核施設だけを廃棄するのではなく、プラスα、そのαがまさに2002年から米国が北朝鮮に脅威を与え、圧迫してきた高濃縮ウラン施設の廃棄を要求したからだ。寧辺核施設の一角に高濃縮ウラン施設があることが最近、米国の衛星で確認された。平安北道のカンソンにも高濃縮ウラン施設があるというのが米当局の主張だ。高濃縮ウランを既に作っており、その施設があるのに、不幸にも北朝鮮で世界最大の埋蔵が発見された。世界最大の埋蔵量がある国で、低濃縮にすればプルトニウムが作れる燃料棒ができ、高濃縮すれば爆弾ができる兵器級ウランが出るのに、燐肥料工場で一部の肥料成分を抽出し、それを濃縮してウランを作るのか。サトウキビが大量に栽培されているキューバで、サトウキビの茎を買って砂糖を生産するような話だ。科学者が想像力を働かして言っているのだろうが、米国のシンクタンクというのは、基本的に米国の保守メディアもそうだし、政治家もそうだが、北朝鮮を悪魔化する習慣がある。だから、核交渉が中断している状況で、ウランを作る可能性が0.001%でもあれば、それを注視しながら圧迫や制裁を科して中断させなければならないということだ。

    アンカー:今回、金ヨジョン副部長の着座位置も注目されたが。

    丁世鉉前長官:(金ヨジョンは)2018年2月9日に特使として青瓦台に来た。金委員長の文大統領に対する親書を持って来たとき、その時、金永南委員長が団長であったにもかかわらず、金永南委員長が金ヨジョンに上席に座れと勧めた。しかし、金ヨジョンはそれを断り、金永南委員長を上席に座らせた。そのシーンはテレビに出た。今回、序列2位の崔龍海は、来る理由がなかったので来なかった。そして、序列3位の朴奉珠総理が来て演説をしているとき、金委員長のすぐ右横に金ヨジョンが座っていた。右側が最も上席だ。だから、朴奉珠以下、金ドフンも金正恩(訳者:金ヨジョンの言い間違えと思われる)が再び党に復帰し、実質的に金正恩に万が一のことがあった場合、彼の権力を継承せざるを得ない、つまり現実的にそう考えざるを得ないので、今から厚遇してのだと思う。有事の金ヨジョンの継承は、既に既成事実化されていると思う。

    アンカー:米ウォールストリートジャーナルが、米大統領選後まで朝米首脳会談はないとしているが、それについてはどう思うか。

    丁世鉉前長官:米国メディアには問題がある。根を知らずに、表面化した状況だけを見て話をするからだ。(金正恩が)再び現れたことと、朝米交渉が開かれないことは、全く関係ない。金正恩は、朝米首脳会談が大統領選挙が終わるまで開かれないと判断している。北朝鮮は、昨年2月28日、ハノイでノーディールで首脳会談が終わった後、米国が計算法を変えない限り、我々は新たな道に向かうと4月に公言した。8ヶ月待ったが計算法を変えないので新たな道に進むと宣言したわけだが、「新たな道」というのが、昨年12月28日から31日まで4日間開催された党中央委員会全員会議、これが新たな道を模索する重大な決心をする会議だった。基本的な出発点は、朝米交渉は当分の間、期待しない、米国が計算法を変える可能性はない、特に、トランプが時々親書を送り、悪口も言わないが、その言葉に誠実さはなく、ビューティフル・レター云々言っているが、何の意味もない、北朝鮮はこう考えている。だから今年3月5日、金ヨジョン党第1副部長が、職級からすれば到底言える立場ではないにもかかわらず、朝米首脳間の手紙交換や友人関係と朝米会談が進展するのは全く別個の問題だから自分たちは幻想を持っていないと言った。金委員長が20日間姿を現さなかったからと言って、朝米会談が開催される可能性が低くなったという話は、昨年末、今年初めに北朝鮮が出した新たな道が何かも分からず適当に言っていることだ。私は、今回の事態が、韓国メディアにとって外国メディアの報道を確認するリトマス紙になれば良いと思っている。

    アンカー:韓国では、脱北者出身の国会議員たちが、金委員長の健康異常説を云々した末、間違っていたので謝罪したが。

    丁世鉉前長官:それは、テ・ヨンホとチ・ソンホ議員だけが悪いとは言えない。韓国人の大部分が北から来た人の言うことは、北朝鮮内部事情に関する真実だという幻想を持っているからだ。北朝鮮離脱住民は、来やすいので多くが国境地帯かやってくる。だから、彼らは平壌の事情など分からない。北朝鮮は交通事情も悪く、情報流通手段も十分ではないし、携帯電話が数百万台あるというが、複数台持っている人がおり、大部分の人は持っておらず、あるにしても盗聴されているので自由に話せない。それなのに、韓国に来ると北朝鮮の事情を聞かれるので、聞かれたことに合わせて答える技術があるようだ。保守メディアに何かを聞かれれば、保守メディアが聞きたがっているような発言をする。そうすれば、出演料ももらえるのだから。だから、そうしている間に政治化していく。もちろん、そうではない脱北者もたくさんいる。韓国でのもう一つの誤解は、高い地位にいた人は全部知っているだろうということだ。高い地位にいた人も実際は知らないという例を話そう。97年4月に、ファン・ジャンヨプ労働党秘書が北京経由でソウルに来た。来て直ぐ、国家安全企画部で私も含む4人の北朝鮮専門家を招いて話を聞いた。その時、ファン・ジャンヨプは「北側は既に核兵器を持っている」と言った。我々は「実験もしないで核兵器を持てるのか、常識に反している」と言ったところ、「軍需担当秘書から聞いたのに信じられないのか」と言うではないか。ファン・ジャンヨプは思想秘書から国際秘書に降格されたので脱北したのだが、軍需秘書は国際秘書にそういう話をして、プロパガンダで交渉力を高めるために外交に使わせようとしている。我々は、皆、ファン・ジャンヨプは南側が何も知らないと思い、デタラメを言っているという話をした。テ・ヨンホさんが書いた本も読んだのだが、まるで金正恩の一挙一動を横で見ていたように書いている。英国に10年もいた人が。

    アンカー:トランプは、金委員長が元気に復帰したから嬉しいというメッセージを出しているが、今後の朝米関係の展望は。

    丁世鉉前長官:トランプ大統領は、金委員長がリングの外に出ないようにそういう術策を使っている。金委員長が第3回首脳会談(訳者:板門店はカウントしていない)に対する期待を捨てなければ選挙にプラスになるが、ICBMでも発射しようものなら、トランプにとっては選挙での打撃となる。それを防ぐためのリップサービスだ。トランプがそういったからと、金正恩が感動するのかと言えば、そんなことは全然ない。トランプの言葉は無味乾燥で、その中には真実はなく、相手の関心を引いて、自分が得をしようとする、商売上で使う言葉だと判断しているはずだ。だから、トランプが金正恩がいる部屋の窓辺でセレナーデを歌っても、金正恩は窓を開けてくれないだろう。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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