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    崔ソンフィ、平壌で外国人記者と緊急記者会見:ポムペオとボルトンを非難、「元帥様」声明準備、ポムペオ「北朝鮮の対話継続の意思表明」、記者会見 (2019年3月15日 「TASS」)

    15日、崔ソンフィが平壌で外国人記者を招いて緊急記者会見を開催した。このニュースは『聯合ニュースTV』を通して聞いていたのだが、北朝鮮メディアが報道するまで待とうと記事を書くのを止めていた。しかし、今朝に至るまで出てこないので、TASSを引用しながら崔ソンフィの発言まとめて、さらにそれを受けてのポムペオの発言も見ておくことにする。

    崔ソンフィ:
    我々は(ハノイ首脳会談で提示された)米国の要求を受け入れる意思もないし、そのような交渉に応じるつもりもない。
    "We have no intention to yield to the US demands [put forward at the Hanoi summit] in any form, nor are we willing to engage in negotiations of this kind,"

    「米国は米国側にあり」彼らの政治的利益を得ることに汲汲とし、結果を出すことに誠意を持って臨まなかった。
    "were too busy with pursuing their own political interests and had no sincere intention to achieve a result."

    「全員会議でポンペオ長官とボルトン補佐官が」敵対と不信の雰囲気を造成し、北朝鮮と米国の最高指導者の建設的な交渉を妨害した。
    "created the atmosphere of hostility and mistrust and, therefore, obstructed the constructive effort for negotiations between the supreme leaders of North Korea and the United States."
    その結果、首脳会談は重大な結果を出すことなく終わってしまった。
    "As a result, the summit ended with no significant result,"

    副外相によると、北朝鮮の指導者金正恩は、成功しなかったハノイ会談を受けて、今後、北朝鮮がどのような方向に進むのかについての公式声明をまもなくだすという。
    According to the deputy minister, North Korean leader Kim Jong Un is set to make an official statement soon to announce his country’s further actions in the wake of the unsuccessful Hanoi summit.

    TASS, Pyongyang set to break off denuclearization talks with Washington — diplomat,
    http://tass.com/world/1048754 http://tass.com/world/1048754

    「米国の要求を受け入れる意思もないし、そのような交渉に応じるつもりもない」という見解は、既に過去記事で紹介したuriminzokkiriに掲載された記事で「我々の非核化措置とそれに相応した部分的制裁解除要求は、現段階での米国政府の立場と要求も充分に反映したものなので、これよりも良い方案はあり得ない。」という主張と実質的に同じである。

    「彼らの政治的利益を得ることに汲汲とし、結果を出すことに誠意を持って臨まなかった」というのも、まさにハノイ会談期間にコーエンが議会証言をしたことが、ハノイ会談に大きな影響を及ぼしたことについて述べているものであり、uriminzokkiriの同時記事に書かれていた「米当局者は、政治的反対派の不当で破廉恥な主張に振り回されるのではなく、主権と度胸を持って朝米関係の新たな歴史を開拓し、世界の平和と安全を願う人類の期待に付合する道へと進まなければならない」に繋がる発言である。

    そして、「元帥様」とトランプは「いい者」、ポムペオとボルトンを「悪者」にした構図を描き、「北朝鮮と米国の最高指導者の建設的な交渉を妨害した」としているところも、金正恩-トランプ関係は良好で、お互いに関係改善に向けた強い意志があるという認識を示した言葉である。ボルトンは常に悪者であるが、今回はボルトンだけではなくポムペオも悪者にしているところは興味深い。恐らく、ボルトンだけの悪口を言うよりも「いい者」トランプ対「悪者」ポムペオ・ボルトンという構図を作っておいた方が無難だと考えたのであろう。ポムペオについては、ほとんどの場合「いい者」扱いになっているが、過去に「平壌で手を差し出し、ワシントンで悪口を言っている」と非難したことがある。どうやら、ポムペオは実際そのように行動しているし、北朝鮮から見ればある程度「悪口」を言っても大丈夫なぐらい、ある意味、信頼できる相手になっている可能性がある。その意味では、ポムペオは柔軟に動くことができる上に、北朝鮮と話ができる朝米交渉における重要な人物となっているに違いない。

    TASSは崔ソンフィの発言を引用していないので分からないが、「元帥様」がこうした状況について「声明」を本当に出すのであれば、注目に値する。しかし現実的には、「元帥様」が自ら「失敗」を認める可能性は低く、繰り返し書いているように、「失敗」を認める以上、その責任が全的に米国にあるとし、相手方を強く非難しなければならないので、それを「元帥様」の言葉としてやってしまえば、朝米交渉を挫折させることにも繋がる。ましてや、再整備が進められていると言われる「西海衛星発射場」から人工衛星ロケットでも発射すれば、トランプが言う「ミサイルも飛んでいない」という状況を壊すことになり、ますます状況は悪化する。したがって、「元帥様」がなんらかの声明を出す可能性があるにしても、「朝鮮半島の完全な非核化」や「対話継続」を前面に出しつつ、米国内の反トランプ勢力を攻撃するものになるのではないかと予想される。

    ポムペオの記者会見の様子は、Fox NewsがYouTubeに掲載している。8分30秒ごろから北朝鮮関連。

    Source: Fox News, YouTube, 2019/03/15

    ポムペオは、記者の質問に答える形で崔ソンフィの記者会見について次のように述べている。

    *************
    シンガポール会談以降も北朝鮮に対する、国際的な制裁は続いている。制裁が要求しているのは、北朝鮮の完全な非核化、ミサイルやその他の兵器も含む全てのWMD計画放棄が、国連安保理により課された制裁解除の条件である。

    両首脳は非核化のための会談をシンガポールとハノイでした。そして彼らは、核・ミサイル実験の中断を約束した。我々は、彼ら他の対話の継続を願っている。崔ソンフィの発言は、必ず交渉が継続する可能性について述べたものであり、それはトランプ政権が望んでいることでもある。ハノイでトランプ大統領は、彼らにこちらの要求レベルを高めることだけをしたのではなく、我々の対応措置のレベルも高めるという提案をした。

    金委員長が核・ミサイル実験中断の声明を出す可能性について、このことは明確に言うことができる。ハノイで、金委員長は大統領に直接、彼は核実験もミサイル実験の再開もしないと自分の言葉で約束した。我々は、彼がその約束を破るとは考えていない。

    崔ソンフィが私が「敵対と不信ムードを造成した」と言っているが、それは間違っている。私と金ヨンチョルとの関係はとてもプロフェッショナル(実務家同士の関係)で、私は彼と北朝鮮との対話を進めていくことについて詳細な話をした。それに、私に対する非難は今回が初めてではない。その後も、私は彼らとプロフェッショナルな関係を維持しており、崔ソンフィの発言はそれに影響を及ぼすものではない。
    **************

    ポムペオの発言は、崔ソンフィの記事を書いてから聞いたのだが、基本的には私が上に書いたことと同じ内容であると判断できる。特に、最後の部分で「今回が初めてではない」といいながら、金ヨンチョルとの「プロフェッショナル」な関係は変わらないとしている点も、私が上に書いたことと通じている。やはり、朝米間にはこの間、トランプ-金正恩間の象徴的な「とても良い関係」以外にも、実務レベルでの機能的関係が構築されてきているような気がする。

    そして、これも上に書いたことであるが、「元帥様」が「核・ミサイル実験中断」という約束を破れば、シンガポール以来続いてきた朝米関係は大きく後退するか、さもなくば破綻することになる。朝米共にそれは願っていないはずである。

    ポムペオは、ハノイで自分たちが出した要求は米国の要求ではなく、「国連安保理」の要求だと責任回避をするような発言をしている。この発言を「米国は安保理の要求に準じた行動をする」と捉えるのか、「安保理の要求は要求として、米国は米国としての要求をする」と捉えるのかは現時点では分からない。また、一方で「要求レベルを高めたが、対応措置のレベルも高めた」と言っている。今回の決裂は、寝耳に水で全員会議でその紙を提示された「最高領導者同志」が即断をしなかったことによるものであろう。もちろん、「最高領導者同志」の「卓越した政治力」をもってしても、そのような決断を直ぐにできるはずはない。米国も、国内的状況に加え、「最高領導者同志」の実際の決断能力を総合的に試す目的があったのかも知れない。

    崔ソンフィが外国人記者を相手に、記者会見の動画を見ることができていないので質問を受け付けたどうかは分からないが、こうした記者会見を開催したということも注目しておく必要がある。そもそも、北朝鮮外務省は私の記憶では記者会見などやったことがなく、「朝鮮中央通信」などを通した「声明」や「談話」を出すのが常である。軍事関係では、「声明」などを軍関係者が一方的に読み上げる形のテレビ報道はあったが、ともかく、ハノイ当地での李ヨンス、崔ソンフィによる記者会見以降、「記者会見」なるものを行うようになったことは注目に値する。北朝鮮の「記者会見」は、ウォムビアのように北朝鮮に拘束されている「罪人」の「告白」の場としてこそ使われてきたが、真の意味で外交的なメッセージを発する場としては使われていなかった。これも、北朝鮮が「普通の国」になろうとしていることを示す一つの現象ではないだろうか。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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