李ヨンホ、崔ソンフィ、ハノイで記者会見:トランプ会見の内容と一致か、硬軟ダブル路線、日本の立場 (2019年3月1日 「PRESS TV」)
1日、PRESS TVが、ハノイで行われた第2回朝米会談後の李ヨンホと崔ソンフィによる記者会見を報じた。
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李ヨンホ:我々が非核化措置を取っていくことで、より重要な問題は、本来、安全保障問題であるが、米国が未だに軍事分野での措置を取るのが負担になると考え、部分的制裁解除を相応措置として提起しました。今回の会談で、米国の憂慮を減らすために、核実験と長距離ロケット発射を永久に中止するという確約も文書で提供する用意があることも表明しました。この程度の信頼造成過程を経れば、今後、非核化過程はさらに早く進展することでしょう。
しかし、会談過程で米国側は、寧辺地区の核施設廃棄以外にもう一つしなければならないと最後まで主張し、したがって米国が我々の提案を受け入れる準備ができていないということが明白になりました。
現段階で、我々が提案したものよりも、もっと良い合意が達成できるのか、この場で述べるのは難しいです。このような機会すら、再びあることが困難かも知れません。完全な非核化への路程には、必ずこうした初段階の工程が不可避であり、我々が出した最良の方案が実現される過程を必ず経なければなりません。
我々のこうした原則的立場には、今後も変化はないであろうし、今後、米国が交渉を再び提起してくる場合も、我々の方案に変化はないでしょう。
以上です。
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Source: PRESS TV, 2019/03/01
トランプが記者会見で言っていたことと相反する部分があるような感じもするが、全体の脈略からすれば、一致するのかも知れない。
まず、トランプは「北朝鮮が制裁の完全解除を求めた」としているが、李ヨンホは「部分的制裁解除」と言っている。これについては、「寧辺核施設廃棄」で「部分解除」を北朝鮮が求めたのに対し、米国が「もう一つ」を要求した結果、北朝鮮がならば「完全解除」をと応じたと考えられる。
こうしたことからすると「プラスα」あるいは「もう一つ」の部分が、今回の朝米会談のネックになっており、この部分についてトランプと「元帥様」のトップ会談で妥結させることを予定していたのであろう。ところが、双方がこの点について引き下がらず、結局のところ、準備されていた「ハノイ宣言文書」も署名されずに終わってしまったということだろう。
ポムペオも北朝鮮との次の会談までには「時間がかかる」と述べたという報道(『聯合ニュースTV』、ソースは未確認)もあり、李ヨンホも同じことを述べていることからして、外交当局の認識としては、「厳しい」ということなのであろう。
ただ、今後の朝米会談に関して、一つ前の記事に書いた「元帥様」の認識とは明らかに違いがあり、この辺りは、硬軟ダブル路線米国と交渉をしていくつもりであろう。その系では米国も同様で、拡大会談の席にボルトンを同席させ、恐らくは、彼が中心になって北朝鮮に対する強い要求を出したのであろう。トランプの記者会見ではボルトンに関する言及はなかったが、これまでの構図からすると、北朝鮮から見て、ボルトンは「悪者」、トランプとポムペオは「いい者」という構図ではなかったのかと予想される。
もう一つ注目しておくべき点は、北朝鮮が「発射」を「永久に中止」しようとしていたのが、「長距離ロケット」であるという点である。この辺り、明らかに米国が発射中止を求めているのが米国にとっての脅威となる「火星-15」など、大陸間弾道弾あるいは長距離ミサイルであり、中短距離の弾道ミサイルは含まれていないということになる。日本は、こうした米国の意図をはっきりと認識すべきだ。そのようなことからすれば、拉致問題など散歩をしながら軽く触れられたか、そうでなければ全く触れられなかったと考えるのが順当である。
朝米関係が完全に断絶してしまえば、北朝鮮は日本に接近する可能性はあるが、現状では、北朝鮮は米国との交渉を続ける意志があり、それが妥結するまで、日本が出ていく幕はないであろう。残念ながら、今回の結果を持って、拉致問題解決の道はさらに遠くなったと言わざるを得ない。
もう一つ書いておくならば、昨日のトランプの記者会見で、彼がかねてから表明してきたように、朝米関係が改善すれば、「日本と韓国から支援」があると述べている。日本は「人道支援も含めて金を出さない」と米側に伝え、米側も「理解」を示したという報道があるが、トランプは全く「理解」していないことが明らかになった。朝米関係では、文字通り、日本は「蚊帳の外」に置かれていると言える。
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李ヨンホ:我々が非核化措置を取っていくことで、より重要な問題は、本来、安全保障問題であるが、米国が未だに軍事分野での措置を取るのが負担になると考え、部分的制裁解除を相応措置として提起しました。今回の会談で、米国の憂慮を減らすために、核実験と長距離ロケット発射を永久に中止するという確約も文書で提供する用意があることも表明しました。この程度の信頼造成過程を経れば、今後、非核化過程はさらに早く進展することでしょう。
しかし、会談過程で米国側は、寧辺地区の核施設廃棄以外にもう一つしなければならないと最後まで主張し、したがって米国が我々の提案を受け入れる準備ができていないということが明白になりました。
現段階で、我々が提案したものよりも、もっと良い合意が達成できるのか、この場で述べるのは難しいです。このような機会すら、再びあることが困難かも知れません。完全な非核化への路程には、必ずこうした初段階の工程が不可避であり、我々が出した最良の方案が実現される過程を必ず経なければなりません。
我々のこうした原則的立場には、今後も変化はないであろうし、今後、米国が交渉を再び提起してくる場合も、我々の方案に変化はないでしょう。
以上です。
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Source: PRESS TV, 2019/03/01
トランプが記者会見で言っていたことと相反する部分があるような感じもするが、全体の脈略からすれば、一致するのかも知れない。
まず、トランプは「北朝鮮が制裁の完全解除を求めた」としているが、李ヨンホは「部分的制裁解除」と言っている。これについては、「寧辺核施設廃棄」で「部分解除」を北朝鮮が求めたのに対し、米国が「もう一つ」を要求した結果、北朝鮮がならば「完全解除」をと応じたと考えられる。
こうしたことからすると「プラスα」あるいは「もう一つ」の部分が、今回の朝米会談のネックになっており、この部分についてトランプと「元帥様」のトップ会談で妥結させることを予定していたのであろう。ところが、双方がこの点について引き下がらず、結局のところ、準備されていた「ハノイ宣言文書」も署名されずに終わってしまったということだろう。
ポムペオも北朝鮮との次の会談までには「時間がかかる」と述べたという報道(『聯合ニュースTV』、ソースは未確認)もあり、李ヨンホも同じことを述べていることからして、外交当局の認識としては、「厳しい」ということなのであろう。
ただ、今後の朝米会談に関して、一つ前の記事に書いた「元帥様」の認識とは明らかに違いがあり、この辺りは、硬軟ダブル路線米国と交渉をしていくつもりであろう。その系では米国も同様で、拡大会談の席にボルトンを同席させ、恐らくは、彼が中心になって北朝鮮に対する強い要求を出したのであろう。トランプの記者会見ではボルトンに関する言及はなかったが、これまでの構図からすると、北朝鮮から見て、ボルトンは「悪者」、トランプとポムペオは「いい者」という構図ではなかったのかと予想される。
もう一つ注目しておくべき点は、北朝鮮が「発射」を「永久に中止」しようとしていたのが、「長距離ロケット」であるという点である。この辺り、明らかに米国が発射中止を求めているのが米国にとっての脅威となる「火星-15」など、大陸間弾道弾あるいは長距離ミサイルであり、中短距離の弾道ミサイルは含まれていないということになる。日本は、こうした米国の意図をはっきりと認識すべきだ。そのようなことからすれば、拉致問題など散歩をしながら軽く触れられたか、そうでなければ全く触れられなかったと考えるのが順当である。
朝米関係が完全に断絶してしまえば、北朝鮮は日本に接近する可能性はあるが、現状では、北朝鮮は米国との交渉を続ける意志があり、それが妥結するまで、日本が出ていく幕はないであろう。残念ながら、今回の結果を持って、拉致問題解決の道はさらに遠くなったと言わざるを得ない。
もう一つ書いておくならば、昨日のトランプの記者会見で、彼がかねてから表明してきたように、朝米関係が改善すれば、「日本と韓国から支援」があると述べている。日本は「人道支援も含めて金を出さない」と米側に伝え、米側も「理解」を示したという報道があるが、トランプは全く「理解」していないことが明らかになった。朝米関係では、文字通り、日本は「蚊帳の外」に置かれていると言える。