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    小倉紀藏編『新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮 市民経済と大衆文化が明らかにする真実の姿』(角川書店、2012年8月)

    頂いたコメントに対するお返事として書いていたのだが、記事にしておいた方が良いと思うので、こちらに書くことにする。

    少し前であるが、小倉紀藏編『新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮 市民経済と大衆文化が明らかにする真実の姿』(角川書店、2012年8月)という本が出版された。最近届いたので、昨日「はじめに」の部分だけ読んだのだが、世の中には「同志」がいるものだと思った。

    何が「同志」かというと、マスコミ報道のあり方に対する小倉さんの考えもさることながら、下記の記述である。

    ++++++++
    北朝鮮を訪問する日本人は年間にのべ数百人しかいない。このような状態のとき、「おれだけが北朝鮮の本当の姿を知っている」という「特権層」が出現し、その人たちが提供するかたよった像が権力を持って流通するようになる。(前掲、小倉、p.10)
    ++++++++

    小倉さんは、自ら北朝鮮を訪問し、自分の目で確認することで、このような状況を打破しようと考えているようであるが、私が北朝鮮がインターネットで発する情報を基に拙ブログを書き出したのも、まさに「特権層」にチャレンジしてみようという考えがあったからである。つまり、「朝鮮中央TV」視聴し、「労働新聞」や「朝鮮中央通信」の記事を読むなどということが経済的にも時間的にも大変困難であったときは、こうしたソースに接することができる「特権層」がそこからえら得る情報を、善意か悪意かという意図にかかわらず選別し、分析・報道していた。しかし、北朝鮮がネット配信を開始したことにより、ソースに直接接し、自ら選別したものを分析できるようになったことは、北朝鮮流に言えば「一大事変」といえる。

    誤解を招かぬように書いておくが、「特権層」による研究の中には、尊敬に値する素晴らしい研究も多くあり、それが日本ばかりか世界における北朝鮮研究に大きく貢献してきたことは間違いない。しかして、状況が変わった今、私のような新参者が「お手軽情報、しかしてオリジナル・ソース」を利用しながら、「特権層」ならずも大幅に遅れてでもレースに参加できるようになったとのはやはり「一大事変」である。

    実をいえば、私も2010年に北朝鮮を訪問するまでの北朝鮮を見る目は、小倉さんが批判する日本のマスコミのそれと大差はなかった。さらにいえば、そもそも情報を得ることもできない国なので、研究対象にもならないと勝手に決めつけて諦めていた。ところが、2010年の訪朝で案内員ドンムたちと大同江ビールを飲みながら夜ごとカラオケで話をし、私の中にあった無機的な北朝鮮観が有機的な北朝鮮観へと一転した。この国にも人々が生活しているのだと。「千万軍民」ではなく、普通の人々がである。

    奇しくも、その翌年ぐらいからであろうか、北朝鮮がネットでの配信を拡充し始めた。そして、2011年12月に金正日さんが死去し、金正恩体制が発足した。若いリーダーは何を考え、北朝鮮をどうしようと思っているのか。そんなことを追ってみようと、日々の報道をチェックして見落とされがちな出来事も記録しておこうと拙ブログを書き始めた。

    ブログを書いていておもしろいのは、世の中の人々が北朝鮮のどのような出来事について関心を持っているのか何となく分かることである。拙ブログを掲載しているFC2には「アクセス情報解析」という付加機能があり、どういう記事が読まれているのかということが分かるようになっている(個人情報など全く分からないのでご心配なきよう)。最近では、金ハンソルさんに関する記事が比較的読まれているようであるが、マイナーな話題である「ジャンボタニシ」の記事なども時々読んで頂いているようである。また、北朝鮮で洪水や台風による被害があったときには、それに関する記事もかなり読まれていた。もしかすると、小倉さんが心配するほど日本における北朝鮮認識も悲観的ではないのかもしれない。

    以上、小倉さんの著書に絡めて色々書いてきたが、上にも書いたとおり、同書は「はじめに」しか読んでいない。最後まで読むと同書にはもっと他のことが書かれているのかもしれないが、「はじめに」に強く同感したので、どうしてもこの記事が書きたかった。いずれ最後まで読むが、間違いがあれば「追記」で訂正することにする。

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    No title

    私も小倉さんの本に深く共鳴しました.一部の「研究者」だけが(それもごくわずかな分野です)マスコミに注目されている現状,特に北朝鮮については,ただでさえ「研究者」が少ないゆえこそ,広くごく一般の人たちもネットで彼の国へ目を向けることで,きっと何かが進んでいくような気がしています.もちろん「研究者」の研究のほとんどには傾聴すべきものがあると私は思っています(実は私も研究者です).ただ,他地域,他国に比して北朝鮮へは研究対象分野が狭すぎる状況だと考えています.軍事,経済,政治…いずれも最重要であることは否定しませんが,そこに「ごく普通の人々が生活している」ことが抜けているような感じを覚えてしまうくらい,社会生活や文化について研究がされていないことが私は問題だと思っています.ぜひこのブログでもそのような広がりが増えていけば…と切に願っています.

    本・歌・学会

    コメントありがとうございます。既に小倉さんの著書をご覧になったようですね。今日、小3子供が「朝鮮は一つ」のメロディーを口ずさんでいました。私が学生少年宮殿で撮影した「朝鮮は一つ」をピアノで弾く少女のビデオをおもしろがって何回も見ていたので、覚えてしまったのだと思います。「パルコルム」も覚えてしまったようで、親の影響とはいえ何とも・・・

    もし、11月上旬に早稲田大学で行われる「現代韓国朝鮮学会」に来られるようでしたら、お会いできるのではないかと思います。ブログは本名で書いておりますので、よろしければお声がけ下さい。

    > 私も小倉さんの本に深く共鳴しました.一部の「研究者」だけが(それもごくわずかな分野です)マスコミに注目されている現状,特に北朝鮮については,ただでさえ「研究者」が少ないゆえこそ,広くごく一般の人たちもネットで彼の国へ目を向けることで,きっと何かが進んでいくような気がしています.もちろん「研究者」の研究のほとんどには傾聴すべきものがあると私は思っています(実は私も研究者です).ただ,他地域,他国に比して北朝鮮へは研究対象分野が狭すぎる状況だと考えています.軍事,経済,政治…いずれも最重要であることは否定しませんが,そこに「ごく普通の人々が生活している」ことが抜けているような感じを覚えてしまうくらい,社会生活や文化について研究がされていないことが私は問題だと思っています.ぜひこのブログでもそのような広がりが増えていけば…と切に願っています.

    No title

    学会,もしお会いできればとてもうれしいです.ちょうど参加を思案中でした.北朝鮮関係の分科会がないのは他学会にはない「朝鮮半島地域に特化した点」から見ても寂しいものですね.
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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