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    金正恩、「新年の辞」、2018年と2019年を比較 (2019年1月1日 「労働新聞」)

    『労働新聞』HPがどうなったのかと見ていたら、2018年1月1日まで記事を遡れる状態になっていた。なので、昨年の「新年の辞」も読めるのだが、2019年の「新年の辞」と並べて見ていくことにする。

    1.「南側同胞」に対する呼びかけの変化
    2018年
    私は、祖国の統一のために闘争している南側の同胞と海外同胞、侵略戦争に反対し我々の正義の偉業に固い連帯感を送ってくれた世界の進歩的人民と友人に新年の挨拶を送ります。
    나는 조국의 통일을 위하여 투쟁하고있는 남녘의 겨레들과 해외동포들, 침략전쟁을 반대하고 우리의 정의의 위업에 굳은 련대성을 보내준 세계 진보적인민들과 벗들에게 새해인사를 보냅니다.

    2019年
    私は民族の和解と団合、平和繁栄の新たな歴史を書いていくために、我々と気持ちを同じにした南側の同胞と海外同胞にあたたかい新年の挨拶を送ります。
    나는 민족의 화해와 단합, 평화번영의 새 력사를 써나가기 위하여 우리와 마음을 같이한 남녘겨레들과 해외동포들에게 따뜻한 새해인사를 보냅니다.

    「祖国の統一のための闘争」から「民族の和解と団合、平和繁栄の新たな歴史を書いていく」南側の同胞になっており、北南関係の大きな改善が繁栄されている。

    2.外交成果
    2019年
    私は、社会的進歩と発展、世界の平和と正義のために努力している各国の首班と友人の事業で成果があることを願います。
    나는 민족의 화해와 단합, 평화번영의 새 력사를 써나가기 위하여 우리와 마음을 같이한 남녘겨레들과 해외동포들에게 따뜻한 새해인사를 보냅니다.

    2018年にはなかった「各国の首班」に対する文言が2019年には入っている。2018年の外交成果の反映だろう。

    3.2017年総括と2018年総括の違い
    2018年
    2017年は、自力自強の動力で社会主義強国建設に不滅の里程標を刻んだ英雄的闘争と偉大な勝利の年でした。
    2017년은 자력자강의 동력으로 사회주의강국건설사에 불멸의 리정표를 세운 영웅적투쟁과 위대한 승리의 해였습니다.

    2019年
    2018年は我が党の自主路線と戦略的決断により、対内外情勢で大きな変化が起こり、社会主義建設が新たな段階に入った歴史的な年でした。
    2018년은 우리 당의 자주로선과 전략적결단에 의하여 대내외정세에서 커다란 변화가 일어나고 사회주의건설이 새로운 단계에 들어선 력사적인 해였습니다.

    やはり対外活動が強調されており、2017年が「社会主義<強国>建設」だったのに対し、2018年は「社会主義建設」と「強国」が抜けている。同様に「自力自強」が「自主路線」となっており、「戦略的決断」により、そして言ってはいないが「核武力完成」により、「強」には触れないようにしているのであろう。

    「核武力完成」は、「自主権守護と平和繁栄の堅固な保障を自分の手で作り(자주권수호와 평화번영의 굳건한 담보를 제손으로 마련하고)」、「自衛的国防力を持った我が共和国の威力(자위적국방력을 가진 우리 공화국의 위력)」などという表現で表している。

    3.対立から平和へ
    2018年
    昨年、米国とその追従勢力共の反共和国孤立圧殺策動は極度に達し、我々の革命は類例のない厳酷な挑戦に直面することになりました。
    지난해 미국과 그 추종세력들의 반공화국고립압살책동은 극도에 달하였으며 우리 혁명은 류례없는 엄혹한 도전에 부닥치게 되였습니다.

    2019年
    我々の主導的で積極的な努力により、朝鮮半島で平和へと向かう気流が形成され・・・
    우리의 주동적이면서도 적극적인 노력에 의하여 조선반도에서 평화에로 향한 기류가 형성되고・・・

    「米国とその追従勢力共の孤立圧殺策動」は2018年も続いていたわけだが、それ以上に「朝鮮半島で平和へと向かう気流の形成」を評価している。そして、そうした「気流を形成した」「共和国の国際的権威が高まり続け(공화국의 국제적권위가 계속 높아가는)」ていると、再び外交成果を強調している。

    4.核武力から自立経済の土台へ
    2018年
    昨年、我が党と国家と人民が戦い取った特出した成果は、国家核武力完成の歴史的大業を成就したことです。
    지난해에 우리 당과 국가와 인민이 쟁취한 특출한 성과는 국가핵무력완성의 력사적대업을 성취한것입니다.

    2019年
    昨年、人民全てが経済建設に総力を集中することに関する党の新たな戦略的路線貫徹に立ち上がり、自立経済の土台を一層強化しました。
    지난해에 전체 인민이 경제건설에 총력을 집중할데 대한 당의 새로운 전략적로선관철에 떨쳐나 자립경제의 토대를 일층 강화하였습니다.

    2018年の「新年の辞」では、「米国本土全域が我々の核打撃射程圏内にあり(미국본토전역이 우리의 핵타격사정권안에 있으며)」などと「核武力完成」に関する部分が長く続くが、2019年には直ぐに経済問題に入っている。

    5.軽工業部門発展への自負
    2018年
    紡績工業、靴と編み物、食料工業をはじめとした軽工業部門の多くの工程で主体化の旗を高く掲げ、我々の技術、我々の設備で様々な生産工程の現代化を力強く展開し、人民消費品の多種化、多様化を実現し、製品の質を高められる保証を確保しました。
    방직공업, 신발과 편직, 식료공업을 비롯한 경공업부문의 많은 공장들에서 주체화의 기치를 높이 들고 우리의 기술, 우리의 설비로 여러 생산공정의 현대화를 힘있게 벌려 인민소비품의 다종화, 다양화를 실현하고 제품의 질을 높일수 있는 담보를 마련하였습니다.

    2019年
    我々の力、我々の技術、我々の資源で作り出した誇りとやり甲斐で、見るだけでも微笑ましい各種の輸送機材と、軽工業製品の質的水準が一層跳躍し、大量生産され、我々人民を喜ばせています。
    우리의 힘, 우리의 기술, 우리의 자원으로 만들어낸 긍지와 보람으로 보기만 해도 흐뭇한 각종 륜전기계들과 경공업제품들의 질적수준이 한계단 도약하고 대량생산되여 우리 인민들을 기쁘게 해주고있습니다.

    2019年には「軽工業製品の質的水準が一層飛躍し、大量生産され、我々人民を喜ばせています」とはっきりと言い切っている。2018年には、核・ミサイル開発に投入されていた資金や資材が軽工業製品に振り向けられ、その質や生産量が「人民を喜ばせ」たと明言できるほど拡大したのであろう。

    6.電力問題を重視、原子力発電
    2018年
    電力工業部門では、自立的動力基地を整備補強し、新たな動力資源開発に大きな力を入れなければ鳴りません。・・・道では、自分の地方の特性に合う電力生産基地を建設し、既に建設された中小型水力発電所で電力生産を正常化し、地方工業部門の電力を自ら保証するようにしなければ鳴りません。
    전력공업부문에서는 자립적동력기지들을 정비보강하고 새로운 동력자원개발에 큰 힘을 넣어야 합니다.・・・도들에서 자기 지방의 특성에 맞는 전력생산기지들을 일떠세우며 이미 건설된 중소형수력발전소들에서 전력생산을 정상화하여 지방공업부문의 전력을 자체로 보장하도록 하여야 합니다.

    2019年
    今年、社会主義経済建設で提起される最も重要で切迫した課業の一つは、電力生産を画期的に増大させることです。
    올해 사회주의경제건설에서 나서는 가장 중요하고도 절박한 과업의 하나는 전력생산을 획기적으로 늘이는것입니다.

    石炭が豊富に産出されてこそ、不足している電力問題も解決でき、金属工業をはじめとした人民経済各部門の燃料、動力需要を充足させることができます。
    석탄이 꽝꽝 나와야 긴장한 전력문제도 풀수 있고 금속공업을 비롯한 인민경제 여러 부문의 연료, 동력수요를 충족시킬수 있습니다.

    2018年の「新年の辞」ではワンパラグラフ250文字程度でしか触れられていなかった電力問題が、2019年には複数のパラグラフにわたり述べられている。とりわけ、地方での電力不足は深刻で、「元帥様」の2018年1年間の「現地指導」を紹介した「朝鮮記録映画」の中でも、地方の水力発電所(オランチョン発電所やタンチョン発電所)を「元帥様」が「現地指導」し、「何十年経っても完成していない」と叱責している場面が出てくる。2018年同様、2019年の「新年の辞」でも「道市郡で自分の地方に多様なエネルギー資源を開発利用しなければなりません(도, 시, 군들에서 자기 지방의 다양한 에네르기자원을 효과적으로 개발리용하여야 합니다)」としてはいるが、2018年に言っていた「中小規模発電所」ではなく、計画されたダムなど、大規模な水力発電施設を完成させ、地方の電力不足問題を抜本的に解決していこうという意思が見える。

    北朝鮮ではこれまで(金正恩時代)、どちらかというと安価になったLED灯電球などを活用し、省エネというやり方で電力不足問題を解決しようとして来たが、「人民生活が向上」させるためには、省エネだけでは対応しきれなくなっているのであろう。

    また、「石炭が豊富に産出されてこそ、不足している電力問題も解決でき(석탄이 꽝꽝 나와야 긴장한 전력문제도 풀수 있고)」とも言っており、経済制裁で中国への輸出が難しくなっている石炭を国内の発電に利用することを考えているのかも知れない。

    それだけではなく、「原子力発電」にもさりげなく触れており、今後、非核化を巡る米国との交渉の中で、核放棄、NPT復帰、IAEA査察受け入れの代償として、原子力発電所建設を認めさせたり、実現しなかったKEDOを再び立ち上げさせることを考えているのかも知れない。

    7.自立経済
    2018年
    自立経済発展の近道は、科学技術を前面に立て、経済作戦と指揮を革新するところにあります。
    자립경제발전의 지름길은 과학기술을 앞세우고 경제작전과 지휘를 혁신하는데 있습니다.

    2019年
    社会主義自立経済の威力をさらに強化しなければなりません。
    사회주의자립경제의 위력을 더욱 강화하여야 하겠습니다.

    2018年の「新年の辞」では2回しか使われなかった「自立経済」という言葉が、2019年には7回使われている。「経済建設に総力を集中する新たな戦略的路線」との関係で多く使われているとみることもできるが、「過酷な経済封鎖と制裁の中」でより「自立経済」が重視されていることは間違いない。それを「元帥様」が言うように「自分の力を信じ、自分の手で前途を開拓しながら、飛躍的な発展を達成した去る1年(자기 힘을 믿고 자기 손으로 앞길을 개척하면서 비약적인 발전을 이룩한 지난 한해 )」と捉えるのか、苦しくなっているから「自立経済」を強調せざるを得ないと捉えるのかは意見の分かれるところであろうが、苦しいながらも何とかやれるという自信を付けたというところではないだろうか。その自信があるからこそ、「過酷な経済封鎖」がなくなれば、さらなる経済発展ができるという展望をもち、朝米交渉にも臨んでいるのであろう。

    8.企業活動の自律性強化
    2018年
    内閣をはじめとした経済指導機関は、今年の員民経済計画を遂行するための作戦案を現実性を持って立て、その執行のための事業を責任を持って頑強に推し進めなければなりません。国家的に社会主義企業責任管理制が工場、企業所、協同団体で実際に実を出せるよう積極的な対策を立てなければなりません。
    내각을 비롯한 경제지도기관들은 올해 인민경제계획을 수행하기 위한 작전안을 현실성있게 세우며 그 집행을 위한 사업을 책임적으로 완강하게 내밀어야 합니다.국가적으로 사회주의기업책임관리제가 공장, 기업소, 협동단체들에서 실지 은을 낼수 있도록 적극적인 대책을 세워야 합니다.

    2019年
    経済全般に対する国の統一的指導を円満に実現し、勤労者が自覚的熱意と潜在力を最大限発動できるよう、管理方法を革新しなければなりません。内閣と国家経済指導機関は、社会主義経済法則に合うように計画化と価格事業、財政及び金融管理を改善し、経済的空間が企業体の生産活性化と拡大再生産に積極的に作用するようにしなければなりません。経済事業の効率を高め、企業が経済活動を円滑にできるよう、機構体系と事業体系を整備しなければなりません。
    경제전반에 대한 국가의 통일적지도를 원만히 실현하고 근로자들의 자각적열의와 창조력을 최대한 발동할수 있도록 관리방법을 혁신하여야 합니다.내각과 국가경제지도기관들은 사회주의경제법칙에 맞게 계획화와 가격사업, 재정 및 금융관리를 개선하며 경제적공간들이 기업체들의 생산활성화와 확대재생산에 적극적으로 작용하도록 하여야 합니다.경제사업의 효률을 높이고 기업체들이 경영활동을 원활하게 해나갈수 있게 기구체계와 사업체계를 정비하여야 합니다.

    勤労者の「自覚的熱意と潜在力を最大限に発動」させるためには、忠誠心や愛国心といったものではなく、経済的なモティべーションが必要となる。「管理方法の革新」で、これまでのように忠誠心や愛国心から経済的もティべーションを引き出させるのではなく、経済的モティべーションから忠誠心や愛国心へと繋がるような転換ができるのかどうか。「社会主義経済法則に合うように」と前置きはしているものの、「経済空間」を企業の「生産活性化と拡大再生産」に繋がるよう「整備」ができるのかどうか。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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