ある総連地方幹部夫婦が授与された勲章とメダル (2018年9月1日)
北朝鮮の勲章を入手した。北朝鮮の勲章はヤフオクやebayにたくさん出品されているが、偽物の可能性もあり、購入する気は全くなかった。しかし、今回、購入したのは、「勲章証」や「メダル証」がセットになっており、偽物である可能性はほぼないばかりか、勲章やメダルに関わる歴史のみならず、授与された人の背景まで分かってしまうものだからである。
以下、写真と共に紹介していくが、勲章から推測される被授与者のバックグランドを書いておく。年齢的には故人の可能性もあり、遺族が処分した物か、在命であれば本人が高齢なので親族が処分した物が古物商に流れ、それがオークションに出品されたと思われる。その理由は、被授与者は日本の地方都市の総連幹部で、古物商もその近隣地域の古物商だからである。
上記の状況からして、被授与者2人(男女)は夫婦だと推測される。男性の金さん(仮名)は総連系書店の顧問、女性の李さん(仮名)は、「女(性同)盟 (녀맹)」地方組織の幹部である。
それでは、格が高いと思われる勲章から順に紹介していく。
国旗勲章第2級

左面:
勲章証
写真 番号139
姓名 李XX
1936年X月X日生まれ
出生地
住所 XXXX市
所属、支部 女性同盟 XXX支部 委員長
右面:
勲章名 国家勲章 級数 第2級 番号 政令年月日 1987.3.26 証印 中央人民委員会
朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会(赤い印)
上記の通り、授与したことを証明する。朝鮮民主主義人民共和国 中央人民委員会 1987年4月15日
今回入手した勲章の中では、最も格が高そうなもの。夫の金さんも同時に授与されているので、勲章がどちらの物なのかは分からない。勲章証を見ると、「番号」は李さんのものも、金さんのものも「139」となっており、勲章にはシリアルナンバーの刻印はない。
朝鮮 国旗勲章 第2級

勲章証の表紙 朝鮮民主主義人民共和国 勲章証

この勲章が授与されたのは、1987年の「太陽節」であるが、「首領様生誕75周年慶祝」関連の大きな行事があり、金さん夫妻も平壌も訪問し、この勲章を授与されたものと推測される。金さんの勲章証も手元にあるが、李さんと異なり、写真は添付されていない。
国家勲章第3級

左面:
勲章証
写真 番号
姓名 李XX
1936年X月 X日生まれ
出生地 XXX県
住所 XXX区
所属、職務 女性同盟 XXX支部 副委員長
右面:
勲章別 国旗勲章 級数 第3級 番号 ㅂ95918 政令年月日 1972.3.20 証印 最高人民会議常任委員会
朝鮮民主主義人民共和国 最高人民会議 (赤い印)
上記の通り授与したことを証明する。
朝鮮民主主義人民共和国 最高人民会議
1972年4月15日
この勲章に裏面には、番号の刻印らしき物がある。上に示した李さんの「勲章証」には「ㅂ」から始まる番号が書かれているが、勲章裏面には「ㄹ」から始まる番号が見られるので、「勲章証」と不一致の可能性が高い。もしかすると、この勲章は夫の金さんに授与されたものなのかもしれない(金さんの「勲章証」は手元にない)。

勲章は1つしか手元にないが、李さんの「勲章証」3枚あるので、それのいずれかと一致している可能性はあるが、上の写真以外の勲章証には勲章「番号」が未記入となっているので、確認できない。オークションには、シリアルナンバーの刻印がない勲章が多く出品されており、偽物だと思っていたが、北朝鮮ではいつからかシリアルナンバーの刻印を中止したようだ。よって、刻印の有無で真偽の判定はできないと思われる。
日本の叙勲制度すらまともに調べたことがないのだが、「級」は英検のように徐々に上がっていくものとばかり思っていた。身近な「級」というのは大体そういうものだからなのだが、勲章は功勲に対して授与されるので、その度合いにより同級が多数授与されることも北朝鮮ではあり得るようだ。李さんは、1972年太陽節、1985年5月16日、1995年5月17日と少なくとも3回、「国旗勲章第3級」を授与されている。
1972年4月15日 「国旗勲章第3級」 最高人民会議常任委員会 政令

1985年5月10日 「国旗勲章第3級」 中央人民委員会 政令

1995年5月17日(政令年月日) 中央人民委員会 政令

李さんの生年月日に注目すると、4月→2月→5月と変わっており、マスクを掛けてあるが日にちも変わっている。李さんは「日帝時代」に九州地方で生まれているが、当時、朝鮮人に対する戸籍管理が適当であったのか、あるいは新暦と旧暦が混同した結果なのかは分からない。後で紹介するが、誕生年まで異なる「勲章証」もある。
85年までは写真があるが、95年にはない。写真を見ると、李さんが年をとっていく様子が分かる。
また、「国旗勲章」の授与主体が、72年は「最高人民会議常任委員会」であったが、85年からは「中央人民委員会」に変更されている。この間、48年憲法が72年12月に改定されているので、それとの関係で変更された可能性がある(条文は未確認)。
受賞時期で見ると、1972年4月15日は「首領様」の還暦なので、大規模な総連祖国訪問団が組織され、それに李さん夫婦も参加したと考えて不思議はない(私が持っている「首領様お名前腕時計」も、ムーブメントのシリアルから検索すると、この年か翌年に作られていることが分かる)。ところが、85年5月10日と95年5月17日は特別な日ではない。念のため、2018年の5月17日の『労働新聞』を見たら、5月11日に出された「模範遵法単位称号授与」に関する「最高人民会議常任委員会」の「政令」が出されているので、どうやら、5月中旬を叙勲に関する「政令」を時期としているようだ。
また、細かいことであるが、85年までは「県」を漢字語として「현」と記しているが、95年からは日本語読みの「けん」を朝鮮文字で書いている。
表紙の色も変わっている。上から、72年、85年、95年。

共和国創建50周年記念勲章

左ページ:
メダル証
名前 李XX
主体25(1936)年5月X日生まれ
出生地 XXX県
住所 XXX市
所属、支部 XXX県XXX支部 顧問
右ページ:
勲章種別 共和国創建記念メダル
政令番号 8031
政令年月日 主体87(1998)年8月11日
朝鮮民主主義人民共和国 中央人民委員会(赤い印)
上記の通り授与したことを証明する
朝鮮民主主義人民共和国
中央人民委員会
朝鮮民主主義人民共和国創建50周年記念勲章

一緒に写っているのは「メダル証」であり、「勲章証」ではない。「共和国創建記念勲章証」は、1988年に金さんに授与されたものと2003年に李さんに授与されたものはあるが、1998年の「勲章証」はない。
メダルと勲章は同一のものかとも思ったが、下の写真にあるように1988年には夫の金さんは「勲章」を授与されており、妻の李さんは「メダル」を授与されている。格としては勲章が上で、その下にメダルがあるのだと思う。
上は夫の金さんが88年9月9日に授与された「共和国創建記念勲章証」、下は李さんが同日に授与された「共和国創建記念メダル証」。李さんの生まれた年が1939年になっているが、6と9を書き間違えたのであろう。

さらに、興味深いのは、憲法改定により「共和国創建記念勲章」の発行主体が変わっている点である。上は金さんが88年に「記念勲章」を授与されたときの「勲章証」であるが、72年憲法で制定された「中央人民委員会」の印が押されている。ところが、下の98年憲法で「中央人民委員会」が廃止された後の2003年の李さんが授与された「勲章証」に押されている印鑑は「最高人民会議常任委員会」のものになっている。

また、「メダル証」の表紙も興味深い。上が98年、下が88年の「メダル証」であるが、98年の「メダル証」は国章や文字が金文字になっていない。李さんが敢えて剥がしたのでなければ、完全になくなっているので、自然に剥がれ落ちたということはなかろう。今回入手した「メダル証」や「勲章証」の中で唯一金文字ではないのがこれである。「共和国創建50周年」という意義深い年に発行された「メダル証」に金文字が使われていない理由があるとすれば、「苦難の行軍」との関連ぐらいしか考えつかないが、だとしてもこの種のものの金ペイントを惜しむほどではないと思うのだが。

セットとなる「勲章証」がないのは残念だが、この「勲章」は今回手に入れた物中では最も美しく、状態もよい。さらに、「共和国創建50周年」という実に意義深い年の「記念勲章」という点も重要である。
朝鮮労力勲章

上に書いた「勲章」と「メダル」の関係を悩ませるのが、この「労力勲章」である。勲章自体は3つあり、全て同じである。裏面には、番号記入欄があるが、数字などの刻印はない。一方、これら3つの「労力勲章」に対応する「勲章証」はなく、「メダル証」が2枚あった。「勲章証」と「メダル証」が完全に異なるものなのであれば、これら3つの「労力勲章」は夫の金さんが受賞したが「勲章証」はなくなってしまい、一方、妻の李さんは「労力メダル」と「メダル証」を授与されたが、メダルは今回購入したセットには入っていなかったということになろう。李さんは、75年と82年に「メダル証」を受け取っているが、この当時は「女性同盟」の「副委員長」だった。また、75年の「メダル証」の出生地は「XXXX郡チンジョン面」と「南朝鮮」の地名が書かれている。「功労メダル証」には、「中央人民委員会」の印が押されている。
勲章の裏と、「メダル証」の表紙を見ると以下のとおりである。勲章は重さも含めて全く同じなので時代は分からず、「メダル証」は右が82年、左が75年である。メダル証表紙の国章は、サイズも異なるが、デザインも少し違っている。

では、印鑑はどうかと思いつつ、細かく比較してみると、白頭山の図柄にいくつかのパターンがあることが分かった。
2003年(最高人民会議常任委員会勲章証)

1998年(中央人民委員会メダル証)

1995年(中央人民委員会勲章証)

次の2枚は、同日の授与にもかかわらず、国章の白頭山部分のデザインが明らかに異なっている。
1988年9月9日(中央人民委員会勲章証)

1988年9月9日(中央人民委員会メダル証)

1987年(中央人民委員会勲章証)

1975年~87年頃までは、上のデザインが使われたようだ。
1972年(最高人民会議常任委員会勲章証)

2018年9月1日、「ネナラ(我が国)」に出ている国章。2003年から変更されていないようだ。

Source: 내나라, 2018/09/01
北朝鮮側から見た実際の映像で北朝鮮が「公式」に使っている「朝鮮中央TV」放送開始時の「愛国歌」背景画面。95年の絵が一番近いような気がする。

Source: KCTV, 2017/12/16
総連結成20周年記念メダル

このメダルとセットになる「20周年記念メダル証」はなかったが、代わりに「50周年記念メダル証」が入っていた。

総連謹製だからか、材質もよい。

その他、1985年8月15日に授与された「祖国解放記念メダル証」もあるが、表紙にカビが生えており、あまりよい状態ではない。この当時、金さんは総連系書店の支店長だった。


「労力勲章」は3つもあるので、昨年冬にロシアから仕入れたソ連時代のウシャンカに付けてみたらなかなかカッコイイ。

勲章はかなり高い買い物になってしまったが、「勲章証」がセットだったので色々なことを調べることができた。私にとっては、勲章よりも「勲章証」の価値の方が高かった。
<追記: 2018/09/03 1004>
「朝鮮中央TV」を見ていたら、ちょうど「金日成勲章」が出てきた。この勲章は、時々、オークションに出ているが、大変高価である上、「勲章証」とセットの物は見たことがない。

Source: KCTV, 2018/09/01
2つの「金日成勲章」を授与されたのは、金ユンヒョンという「主体鉄」の開発者。

Source: KCTV, 2018/09/01
さらに、「東平壌百貨店」に「三大革命赤旗」が授与されるという「17時報道」での報道の中でも勲章が見られた。今までは、勲章や「勲章証」の実物を見たことがなかったので、この種の受賞報道はぼんやりと見ているだけであったが、実際に手にしてみると、なかなか興味深いところがある。
「模範的従業員に授与」される勲章。「勲章証」のサイズからすると、ぶら下げるスタイルの小型の勲章のようだ。

Source: KCTV, 2018/09/01
机の上に置かれた「勲章証」と勲章の箱

Source: KCTV, 2018/09/01
以下、写真と共に紹介していくが、勲章から推測される被授与者のバックグランドを書いておく。年齢的には故人の可能性もあり、遺族が処分した物か、在命であれば本人が高齢なので親族が処分した物が古物商に流れ、それがオークションに出品されたと思われる。その理由は、被授与者は日本の地方都市の総連幹部で、古物商もその近隣地域の古物商だからである。
上記の状況からして、被授与者2人(男女)は夫婦だと推測される。男性の金さん(仮名)は総連系書店の顧問、女性の李さん(仮名)は、「女(性同)盟 (녀맹)」地方組織の幹部である。
それでは、格が高いと思われる勲章から順に紹介していく。
国旗勲章第2級

左面:
勲章証
写真 番号139
姓名 李XX
1936年X月X日生まれ
出生地
住所 XXXX市
所属、支部 女性同盟 XXX支部 委員長
右面:
勲章名 国家勲章 級数 第2級 番号 政令年月日 1987.3.26 証印 中央人民委員会
朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会(赤い印)
上記の通り、授与したことを証明する。朝鮮民主主義人民共和国 中央人民委員会 1987年4月15日
今回入手した勲章の中では、最も格が高そうなもの。夫の金さんも同時に授与されているので、勲章がどちらの物なのかは分からない。勲章証を見ると、「番号」は李さんのものも、金さんのものも「139」となっており、勲章にはシリアルナンバーの刻印はない。
朝鮮 国旗勲章 第2級

勲章証の表紙 朝鮮民主主義人民共和国 勲章証

この勲章が授与されたのは、1987年の「太陽節」であるが、「首領様生誕75周年慶祝」関連の大きな行事があり、金さん夫妻も平壌も訪問し、この勲章を授与されたものと推測される。金さんの勲章証も手元にあるが、李さんと異なり、写真は添付されていない。
国家勲章第3級

左面:
勲章証
写真 番号
姓名 李XX
1936年X月 X日生まれ
出生地 XXX県
住所 XXX区
所属、職務 女性同盟 XXX支部 副委員長
右面:
勲章別 国旗勲章 級数 第3級 番号 ㅂ95918 政令年月日 1972.3.20 証印 最高人民会議常任委員会
朝鮮民主主義人民共和国 最高人民会議 (赤い印)
上記の通り授与したことを証明する。
朝鮮民主主義人民共和国 最高人民会議
1972年4月15日
この勲章に裏面には、番号の刻印らしき物がある。上に示した李さんの「勲章証」には「ㅂ」から始まる番号が書かれているが、勲章裏面には「ㄹ」から始まる番号が見られるので、「勲章証」と不一致の可能性が高い。もしかすると、この勲章は夫の金さんに授与されたものなのかもしれない(金さんの「勲章証」は手元にない)。

勲章は1つしか手元にないが、李さんの「勲章証」3枚あるので、それのいずれかと一致している可能性はあるが、上の写真以外の勲章証には勲章「番号」が未記入となっているので、確認できない。オークションには、シリアルナンバーの刻印がない勲章が多く出品されており、偽物だと思っていたが、北朝鮮ではいつからかシリアルナンバーの刻印を中止したようだ。よって、刻印の有無で真偽の判定はできないと思われる。
日本の叙勲制度すらまともに調べたことがないのだが、「級」は英検のように徐々に上がっていくものとばかり思っていた。身近な「級」というのは大体そういうものだからなのだが、勲章は功勲に対して授与されるので、その度合いにより同級が多数授与されることも北朝鮮ではあり得るようだ。李さんは、1972年太陽節、1985年5月16日、1995年5月17日と少なくとも3回、「国旗勲章第3級」を授与されている。
1972年4月15日 「国旗勲章第3級」 最高人民会議常任委員会 政令

1985年5月10日 「国旗勲章第3級」 中央人民委員会 政令

1995年5月17日(政令年月日) 中央人民委員会 政令

李さんの生年月日に注目すると、4月→2月→5月と変わっており、マスクを掛けてあるが日にちも変わっている。李さんは「日帝時代」に九州地方で生まれているが、当時、朝鮮人に対する戸籍管理が適当であったのか、あるいは新暦と旧暦が混同した結果なのかは分からない。後で紹介するが、誕生年まで異なる「勲章証」もある。
85年までは写真があるが、95年にはない。写真を見ると、李さんが年をとっていく様子が分かる。
また、「国旗勲章」の授与主体が、72年は「最高人民会議常任委員会」であったが、85年からは「中央人民委員会」に変更されている。この間、48年憲法が72年12月に改定されているので、それとの関係で変更された可能性がある(条文は未確認)。
受賞時期で見ると、1972年4月15日は「首領様」の還暦なので、大規模な総連祖国訪問団が組織され、それに李さん夫婦も参加したと考えて不思議はない(私が持っている「首領様お名前腕時計」も、ムーブメントのシリアルから検索すると、この年か翌年に作られていることが分かる)。ところが、85年5月10日と95年5月17日は特別な日ではない。念のため、2018年の5月17日の『労働新聞』を見たら、5月11日に出された「模範遵法単位称号授与」に関する「最高人民会議常任委員会」の「政令」が出されているので、どうやら、5月中旬を叙勲に関する「政令」を時期としているようだ。
また、細かいことであるが、85年までは「県」を漢字語として「현」と記しているが、95年からは日本語読みの「けん」を朝鮮文字で書いている。
表紙の色も変わっている。上から、72年、85年、95年。

共和国創建50周年記念勲章

左ページ:
メダル証
名前 李XX
主体25(1936)年5月X日生まれ
出生地 XXX県
住所 XXX市
所属、支部 XXX県XXX支部 顧問
右ページ:
勲章種別 共和国創建記念メダル
政令番号 8031
政令年月日 主体87(1998)年8月11日
朝鮮民主主義人民共和国 中央人民委員会(赤い印)
上記の通り授与したことを証明する
朝鮮民主主義人民共和国
中央人民委員会
朝鮮民主主義人民共和国創建50周年記念勲章

一緒に写っているのは「メダル証」であり、「勲章証」ではない。「共和国創建記念勲章証」は、1988年に金さんに授与されたものと2003年に李さんに授与されたものはあるが、1998年の「勲章証」はない。
メダルと勲章は同一のものかとも思ったが、下の写真にあるように1988年には夫の金さんは「勲章」を授与されており、妻の李さんは「メダル」を授与されている。格としては勲章が上で、その下にメダルがあるのだと思う。
上は夫の金さんが88年9月9日に授与された「共和国創建記念勲章証」、下は李さんが同日に授与された「共和国創建記念メダル証」。李さんの生まれた年が1939年になっているが、6と9を書き間違えたのであろう。

さらに、興味深いのは、憲法改定により「共和国創建記念勲章」の発行主体が変わっている点である。上は金さんが88年に「記念勲章」を授与されたときの「勲章証」であるが、72年憲法で制定された「中央人民委員会」の印が押されている。ところが、下の98年憲法で「中央人民委員会」が廃止された後の2003年の李さんが授与された「勲章証」に押されている印鑑は「最高人民会議常任委員会」のものになっている。

また、「メダル証」の表紙も興味深い。上が98年、下が88年の「メダル証」であるが、98年の「メダル証」は国章や文字が金文字になっていない。李さんが敢えて剥がしたのでなければ、完全になくなっているので、自然に剥がれ落ちたということはなかろう。今回入手した「メダル証」や「勲章証」の中で唯一金文字ではないのがこれである。「共和国創建50周年」という意義深い年に発行された「メダル証」に金文字が使われていない理由があるとすれば、「苦難の行軍」との関連ぐらいしか考えつかないが、だとしてもこの種のものの金ペイントを惜しむほどではないと思うのだが。

セットとなる「勲章証」がないのは残念だが、この「勲章」は今回手に入れた物中では最も美しく、状態もよい。さらに、「共和国創建50周年」という実に意義深い年の「記念勲章」という点も重要である。
朝鮮労力勲章

上に書いた「勲章」と「メダル」の関係を悩ませるのが、この「労力勲章」である。勲章自体は3つあり、全て同じである。裏面には、番号記入欄があるが、数字などの刻印はない。一方、これら3つの「労力勲章」に対応する「勲章証」はなく、「メダル証」が2枚あった。「勲章証」と「メダル証」が完全に異なるものなのであれば、これら3つの「労力勲章」は夫の金さんが受賞したが「勲章証」はなくなってしまい、一方、妻の李さんは「労力メダル」と「メダル証」を授与されたが、メダルは今回購入したセットには入っていなかったということになろう。李さんは、75年と82年に「メダル証」を受け取っているが、この当時は「女性同盟」の「副委員長」だった。また、75年の「メダル証」の出生地は「XXXX郡チンジョン面」と「南朝鮮」の地名が書かれている。「功労メダル証」には、「中央人民委員会」の印が押されている。
勲章の裏と、「メダル証」の表紙を見ると以下のとおりである。勲章は重さも含めて全く同じなので時代は分からず、「メダル証」は右が82年、左が75年である。メダル証表紙の国章は、サイズも異なるが、デザインも少し違っている。

では、印鑑はどうかと思いつつ、細かく比較してみると、白頭山の図柄にいくつかのパターンがあることが分かった。
2003年(最高人民会議常任委員会勲章証)

1998年(中央人民委員会メダル証)

1995年(中央人民委員会勲章証)

次の2枚は、同日の授与にもかかわらず、国章の白頭山部分のデザインが明らかに異なっている。
1988年9月9日(中央人民委員会勲章証)

1988年9月9日(中央人民委員会メダル証)

1987年(中央人民委員会勲章証)

1975年~87年頃までは、上のデザインが使われたようだ。
1972年(最高人民会議常任委員会勲章証)

2018年9月1日、「ネナラ(我が国)」に出ている国章。2003年から変更されていないようだ。

Source: 내나라, 2018/09/01
北朝鮮側から見た実際の映像で北朝鮮が「公式」に使っている「朝鮮中央TV」放送開始時の「愛国歌」背景画面。95年の絵が一番近いような気がする。

Source: KCTV, 2017/12/16
総連結成20周年記念メダル

このメダルとセットになる「20周年記念メダル証」はなかったが、代わりに「50周年記念メダル証」が入っていた。

総連謹製だからか、材質もよい。

その他、1985年8月15日に授与された「祖国解放記念メダル証」もあるが、表紙にカビが生えており、あまりよい状態ではない。この当時、金さんは総連系書店の支店長だった。


「労力勲章」は3つもあるので、昨年冬にロシアから仕入れたソ連時代のウシャンカに付けてみたらなかなかカッコイイ。

勲章はかなり高い買い物になってしまったが、「勲章証」がセットだったので色々なことを調べることができた。私にとっては、勲章よりも「勲章証」の価値の方が高かった。
<追記: 2018/09/03 1004>
「朝鮮中央TV」を見ていたら、ちょうど「金日成勲章」が出てきた。この勲章は、時々、オークションに出ているが、大変高価である上、「勲章証」とセットの物は見たことがない。

Source: KCTV, 2018/09/01
2つの「金日成勲章」を授与されたのは、金ユンヒョンという「主体鉄」の開発者。

Source: KCTV, 2018/09/01
さらに、「東平壌百貨店」に「三大革命赤旗」が授与されるという「17時報道」での報道の中でも勲章が見られた。今までは、勲章や「勲章証」の実物を見たことがなかったので、この種の受賞報道はぼんやりと見ているだけであったが、実際に手にしてみると、なかなか興味深いところがある。
「模範的従業員に授与」される勲章。「勲章証」のサイズからすると、ぶら下げるスタイルの小型の勲章のようだ。

Source: KCTV, 2018/09/01
机の上に置かれた「勲章証」と勲章の箱

Source: KCTV, 2018/09/01