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    日朝会談へ本格調整 正恩氏「首相と会ってもよい」 (2018年6月14日 「産経新聞」)

    14日、『産経新聞』に以下。

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    米朝首脳会談で、トランプ氏は「完全な非核化を実現すれば経済制裁は解くが、本格的な経済支援を受けたいならば日本と協議するしかない」との旨を金氏に説明。その上で「安倍首相は拉致問題を解決しない限り、支援には応じない」と述べたとされる。

    Source: 『産経新聞』、「日朝会談へ本格調整 正恩氏『首相と会ってもよい』」、https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180614-00000062-san-pol
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    拙ブログで予想していたとおりの展開と自慢したいところであるが、合理的にはこの方法しかない。ついでに先に書いておくが、「共同声明」に「拉致問題が書かれなかった」と悲観している向きがあるが、書かれないのは当然であり、悲観する必要など全くない。これも前々から書いているが、トランプにとって拉致問題のプライオリティーは低く、さらに言えば、彼は拉致問題を米朝間の問題と全く考えていない。あるとすれば、「人権問題」の一環としての「拉致問題」となるが、これも前から書いているとおり、今回の会談で人権を大きく取り上げれば、非核化に向けたトラックは確実に挫折したであろう。その系からしても、拉致問題が「共同声明」に盛り込まれないのは不思議なことでも、悲観することでもない。

    しかし、これも過去記事に書いたが、日本首相安倍が朝米会談直前にトランプに長々と拉致問題についての自分の、安倍個人としての思いを語ったのは有効であった。トランプが冷酷な政治家であれば、安倍の個人的な熱い気持ちなど、それほど深刻に受け入れることはなかったであろう。しかし、トランプは純粋な政治家ではなく、どちらかというと市井の成金不動産屋のオッサンである。だからこそ、安倍個人の気持ちをストレートに受け入れ、「元帥様」に拉致問題について伝えたのだと思う。

    だから、2つ前の記事に書いた事前協議の関連文書の中には、拉致問題など一言も書かれていないはずだし、トランプが口にしなければ、話題にすらならなかったはずである。トランプにそれを言わせたのは、安倍の熱意に他ならない。どのタイミングでトランプがそれを口にしたのかは分からないが、流れとしては米軍遺骨収集問題の繋がりかも知れない。今回の会談の中で「人権的」な部分が唯一それだからであるが、もしかすると「明るい未来」の部分で日本、韓国、中国の「経済支援」について述べながら、「安倍は、拉致問題が解決しなければ金は出さないといっている」という話をした可能性もある(拙ブログでは、米軍遺骨収集問題が盛り込まれることを全く想定していなかったので、こちらの可能性を強調してきた)。

    安倍「一味」の口からは、「最大限の圧力」がいつのまにか出なくなった。そもそも蚊帳の外なのだから、米国の流れに合わせて調整していくしかなく、やむを得ない。そして、「拉致問題解決」のためには、そうすることが正しい選択でもある。

    トランプがここまでレールを敷いてくれた。これから後は、「安倍の腕の見せ所」(とも、過去記事に書いたが)となるわけだが、焦りも禁物である。まさに、これからが安倍が念仏を唱えるように主張している「日米共調」の重要なポイントとなり、トランプが北朝鮮との間で非核化に向けたどのようなロードマップを描き、その中でどの時点で支援を決めていくのか、これをしっかりと見極め、そして繰り返すが「日米共調」しながら進んでいかなければならない。

    同記事には、「会談中に北朝鮮側は「拉致問題は解決済み」という従来の見解は一度も示さなかったという」とも書かれている。これも当たり前のことだ。日本首相に北朝鮮と対話する気がなく、「最大限の圧力」ラッパを吹き鳴らしているときであれば、「ありもしない拉致問題」と彼らはいう。しかし、日本側に対話の意思があるとトランプから伝えられた席で、「それは解決済み」などというのは愚の骨頂である。北朝鮮の「明るい未来」のためには、「過去の清算」は絶対に必要であるし、国際社会も日本は「過去の清算」をする必要があると考えている。その入口が、「拉致問題解決」となるのだから、否定などできようもない。

    「北朝鮮が完全な非核化をするまで」という建前は良いが、それは日本に決められないことである。繰り返すが、日本は蚊帳の外なのだし、それはトランプに任せておけば良い。そして、それは現実的にトランプにしかできない。

    上で「米国との共調」と書いたので若干矛盾するかもしれないが、日本には日本の「拉致問題解決」を含む国益があるのだから、「共調」しつつも、日本独自の外交を展開しなければならない。「どうしろというのか」と問われれば、一発回答はできないが、米国の歩調に合わせて「段階的」に進めていけるようなスタートラインに立っておく必要はある。今の日本は、それができていない。

    その系では、安倍が「元帥様」と会うのもよい。しかし、繰り返すが焦りは禁物である。日本と北朝鮮の間の水面下のパイプは分からないが、少なくとも米国がやって来たように、複数のルートで北朝鮮との交渉を積み重ねてから、トランプのように「元帥様」と「対面と会談」をすべきである。ここは、安倍個人の「拉致被害者帰国」という熱い気持ちをコントロールしつつ、ましてやそれを国内政治に利用しようなどという姑息な考えは捨てて臨まなければならない。森友・加計の「罪」は消えないにしても、国民は本当の成果を出せば、絶対に安倍を評価するはずである。

    頑張ってもらいたい。

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    ゴロツキ国家

     不動産屋のオッサンならでわの、「好意」が感じられました。だだし請求書も用意されている気がします。
     先生の仰るように、急ぐことは全くないです。
    「ゴロツキ国家」が、謝罪と反省を行ってから、新たな関係を持つべきです。5年10年でも「まともな国家」が見えるまで、待つべきです。
    日本が動かないと困るのは、元帥ですから。「蚊帳の外」でかまわないと思います。
    (トランプの記者会見でも、あのような国家を認めるのか?と質問が。答えなかったようですが。)

    Re: ゴロツキ国家

    コメントへの返信が遅れてしまいました。北朝鮮に対する請求書は、「非核化・ICBM廃棄」だけだと思います。払える金はないですし、人権についてはあまり関心はないはずです(し、言い出したらディールは破綻です)。

    急ぐ必要はないのですが、乗り遅れもまずいです。そして、国内からの拉致問題解決圧力に耐えられるかどうか。トランプが自慢していなければ、CVIDが盛り込まれなかったから全然駄目、最大限の圧力を継続と叫んでいれば良いのですが、ボスの対面もあり、それを口実にすることもできない状況です。

    どう転んでも、当面は、トランプが描くロードマップに組み込まれていくしかないのですが、その準備、特に拉致に関する部分は、対北朝鮮、対国内両面で相当苦労するはずです。



    >  不動産屋のオッサンならでわの、「好意」が感じられました。だだし請求書も用意されている気がします。
    >  先生の仰るように、急ぐことは全くないです。
    > 「ゴロツキ国家」が、謝罪と反省を行ってから、新たな関係を持つべきです。5年10年でも「まともな国家」が見えるまで、待つべきです。
    > 日本が動かないと困るのは、元帥ですから。「蚊帳の外」でかまわないと思います。
    > (トランプの記者会見でも、あのような国家を認めるのか?と質問が。答えなかったようですが。)
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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