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    トランプ-金ヨンチョル会談:トランプのツイートいまのところない、「歴史的ビッグ・ディール」と出遅れている日本 (2018年6月2日 「聯合ニュースTV」)

    2日、『聯合ニュースTV』がトランプ-金ヨンチョル会談関連情報を報じた。要約は以下。

    ・トランプが、「12日、シンガポールでキムジョンウンに会う」と公式に確認。
    ・トランプが、「朝米首脳会談開催のための手続きは続けられている」と。
    ・トランプが、「会談で、ビッグディールの成果が期待される」と。
    ・トランプが、「一度会っただけで、全てを解決できない」と。
    ・トランプが、「朝鮮半島で戦争を終わらせる終戦宣言が朝米会談であり得る。しかし、何かの協定に署名するという問題ではない」と。
    ・トランプが、「(金ヨンチョルとの会談で)北朝鮮は、最大の圧迫という用語をこれ以上使わないことを望んでいた」とし、「対北制裁を解除できる日が来ることを望んでいる」と。
    ・トランプが、「(金正恩親書は、)とても素晴らしく、興味深かった」と。
    ・トランプが、「金正恩委員長は、非核化に専念していると信じている」と。
    ・トランプが、「(北朝鮮の人権問題について)議論しなかった」と。
    ・トランプが、「(北朝鮮の経済発展は、)北朝鮮には、韓国、日本、中国など、近隣国がいる」とし、「米国は、近隣国でもなく、多くの金も必要としない」と。

    ・トランプ-金ヨンチョル会談は、13時20分(現地時間1日)から15時40分まで、約1時間20分。
    ・金ヨンチョルをジョン・ケリー、ホワイトハウス秘書室長が迎接。
    ・金ヨンチョルが、金正恩特使として、金正恩親書をトランプに手渡す。
    ・ポムペオも会談に陪席。
    ・全ての日程は非公開。
    ・会談後、トランプが直接出てきて金ヨンチョルを見送った。
    ・金ヨンチョルとトランプが記念撮影(予定外)。

    『聯合ニュースTV』、「트럼프-김영철 백악관 면담 종료…”12일 김정은 만날것”」、http://www.yonhapnewstv.co.kr/MYH20180602000800038/

    トランプ発言からすると、6月12日まで、このまま進んでいきそうな雰囲気になっている。トランプは2時間ほど前(日本時間6時頃)にコースとガードに関するツイートをしているが、金ヨンチョルとの会談について一言もツイートしない。金ヨンチョルとの会談について、関係者と整理しているのかも知れない。

    トランプが、「一度会っただけで、全てを解決できない」と言っているが、これは、金ゲグァン「談話」の中で北朝鮮の中で使った「会って、一杯目の酒を飲んだだけで腹一杯になることはない」という北朝鮮の諺に対応した形になっており、興味深い。「ビッグディール」が完結するまでには、時間がかかり、紆余曲折もあり得るという認識なのであろう。「トランプタワーは一日にして建たず」、「万里馬速度でも、カルマ海岸観光地区は、一日にして建たず」、シンガポールで大きな「非核化」の設計図で合意しておき、それに向けて着実に物事を進めていくことが重要である。

    「終戦宣言」については、「署名をしない」と言っているが。今、韓国では、シンガポールに文在寅が行き、朝米首脳会談後に、3者会談を行い、「終戦宣言署名」もあり得るかのような話が出ているが、3者の話し合いぐらいは行われるのか。ただ、以前も書いたように、トランプショーに文在寅が顔を出して、トランプの成果を横取りするのは(充分に活躍はしていると思うが)、トランプが好ましいと思わない可能性がある。

    「人権問題」については、継続して会談の中で取り上げるような発言はしているものの、シンガポールで取り上げないとしている。日本首相安倍は7日、トランプと会談するとしているが、恐らくここで、日本国内向けのパフォーマンスとして「拉致問題」を口にするか、口にしたと帰国後に宣伝するであろう。しかしトランプとしては、「拉致問題」は当然、「人権問題」の一環として考えているだろうから、そもそも米国にとってプライオリティーが低い、拉致問題を議題とすることはあり得ない。

    では、日本はどうするのか。トランプは、「解法」を提示している。朝米会談で成果が出れば、金ヨンチョルが望んでいる「最大の圧迫」という、日本首相安倍が世界中で鼓吹している「最大の圧迫」は、「米国のボス」も使ってもレベルを落として行くであろう。そして究極的には、「対北制裁が解除できる日」も見通しており、その時には、「韓国、日本、中国など、(北朝鮮の)隣国」に金を出してもらうと言っている。これは、過去記事にも書いた、5月22日の文在寅との会談後の記者会見でも言っている。「米国第一」トランプは、そんなことに「多くの金も必要ない」と考えるのは当然であり、トランプは米国の脅威となる北朝鮮の「弾道ミサイル」と「核」さえ、除去できれば、基本的には後は野となれ山となれというスタンスなのであろう。

    現状では、完全に「蚊帳の外」となっている日本であるが、「米国のボス」が「最大の圧迫」を緩めたとたん、ラッパ吹きの役割から金を出す役割を担わせされることになる。韓国は、当事国であり、北朝鮮との経済協力も豊富である。昨日出された「板門店高位級会談共同報道文」(昨日記事参照)からも分かるように、経済協力に向けた話し合いは進行中である。

    中国は、制裁中ですら、制裁をかいくぐって(だから、トランプも不満なのであるが)、北朝鮮と経済取引をしている。制裁が解除されスッキリすれば、韓国と競うのか協力しなのかは分からないが、北朝鮮の経済開発に大規模な投資をする準備ができていることは間違いない。とりわけ、米国の側に傾きつつある北朝鮮を自国の側に留めておくには、金満中国の「カネ」は非常に有効だし、「唇と歯」という隣接関係は米朝の比較にならない。もちろん、北朝鮮は、米朝をちらつかせながら、中国から「カネ」を引き出し、経済建設を加速化させるであろう。それも「自力自強」の道であることは、「元帥様」も十分に承知しているはずだ。

    トランプは忘れたのか、自分との関係で意図的に外したのかは別とし、ロシアには言及していないが、ラブロフが北朝鮮を訪問したことも、とりわけ経済的には重要である。とりわけ、ロシアからの天然ガスなどのエネルギー供給、羅先港を経由した貿易の活性化など、「最大の圧迫」が緩和されれば、やりたいことはたくさんある。韓国では、ロシアの天然ガスを北朝鮮経由のパイプラインを使って韓国まで送る構想を真剣に検討している。

    さて、日本は・・・何もできていない。これも何回も書いてきたが、日本が立ち返ることができるのは、「日朝平壌宣言」しかない。これは、「将軍様」が署名した宣言なので、北朝鮮でも生きている(というか、どこぞが得意な改ざんや廃棄はできない)。「日朝平壌宣言」には、「拉致問題解決、核・ミサイル問題解決、過去の清算」が3点セットで書かれており、核・ミサイルについては、米韓が主導しながら北朝鮮と解決努力をしている。そもそも、日本が介入できる問題ではないのだ、「蚊帳の外」でもいい(国内宣伝用に、「蚊帳の外ではない」と言い張る方が、見苦しい)。日本がやるべきこと、日本でなければできないことは、「拉致問題解決」と「過去の清算」である。「過去の清算」という言葉はきれいであるが、要するに、北朝鮮に「なんぼ払って」過去を「清算」するのかという話である。「拉致」が北朝鮮による犯罪行為であることは100%間違いないが、現実的に解決していくためには、きれいに言えば「過去との清算と」セットで、はっきりと言えば「なんぼ払って」という形で解決していくしかない。正論を押し通し続ければ、拉致被害者の帰国が遅れるだけというのは、小泉訪朝以降の歴史が示している。

    今、正論を押し通さずとも、外交上は「きれいな」形で拉致被害者帰国に向けた国際環境ができつつあることは、安倍政権も否定しないであろう。今の日本首相を見ていると、それに向けて能動的に対応しているとはとても言い難い。トランプに頼むのが一助になることは否定しないが、直接的な解決には繋がらない。韓国では、4月27日以降、「元帥様」の人気が「21%高まった」と『聯合ニュース』が報じていた(韓国語だが、分かりやすいグラフ。http://www.yonhapnews.co.kr/photos/1991000000.html?cid=GYH20180601000800044&from=search)。日本ではこうした調査は行われていないが、筆者が字幕を付けてアップロードしているYouTube動画に付けられるコメントを見ていると、過去は「黒電話」「豚」「死ね」といった、北朝鮮に言わせれば「最高尊厳を中傷」するようなコメントばかりであったが、このところ、「元帥様」や北朝鮮を客観的に見たコメントもチラホラと見られるようになった。こうしたことからすると、日本国内で「元帥様」の人気が高まることはないにしても、ステロタイプ的な評価からは脱しているような雰囲気はある。

    そのような中、「北朝鮮の核・ミサイル」で煽りながら憲法改定に邁進するのか、その前に変化しつつある東北アジアの「安全保障環境」の結果を見据え、憲法改定よりも喫緊な「拉致被害者帰国」に向け、北朝鮮の関係改善に取り組んでいくのか。どこかで舵取りが必要となる。米国は、金ヨンチョルが嫌がる「最大の圧迫」をしながら、ここまで持って来た。

    日本は「最大の圧迫」ラッパだけで、「対話」の方が何もできていない。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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