「青年たちに対する思想文化浸透に覚醒を高めなければならない」(2012年9月7日 「労働新聞」)
金正恩さんの「青年節祝賀文」を受けた記事が「労働新聞」に掲載された。
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-09-07-0049
「青年節祝賀文」に関する記事の中でも指摘した金正恩さんの言葉「反動的な思想文化浸透と心理謀略戦は、今日、侵略策動で用いられている基本手段であり、その主たる対象は青年たちである」でこの記事は始まっている。
敢えて、金正恩さんがこのようなことを言うのは、一つは「反動的な思想文化浸透」が北朝鮮で深刻な問題になっている、もう一つは「反動的な思想文化」には、自分(金正恩)が許容する範囲内でのみ接して良いということを伝えたいのであろうか。また、この記事ではエジプトやリビアにおける民主化の例を挙げて、それが「帝国主義者が若者に反動的思想文化」を植え付けた結果でもあると述べている。
興味深い記述を見ていくと、次のとおりだ。
まず、「彼らは、自らの支配主義野望を実現することにおいて、反動的な思想文化が軍事力に劣らない威力を発揮している」とソフトパワーの存在に対する認識を表明し、その手法として「帝国主義者たちは、他国に輸出する設備や商品に資本主義を宣伝する字句や淫乱な画をつけ、人々の目を引こうとしている」としている。これは、主として中国から密輸される、中国製も含む「帝国主義者」の物品のことを述べているのではないだろうか。「帝国主義者」の製品を日々使用している日本でも「資本主義を宣伝する字句や淫乱な画」がつけられた製品を目にすることはほとんどない。それは、ソフトパワーの本質はそんなことではなく、これらの製品自体が持つ相対的優位性にあるからなのだが、しかしそうとも書けないのでこう書いているのであろう。記事には、そうしたことを通じて「資本主義に対する幻想」を持つようになると書いているが、「幻想」かどうかは別とし、ソフトパワーの威力はそこにある。
そして、「帝国主義者」は「新しいことに対する好奇心が非常に強い」青年に対しピンポイント的にソフトパワーによる謀略戦を展開しているとし、「少なからぬ青年が政治よりも流行や娯楽により多くの興味を持っていることを巧妙に利用し、彼らを対象とする放送で娯楽番組を大幅に増やし、その中に資本主義制度の『優位性』を宣伝する報道資料などを挟み込んでいることなども決して偶然ではない」とその実例を挙げている。これは、やはり中国経由で密輸される韓国ドラマなどについて述べているのではないだろうか。
続いて、思想教育の重要性について述べ、「思想教育事業をきちんと行わないことは、青年たちを失うことと同じだ」とまでその重要性を強調している。北朝鮮では、「思想教育事業」は十分に行われていると思うのだが、そのほころびが青年層を中心に出てきているということなのだろうか。
そして終わりで「反動的な思想文化浸透と心理謀略戦の空間がとても広く、その形式と方法が多様なので、それを粉砕するための対策を立て、敵対勢力との闘争を果敢に展開しなければならない」としている。北朝鮮も思想文化浸透の「空間が広」がり、その「形式と方法が多様」化したので、その対策に悩んでいるということなのであろうか。
もしかすると金正恩さんは、「反動的な思想文化」をシャットアウトしていてもどうせ入ってくるので、少しずつ取り入れながらも、それをうまくコントロールし、北朝鮮をエジプトやリビアにしないようにと考えているのかもしれない。しかしそれは容易ではない。記事では「民族固有の風習と生活様式を守る」べきだとユニバーサルな表現を使っているが、「民族固有の風習」と「自由」をどこで切り分けようとしているのであろうか。
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-09-07-0049
「青年節祝賀文」に関する記事の中でも指摘した金正恩さんの言葉「反動的な思想文化浸透と心理謀略戦は、今日、侵略策動で用いられている基本手段であり、その主たる対象は青年たちである」でこの記事は始まっている。
敢えて、金正恩さんがこのようなことを言うのは、一つは「反動的な思想文化浸透」が北朝鮮で深刻な問題になっている、もう一つは「反動的な思想文化」には、自分(金正恩)が許容する範囲内でのみ接して良いということを伝えたいのであろうか。また、この記事ではエジプトやリビアにおける民主化の例を挙げて、それが「帝国主義者が若者に反動的思想文化」を植え付けた結果でもあると述べている。
興味深い記述を見ていくと、次のとおりだ。
まず、「彼らは、自らの支配主義野望を実現することにおいて、反動的な思想文化が軍事力に劣らない威力を発揮している」とソフトパワーの存在に対する認識を表明し、その手法として「帝国主義者たちは、他国に輸出する設備や商品に資本主義を宣伝する字句や淫乱な画をつけ、人々の目を引こうとしている」としている。これは、主として中国から密輸される、中国製も含む「帝国主義者」の物品のことを述べているのではないだろうか。「帝国主義者」の製品を日々使用している日本でも「資本主義を宣伝する字句や淫乱な画」がつけられた製品を目にすることはほとんどない。それは、ソフトパワーの本質はそんなことではなく、これらの製品自体が持つ相対的優位性にあるからなのだが、しかしそうとも書けないのでこう書いているのであろう。記事には、そうしたことを通じて「資本主義に対する幻想」を持つようになると書いているが、「幻想」かどうかは別とし、ソフトパワーの威力はそこにある。
そして、「帝国主義者」は「新しいことに対する好奇心が非常に強い」青年に対しピンポイント的にソフトパワーによる謀略戦を展開しているとし、「少なからぬ青年が政治よりも流行や娯楽により多くの興味を持っていることを巧妙に利用し、彼らを対象とする放送で娯楽番組を大幅に増やし、その中に資本主義制度の『優位性』を宣伝する報道資料などを挟み込んでいることなども決して偶然ではない」とその実例を挙げている。これは、やはり中国経由で密輸される韓国ドラマなどについて述べているのではないだろうか。
続いて、思想教育の重要性について述べ、「思想教育事業をきちんと行わないことは、青年たちを失うことと同じだ」とまでその重要性を強調している。北朝鮮では、「思想教育事業」は十分に行われていると思うのだが、そのほころびが青年層を中心に出てきているということなのだろうか。
そして終わりで「反動的な思想文化浸透と心理謀略戦の空間がとても広く、その形式と方法が多様なので、それを粉砕するための対策を立て、敵対勢力との闘争を果敢に展開しなければならない」としている。北朝鮮も思想文化浸透の「空間が広」がり、その「形式と方法が多様」化したので、その対策に悩んでいるということなのであろうか。
もしかすると金正恩さんは、「反動的な思想文化」をシャットアウトしていてもどうせ入ってくるので、少しずつ取り入れながらも、それをうまくコントロールし、北朝鮮をエジプトやリビアにしないようにと考えているのかもしれない。しかしそれは容易ではない。記事では「民族固有の風習と生活様式を守る」べきだとユニバーサルな表現を使っているが、「民族固有の風習」と「自由」をどこで切り分けようとしているのであろうか。