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    「米国の対朝鮮敵対視政策は朝鮮半島核問題解決の基本障害 朝鮮民主主義人民共和国外務省忘備録」(「労働新聞」 2012年9月1日)

    「朝鮮中央通信」がこのような記事を配信し、「労働新聞」にも同様の記事が掲載された。

    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-09-01-0030&chAction=L

    記事の内容は、基本的には「米国が北朝鮮を敵対視しないといいながらも、実際には敵対視している」という非難である。記事には現状だけではなく、これまで米国が行ってきた、北朝鮮が主張する「対北朝鮮敵対視政策」が、解放前後から時系列的に書かれており、資料性は高い。それだけあって長文で、「労働新聞」のpdf版を見ると、5面の約4分の3を占めている。

    ここでは、いくつか興味深い記述について紹介しておくことにする。

    記事は、やはり2.29合意の話から始まり、4月13日のロケット発射に際しそれが「長距離ミサイルと同じ技術を利用した発射である」ことを理由に、米国が合意の履行を中断したことを非難している。そして、「衛星を発射する運搬ロケットでも弾頭を搭載するミサイルでも、その推進技術は類似したものであることは事実である」とその類似性を認めている。これまでの北朝鮮外務省スポークスマン談話などをざっと確認してみたが、「長距離ミサイルではない」という主張のみで、「推進技術が類似している」ことを認める内容はない。そもそも、2.29合意が破綻した最大の原因は、米朝間で「ミサイルかロケットか」という「目的」に関する主張が異なったからである。米国務省定例記者会見でも、2.29協議の過程でこの点がどのように双方で確認されたのかについては曖昧にされてきた。
    今回の「忘備録」でも、結局は、その「目的」の正統性を他国のロケット発射と比較しながら米国を非難しているが、「推進技術」について言及したことは興味深い。というのは、そもそも「弾道ミサイルの推進技術を利用したロケット発射も禁止」しているのは、国連安保理決議1874であるからである。北朝鮮は、これまで安保理決議は不当として無視してきたが、今後、「推進技術」についても米朝協議の中に盛り込んでいこうという考えの表れではないのだろうか。もちろん、この記事からすれば「推進技術が同じでもロケットとミサイルは区別しろ」という主張に使われると思われるが、発射の「目的」ではなく「推進技術」自体を問題にするとなれば一歩前進である。

    「忘備録」の終わりの方では、米国へのメッセージとして「米国には、まだ二つの道がある」、「一つは、冷戦の思考方式を大胆に根本的に変え、時代錯誤的な対朝鮮敵対視政策を放棄することで朝鮮半島の平和と安全にも寄与し、自国の安全も確保する道である」とした上で、「偉大な指導者金正日同志は、既に1997年8月4日、我々は米国を百年宿敵とみなそうとはしておらず、朝米関係が正常化されることを望んでいる」、「敬愛する金正恩元帥様は、我々に友好的に対する国家とは過去にとらわれずに関係発展の新たな道を開いていくことを望んでおられる」と金正日さんについては対米関係、金正恩さんについては諸外国との関係の正常化を望んでいることを紹介している。金正日さんの言葉は、少し古いので確認に手間取るが、金正恩さんの「過去にとらわれず関係発展」という言葉については、少なくとも彼の「労作」などでは確認できない。第16回非同盟諸国会議で8月30日に演説した金永南さんも奇しくも金正恩さんの言葉として同じ表現を使っている。もしかすると、これは北朝鮮からの対米関係のみならず、ゆっくりと動き出した対日関係改善へ向けてのメッセージではないだろうか。

    「労働新聞」:「第16非同盟諸国会議で最高人民会議常任委員会委員長金永南同志演説」
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-09-01-0012&chAction=D

    もちろん、「もう一つの道は、今のように米国が敵対視施策を継続的に維持し、それに対処して我々の核兵器が継続的に拡大強化されるというものである」と米国を威嚇することも忘れていない。

    米国の大統領選挙を前に、少しずつ揺さぶりをかけようという戦略であろうか。

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    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
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    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
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