北南板門店会談を評した中国外交部報道官が引用した詩 (2018年4月27日 「中国外交部」)
前出の中国語情報をいつも下さる方は、中国外交部報道官が引用した詩についても、興味深い情報を下さった。
27日の北南会談についてのコメントを求められた中国外交部報道官は、以下。
****************
A:我々は皆、テレビを通して今日午前朝韓の指導者が板門店の軍事分界線を越えて握手し会談するという、歴史的瞬間を見た。我々は、朝韓の指導者が跨いだこの歴史的な一歩を拍手で迎え、彼らが現前させた政治的決断と勇気に称賛を表明し、この度の会談でポジティブな成果が得られることを心より祈る。
「劫波(ごうは)を度(わた)り尽くして兄弟在り/相逢(あ)いて一笑すれば恩仇泯(ほろ)ばん」我々はこの度の板門店での歴史的会談を契機として、さらに進んで半島の長期にわたる平和と安定の新たな道のりをひらくことを期待している。
「2018年4月27日外交部发言人华春莹主持例行记者会」
www.fmprc.gov.cn/web/fyrbt_673021/jzhsl_673025/t1555158.shtml
*****************
コメントを下さった方によると、この「渡尽劫波兄弟在,相逢一笑泯恩仇」という詩は、
**************
外交部のコメントに詩をこの長さで引用するというのは珍しいのではないかと思います。歓迎を演出するために事前に用意されたという感じがします。
この詩ですが、1933年の魯迅のもので、「大災厄の波を渡りおえたさきに、両国の兄弟がいる。めぐりあって一笑すれば、そのとき、古い仇恨(きゅうこん)は消滅するのであろう。」という意味だとのことです。(上記読み下しも下記より孫引き)
crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000126683
百度百科のページの解説も同様ですが、「兄弟の間の友情」を「仇恨は消滅」の条件としている点で解釈がやや違います。
https://baike.baidu.com/item/%E4%B8%80%E7%AC%91%E6%B3%AF%E6%81%A9%E4%BB%87
同じページには、当該の詩について、1932年の第一次上海事変(日華衝突)ののち、中国現地で巣を失った鳩を飼っていたものの結局亡くしてしまった西村医師(日本人)が供養塔を建てたことにあわせてのものと解説されています。まあ今回に限っては日本は関係ないでしょうが…
****************
と説明して下さっている。
中国語が分からない筆者としては、中国外交部の英訳に頼らざるを得ないのであるが、英語では、
「"brotherhood will survive all vicissitudes, and a smile is all we need to dissolve old grudges"」
と訳されている。それをさらに翻訳して日本語にすると、「兄弟的な同胞は(長く続いてきた)苦難(浮沈)を克服し、古い恨(ハン)みをなくすために必要なのは、たった1回の微笑みだ」とでも訳せるのであろうか。「vicissitudes」という語彙は分からなかったので、色々が辞書で調べてみたが、「栄枯盛衰」という訳語がたくさん出てきた。、「大災厄の波を渡りおえたさきに」という意味をこの「vicissitudes」という語彙で表そうとしているのではないかと思う。また、「仇」を「grudges」と訳しているところも、朝鮮民族が持つ特有の「恨(한=ハン)」を意識した上手な翻訳だと思う。
中国情報を下さった方も指摘しておられるように、中国外交部は英訳も含めてこの詩を準備しておいたのであろう。公式朝鮮語訳がどこかにあれば見たいものだ。『新華社』の朝鮮語版を探せば出ているかも知れない。
<追記: 2018/05/01 1116>
詩の英訳を知り合いの文学者に見せたところ、下記のような訳ではないかという意見を頂いた。
「同胞愛は(様々な)浮き沈みがあろうとも、(それをものともせず)乗り越えて(前進して)いくだろう。(そして)積年の恨み辛みを解消するために我々に必要なのは、ただ微笑みだけなのだ」
27日の北南会談についてのコメントを求められた中国外交部報道官は、以下。
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A:我々は皆、テレビを通して今日午前朝韓の指導者が板門店の軍事分界線を越えて握手し会談するという、歴史的瞬間を見た。我々は、朝韓の指導者が跨いだこの歴史的な一歩を拍手で迎え、彼らが現前させた政治的決断と勇気に称賛を表明し、この度の会談でポジティブな成果が得られることを心より祈る。
「劫波(ごうは)を度(わた)り尽くして兄弟在り/相逢(あ)いて一笑すれば恩仇泯(ほろ)ばん」我々はこの度の板門店での歴史的会談を契機として、さらに進んで半島の長期にわたる平和と安定の新たな道のりをひらくことを期待している。
「2018年4月27日外交部发言人华春莹主持例行记者会」
www.fmprc.gov.cn/web/fyrbt_673021/jzhsl_673025/t1555158.shtml
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コメントを下さった方によると、この「渡尽劫波兄弟在,相逢一笑泯恩仇」という詩は、
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外交部のコメントに詩をこの長さで引用するというのは珍しいのではないかと思います。歓迎を演出するために事前に用意されたという感じがします。
この詩ですが、1933年の魯迅のもので、「大災厄の波を渡りおえたさきに、両国の兄弟がいる。めぐりあって一笑すれば、そのとき、古い仇恨(きゅうこん)は消滅するのであろう。」という意味だとのことです。(上記読み下しも下記より孫引き)
crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000126683
百度百科のページの解説も同様ですが、「兄弟の間の友情」を「仇恨は消滅」の条件としている点で解釈がやや違います。
https://baike.baidu.com/item/%E4%B8%80%E7%AC%91%E6%B3%AF%E6%81%A9%E4%BB%87
同じページには、当該の詩について、1932年の第一次上海事変(日華衝突)ののち、中国現地で巣を失った鳩を飼っていたものの結局亡くしてしまった西村医師(日本人)が供養塔を建てたことにあわせてのものと解説されています。まあ今回に限っては日本は関係ないでしょうが…
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と説明して下さっている。
中国語が分からない筆者としては、中国外交部の英訳に頼らざるを得ないのであるが、英語では、
「"brotherhood will survive all vicissitudes, and a smile is all we need to dissolve old grudges"」
と訳されている。それをさらに翻訳して日本語にすると、「兄弟的な同胞は(長く続いてきた)苦難(浮沈)を克服し、古い恨(ハン)みをなくすために必要なのは、たった1回の微笑みだ」とでも訳せるのであろうか。「vicissitudes」という語彙は分からなかったので、色々が辞書で調べてみたが、「栄枯盛衰」という訳語がたくさん出てきた。、「大災厄の波を渡りおえたさきに」という意味をこの「vicissitudes」という語彙で表そうとしているのではないかと思う。また、「仇」を「grudges」と訳しているところも、朝鮮民族が持つ特有の「恨(한=ハン)」を意識した上手な翻訳だと思う。
中国情報を下さった方も指摘しておられるように、中国外交部は英訳も含めてこの詩を準備しておいたのであろう。公式朝鮮語訳がどこかにあれば見たいものだ。『新華社』の朝鮮語版を探せば出ているかも知れない。
<追記: 2018/05/01 1116>
詩の英訳を知り合いの文学者に見せたところ、下記のような訳ではないかという意見を頂いた。
「同胞愛は(様々な)浮き沈みがあろうとも、(それをものともせず)乗り越えて(前進して)いくだろう。(そして)積年の恨み辛みを解消するために我々に必要なのは、ただ微笑みだけなのだ」