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    韓国大統領特使派遣結果:韓国メディア情報とそれに対するコメント (2018年3月6日 「聯合ニュース」)

    6日、『聯合ニュース』が報じた韓国大統領特使訪朝結果をまとめておく。

    『聯合ニュース』、「남북정상회담 4월 말 개최…김정은 "비핵화 북미대화 가능"(종합2보)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2018/03/06/0501000000AKR20180306178752001.HTML?template=2085

    1.4月、板門店の韓国側地域の「平和の家」で、第3回南北首脳会談を開催することで合意。

    「ソウル訪問を要請すべき」と拙ブログに書いてきたが、ソウルまでは来なくても、板門店の「韓国側地域」で首脳会談を開催することにしたということは、北南関係ではまさに歴史的である。板門店という選択は正しい。思えばソウル訪問は、迎え入れる韓国にとっても、「元帥様」の身辺安全確保、また賓客の「尊厳」を保証するという点においては、とても困難である。一般人の立ち入りが統制されている板門店であれば、「元帥様」の身辺警備は容易であるし、「尊厳毀損」をするような人々はシャットアウトできる。ともかく、「元帥様」の平壌招請へのカウンター提案として出された文在寅提案を「元帥様」が受け入れたいうことは評価できるし、過去記事で懸念した「欠礼」にもなっていない。

    2.南北首脳間のホットラインを設置し、首脳階段前に初通話をする。

    過去において、北南首脳間にホットラインが開設されたのかどうかについては要確認であるが、少なくとも「元帥様」の時代にはなかった。西海での有事対応用のホットラインすら長期にわたり閉鎖されていた現実を考えれば、まさに「元帥様」の言うとおり、「想像を超越する」できごとである。「初通話」のタイミングは明らかにされていないが、ここまで前面に出てきた「元帥様」なのだから、できるだけ早いタイミングで「初通話」をした方が良い。米国の反応を見てからとも思ったが、昨夜の記事に書いたように、トランプも肯定的なツイートをしているので、トランプの気が変わらなければ(これが大いにあり得る)、米国を気にすることなく挨拶程度は交わしておく方が良い。


    3.北朝鮮は、非核化と朝米関係正常化を主題に米国と対話をする用意があるという点を明らかにした。また、北は南側に対する武力を行使しないと約束した。

    これを強調するメディアが多いが、基本的には「非核化と朝米関係正常化」は北朝鮮がずっと言ってきた、「対北朝鮮敵対視政策と米国による核威嚇がなければ核は不要」という北朝鮮の従来の主張である。もちろん、最近の北朝鮮の論調は、「核はテーブルの上に置かない」、「核保有国としての戦略的地位」であったので、朝米関係が超緊張状態に至る以前のレベルに引き下げたということになる。ともあれ、北朝鮮がレベルを引き戻し、米国がそれを受け入れて「入口」に立てるのであれば、「出口」に向けての難関は数多くあるにしても、トンネルの先は闇ではなく、一点の光が見えていることには違いない。

    また、「元帥様」は、「非核化は首領様の遺訓」と述べたという。「核武力完成」宣言後、北朝鮮の論調から「非核化は首領様の遺訓」という言葉は消え去っていたが、再び伝家の宝刀を持ちだしてきたということは、「非核化」を議論する国内向けのエクスキューズにもなるし、対外向けの本気度の証ともなる。もちろん、「首領様」の「非核化」には「対朝鮮敵対視政策中断」そして「平和協定締結」という長い道のりがセットになっているのだが、それでも「首領様の遺訓」を出した点は重要である。

    また、「元帥様」は、「対話の相手として、真摯な対応を受けたい」とも発言したという。「真摯な対応」の含意は、米国からの一方的な非核化要求ではなく、北朝鮮側の要求も聞き入れろということであろう。

    4.北朝鮮は、近々再開される韓米合同演習に対して理解したという立場を明らかにした。

    この事実は大きい。北朝鮮が1を実現するための条件として「中止」を求めていれば、1の合意は不可あったはずである。ともかくも、何らかの「軍事演習」を韓米が合同で行うということを「元帥様」が認めたことは前進である。それほど、1の実現を「元帥様」も望んでいることの証である。韓国側としても、「軍事演習」の内容や規模をどのようにするのか、今後、米国と調整する必要がある。北朝鮮としても、「定例的な」というレベルを超えた演習、とくにこのところ継続してきた「斬首作戦」のような演習は絶対に受け入れることはしないであろう。この系では、拙ブログでも指摘したように、米軍単独でハワイにおいて「斬首作戦」的な訓練は実施済みであるという点は大きい。可能であれば、公開できる部分については、北朝鮮の軍関係者を招いて見せるというやり方もあり得る。「透明性の確保」を理由にすれば、北朝鮮も拒まないはずだし、そのお返しに韓国軍関係者が人民軍の軍事演習の視察に行けば良い。

    5.対話が持続している間、追加的な核実験及び弾道ミサイル実験など、戦略挑発を再開することはないことを明らかにした。

    これを読んで直ぐに思ったのは、結局は、中国が提案していた「デュアル・トラックアプローチ」に近い形で落としたということである。それが実現したのも、中国からの要請ではなく、北南の当事者間で直接的な話し合いが行われたからである。北朝鮮は、過去の非核化に向けた対話が進行中、延辺の核施設を爆破するという派手なパフォーマンスを演じたことがある。米国の北朝鮮研究機関が北南対話に合わせて公開した「煙が出ているプルトニウム製造施設」の写真も、もしかすると、北朝鮮のこうしたパフォーマンスに向けた準備だった可能性がある。煙が消えるかもしれないからだ。

    対話進行中も北朝鮮は核・ミサイル開発を続けるであろう。その意味では「時間稼ぎ」と言えるが、注意すべき点は、過去における「時間稼ぎ」と全く意味が異なるという点である。過去の時間稼ぎは、「完成」に向けての「時間稼ぎ」であったが、今は核爆弾の重量やミサイルの能力(再突入と命中精度)が不十分出るとはいえ、「完成」している段階である。「再突入と命中精度」を上げ、核爆弾を小型化・軽量化するためには、どうしても実験が必要となる。それに対するモラトリアムが実施されるということは、「時間稼ぎ」を停止させていることと同様である。今の北朝鮮にとって、隠れてウランを濃縮しようがプルトニウムを抽出しようが、それほどの意味はない。この点において、「時間稼ぎ」の意味合いは低下しているはずである。

    中国外交部の反応はまだ見ていないが、評価していることは間違いない。「元帥様」も表に出る準備は、今回の韓国大統領特使との会見でかなり整ったはずだし、朝米対話が始まれば、中国も積極的な関与を望み、「元帥様」の訪中を促すことになるであろう。

    ともかく、平昌パラリンピック後も、東北アジアの平和がしばらくは維持できるという状況は歓迎できる。

    韓国の芸術団の平壌公演もいわれているようだが、それならば、北朝鮮の「国宝級芸術団」のソウル公演を首脳会談に合わせて大々的にやって欲しいものである。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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