「<紹介編集物>地方特産の食べ物 - 咸鏡北道地方の犬肉スープ」(2012年7月18日 「朝鮮中央TV」)
「懲罰」第9部がなかなかアップロードされない。もしかすると、昨日は金正恩さんが元帥称号を得たことと関連する特別番組か何かがあり、放送されなかったのであろうか。urimizokkiriには「朝鮮中央通信」の記事と同じ字句を男性アナウンサーが読み上げるだけの短い番組は掲載されている。ざっと眺めただけであるが、今日の「労働新聞」には、元帥称号授与を喜ぶ将兵たちの写真が多く掲載されているので、テレビでもそういう番組が放送されたのであろうか。
それで何かおもしろい番組がないかといくつかのファイルをダウンロードしてみたら、「犬肉スープ」の作り方を紹介する番組があった。
http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-18-13.flv
88年のソウルオリンピック前までの韓国では「保身湯(ポシンタン)」という名前で犬肉スープを出す食堂はあちこちにあった。食堂の看板には大きく「犬肉」と書かれていて、市場では食肉用の犬が売られていた。ところが、主に愛犬家が多い英国から「オリンピックの開催国で、犬肉を食べるのは野蛮」という批判を受け、韓国政府は急遽、とりあえずソウルでの「ポシンタン」提供を禁止した(この禁止令が出されたのは87年だったかもしれない)。88年と言えば、民主化宣言後とはいえ、まだ政府の権威主義的体質は残っており、国民も長い独裁体制下での習い性があったため、「ポシンタン」や「犬肉」の看板は表向きは街から消えていった。「韓国の伝統的な食べ物に外国から文句を言われる筋合いはない」という批判もあったが、韓国国民は「犬肉」以上にオリンピック成功への期待が大きかったのであろう。
もちろん、「伝統的な食べ物」はそう簡単に消え去るわけがない。「栄養湯」とか「湯」など、名前を変えて提供され続けていた。私も大学院の友人に連れて行ってもらったが、確かに中身は「ポシンタン」であった。
で、2012年現在の韓国はどうなのか。厳密に言えば、私が食べたのは2010年であるが、「ポシンタン」は「湯」などの名前で存在し続けている。しかも、ソウルのど真ん中(ロッテ百貨店の近く)の食堂で堂々と提供されている。この食堂は私の「タンゴルチプ(馴染みの店)」で、ソウルに行くとほぼ必ず行く。店の主人は、日本人が韓国に来るたびに食べに来るなどということは知らないだろうが、ともかくほぼ必ず行く。今現在、韓国で「ポシンタン」についての規制がどのようにされているのか分からないが、「湯」として出しているし「犬肉」の看板もないので、何らかの規制はかけられているのであろう。
昔話のついでに書けば、韓国で「ポシンタン」を初めて食べたのは、全州である。全北大学の夏期日本語講座のお手伝いをするために行ったのだが、全北大の先生がリクエストもしないのに連れて行って下さった。川沿いの食堂で川を見ながら食事をするのであるが、焼酎(ソウルの真露ではないのがこれまた良かった、ブランドは失念)と「ポシンタン」の組み合わせは絶妙であった。それ以来、「ポシンタン」ファンである。
90年代半ばであったか、中国朝鮮族自治州の延吉市に企業調査に行ったとき、毎朝、白山ホテルの近くの朝鮮族が経営する食堂で「ポシンタン」を食べた。店のオバサンに、コリアンダー(香菜)を入れるかと聞かれ、「入れる」と答えたら「あんたは韓国人じゃないねぇ。どこから来たんだい」と聞かれたのを今でも覚えている。オバサンによると、韓国人はコリアンダーの独特の香りを嫌い、入れたがらなかったそうだ。2010年に久しぶりに延吉に行ったが、その変貌ぶりには驚いた。探す時間もなかったが、あのオバサンの店はもうなくなってしまったのであろう。
昔話ばかりになってしまい、肝心の番組の話には入れないが、番組では作り方を紹介しているだけなので、あまりコメントはない。韓国に犬肉料理の作り方を紹介する番組や料理本があるのか分からないが、作り方を知りたい人にとっては貴重な番組である。番組の最後で「このように、見た目もおいしそうだし、民族的な香りが溢れる犬肉スープを家庭でも作り食卓にのせて下さい」と言っている。さすがに「自主」の国だ。
犬肉スープの調理例
Source: KCTV,http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-18-13.flv
いつの日か、金正恩さんと共にミセス金正恩が作った「犬肉スープ」を食べてみたいものだ(藤本さんはできないだろうから)。
<追記>
この記事を投稿し終えたら、「懲罰」第9部がアップロードされていた。
それで何かおもしろい番組がないかといくつかのファイルをダウンロードしてみたら、「犬肉スープ」の作り方を紹介する番組があった。
http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-18-13.flv
88年のソウルオリンピック前までの韓国では「保身湯(ポシンタン)」という名前で犬肉スープを出す食堂はあちこちにあった。食堂の看板には大きく「犬肉」と書かれていて、市場では食肉用の犬が売られていた。ところが、主に愛犬家が多い英国から「オリンピックの開催国で、犬肉を食べるのは野蛮」という批判を受け、韓国政府は急遽、とりあえずソウルでの「ポシンタン」提供を禁止した(この禁止令が出されたのは87年だったかもしれない)。88年と言えば、民主化宣言後とはいえ、まだ政府の権威主義的体質は残っており、国民も長い独裁体制下での習い性があったため、「ポシンタン」や「犬肉」の看板は表向きは街から消えていった。「韓国の伝統的な食べ物に外国から文句を言われる筋合いはない」という批判もあったが、韓国国民は「犬肉」以上にオリンピック成功への期待が大きかったのであろう。
もちろん、「伝統的な食べ物」はそう簡単に消え去るわけがない。「栄養湯」とか「湯」など、名前を変えて提供され続けていた。私も大学院の友人に連れて行ってもらったが、確かに中身は「ポシンタン」であった。
で、2012年現在の韓国はどうなのか。厳密に言えば、私が食べたのは2010年であるが、「ポシンタン」は「湯」などの名前で存在し続けている。しかも、ソウルのど真ん中(ロッテ百貨店の近く)の食堂で堂々と提供されている。この食堂は私の「タンゴルチプ(馴染みの店)」で、ソウルに行くとほぼ必ず行く。店の主人は、日本人が韓国に来るたびに食べに来るなどということは知らないだろうが、ともかくほぼ必ず行く。今現在、韓国で「ポシンタン」についての規制がどのようにされているのか分からないが、「湯」として出しているし「犬肉」の看板もないので、何らかの規制はかけられているのであろう。
昔話のついでに書けば、韓国で「ポシンタン」を初めて食べたのは、全州である。全北大学の夏期日本語講座のお手伝いをするために行ったのだが、全北大の先生がリクエストもしないのに連れて行って下さった。川沿いの食堂で川を見ながら食事をするのであるが、焼酎(ソウルの真露ではないのがこれまた良かった、ブランドは失念)と「ポシンタン」の組み合わせは絶妙であった。それ以来、「ポシンタン」ファンである。
90年代半ばであったか、中国朝鮮族自治州の延吉市に企業調査に行ったとき、毎朝、白山ホテルの近くの朝鮮族が経営する食堂で「ポシンタン」を食べた。店のオバサンに、コリアンダー(香菜)を入れるかと聞かれ、「入れる」と答えたら「あんたは韓国人じゃないねぇ。どこから来たんだい」と聞かれたのを今でも覚えている。オバサンによると、韓国人はコリアンダーの独特の香りを嫌い、入れたがらなかったそうだ。2010年に久しぶりに延吉に行ったが、その変貌ぶりには驚いた。探す時間もなかったが、あのオバサンの店はもうなくなってしまったのであろう。
昔話ばかりになってしまい、肝心の番組の話には入れないが、番組では作り方を紹介しているだけなので、あまりコメントはない。韓国に犬肉料理の作り方を紹介する番組や料理本があるのか分からないが、作り方を知りたい人にとっては貴重な番組である。番組の最後で「このように、見た目もおいしそうだし、民族的な香りが溢れる犬肉スープを家庭でも作り食卓にのせて下さい」と言っている。さすがに「自主」の国だ。
犬肉スープの調理例
Source: KCTV,http://www.uriminzokkiri.com/contents/movie/centertv/streams/_definst_/2012-07-18-13.flv
いつの日か、金正恩さんと共にミセス金正恩が作った「犬肉スープ」を食べてみたいものだ(藤本さんはできないだろうから)。
<追記>
この記事を投稿し終えたら、「懲罰」第9部がアップロードされていた。