北朝鮮、短距離ミサイル3発発射するも失敗か、ミサイルではなく放射砲の可能性も、結局発射した物は何だったのか (2017年8月26日 「聯合ニュース」)
<追記3: 2017/08/18 1600>
27日、FOX NEWSとのインタビューで、米国務長官ティラーソンは、飛翔体が「弾道ミサイルであった」とした上で、「弾道ミサイルの発射は、安保理決議違反」だと北朝鮮を批判した。同ニュースでは、トランプとティラーソンがそれぞれ、北朝鮮が自制していると述べている映像を流した上で、ティラーソンに「2人の判断は間違っていたのか」と問いかけている。これに対しティラーソンは「弾道ミサイルは安保理決議違反であるが、2人の判断は間違っているとはいえない。もう少し北朝鮮の出方を見る必要がある」と述べている。
Source: FOX NEWS, YouTube, 2017/08/27
飛翔体について、米軍が当初「3発失敗」とし、その後「2発成功」と修正、韓国軍は「放射砲」説を唱え、今、『聯合ニュース』の記事を見たら、「短距離弾道ミサイルの可能性が高い」と訂正されていた。
『聯合ニュース』、「軍 "北발사체 단거리 탄도미사일 가능성 높아…한미 중간평가"(종합)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/08/28/0505000000AKR20170828096952014.HTML?template=2087
実は、私は、何がどうであれば「弾道ミサイル」であるのかという定義が分からなかった。北朝鮮が少し前に実験した、水面ギリギリを飛ぶような飛翔体が巡航ミサイルであることぐらいは分かるが、今回発射された飛翔体のように、高度50kmまで達するようなものが、「弾道ミサイル」なのかどうか、どこで判断するのか分からず、例のSevelesburg先生に質問をぶつけてみた。
Savelsburg先生からまず頂いたのは、「弾道ミサイルかどうかは、軌道で判断する。弾道ミサイルの場合は、推進力での飛行は比較的短い時間で、その後の軌道は重力により決定される。一方、巡航ミサイルは、飛行中のほとんどの時間、推進力と空気力学的でコントロールされている」という回答であった。この辺りは、何となく分かっていた部分である。到達高度についても質問しておいたのだが、「現実的に、弾道ミサイルは飛行距離の最高約3分の1までの高度に達する」という回答が来た。250kmで50kmは、3分の1からすればやや低い感じはするので、「では、やはり韓国が言うように放射砲なのか」と質問したら、「到達高度50kmで250kmの飛行距離は、弾道ミサイルの軌道だと思う」と返信が来た。しかし、その上で「弾道ミサイルと放射砲の違いは曖昧」だとし、「違いがあるとすれば、ブースト・フェーズで放射砲は誘導されていないが、弾道ミサイルは角度を変えるなど誘導されている」とし、「非誘導の放射砲の場合、目標地点は発射時の発射台の角度で決ま」り、「射程距離が長いミサイルの場合は、ブースト・フェーズで誘導することで、より正確に目標地点に到達させることができる」と返信が来た。
続けて、「米軍はなぜ始めに3発失敗と判断したと思うか」と質問したところ、「想像ではあるが、米軍が発射された飛翔体を長距離弾道ミサイルと誤認したからではないだろうか」と返信が来た。確かに、250kmで落下してしまえば、長距離弾道ミサイルとしては失敗であろう。
続けて、「軌道で放射砲か弾道ミサイルか判断できないとすれば、何を見ればよいのか」と質問したところ、「発射角しかない」と。しかしそれでも「多くの弾道ミサイルは垂直に発射されているが、垂直以外の角度で発射されるような発射台もあるのでややこしい」としている。確実に言えることは、「垂直に発射されたミサイルは、非誘導型ではない」ということだけであるという。確かに、そのまま空高く飛んで、自分の頭上に再び落ちてくるわけだから、そういうことであろう。
こうしたことからすると、やはり「元帥様」は、放射砲とも弾道ミサイルともいえる、微妙なものを発射したようだ。結局、飛翔体を弾道ミサイルと結論づけるのか、放射砲とするのかは、政治的な判断が入り込む余地がありそうだ。やはり、「先軍節」を契機に米韓合同軍事演習にしつつ、自制するには、放射砲であれ弾道ミサイルであれ、今回発射した飛翔体が最適だったのであろう。
「3発中1発は発射直後に爆発した」というのが米軍の発表なので、「爆発」がみっともないから公開しないのかと思っていたが、元々、どちらとも言えない飛翔体を発射することが目的だったのなら、公開など予定していなかったであろう。3発中に1発だけ新型ミサイルを混ぜて試験発射していたとすれば、結果は失敗でも、「元帥様」の作戦勝ちということか。発射のインターバルが長いのも、何かそういうことと関係がありそうな気がする。
<追記2: 2017/08/26 1644>
『時事通信』によると、米軍が「2発失敗」と発表を訂正し、「250km飛行した」と訂正した。依然として到達高度は明らかにされていないようだが、通常の発射角で発射され、「成功」した結果が250kmならばスカッド系の短距離ミサイルということになろう。スカッドも弾道ミサイルなので、これは安保理決議違反となる。米軍の発表がころころと変わる背景には、政治的な配慮があるのだろうか。
『JIJI.COM』、「「2発は失敗せず」と訂正=ミサイルの見方は維持―米軍」、https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170826-00000068-jij-n_ame
<追記: 2017/08/26 1244>
『聯合ニュース』によると、韓国政府関係者が「発射されたものは、現時点では改良された300mm放射砲(Multiple Rocket Launcher)と推測される」と述べたと伝えた。放射砲であれば、弾道ミサイル技術は使われていないので、安保理決議違反とはならない。また、下に書いた「新型ミサイル説」にも当てはまらない。
『聯合ニュース』、「靑, 北도발에 NSC상임위 소집…"300㎜ 대구경 다연장포 추정"(종합2보)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/08/26/0501000000AKR20170826030351001.HTML?template=2085
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26日、『聯合ニュース』が、米軍太平洋司令部の発表を引用しながら「6時49分、7時7分、7時19分」に「江原道キッデ一帯から」北朝鮮がミサイルを発射したが、「1発目と3発目は飛行に失敗、2発目はほとんど発射直後に爆発した」と報じた。
『聯合ニュース』、「北, 동해로 단거리미사일 3발 발사…"1발은 발사직후 폭발"(종합2보)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/08/26/0505000000AKR20170826013554014.HTML?template=2085
発射地点は、韓国に近い江原道なので、米韓合同軍事演習を意識した発射であろう。

Source: Google Map
それにしても、3発も発射してまともに飛行したものが1発もないというところが奇妙である。「グアム島包囲打撃」ならば、4発発射するはずだし、短距離弾道ミサイルなら3発全て失敗するということは考えにくい。そうなると、いつも北朝鮮がミサイル発射に失敗した際に書いているように、「失敗は成功の基」で、今回階発射したのは、何らかの新型ミサイルの可能性が高い。「250km飛行した」とも報道されているが、上昇高度については今のところ報じられていない。これが「火星-14」並に高ければ、250kmしか飛行しなかったとしても侮れない。
「元帥様」が「国防科学院」を「現地指導」した直後の発射なので、「報道」の中で言及した「炭素繊維」や「固形燃料」を使用したミサイルを発射し、米韓合同軍事演習を威嚇しつつ、「大成功」と発表しようとした可能性がある。強度が不十分な炭素繊維と充分な実証が行われていない固形燃料を組み合わせた結果が、今回の「大失敗」に繋がったのではないだろうか。
一つ前の記事に、米国務長官ティラーソンの北朝鮮に対する評価を書いたが、この発射について、米国はどう評価するのか。
27日、FOX NEWSとのインタビューで、米国務長官ティラーソンは、飛翔体が「弾道ミサイルであった」とした上で、「弾道ミサイルの発射は、安保理決議違反」だと北朝鮮を批判した。同ニュースでは、トランプとティラーソンがそれぞれ、北朝鮮が自制していると述べている映像を流した上で、ティラーソンに「2人の判断は間違っていたのか」と問いかけている。これに対しティラーソンは「弾道ミサイルは安保理決議違反であるが、2人の判断は間違っているとはいえない。もう少し北朝鮮の出方を見る必要がある」と述べている。
Source: FOX NEWS, YouTube, 2017/08/27
飛翔体について、米軍が当初「3発失敗」とし、その後「2発成功」と修正、韓国軍は「放射砲」説を唱え、今、『聯合ニュース』の記事を見たら、「短距離弾道ミサイルの可能性が高い」と訂正されていた。
『聯合ニュース』、「軍 "北발사체 단거리 탄도미사일 가능성 높아…한미 중간평가"(종합)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/08/28/0505000000AKR20170828096952014.HTML?template=2087
実は、私は、何がどうであれば「弾道ミサイル」であるのかという定義が分からなかった。北朝鮮が少し前に実験した、水面ギリギリを飛ぶような飛翔体が巡航ミサイルであることぐらいは分かるが、今回発射された飛翔体のように、高度50kmまで達するようなものが、「弾道ミサイル」なのかどうか、どこで判断するのか分からず、例のSevelesburg先生に質問をぶつけてみた。
Savelsburg先生からまず頂いたのは、「弾道ミサイルかどうかは、軌道で判断する。弾道ミサイルの場合は、推進力での飛行は比較的短い時間で、その後の軌道は重力により決定される。一方、巡航ミサイルは、飛行中のほとんどの時間、推進力と空気力学的でコントロールされている」という回答であった。この辺りは、何となく分かっていた部分である。到達高度についても質問しておいたのだが、「現実的に、弾道ミサイルは飛行距離の最高約3分の1までの高度に達する」という回答が来た。250kmで50kmは、3分の1からすればやや低い感じはするので、「では、やはり韓国が言うように放射砲なのか」と質問したら、「到達高度50kmで250kmの飛行距離は、弾道ミサイルの軌道だと思う」と返信が来た。しかし、その上で「弾道ミサイルと放射砲の違いは曖昧」だとし、「違いがあるとすれば、ブースト・フェーズで放射砲は誘導されていないが、弾道ミサイルは角度を変えるなど誘導されている」とし、「非誘導の放射砲の場合、目標地点は発射時の発射台の角度で決ま」り、「射程距離が長いミサイルの場合は、ブースト・フェーズで誘導することで、より正確に目標地点に到達させることができる」と返信が来た。
続けて、「米軍はなぜ始めに3発失敗と判断したと思うか」と質問したところ、「想像ではあるが、米軍が発射された飛翔体を長距離弾道ミサイルと誤認したからではないだろうか」と返信が来た。確かに、250kmで落下してしまえば、長距離弾道ミサイルとしては失敗であろう。
続けて、「軌道で放射砲か弾道ミサイルか判断できないとすれば、何を見ればよいのか」と質問したところ、「発射角しかない」と。しかしそれでも「多くの弾道ミサイルは垂直に発射されているが、垂直以外の角度で発射されるような発射台もあるのでややこしい」としている。確実に言えることは、「垂直に発射されたミサイルは、非誘導型ではない」ということだけであるという。確かに、そのまま空高く飛んで、自分の頭上に再び落ちてくるわけだから、そういうことであろう。
こうしたことからすると、やはり「元帥様」は、放射砲とも弾道ミサイルともいえる、微妙なものを発射したようだ。結局、飛翔体を弾道ミサイルと結論づけるのか、放射砲とするのかは、政治的な判断が入り込む余地がありそうだ。やはり、「先軍節」を契機に米韓合同軍事演習にしつつ、自制するには、放射砲であれ弾道ミサイルであれ、今回発射した飛翔体が最適だったのであろう。
「3発中1発は発射直後に爆発した」というのが米軍の発表なので、「爆発」がみっともないから公開しないのかと思っていたが、元々、どちらとも言えない飛翔体を発射することが目的だったのなら、公開など予定していなかったであろう。3発中に1発だけ新型ミサイルを混ぜて試験発射していたとすれば、結果は失敗でも、「元帥様」の作戦勝ちということか。発射のインターバルが長いのも、何かそういうことと関係がありそうな気がする。
<追記2: 2017/08/26 1644>
『時事通信』によると、米軍が「2発失敗」と発表を訂正し、「250km飛行した」と訂正した。依然として到達高度は明らかにされていないようだが、通常の発射角で発射され、「成功」した結果が250kmならばスカッド系の短距離ミサイルということになろう。スカッドも弾道ミサイルなので、これは安保理決議違反となる。米軍の発表がころころと変わる背景には、政治的な配慮があるのだろうか。
『JIJI.COM』、「「2発は失敗せず」と訂正=ミサイルの見方は維持―米軍」、https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170826-00000068-jij-n_ame
<追記: 2017/08/26 1244>
『聯合ニュース』によると、韓国政府関係者が「発射されたものは、現時点では改良された300mm放射砲(Multiple Rocket Launcher)と推測される」と述べたと伝えた。放射砲であれば、弾道ミサイル技術は使われていないので、安保理決議違反とはならない。また、下に書いた「新型ミサイル説」にも当てはまらない。
『聯合ニュース』、「靑, 北도발에 NSC상임위 소집…"300㎜ 대구경 다연장포 추정"(종합2보)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/08/26/0501000000AKR20170826030351001.HTML?template=2085
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26日、『聯合ニュース』が、米軍太平洋司令部の発表を引用しながら「6時49分、7時7分、7時19分」に「江原道キッデ一帯から」北朝鮮がミサイルを発射したが、「1発目と3発目は飛行に失敗、2発目はほとんど発射直後に爆発した」と報じた。
『聯合ニュース』、「北, 동해로 단거리미사일 3발 발사…"1발은 발사직후 폭발"(종합2보)」、http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2017/08/26/0505000000AKR20170826013554014.HTML?template=2085
発射地点は、韓国に近い江原道なので、米韓合同軍事演習を意識した発射であろう。

Source: Google Map
それにしても、3発も発射してまともに飛行したものが1発もないというところが奇妙である。「グアム島包囲打撃」ならば、4発発射するはずだし、短距離弾道ミサイルなら3発全て失敗するということは考えにくい。そうなると、いつも北朝鮮がミサイル発射に失敗した際に書いているように、「失敗は成功の基」で、今回階発射したのは、何らかの新型ミサイルの可能性が高い。「250km飛行した」とも報道されているが、上昇高度については今のところ報じられていない。これが「火星-14」並に高ければ、250kmしか飛行しなかったとしても侮れない。
「元帥様」が「国防科学院」を「現地指導」した直後の発射なので、「報道」の中で言及した「炭素繊維」や「固形燃料」を使用したミサイルを発射し、米韓合同軍事演習を威嚇しつつ、「大成功」と発表しようとした可能性がある。強度が不十分な炭素繊維と充分な実証が行われていない固形燃料を組み合わせた結果が、今回の「大失敗」に繋がったのではないだろうか。
一つ前の記事に、米国務長官ティラーソンの北朝鮮に対する評価を書いたが、この発射について、米国はどう評価するのか。