「民族と運命 崔ヒョンドク編」:南北関係融和のタイミングで放送 (2017年5月26日 「朝鮮中央TV」)
23日から連続4夜で放送された「民族と運命 崔ヒョンドク編」、26日がこのシリーズの最終回であった。初日の夜、横目で見ながら、李承晩、朴正煕、金大中らが登場し、北朝鮮映画では普通はあり得ない「南朝鮮傀儡軍」が快進撃をするシーンなどがあり、はじめからまともに見ていなかったこともあり、とても驚いてしまった。
「民族と運命 崔ヒョンドク編(1)」

Source: KCTV, 2017/05/23
その後、コメントで頂いた情報も含めて、色々と調べながら、昨日、一気に1~4部を見た。1~3部が約1時間40分、4部が1時間15分ということもあり、とても時間がかかった。登場人物の面白さでは、第1部が圧倒的におもしろい。韓国・統一部のDBで調べると、「民族と運命」は、「労働階級編」や「農民編」については繰り返し放送されているが、「崔ヒョンドク編」は2007年7月28日から8月3日にかけて1度だけ放送されており、今回が2回目となる。ただし、この映画は、91年に制作されているので、統一部DBに掲載される以前に放送されている可能性はある。
2006年の韓国は盧武鉉政権期であり、金大中政権期からの「太陽政策」が続いていた。盧武鉉はこの映画が放映された翌年、2007年10月に平壌を訪問し、金正日と会見している。こうしたことからすると、この映画の放映は、韓国に対北融和的な文ジェイン政権が誕生したのと関係があるといえよう。
ストーリーは、崔ヒョンドクが回想する中で進行する。下は、主人公の崔ヒョンドク(本名:崔德新)。

Source: KCTV, 2017/05/23
マッカーサーに呼ばれて夫人と共に東京に向かう李承晩。米国人の夫人を敢えて登場させ、「親米・傀儡」らしさ演出している。

Source: KCTV, 2017/05/23
朝鮮戦争中に「傀儡軍」を率いて勇猛果敢に戦う崔ヒョンドク。北朝鮮映画に出てくる「南朝鮮傀儡軍」は、大体、腰抜けかチンピラなのだが、珍しく勇敢に戦っている。この辺り、ストーリーをフォローせずに画面だけ見ていると、何が起こっているのかと驚いてしまう。

Source: KCTV, 2017/05/23
その後、崔ヒョンドクは、韓国・外交部長官(1961.10-1963.3)の職に就く。映画のシーンとしてはないが、第4部で日韓国交正常化交渉に彼が関わったことと関連し、「日本チョッパリに再び国を売り渡した」という崔ヒョンドクの父親の台詞がある。
その後、崔ヒョンドクは、西ドイツ大使(1963.8-1967.8)となる。彼が在任中、KCIAが西ドイツから作曲家のユン・サンミン(本名:尹伊桑)を韓国に拉致する。駐独韓国大使館で独韓親善協会の会長に抗議される崔ヒョンドク。

Source: KCTV, 2017/05/23
崔ヒョンドクは、帰国後、外交官を辞し、天道教の教領となる。下は、天道教会館などの建設資金を獲得するために朴正煕(白い服を着ている人物)と会い、キーセン遊びをしながら踊る崔ヒョンドク。

Source: KCTV, 2017/05/23
朴正煕夫人の陸英修(左)と崔ヒョンドク夫人。夫らと一緒に食事をしているが、キーセン遊びが始まると、2人は部屋に戻る。窓からキーセン遊びをする夫を見る2人。腐敗した南朝鮮の道徳の一端を見せている。その後、陸英修が、朴正煕の指示で文世光に暗殺されるシーンがある。

Source: KCTV, 2017/05/23
陸英修を暗殺する文世光。

Source: KCTV, 2017/05/23
1971年、第7代大統領選挙に立候補した金大中。崔ヒョンドクは、朴正煕から天道教会館建設などのための資金提供を受けた恩義があり、朴正煕の応援演説をし、天道教信者に朴正煕支持を求める。

Source: KCTV, 2017/05/23
大阪港からKCIAにより拉致される金大中を乗せた車(黒)。金大中は、その後、足に重りを付けら海に沈められそうになるが、正体不明のヘリコプターが現れ、「殺すな、抵抗すれば射撃する」と警告する。映画では、ヘリコプターの正体は分からず、船に乗っているKCIA要員がヘリコプターに銃を向けるところでそのシーンは終わる。

Source: KCTV, 2017/05/23
謎のヘリコプターに銃を向けるKCAI要員。

Source: KCTV, 2017/05/23
釈放され西ドイツに戻るユン・サンミン夫妻。崔ヒョンドクが空港で話しかけるが、無視する。

Source: KCTV, 2017/05/23
崔ヒョンドクは、事の真相を確認するために金大中に電話をするが、天道教に浸透していたKCAIのスパイに盗聴され、朴正煕に通報される。怒った朴正煕は、天道教に浸透していたKCIAのスパイに崔ヒョンドクに横領疑惑をかけさせ、天道教の教領の職を奪い、検察に出頭させる。下は検察官(右)と崔ヒョンドク(朝鮮服を着た人物)。崔を囲んでいるのは、KCIAのチンピラ。

Source: KCTV, 2017/05/23
その後、崔ヒョンドクは、夫人と共に渡米し米国市民となる。米国では、在米韓国人向けの新聞に記事を書くような仕事をしている。
以上が第1部である。第2部~第3部は、崔ヒョンドクの米国での生活と回想シーンが中心となる。その中では、韓国軍が人民軍を北に追撃する過程(人民軍的には、「一時的後退時期」)で、朝鮮人民を虐殺するシーンなどが出てくる。
第2部は、米国を舞台にしているので、資本主義の退廃シーンも出てくる。崔ヒョンドクが夫人と「久しぶりに一杯飲んでいこう」と米国のバーに入る。すると、退廃的な雰囲気の中、ビートルズの「ヘイ・ジュード」が生演奏されている。このシーンでは、ドラムを叩く女性の足が大きく写る。店から出てきて夫人は、「芸術があれほど落ちぶれるとは」と言い、崔ヒョンドクは「世も末だ。アリストテレスがあれを見たら気絶するだろう」と答える。

Source: KCTV, 2017/05/24
なぜか、ボクサーが踊っている。

Source: KCTV, 2017/05/24
バーの前に掲げられた国旗。何を基準にしているのか分からないが、日の丸はない。また、車のナンバーの作りが甘い。どこからともなく「アリラン」が聞こえてきて、2人は「韓国居酒屋」のような店に入る。

Source: KCTV, 2017/05/24
米国市民となった崔ヒョンドクが北朝鮮訪問を計画しているという話を聞き、朴正煕は、それを断念させるために、韓国に残っている息子に嫌がらせをする。下は、「サムソン」で働いている息子(右)と社長(帽子の男性)。帽子の男性は、秘書の女性にストッキングをプレゼントしている。これも退廃した南朝鮮の一端を見せている。息子は、「サムソン」を解雇され、息子夫婦は家を追い出され、妻とは離婚する。

Source: KCTV, 2017/05/24
第3部では、崔ヒョンドクが、過去に行った朝鮮人民虐殺などの罪で殺される覚悟をし、訪朝する。しかし、予想とは異なり、大歓迎される。下は、崔ヒョンドクの悪事の一つで、崔ヒョンドクの命令で、赤十字の旗を振る北朝鮮の看護婦を戦車で轢き殺すシーン。

Source: KCTV, 2017/05/25
崔ヒョンドクは、その後、自分の故郷を訪れ、伯母や親戚と会う。伯母は、崔ヒョンドクをはじめは許さないが、最後は許す。
冒頭に、この映画は、南北和解の時期に放送されているようだと書いたが、この「許し」こそがこの映画のテーマとなっているからである。これについては、関連シーンを動画で見た方が分かりやすいので、追って、字幕を付けてアップロードすることにする。
<追記>
「民族と運命 崔ヒョンドク編 第4部」日本語字幕付き。
Source: KCTV, 2017/05/26
「民族と運命 崔ヒョンドク編(1)」

Source: KCTV, 2017/05/23
その後、コメントで頂いた情報も含めて、色々と調べながら、昨日、一気に1~4部を見た。1~3部が約1時間40分、4部が1時間15分ということもあり、とても時間がかかった。登場人物の面白さでは、第1部が圧倒的におもしろい。韓国・統一部のDBで調べると、「民族と運命」は、「労働階級編」や「農民編」については繰り返し放送されているが、「崔ヒョンドク編」は2007年7月28日から8月3日にかけて1度だけ放送されており、今回が2回目となる。ただし、この映画は、91年に制作されているので、統一部DBに掲載される以前に放送されている可能性はある。
2006年の韓国は盧武鉉政権期であり、金大中政権期からの「太陽政策」が続いていた。盧武鉉はこの映画が放映された翌年、2007年10月に平壌を訪問し、金正日と会見している。こうしたことからすると、この映画の放映は、韓国に対北融和的な文ジェイン政権が誕生したのと関係があるといえよう。
ストーリーは、崔ヒョンドクが回想する中で進行する。下は、主人公の崔ヒョンドク(本名:崔德新)。

Source: KCTV, 2017/05/23
マッカーサーに呼ばれて夫人と共に東京に向かう李承晩。米国人の夫人を敢えて登場させ、「親米・傀儡」らしさ演出している。

Source: KCTV, 2017/05/23
朝鮮戦争中に「傀儡軍」を率いて勇猛果敢に戦う崔ヒョンドク。北朝鮮映画に出てくる「南朝鮮傀儡軍」は、大体、腰抜けかチンピラなのだが、珍しく勇敢に戦っている。この辺り、ストーリーをフォローせずに画面だけ見ていると、何が起こっているのかと驚いてしまう。

Source: KCTV, 2017/05/23
その後、崔ヒョンドクは、韓国・外交部長官(1961.10-1963.3)の職に就く。映画のシーンとしてはないが、第4部で日韓国交正常化交渉に彼が関わったことと関連し、「日本チョッパリに再び国を売り渡した」という崔ヒョンドクの父親の台詞がある。
その後、崔ヒョンドクは、西ドイツ大使(1963.8-1967.8)となる。彼が在任中、KCIAが西ドイツから作曲家のユン・サンミン(本名:尹伊桑)を韓国に拉致する。駐独韓国大使館で独韓親善協会の会長に抗議される崔ヒョンドク。

Source: KCTV, 2017/05/23
崔ヒョンドクは、帰国後、外交官を辞し、天道教の教領となる。下は、天道教会館などの建設資金を獲得するために朴正煕(白い服を着ている人物)と会い、キーセン遊びをしながら踊る崔ヒョンドク。

Source: KCTV, 2017/05/23
朴正煕夫人の陸英修(左)と崔ヒョンドク夫人。夫らと一緒に食事をしているが、キーセン遊びが始まると、2人は部屋に戻る。窓からキーセン遊びをする夫を見る2人。腐敗した南朝鮮の道徳の一端を見せている。その後、陸英修が、朴正煕の指示で文世光に暗殺されるシーンがある。

Source: KCTV, 2017/05/23
陸英修を暗殺する文世光。

Source: KCTV, 2017/05/23
1971年、第7代大統領選挙に立候補した金大中。崔ヒョンドクは、朴正煕から天道教会館建設などのための資金提供を受けた恩義があり、朴正煕の応援演説をし、天道教信者に朴正煕支持を求める。

Source: KCTV, 2017/05/23
大阪港からKCIAにより拉致される金大中を乗せた車(黒)。金大中は、その後、足に重りを付けら海に沈められそうになるが、正体不明のヘリコプターが現れ、「殺すな、抵抗すれば射撃する」と警告する。映画では、ヘリコプターの正体は分からず、船に乗っているKCIA要員がヘリコプターに銃を向けるところでそのシーンは終わる。

Source: KCTV, 2017/05/23
謎のヘリコプターに銃を向けるKCAI要員。

Source: KCTV, 2017/05/23
釈放され西ドイツに戻るユン・サンミン夫妻。崔ヒョンドクが空港で話しかけるが、無視する。

Source: KCTV, 2017/05/23
崔ヒョンドクは、事の真相を確認するために金大中に電話をするが、天道教に浸透していたKCAIのスパイに盗聴され、朴正煕に通報される。怒った朴正煕は、天道教に浸透していたKCIAのスパイに崔ヒョンドクに横領疑惑をかけさせ、天道教の教領の職を奪い、検察に出頭させる。下は検察官(右)と崔ヒョンドク(朝鮮服を着た人物)。崔を囲んでいるのは、KCIAのチンピラ。

Source: KCTV, 2017/05/23
その後、崔ヒョンドクは、夫人と共に渡米し米国市民となる。米国では、在米韓国人向けの新聞に記事を書くような仕事をしている。
以上が第1部である。第2部~第3部は、崔ヒョンドクの米国での生活と回想シーンが中心となる。その中では、韓国軍が人民軍を北に追撃する過程(人民軍的には、「一時的後退時期」)で、朝鮮人民を虐殺するシーンなどが出てくる。
第2部は、米国を舞台にしているので、資本主義の退廃シーンも出てくる。崔ヒョンドクが夫人と「久しぶりに一杯飲んでいこう」と米国のバーに入る。すると、退廃的な雰囲気の中、ビートルズの「ヘイ・ジュード」が生演奏されている。このシーンでは、ドラムを叩く女性の足が大きく写る。店から出てきて夫人は、「芸術があれほど落ちぶれるとは」と言い、崔ヒョンドクは「世も末だ。アリストテレスがあれを見たら気絶するだろう」と答える。

Source: KCTV, 2017/05/24
なぜか、ボクサーが踊っている。

Source: KCTV, 2017/05/24
バーの前に掲げられた国旗。何を基準にしているのか分からないが、日の丸はない。また、車のナンバーの作りが甘い。どこからともなく「アリラン」が聞こえてきて、2人は「韓国居酒屋」のような店に入る。

Source: KCTV, 2017/05/24
米国市民となった崔ヒョンドクが北朝鮮訪問を計画しているという話を聞き、朴正煕は、それを断念させるために、韓国に残っている息子に嫌がらせをする。下は、「サムソン」で働いている息子(右)と社長(帽子の男性)。帽子の男性は、秘書の女性にストッキングをプレゼントしている。これも退廃した南朝鮮の一端を見せている。息子は、「サムソン」を解雇され、息子夫婦は家を追い出され、妻とは離婚する。

Source: KCTV, 2017/05/24
第3部では、崔ヒョンドクが、過去に行った朝鮮人民虐殺などの罪で殺される覚悟をし、訪朝する。しかし、予想とは異なり、大歓迎される。下は、崔ヒョンドクの悪事の一つで、崔ヒョンドクの命令で、赤十字の旗を振る北朝鮮の看護婦を戦車で轢き殺すシーン。

Source: KCTV, 2017/05/25
崔ヒョンドクは、その後、自分の故郷を訪れ、伯母や親戚と会う。伯母は、崔ヒョンドクをはじめは許さないが、最後は許す。
冒頭に、この映画は、南北和解の時期に放送されているようだと書いたが、この「許し」こそがこの映画のテーマとなっているからである。これについては、関連シーンを動画で見た方が分かりやすいので、追って、字幕を付けてアップロードすることにする。
<追記>
「民族と運命 崔ヒョンドク編 第4部」日本語字幕付き。
Source: KCTV, 2017/05/26