ウラジオストック港に航空燃料用途の北朝鮮タンカー到着 (2017年5月13日)
13日朝のMarine Trafficを見ると、ウラジオストック沖にさらに1隻の北朝鮮船舶が停泊していた。

Source: Marine Traffic, 2017/05/13 0745JST
Marine Traffic上での色分けはグリーンなので、通常の貨物船と思いきや、詳細を調べると、AISデータにある船舶の種類は「Tanker - Hazard A (Major)」とされている。「Hazard(危険)」物質を運搬するタンカーのようだったので、色々と調べてみた。

Source: Marine Traffic, https://www.marinetraffic.com/en/ais/details/ships/shipid:675384/mmsi:445219000/imo:8021579/vessel:MADUSAN/_:53ce9016fd43eee14e444b55d66d4023
AISデータに含まれる「Hazard A」という物質は、IMOでは「Category X」に該当する物質であるということが分かった。この「Category X」に含まれる物質は、「Noxious Liquid Substances」、つまり「有害な液体」であり、人体や環境に「a major hazard (非常に危険)」な物質であるとされている。
IMO, Carriage of chemicals by ship, http://www.imo.org/en/OurWork/Environment/PollutionPrevention/ChemicalPollution/Pages/Default.aspx
では、その「Category X」には、どのような液体が含まれるのかと調べてみた。すると、化学物質のリストが見つかった。聞いたことがないような、化学用語なので日本語訳したところで、何のことか分からない物質ばかり列挙されているが、その中に「Aviation alkylates」というものが含まれていた。
Cornell University School of Law, 46 CFR 30.25-1 - Cargoes carried in vessels certificated under the rules of this subchapter., https://www.law.cornell.edu/cfr/text/46/30.25-1
「aviation」が「航空」であることは分かるが、「alkylates」が何なのか分からない。色々と検索していると、Google BooksでFutuer Fuels for General Aviationという本の一部が出てきた。読んでもどうせ分からないだろうから、眺めていると、「alkylates」を「脱ブタン塔」を通して精製していくと、航空燃料ができるというような記述があった。
Google Books, https://books.google.co.jp/books?id=mklN1ROzc5kC&pg=PA5&lpg=PA5&dq=Aviation+alkylate&source=bl&ots=kXV5bSnPbO&sig=lsKWSpfWGvhkf6IokPooytR0GLg&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwip-Oaft-vTAhUCvrwKHVVYBgsQ6AEIPzAC#v=onepage&q=Aviation%20alkylate&f=false
こうしたことからすると、この船は航空燃料か精製すれば航空燃料に使える液体を調達するためにウラジオストックにやって来たと推測される。過去記事に書いた通り、中国ほどロシアは注目していなかったので見落としていた可能性はあるにせよ、これほどまでに北朝鮮船舶、しかもタンカーが停泊しているのは初めて見る。
これは、中国からの石油を含む燃料供給の量的あるいは質的変化に対応するものなのか、調達先を多元化するためなのか、朝露間で何か新たな取り決めがされた結果なのかは分からない。万景峰号の羅先-ウラジオストック間定期航路開設の話もあったので、油類取引についても何か取り決めが成された可能性は充分にある。
しばらくは、黄海よりも日本海に注目する必要がありそうだ。

Source: Marine Traffic, 2017/05/13 0745JST
Marine Traffic上での色分けはグリーンなので、通常の貨物船と思いきや、詳細を調べると、AISデータにある船舶の種類は「Tanker - Hazard A (Major)」とされている。「Hazard(危険)」物質を運搬するタンカーのようだったので、色々と調べてみた。

Source: Marine Traffic, https://www.marinetraffic.com/en/ais/details/ships/shipid:675384/mmsi:445219000/imo:8021579/vessel:MADUSAN/_:53ce9016fd43eee14e444b55d66d4023
AISデータに含まれる「Hazard A」という物質は、IMOでは「Category X」に該当する物質であるということが分かった。この「Category X」に含まれる物質は、「Noxious Liquid Substances」、つまり「有害な液体」であり、人体や環境に「a major hazard (非常に危険)」な物質であるとされている。
IMO, Carriage of chemicals by ship, http://www.imo.org/en/OurWork/Environment/PollutionPrevention/ChemicalPollution/Pages/Default.aspx
では、その「Category X」には、どのような液体が含まれるのかと調べてみた。すると、化学物質のリストが見つかった。聞いたことがないような、化学用語なので日本語訳したところで、何のことか分からない物質ばかり列挙されているが、その中に「Aviation alkylates」というものが含まれていた。
Cornell University School of Law, 46 CFR 30.25-1 - Cargoes carried in vessels certificated under the rules of this subchapter., https://www.law.cornell.edu/cfr/text/46/30.25-1
「aviation」が「航空」であることは分かるが、「alkylates」が何なのか分からない。色々と検索していると、Google BooksでFutuer Fuels for General Aviationという本の一部が出てきた。読んでもどうせ分からないだろうから、眺めていると、「alkylates」を「脱ブタン塔」を通して精製していくと、航空燃料ができるというような記述があった。
Google Books, https://books.google.co.jp/books?id=mklN1ROzc5kC&pg=PA5&lpg=PA5&dq=Aviation+alkylate&source=bl&ots=kXV5bSnPbO&sig=lsKWSpfWGvhkf6IokPooytR0GLg&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwip-Oaft-vTAhUCvrwKHVVYBgsQ6AEIPzAC#v=onepage&q=Aviation%20alkylate&f=false
こうしたことからすると、この船は航空燃料か精製すれば航空燃料に使える液体を調達するためにウラジオストックにやって来たと推測される。過去記事に書いた通り、中国ほどロシアは注目していなかったので見落としていた可能性はあるにせよ、これほどまでに北朝鮮船舶、しかもタンカーが停泊しているのは初めて見る。
これは、中国からの石油を含む燃料供給の量的あるいは質的変化に対応するものなのか、調達先を多元化するためなのか、朝露間で何か新たな取り決めがされた結果なのかは分からない。万景峰号の羅先-ウラジオストック間定期航路開設の話もあったので、油類取引についても何か取り決めが成された可能性は充分にある。
しばらくは、黄海よりも日本海に注目する必要がありそうだ。