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    「朝鮮外務省スポークスマン<人身売買>問題をもって共和国を非難する米国を糾弾」(2012年6月25日 「朝鮮中央通信」)

    米国務省が出した「人身売買に関する報告書」での北朝鮮の評価に対し、北朝鮮外務省スポークスマンが反発した。同報告書では、人身売買に関し北朝鮮は4つあるレベルのうちで最悪レベルであるTier3に位置づけられている。ちなみに、日本はTier2、韓国と米国は最も良いTier1とされている。Tier2とTier3の間にはTier2 Watch List(要注意)というレベルが設けられている。

    同報告書では、北朝鮮が「成人男女、子供に対する強制労働、強制結婚、性的人身売買の源泉」となっていると指摘し、同国内の収容所で強制労働が政治的弾圧を加えるために制度的に用いられているとしている。また、朝鮮人民には職業選択の自由はなく、政府が割り当てた職業に就かされているともしている。

    次に、北朝鮮が海外に派遣している労働者について述べ、彼らが「ロシア、アフリカ、中・東欧諸国、東・東南アジア、モンゴル、中東などで、移動や通信の自由が制限された中で強制労働を強いられている」としている。また、「労働者の賃金は、北朝鮮政府の管理下にある口座に振り込まれ、賃金のほとんどは『献金』という名目で政府に吸い取られている」と指摘している。特に「極東ロシアの林業に従事している1万~1.5万人の北朝鮮労働者の状況が悪く、年に2日の休日しか与えられない上に、ノルマが達成できない場合は厳しい懲罰を受ける」としている。さらに、「外国企業との合弁企業で働く北朝鮮国内の労働者も海外で働く北朝鮮労働者と似た状況である」と指摘している。

    さらに、脱北者についてもふれ、「中国東北部には何千人もの法的書類を持っていない北朝鮮人がおり、その70パーセントが女性である」とした上で、これら北朝鮮人が人身売買、強制結婚、売春、強制労働の対象とされているとしているとし、人身売買には、国境付近の朝鮮族、北朝鮮人、そして両国の国境警備隊が関与しているとしている。一方、「国境警備が強化」されたとも指摘しているが、「その効果については不明である」と疑問を呈している。

    そして、このような状況に対して北朝鮮政府は、「人身売買をなくすための最低基準を十分に満たしておらず、またそのための大きな努力もしていない」と非難している。また、人身売買が行われる背景として「移民を禁止し、厳しい経済・食料状況の改善に失敗している」ことを挙げている。

    こうした批判に対し北朝鮮外務省のスポークスマンは、報告書を「虚偽ねつ造資料」であると切り捨て、このような資料を発表することが「我が国に対する悪辣な政治的挑発」であると非難している。そして、「誰もが平等で真の民主主義的権利と自由、自主的な人間としての真の生活と尊厳が法的に保障されている、人間中心の我が社会では、そもそも『人身売買』などというものは存在しない」と主張している。

    確かに、北朝鮮の社会制度を前提とすれば、労働者が海外で働こうが、ましてや北朝鮮国内の合弁企業で働こうが、その賃金の扱いについては、他の北朝鮮労働者と同様にするのが社会主義的な方法であろう。しかし、これはこれから北朝鮮が改革・開放に着手したときに、大きな障害となることは間違いない。つまり、中国でもそうであったように外資系企業で働くメリットは、国内企業よりも明らかに労働条件が良い、言い換えれば賃金がよいということが最大の要因であった。外資系企業で働いても国内企業で働いても賃金が同じであれば、実質的労働時間や労働規律がきつい外資企業で働くメリットはほとんどないということになってしまう。もちろん、現段階では、開城工業団地のチョコパイのような、我々から見ればインセンティブにもならないようなものでも、北朝鮮労働者にとっては一つのインセンティブとなっている。ただ、改革・開放に着手し、外資を受け入れ、そして順調に北朝鮮経済が発展していけば、チョコパイなどはインセンティブではなくなってしまう。その時にというか、その過程で賃金制度をどのようにコントロールしていくのかということは、北朝鮮政府にとっての大きな課題である。中国の事例を十分に研究・検討して欲しいところである。

    話がずれたが、中国国内における人身売買について、北朝鮮は次のような主張をしている。つまり、「我が共和国の領域外で人身売買行為が行われているとすれば、それは米国が『北朝鮮人権法』に基づき、投げてくれる僅かな金を受け取ろうと、我が共和国の国境付近で徘徊し、不法越境者を『政治亡命客』に変身させたり、売られていく南朝鮮と日本の不純敵対勢力による政治的謀略の産物」であるとしている。確かに、中国領内での人身売買は、少なくとも表面上は北朝鮮政府の権限が及ぶ問題ではない。北朝鮮政府は、法を犯して脱北した自国民が外国で人身売買の対象となっても我関せずという姿勢であろう。報告書では、その「脱北」の背景が問題であることをきちんと指摘しているが、外務省スポークスマンはそれには触れていない。

    北朝鮮外務省スポークスマンは、人身売買は金が全ての資本主義国の産物で、なかでも「人権蹂躙の王国である米国が、誰それの『人身売買』状況を口にする立場ではない」としている。同報告書の韓国については読んでみたが、日本と米国についてはまだ読んでいない。確かに、人身売買状況の格付け(Tiar1からTiar3)が、今一つ何に基づいているのか、そしてそれが現状をきちんと反映しているのか納得しがたい部分もある(特に米国について。また、報告書をintroductionから通読すれば、どこかにきちんと書かれているはずでもある)。しかし、直感的には、現状に対する評価というよりも、むしろその現状にどれほど政府が対処しているかということに対する評価のようである。この意味では、北朝鮮政府は「そのような事実はない」としているわけなので、当然Tier3という最悪レベルの評価を受けることになる。

    北朝鮮外務省スポークスマンは最後で、「米国が時代錯誤的な対朝鮮敵対視政策に継続的にしがみつけばつくほど、我々はそれに対処せざるを得なくなり、結局、我々の自衛的核抑止力をいっそう増大させる結果を招くことになる」と威嚇することも忘れていない。

    なお、今日現在、このスポークスマン談話は、「労働新聞」には掲載されていない。

    米国務省「人身売買に関する報告書」の北朝鮮が含まれる部分:
    http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/2012/192367.htm

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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