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    ロバート・カーリン(Robert Carlin)著「朝鮮における最終的失敗(The Ultimate Failure in Korea)」『38ノース(38 NORTH)』 (2017年3月21日 「38 NORTH」)

    21日、38 NORTHにロバート・カーリン氏が投稿した「解説 朝鮮半島における最終的失敗」が掲載された。大変よい記事だったので、38 NORTHに全訳をして拙ブログに掲載する許可を求めたところ許可されたので、以下のとおり全訳掲載する。

    ロバート・カーリン氏紹介ページ
    http://cisac.fsi.stanford.edu/people/Robert_Carlin

    *************************
    38 NORTH
    The Ultimate Failure in Korea
    Posted by Robert Carlin On March 21, 2017 @ 10:34 am In Commentary
    http://38north.org/2017/03/rcarlin032117/

      戦争の神々にとっては、オバマ政権がワシントンのニューカマーに、北朝鮮に対処するための「戦略」が必要であると言っているのを聞くのは、病気になるほど愉快なことに違いない。結局のところ、多くの人々が痛くも認めなければならないのは、オバマ大統領には、北朝鮮問題に関する戦略が何もなかったということである。彼(オバマ)がドナルド・トランプに多くの問題の中でも最大の問題は北朝鮮の進展する核・ミサイル問題であると言ったのは、8年にも及ぶ期間、オバマ政権の誤った考えに基づくこの問題に対処するためのアプローチが、完全に失敗したからである。

     鎧のすね当ての紐縛り、羽根付きの兜をかぶり直しているのを見て、戦争の神々は、トランプ政権がオバマ政権に捨てられた物をなぜ拾うのかと、愉快さよりもむしろ不思議さを感じている。というのは、そのアプローチは、北朝鮮の核・ミサイル計画を停止させることに失敗しただけではなく、平壌に(核・ミサイル)開発を継続どころか加速できる障害のない道筋を残した。その道筋には、6週間に1つの割合で新たに製造される核物質を使って、メトロノームのようなペースで増加する核弾頭も含まれている。カチ、カチ、カチ。同じことを積み重ねること、さらなる力仕事をすることは、米国の死活的な安全保障上の利益を守るためのレシピ-とはなり得ない。しかしそれが、戻ることができない滝に向かって川を下っており、その滝の音が日々大きくなっているということをほとんど理解しないまま、今日ことが進められている。

     これらが新政権内の政策を見直した識者である。では、なぜ彼らは失敗して捨てられたアプローチを拾うことを選び、破滅に向かって情け容赦なく進んでいるのであろうか。過去16年間の仮説的神話が依然として判断を縛っているからであろうか。諜報活動のために数十億ドルを費やした貴重な成果を依然として読み誤っているのであろうか。過去20年間の外交が失敗であったという、エンドレスに繰り返され、こだまする主張はどうなのだろうか。

     恐らく、外交の失敗という悪質な神話こそが鍵であろう。試されもしなかったにもかかわらず、過去16年可の外交が失敗だったとどうして言えるのであろうか。オバマ政権下では、外交はよく言っても、手足を縛られていたか間欠的であった。ブッシュ政権下では、外交は責め苦を与えられ、時として私生児であった。これらが不毛の年代であり、失った時間は取り返すことができない。ティラーソン国務長官はこの点について実に正しい-これらの年代の失敗が、今日我々を危険な地点に立たせている。

     しかし、失敗しなかったのは1993年から2000年の外交である。そしてそのことは、外交をブッシュ政権とオバマ政権の失敗として、同じゴミの山に単純に託す人々には、ほとんど理解されていない。こうした考えは致命的な間違いなのだが、今日我々につきまとっているだけではなく、明日にはさらに激しくつきまとうであろう。こうして外交が成果を出した年代を読み間違えることは、我々が今直面している災難から引き離してくれるであろう唯一の進路へのドアを閉ざすことになる。

     批判的な人々は、1993年から2000年の期間は、北朝鮮がウラン濃縮という迂回路を使って核爆弾製造のための秘密計画を始めたのだから北朝鮮に「騙された」ことになり、失敗であったと言うであろう。しかし、1990年代末にその情報がワシントンの卓上に届いたとき、それは外交の失敗とは受け取られなかった。それは、既に獲得した成果を維持し、北朝鮮の核武装計画を止め、最終的には廃棄するためのさらなる進展への開かれた道を確保するために、慎重かつ合理的に扱われるべき重要な展開であると認識されていた。1999年までに、北朝鮮の核センターとも言える、ヨンビョンの核物質生産施設は5年間凍結され、その他は錆び付いて廃墟と化した。1994年に米朝枠組み合意が調印されて以来、核物質は生産されず、IAEAの査察官が確認のためにヨンビョンに駐在していた。1994年号以前に北朝鮮が製造したプルトニウムは、IAEAの監視下に置かれた。そして、1999年9月、交渉の末、北朝鮮はミサイル発射のモラトリアムに合意した。そして次に何が起こったのか。単純かつ厳然と、合意に敵対的なブッシュ政権が2001年1月に誕生した。しかし、それから24ヶ月間、外交は失敗しなかった。外交は、最も悪辣に殺されたのである。

     今日、我々は23年前の交渉の成果を取り戻すことは不可能であろう。多くのことが変わりすぎた。しかし、歴史を大きく読み間違うことで外交を投げ出してしまうことは、重大な過ちである。

     気取ったことを言いったり、現実を覆い隠すような言葉を使うのは止めようではないか。 「動的(kinetic)」(訳注:運動エネルギー兵器=核兵器)という誤解しやすい言葉は、誰にとってもよいことはない。新たなの朝鮮半島における戦争は、その規模においてこれまでに見たことがないほど熾烈である。1994年に北朝鮮と戦争直前の状況に至ったとき、戦争が起これば100万の犠牲者(軍人と民間人)と1兆ドルの損害が発生すると推計された。新たな朝鮮戦争が発生すれば、それはさらに致死的であり、そして当時の何倍もの血と財という代償を支払うことになる。そして、新たな朝鮮戦争は、過去の朝鮮戦争からの復興のために韓国の人々が犠牲にした50年を確実に破壊することになる。そして、新たな朝鮮戦争は、東北アジアを切り裂くことにもなる。新たな朝鮮戦争こそが、最終的な失敗である。

     そして、戦争の神々はそれを待っているのである。

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    Source of Image: http://38north.org/2017/03/rcarlin032117/roman-centurion-helmet/

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
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    「白頭の血統」=金一族
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