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    トランプの大統領就任演説:「元帥様」との共通点、対北朝鮮政策は? (2017年1月21日)

    トランプ親米国大統領の就任演説を聞いていて思ったことを書いておく。「元帥様」の「2016新年の辞」に繋がる部分もあって、おもしろい。

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    「数十年間にわたり、我々はアメリカの産業を犠牲にしながら、他国の産業を豊かにしてきた。自国の軍を消耗させる一方で、他国の軍隊に補助金を与えてきた。自国の国境を守ることを拒否しながら、他国の国境を守ってきた。そして、アメリカの産業が荒廃、衰退する一方で、何兆ドルもの金を海外で費やした」
    For many decades, we’ve enriched foreign industry at the expense of American industry;
    Subsidized the armies of other countries while allowing for the very sad depletion of our military;
    We've defended other nation’s borders while refusing to defend our own;
    And spent trillions of dollars overseas while America's infrastructure has fallen into disrepair and decay.

    「アメリカを犠牲」にさせた当事者は、日韓も該当している。この文脈からすると日本や韓国など、「他国の国境を守る」ことが「アメリカの労働者やアメリカの家族の利益」になるとは考えていないだけではなく、守ってやっている間に自分たち(日韓)だけ豊かになり、その反動で米国の産業が崩壊したと言っているように聞こえる。
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    「この時点から、アメリカ第一だ。貿易、税金、移民、外交に関する全ての決定は、アメリカの労働者とアメリカの家族の利益のためになされることになる。」
    From this moment on, it’s going to be America First.
    Every decision on trade, on taxes, on immigration, on foreign affairs, will be made to benefit American workers and American families.

    「アメリカの労働者とアメリカの家族の利益」になるのであれば、北朝鮮問題などどうでもよいというスタンスなのかどうか。それと関連して、北朝鮮の核・ミサイルが「アメリカの労働者とアメリカの家族」の利益に相反するものと考えているのかどうか。
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    「我々は単純なルールに従う。アメリカの製品を買い、アメリカ人を雇用する」
    We will follow two simple rules: Buy American and Hire American.

    若干文脈は違うが、北朝鮮の「自立的民族経済」あるいは「自力自強」に繋がる部分がある。

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    「我々は、世界各国との友好親善に努める。しかし、それは自国の利益を第一に考えるという権利があるという理解の上に立つものでなければならない。」
    We will seek friendship and goodwill with the nations of the world – but we do so with the understanding that it is the right of all nations to put their own interests first.

    彼が、日本や韓国の安全をコストとベネフィットの観点から「自国の利益」と判断するのかどうか。上の演説の流れからすると、コストが過大でベネフィットは過小と考えているような感じがする。しからば、いかにしてコストを削減し、ベネフィットを最大化するか。ビジネスマンであれば考えるであろう。

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    「我々は、我々の生き方を他人に押しつけない。しかし、自らがお手本となり輝き、他者がそれに続くようにする。」
    We do not seek to impose our way of life on anyone, but rather to let it shine as an example for everyone to follow.

    これは、「元帥様」にとっては嬉しい言葉かもしれない。つまり、これまでの米国のように、米国式「民主主義」を他国に押しつけず、北朝鮮の「我々式民主主義」も認めると言っているようにもとれるからである。米国は冷戦で勝利した後、米国式「民主主義」を普遍化することで、それを拡散することに努めてきた。それが米国の正義であり義務と考えていたのであろう。しかし、そのためには膨大なコストが必要となった。トランプは、そのコストは不要であり、米国に影響がない限り、「我々式民主主義」であれなんであれ、勝手にやらせておくというスタンスのような気がする。そうであれば、北朝鮮の「我々式民主主義」を認め、米国の利益にとって潜在的脅威となる北朝鮮の核・ミサイル廃棄(あるいは一部廃棄)と交換に「平和条約締結」という方向に進むことも考えられる。もちろん、その潜在的脅威を除去するために軍事オプションを使う可能性もあるが、コストという点からすれば、軍事オプションは明らかに不利であることは明白である。北朝鮮も「平和条約」が締結され政権の安全が保障されれば、「輝くアメリカ」に続くのかもしれない。

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    「我々は古い同盟関係を強化し、新たな同盟関係を構築する。そして、文明世界が一丸となってイスラム過激主義のテロに対峙し、それをこの地球上から完全に撲滅する。」
    We will reinforce old alliances and form new ones – and unite the civilized world against Radical Islamic Terrorism, which we will eradicate completely from the face of the Earth.

    「古い同盟関係の強化」は、既存の同盟関係の中で米国のコミットメントを増強しながら強化するのではなく、米国のコミットメントを減らしつつ「強化」し、「新たな同盟関係」へと転換させていくと言っているのであろう。選挙戦の最中から言ってきたことであるが、日韓のような同盟国に対しては、応分の負担を求めてくると思う。

    「イスラム過激主義のテロ」は、当面、ISが標的となるのであろうが、具体的にどのような方法で「撲滅」しようとしているのかは見えてこない。「アメリカ第一主義」からすれば、「地球上」というよりも「アメリカの地」に侵入しないようなことを念頭に置いているのかもしれない。
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    「聖書には、『神の人々がひとつになって暮らすのは、なんて善い、心地良いことでしょう』と書かれている」
    The Bible tells us, “how good and pleasant it is when God’s people live together in unity.”

    北朝鮮式に言うと、「金日成民族(神の人々)が、一心団結(ひとつになって)して、和気藹々(和睦하게)と暮らすのは・・・」となるのであろう。

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    「我々は、口先だけで行動をしない政治家、つまり文句ばかり言って、何も解決しようとしない政治家は受け入れない。」
    We will no longer accept politicians who are all talk and no action – constantly complaining but never doing anything about it.

    なんと、「元帥様」の「2016新年の辞」を引用したような文言である。否、「元帥様」は常々口先ばかりの幹部を叱責してきたが、今年はさらに踏み込んで自省している。

    「いつも気持ちばかりで、能力が伴わずに悔しさと自責の中で昨年1年を送りましたが、今年は、さらに奮発し全身全霊、人民のためにさらに良いことをする決心を固くしています」
    언제나 늘 마음뿐이였고 능력이 따라서지 못하는 안타까움과 자책속에 지난 한해를 보냈는데 올해에는 더욱 분발하고 전심전력하여 인민을 위해 더 많은 일을 찾아할 결심을 가다듬게 됩니다.

    そして、少し上に戻るが、
    「この動きの中心には重大な確信があります。それは、国家は市民に奉仕するということです。」
    At the center of this movement is a crucial conviction: that a nation exists to serve its citizens.

    と言っており、

    「元帥様」も「2016新年の辞」で「(私は、)人民を忠実に支えていく人民の真の忠僕、忠実な小間使いとなることを新年のこの朝、厳粛に約束いたします。」
    우리 인민을 충직하게 받들어나가는 인민의 참된 충복, 충실한 심부름군이 될것을 새해의 이 아침에 엄숙히 맹약하는바입니다.

    と言っている。

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    演説の最終部分で、

    「共に、我々はアメリカを再び強くします。」
    Together, We Will Make America Strong Again.
    「我々はアメリカ再び豊かにします。」
    We Will Make America Wealthy Again.
    「我々は、アメリカを再び誇れるようにします。」
    We Will Make America Proud Again.
    「我々は、再びアメリカを安全にします。」
    We Will Make America Safe Again.

    と締めくくっている。

    「元帥様」の「2016新年の辞」では、

    「偉大な金日成-金正日主義が前途を照らし、党の周りに固く団結し、一心団結の威力がある限り、我々の勝利は確定的です。」
    위대한 김일성-김정일주의가 앞길을 밝혀주고 당의 두리에 천만군민이 굳게 뭉친 일심단결의 위력이 있는 한 우리의 승리는 확정적입니다.
    「皆、朝鮮労働党第7回大会が展開した社会主義強国建設の明るい設計図に従い、光明なる未来に向かい力強く進軍しましょう。」
    모두다 조선로동당 제7차대회가 펼친 사회주의강국건설의 휘황한 설계도를 따라 광명한 미래를 향하여 힘차게 진군해나아갑시다.

    と締めくくっている。言葉はだいぶ異なるが、言っていることは同じような気がする。

    The White House, The Inaugural Address, Remarks of President Donald J. Trump – As Prepared for Delivery Inaugural Address, Friday, January 20, 2017, https://www.whitehouse.gov/inaugural-address

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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