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    「朝鮮外務省スポークスマン 朝鮮を不当に非難するG8宣言を排撃」(2012年5月22日 「朝鮮中央通信」)

    北朝鮮外務省スポークスマンが、朝鮮中央通信の記者の質問に答えるという形で、5月19日にキャンプデービッドで採択されたG8首脳宣言に反発する談話を発表した。

    2012 G8 Camp David Declaration:
    http://www.g8.utoronto.ca/summit/2012campdavid/g8-declaration.html

    G8宣言の北朝鮮関連部分であるが、「政治・安保問題」の部分に書かれている。それによると「北朝鮮の挑発的行動が地域の安定を脅かしている」とし、「2012年4月13日の弾道ミサイル技術を用いた発射」を安保理決議違反であると非難している。この部分では、訳出したように「発射」と書かれているだけで、それが衛星ロケットか弾道ミサイルかは明記していない。

    そして、北朝鮮に対し「核と弾道ミサイル計画の破棄」と「全ての国連加盟国がG8(宣言の実施)に参加」することを求めている。「全ての国連加盟国が」という言い回しではあるが、これは主として北朝鮮に対して大きな影響力を持つ中国に向けたメッセージであろう。これを受けてか、中国は米国のグリン・デービス特別代表との会見後、「米国と北朝鮮は、2.29合意を尊重するように」というメッセージを発している(下記、米国務省定例記者会見での記者の質問より)。この中国のメッセージは、北朝鮮に対して核実験を思いとどまらせるのが精一杯なのでボールを米国に投げたのか、あるいは核実験を思いとどまることとの交換条件として北朝鮮が米朝対話再開の下地を作ることを中国に求めてきたことの反映であろうか。

    また、「北朝鮮の、弾道ミサイルの発射と核実験を含む追加的な行為に対し、国連安保理が行動に出る」ことを求める意思を確認したとしている。ここで「追加的な」と書かれているが、これは4月13日のロケット発射については国連安保理議長声明で一応終わりとし、北朝鮮がさらなるロケット発射や核実験を実施することがないようにという警告であろう。さらに、北朝鮮の人権状況にも憂慮を示している。

    北朝鮮外務省スポークスマンの談話は、これを受けたものである。談話ではまず、G8宣言に対し「我々の平和的な衛星発射と自衛的な核抑止力を不当に非難することを断固として糾弾し全面的に排撃する」としている。そして米国の敵対政策が存在する限り「核抑止力は瞬間も止まることなく、拡大・強化されるであろう」と今後も核開発を拡大・推進するとしている。これは、米国が再び北朝鮮との対話に臨まなければ、その間に核開発、特にウラン型核爆弾の開発は推進されるという警告であろう。

    そして、「対話と交渉を通じて朝鮮半島の核問題を平和的に解決する道は依然として存在する」とし、「平和的発展に総力を集中させることに必要な朝鮮半島の平和と安定を保障するために、我々は米国側が提起した憂慮事項も考慮し、我々が2.29朝米合意の拘束からは脱したが、実際の行動は自制しているということを数週間前に通告した」とし、「行動は自制している」という表現を使いながら、米国に対して北朝鮮との協議再開を求めている。

    ところで、「数週間前に通告」としているが、これは何を意味しているのであろうか。これに関して、米国務省定例記者会見で記者と報道官のやりとりがあった。

    http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2012/05/190621.htm

    記者は、「数週間前」を意識してかどうかは分からないが、「北朝鮮のロケット発射の前に米国政府の人間が北朝鮮を訪問したという報道があるが」と質問している。ヌーランド報道官は、「コメントすることはない」と逃げているが、もしかするとこの時に北朝鮮側から米国に対し「ロケットは発射するが、核実験はやらない」という「通告」があったのかもしれない。

    それを暗示するかのように北朝鮮は、「そもそも我々は、初めから平和的な科学技術衛星発射を計画したのであり、核実験のような軍事的措置は考えてもいなかった」と主張している。

    ヌーランド報道官は、これまでの主張どおり、北朝鮮がロケット発射という約束違反をしたので、これ以上同国を信頼することはできず、2.29合意の実現は不可能になったとしている。米国は、北朝鮮のロケット発射が金正日さんの遺言に基づいて「やむを得ず」実行されたと知りつつも、国内的にも国際的にもそれを見過ごすような弱腰な態度はとれないのであろう。北朝鮮もこれが「遺言」でなければあのタイミングで発射する必要もなかったであろうし、ましてやこれまでにない大失敗をするような準備不足の状態での強行をする必要もなかったであろう。ロケット発射の失敗について関係者が免責されているのは、金正恩さんの「恩情」強調するためであるという指摘もあるが、「大失敗」に至ったことについて「やむを得ず」ということを認めているのかもしれない。だからこそ、失敗をすんなりと認めているのであろう。もしかすると、外国人記者の前で失敗により恥をかいたことよりも、北朝鮮の「透明性」を強調する方に意義を見いだしているのではないだろうか(しかも、北朝鮮は金日成生誕100周年という、一大イベントの最中だったので、その様子もついでに報道してくれる)。

    この北朝鮮外務省スポークスマン談話は、米国を強く非難しつつも、その内容には米国に対するラブコールが含まれているということを見落としてはならない。

    「労働新聞」に掲載された同内容の記事:
    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-05-23-0028

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    川口智彦

    Author:川口智彦
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    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
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