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    北京の朝鮮食堂「玉柳館」:昼の部、鋼鉄の工作員ミファドンム編 (2016年12月14日)

    先週末は、国際学術会議に出席するために、北京にいた。本来、会議は10~11日午後までの予定だったので、朝鮮食堂は行けても11日夜の夕食だけかと思っていたが、会議が短縮され、11日が完全フリーになったので、かなり余裕が出来た。

    今回の「27号探査隊員」の作戦計画は、1.北朝鮮大使館親善訪問、2.大使館周辺探査、3.朝鮮食堂における接待員ドンムとの情報交換を想定し、それぞれの作戦計画の準備として、事前にBaiduを検索し、地図等を準備しておいた。モランボン時計について調べるまでは、中国語が分からないからと、中国語のネットを見ることはほとんどなかったが、Baiduは非常に便利であることが分かり今回は大いに活用した。特に地図機能は大変有用で、目的地周辺の地図をプリントアウトしておけば、確実にその場所に行けることも分かった。入力は特に中国語で入れる必要はなく、取りあえず、日本語のIMEのまま日本語の漢字を入れてやると、それらしい検索結果が表れ、その中からそれらしい中国語を探して(多少中国語の知識を要するが)、再検索をすると大体、目的の結果に到達できる。

    ということで、朝鮮食堂については、いくつか出てくるが、午後3時頃からの作戦計画であったので、朝鮮食堂は玉柳館と平壌大成山館のみ準備しておいた。前者では夕食と公演、後者ではその前に軽く「革命的」なコーヒーを飲むという計画であった。

    ところが、余裕が出来たので、玉柳館で昼食として平壌冷麺を食べることにした。北京の地下鉄望京駅周辺にはコリアンタウンがあり、玉柳館もその一角に位置する。実際、どこからどこまでがコリアンタウンなのか分からないが、地下鉄出口から出て少し歩くと、朝鮮文字の看板が見えてくる。ほとんどは食堂で、朝鮮族か韓国人経営する店のように思われた。西望京方面に進むと、玉柳館があった。とにかく大きい。これまで行った朝鮮食堂とは比較にならない規模で、食堂のフロアが円卓と焼き肉が焼けるテーブルが置かれている区画に分けられており、さらに2階にはドンムと歌を歌える個室があるらしい(今回、2階は未探査だが)。

    北京は寒く、ドンム達はドアの中に立ってお客を待っている。「ニーハオ」と挨拶され、取りあえずは焼き肉席に案内された。円卓はステージの前に並べたれており、夜の公演時間にはそちらに案内されるのであろう。店内には中国人らしき人々がおり、焼き肉を食べている人もたくさんいた。「27号探査隊員」は、店内全てを見渡せる、ほぼ中央の焼き肉席に座った。

    さすがに食堂だけあり、上海の「モランボン音楽食堂」や延吉の「千年白雪館」(3階)と異なりメニューは豊富で、焼き肉も何種類もあった。平壌冷麺を注文したが、これにも100グラム、200グラム、300グラムと3種類用意されていた。その後、平壌大成山館にも行く予定だったので、一番軽い100グラムの冷麺を注文し、しばらく待っていたら、ミファドンムがやって来た。これまでの例だと、少し離れた所に立っているドンムを「27号探査隊員」が呼びつけ、色々と質問をするのだが、今回はドンム自らやって来て「27号探査隊員」に「尋問」し始めた。こちらに質問させる前に先に「尋問」攻勢をかける、相当に訓練された工作員のミファドンム。この店はどうやって調べたのか、北京に何しに来たのか、どこから来たのか、国籍はどこなのか、在日同胞なのか、どうして朝鮮語を話すのか、職業は何か、いつまで北京にいるのか、家族構成は等々、矢継ぎ早に「尋問」され、全て「自白」させられた。とにかく、いつもはドンムと会話はするが、対話にはなっていないのだが、今回は会話ではなく、横に立ったミファドンムとずっと話し続けた。

    一通りの「尋問」が終わったので、今度は「27号探査隊員」が工作を仕掛けた。まず、次の作戦地点を確認するために、平壌大成山館を知っているか質問したところ、「知らない」と。同じ望京エリアにあるにもかかわらず「知らない」ということはあり得ないと思いつつ、北京の朝鮮食堂について質問したところ、5軒ほどあり、中でも有名なのが「我々の玉柳館とヘダンファ館」だと教えてくれた。平壌大成山館をなぜ知らないのだろうか、その謎は後で明らかになる。

    ミファドンム、「ここにいる接待員は実習生で、3年間の実習後、祖国に戻る。自分は3年目」だと。「実習生」という言葉は、よく聞くようになったが、朝鮮食堂従業員に外貨稼ぎをさせているという批判を避けるために、「実習生と言え」という指示が本国からあったのかもしれない。ミファドンム曰く、「ここにいるのは、音楽や踊りを専攻した人だけではなく、会計などを専攻した人も来ている」と。まあ、食堂経営には会計を専攻した人も必要であろう。中国語については、平壌での事前学習はなく、「中国に来てから覚えた」と言っていた。初めは、中国のお客さんの言っていることが分からず苦労したとも。客層について質問したところ、最近は中国人ばかりだと。「以前は南朝鮮のお客さんが団体でたくさん来て、南北交流が出来たのですが…」と残念そうに言っていた。さすがに、その原因を作った「李明博逆徒」や「朴槿恵逆徒」の話には至らなかったが。「27号探査隊員」の詰めが甘くしっかりと確認をしなかったのだが、この食堂では南朝鮮人民の入場は制限していないような雰囲気だった。

    店に入ったときは、『モスクワ郊外の夕べ』が流れていた。途中から「モランボン楽団」の楽曲に変わったので、朝鮮音楽の話へと話題を進めた。「せっかく朝鮮食堂に来たのに『モスクワ郊外の夕べ』が流れていたので、ガッカリしました」と言うと、「朝鮮音楽は好きですか?」と聞いてくるので、「モランボン楽団の歌も青峰楽団の歌もたくさん知ってますよ」と答えると、どこでどうやって覚えたのかと攻守逆転し、不覚にも再び「尋問」攻勢にさらされる。そこでも色々な話があるのだが、これまでのように項目毎に別れた会話ではなく、流れるような対話なので何を言ったのかは記憶できていない。「27号探査隊員」としては、ビタミンCを大量に摂取し、「平壌第1中学校」で「速読」訓練を受ける必要がありそうだ。

    ミファドンム、次々と工作員としての力量を発揮してくるのだが、「音楽がお好きならば、当店では朝鮮音楽が収録されたDVDも売っていますよ」と勧めてくる。中国の社会主義市場経済もビックリのビジネスマインド。「北朝鮮のものを売っているのですか」と質問すると、過去記事に書いた、机の上に置かれていたお土産リストを指さした。酒類のメニューかと思っていたのだが、よく見ると、北朝鮮のお土産リストで、酒類、タバコ、健康サプリ、そして過去記事にも書いた「バイアグラ」らしき薬品が記されていた。「バイアグラ」は75元。

    「朝鮮音楽のDVDは全て持っているからいりません」と言いつつ、「しかしカラオケマイクならば欲しいです」と。不覚にもカラオケマイクの朝鮮語を思い出せず、しばらく説明に苦労したが、ミファドンム、理解した模様。しかし、この店には置いてなく、「北京のどこかで買えますか」とダメ元で質問するも、「分かりません」という答えであった。結局、「今度、平壌に行かれたら買って下さい」というところで落ち着いた。カラオケマイクは、中国のどこかで売っているという情報があるが、店を見つけるのはかなり困難なミッションのようだ。

    そしてミファドンム、さらに攻勢を強め「朝鮮の切手もあるのですが、お好きですか」と。まあ、見るだけ見せてもらおうかと切手を持って来てもらうと、切手帳数冊と『朝鮮画報』の中国語版を持って来た。『朝鮮画報』は2016年12月の最新号で、これならさほど高くないだろうし朝鮮語版があれば買っても良いかと思い、「この朝鮮語版を下さい」と言うと、「これは、切手帳を買って下さった方へ差し上げます」と、「白頭の刃の風」のような大攻勢をかけてくる。そして、切手帳の内容について、1冊ずつ説明を始める。一番初めに見せたのが、「最近出たばかり」という「切手で見る共和国の歴史」というシリーズ。これは、朝鮮語と英語で解説が書かれており、建国から2013年までのそれぞれの事項に関する切手が収録されている。「光明星3-2号」の切手があったので、「最近なのに、なぜ光明星-4号機の切手がないのか」と「27号探査隊員」がやっと攻守逆転して尋問、波状攻撃を加えるために「光明星3-1号機の切手がないではないか」とたたみかけると、「光明星4号機」については曖昧にされたが、「光明星3-1号機は、残念ながら打ち上げに失敗しました」と「自白」した。心優しい「27号探査隊員」は、「元帥様の領導の下、わずか数ヶ月間で光明星3-2号機を製作し、普通ならば発射できないような真冬の12月に発射を成功させたのだから良いではないか」と北朝鮮報道で学習したとおりのコメントをすると、ミファドンム、「よくご存じですね」と嬉しそうな顔をした。しかしこれがまた、鋼鉄のような工作員ミファドンムの笑顔に翻弄された「27号探査隊員」は、結局、この500元の切手帳を購入し、貴重な作戦資金を流出させてしまった。ちなみに、何百枚もの北朝鮮切手が挟まっている切手帳は580元とのこと。切手収集が目的であるならば、こちらの方が良いのかもしれないが、「歴史」ということからは500元の切手帳でも良かったのではないかと思っている。ヤフオクかebayでもっと安く購入できそうな雰囲気だが、ミファドンム曰く「国が経営している食堂ですから、高く売りつけるようなことはしません」と。まあ、そもそも、使用価値が限りなくゼロに近い北朝鮮切手という時点で高価なのだが、まあ、せめても「偽物ではない」という別の価値を見いだすことにしておく。

    ミファドンムに『朝鮮画報』の朝鮮語版を要求するも、「これにも朝鮮語は書いてあります」と1ページずつめくっていく。『朝鮮画報』は、それぞれの言語バージョンがあることは知っていたので、出ているわけがないことは認識していたが、ページをめくりながらミファドンムが写真の説明を始めたので、それをしばらく聞いていた。『私たちの家の話』の写真があり、ミファドンム、自慢げに「この映画は、国際映画祭で賞を取ったのですよ」と。「27号探査隊員」は我が意を得たりと、「ああ、知ってますよ。『私たちの家の話』ですね。若い娘のお母さんが登場する実話ですね」というとミファドンム、「日本で見たんですか?」と。「見たも何も、日本語字幕を付けて網(ネット)で友好的日本人民に紹介し、500人以上の日本人民が視聴しました」と威張っておく。そこから、どうやって見たのかという「尋問」に晒されるが、こればかりは「自白」してもなかなか理解してもらえなかった。「共和国を称賛する南朝鮮人民が網で流しているのですよ」というところで、納得していたようだが。

    そして、次は咸鏡北道被害と復旧の様子を紹介する写真のページに来たので、「咸鏡北道被害復旧戦闘ですね。寒さが本格化する前に住宅ができてよかったですね。人民軍隊は素晴らしいです」と褒めると、ミファドンム、言葉を失っていた。

    そうこうしているうちに、あっという間に1時間以上経過していた。そのまま、夜まで粘れそうな雰囲気ではあったが、次の作戦計画があったので、戦略的後退をすることにし、会計をした。冷麺は数十元であったが、切手帳が高かった。大同江ビールは、冷蔵庫の中にたくさん並べられていたが、次の作戦に支障が出ると困るので、取りあえず我慢しておいた。

    ミファドンム、「明日の飛行機は何時ですか」と。「午後です」と答えると、「では、公演を見に来て下さい。7時20分からです」と再度の来店攻勢に出る。頭によぎるのは、フィリピンパブ…否、朝鮮パブ…

    「来られたら来ます」と言いつつ、戦略的後退をしておくことにした。

    戦利品というべきか・・・
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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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