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    「北の旅券台紙持ち込み阻止 羽田空港で100冊 総連特権に揺さぶり」:北朝鮮産とどのように特定したのか (2016年11月24日 「産経新聞」)

    24日、『産経新聞』ウェブ版が、「朝鮮総連幹部の男性」が持ち込もうとした「北朝鮮旅券の未使用台紙」が、羽田空港で「持ち込み差し止め」されたと報じた。

    『産経新聞』、「北の旅券台紙持ち込み阻止 羽田空港で100冊 総連特権に揺さぶり」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161124-00000060-san-soci

    この男性は、北京経由で北朝鮮入りしたということであるが、この人が持っていた旅券台紙が「北朝鮮産」であることをどのように特定したのであろうか。本人が「北朝鮮で入手した」と言ったのであれば、「北朝鮮産」である可能性は高まるが、そうでなければ、北京空港で入手した「中国製の偽物」、本物であったにしても中国製の紙を使い「在北京北朝鮮大使館」で製造した台紙の可能性もある。在北京北朝鮮大使館の域内には、治外法権が適用されるので、北朝鮮領域と解されるとでもなるのであろうか。また、中国製の紙に北朝鮮のスタンプ等が押されると「付加価値」が高まり、北朝鮮製と判断されるのであろうか。

    日本国内で外国旅券を偽造すれば、「有印私文書偽造」に当たるとどこかに書かれていたが、偽物の単純所持を規制する法律はあるのだろうか。かつて、拙ブログで紹介した、北朝鮮旅券型手帳も、北朝鮮旅券の偽造品であるといえば、偽造品である(もちろん、使用に耐えない偽造品ではあるが)。

    総連は、総連関係者に北朝鮮旅券を発行するために台紙が必要なのであろう。以前、平壌から瀋陽に向かう高麗航空機で、日本の総連系学校の生徒たちと乗り合わせたことがあるが、彼らが瀋陽空港で入国審査のために手にしていたのは、日本の再入国許可証であり、北朝鮮旅券ではなかった(重ねていたり、隠し持っていたならばその限りではないが。瀋陽空港に着いたとたんに、バッジを外していたので、「隠し持つ」可能性は排除できない)。なので、事実上、朝鮮籍の人々が海外旅行をする時に必要なのは、北朝鮮旅券ではなく、日本政府が発行する再入国許可証なのだと思う。「思う」というのは、特定国で「朝鮮籍」を証明する書類として、北朝鮮旅券の提示を求めることがあるかもしれないからである。

    『産経新聞』には、「『「北朝鮮の日本における在外公館』業務を担う朝鮮総連にとって、旅券の新規発行や更新といった事務は本国(金正恩政権)の信任を示す特権の一つとなっている。」と書かれているが、朝鮮総連系の人に朝鮮総連が北朝鮮旅券を発行しても「信任」でも「特権」でもない。彼らにとっての旅券発行機関は、朝鮮総連しかないのだから。まあ、台紙がなくなって発行できなくなれば、旅行証明書でも発行し、各自、平壌か北京の大使館で旅券を発行してもらうことになるのであろう。

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    No title

    基本的に日本から出るときに再入国許可証使い(日本が朝鮮旅券を認めてないので)、渡航先に入国するときは旅券です。渡航先の入国審査官に再入国許可証だしても、なにこれ?て言われるだけでので。ケースバイケースですけども。再入国許可証でビザ取るときもあります。

    Re: No title

    コメントありがとうございます。日本政府は、外交関係がない国の旅券は、「旅券」と見なしていないのでしょうね。そこは分かりますが、渡航先での情報、とても興味があります。ということは、瀋陽空港で再入国許可証を出していた生徒達は、中国の入管当局に北朝鮮旅券を出すように言われたのでしょうね。となると、総連が日本当局に「台紙」を没収され、旅券を発行できなくなると、面倒なことになりますね。トランジットで通過させてもらえれば、平壌に行き旅券を発行してもらえるものの、そうでなければ、日本から出ることはできても、入国を許可される国はゼロではないにせよ、随分減ってしまうのではないでしょうか。日本の再入国許可証が活きれば別ですが。

    そうなってくると、台紙の持ち込みを制限するというのは、「人道的問題」となって来るような気がします。

    > 基本的に日本から出るときに再入国許可証使い(日本が朝鮮旅券を認めてないので)、渡航先に入国するときは旅券です。渡航先の入国審査官に再入国許可証だしても、なにこれ?て言われるだけでので。ケースバイケースですけども。再入国許可証でビザ取るときもあります。

    No title

    なんか訳の判んない記事ですね。北朝鮮の旅券を認めないというのは国交の無い日本側の勝手でしょうが、ならば「旅券」の台紙も、ただの紙切れですよ。その只の紙切れをとりあげる法的根拠ってナンナンでしょう????

    しかも総連は事実上の大使館として機能しているわけですから旅券を発行する業務があるのは自然な流れで、その台紙が持込めなくとも日本国内の印刷屋で造れば全く同じことで、朝鮮側に何らかの打撃を与えるとも考えにくい。

    その「日本製」朝鮮旅券も日本政府の解釈であれば只の紙切れなのですから、それをドウノコウノと問題視するのであれば極度の自己撞着です。

    No title

    サンケイの記事を読むと、おそらく税関のおじさんが一般人(国交が無いので外交特権が無いという意味)が大量の ★本物★ の白紙旅券を持っていたので怪しんで差し止めたってところでしょうね。

    で、あとに引けなくなって、
    『人道物資などに当たらない』
    との解釈で没収したということでしょうか。

    まあ単なる笑い話の類なのにサンケイが書くと
    『ブランク旅券の不足が続けば朝鮮総連の威信のさらなる失墜につながる』
    と、なってしまうんですね。

    おそらく手荷物の範囲内ならば良いのだと思いますが、
    (でなければ裸で出国し裸で帰ることになる)
    先生の訪朝時のお土産なんかはどうなるんですか?

    Re: No title

    コメントありがとうございます。2件頂いているので、2件目にまとめてお返事させて頂きます。

    > なんか訳の判んない記事ですね。北朝鮮の旅券を認めないというのは国交の無い日本側の勝手でしょうが、ならば「旅券」の台紙も、ただの紙切れですよ。その只の紙切れをとりあげる法的根拠ってナンナンでしょう????
    >
    > しかも総連は事実上の大使館として機能しているわけですから旅券を発行する業務があるのは自然な流れで、その台紙が持込めなくとも日本国内の印刷屋で造れば全く同じことで、朝鮮側に何らかの打撃を与えるとも考えにくい。
    >
    > その「日本製」朝鮮旅券も日本政府の解釈であれば只の紙切れなのですから、それをドウノコウノと問題視するのであれば極度の自己撞着です。

    Re: No title

    こちらもありがとうございます。一応、色々と調べてみました。経産省のプレスリリース(2015年3月31日)には、「(2)北朝鮮を原産地又は船積地域とする全ての貨物について、経済産業大臣の輸入承認義務を課すことにより、輸入を禁止します(関係条文:外為法第52条)」と書かれています。「経済産業大臣の輸入承認義務を課すことにより、輸入を禁止します」というのは、「承認はしないので、輸入はできない」という意味のようです。

    となると、この人が北朝鮮域内(平壌空港)でこの「台紙」を所持していれば、日本製の紙であっても、中国製の紙であっても「船籍地域」規定で「輸入禁止」となります。もちろん、大同江の水ですいて作った紙ならば「原産地」規定でアウトですね。

    結局、「人道物資」の解釈になるわけですが、上記プレスリリースには「人道目的等に該当するものについては、措置の例外として取り扱うものとします」と書かれています。「人道目的等」の「等」でこっそりと運用の幅を広げているのだと思います。

    その根拠となると思われる法律が「輸入貿易管理令(最終改正:平成一五年六月六日政令第二四八号)」の第14条

    第十四条  第四条及び第九条の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。ただし、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要がある場合として経済産業大臣が定める場合は、この限りでない。
    一  別表第一に掲げる貨物を輸入しようとするとき。
    二  別表第二上欄に掲げる者が本邦へ入国する際、同表下欄に掲げる貨物を本人が携帯し、又は税関に申告の上別送して、輸入しようとするとき。
    三  貨物を仮に陸揚げしようとするとき。

    の「二」のような気がしています。「別表第一」で見ると、
    「四 個人的使用に供せられ、且つ、売買の対象とならない程度の量の貨物」
    「別表第二」で見ると、
    「 一 「携帯品」とは、手荷物、衣類、書籍、化粧用品、身辺装飾用品その他本人の私用に供することを目的とし、且つ、必要と認められる貨物をいう。」

    訪朝時のお土産ですが、上記「別表第二」の「一」に含まれるかどうかが一つの判断基準になるのだと思います。北朝鮮旅行中にズボンが破れ、仕方がないから「第一百貨店」で買ってはいて帰国したら、成田空港で脱がされるというのは困りますからね。ズボンのポケットに入れたまま、鞄に混入していた大同江ビールの蓋はどのような扱いになるのかは分かりませんが。

    その意味では、この人の「台紙」は「本人の私用に供する」とは言い難いと思います。「紙切れ」でも、「原産地」と「船積地」でアウトになってしまいます。

    一つ分からないのは、それらの立証義務が所持者にあるのか、国にあるのかです。もしこの人が「北京で入手した」と言い張れば、「船積地」ではクリアです。北朝鮮のスタンプが押してあろうが、国章が描かれていようが、「原産地」が北朝鮮であるとは限りません(記事中の在北京北朝鮮大使館がその話です)。それを所持者が証明するのか、国が証明するのかですね。

    北朝鮮とは無関係に、ブランド品の偽物として輸入禁止にするときも、同じ問題が発生するのだと思います。

    思えば、海外の自国大使館(朝鮮籍の人の場合は、朝鮮総連)で旅券を発行してもらうとき、その旅券に北朝鮮製の紙を使わなければならないという規則はないと思うので、日本製の紙で、日本の印刷技術を使えば、北朝鮮本国で発行する旅券と全く同じものは発行できるはずなので、それこそ本国(サンケイ的には「元帥様」)が「我々のもの、我々の技術」を使わなくてもよいという「信任」と「特権」を朝鮮総連に付与すれば、いくらでもできますね。

    > サンケイの記事を読むと、おそらく税関のおじさんが一般人(国交が無いので外交特権が無いという意味)が大量の ★本物★ の白紙旅券を持っていたので怪しんで差し止めたってところでしょうね。
    >
    > で、あとに引けなくなって、
    > 『人道物資などに当たらない』
    > との解釈で没収したということでしょうか。
    >
    > まあ単なる笑い話の類なのにサンケイが書くと
    > 『ブランク旅券の不足が続けば朝鮮総連の威信のさらなる失墜につながる』
    > と、なってしまうんですね。
    >
    > おそらく手荷物の範囲内ならば良いのだと思いますが、
    > (でなければ裸で出国し裸で帰ることになる)
    > 先生の訪朝時のお土産なんかはどうなるんですか?
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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