人民服(中山装)、上海・モランボン音楽食堂: 入り口で手を振って歓迎、丹東に輸入会社大同江ビール、マイク無しカラオケ、デュエットも、大同江ビール中国ルート (2016年11月15日)
再び上海で学術会議があり、1時間ほど前に帰宅した。忘れる前に、いくつか書いておき、後日、追記等をすることになると思う。
今回、上海では、人民服を買いたいと思っていた。実は、横浜中華街の雑貨屋で人民服らしきものを購入したのだが、ペラペラで見るからに作業服。秋口ぐらいには、ちょうどよい感じなので着ていたら、、ついに「なんだ、その作業服みたいなのは」と言われてしまった。そんなこともあり、上海では、もう少しまともな人民服を買いたいと思っていた。淘宝网で「中山装」(中国語では、このように呼んでいるらしい)をキーワードに検索すると200元ぐらいからたくさん出てくる。これだけ出てくるのならば、どこでも売っていると思ったのだが、中国の学生に検索してもらっても、売っている店が全く分からない。
「南京西路付近のデパートに行けばありそうだ」というところまで分かり、とにかく地下鉄で南京西路まで行ってみた。中国の先生が同行して下さったのだが、色々な人や店に聞いても「わからない」という答えばかり。まあ、この辺りの反応は、日本のネットにもたくさん書かれている。中国の先生が色々と聞いて下さっている間、周りを見回していると「制服」とかかかれた店が見えた。1人で取りあえず入ってみると、品のよさそうなオバサンがいて、英語で話しかけても通じない。「今、人を呼ぶからちょっと待って」(というようなことを言って)と携帯で誰かに連絡をしているところに、中国の先生が入ってきて通訳をして下さった。その店、オーダーメードの店で、つり下げ品はない。ところが、何と偶然に、サンプルとして作ったグレーの人民服の上着があり、着てみるとピッタリ。延吉の朝鮮食堂カラオケマシンよろしく、これを買っていくがいくらだと聞いたところ、2000元と。その後、オバサンが「社長」なる人に携帯で連絡を取りながら値段交渉をし、結局1500元で決着。現金を出して、「これを受け取らなければ帰る」という素振りをしたところが効いたようだ。結果として安かったのか高かったのかは分からないが、歩き回ることなく買えたのでよしとする。質は作業服とは比較にならず、生地も「ウール100%」と言っていた(日本のようにタグはないが)。回し者ではないが、人民服(中山装)が欲しいというニーズはあるようなので、下に店のURLを記しておく。店構えは小さかったが、大きな洋服屋の支店のようだ。オーダーメードの店なので、ある程度の滞在期間がないと現地受け取りは厳しいかもしれない。
HUAXIA, http://www.hxsuits.com/
人民服が直ぐに手に入ったので、少し休んでから、モランボン音楽食堂に向かった。今回は、3人で向かったが、そのうち1人は朝鮮語が話せる私の弟子同志。驚いたのは、店から数十メートル離れたところで、チマチョゴリを着たドンムが我々に手を振っていたことである。否、我々に手を振っているなどとは思いもしなかった。ところが、そのドンム、親善的日本人民の顔を覚えていたようで、店の前で日本語で「いらっしゃいませ」とか言いながらはしゃいでいる。実は、親善的日本人民はこの9月に話をしたドンムの名前も顔も忘れており、手を振っているドンムに「ミヨンドンム(前回話をしたドンム)はいるか」と大変「思想・精神的」によくない質問をしてしまった。ドンム曰く、「ミソンならいますが、ミヨンは・・・」と。手まで振ってくれたのに、顔も名前も忘れるというのは、工作員としての訓練が全く不足している証拠。その時は、公演時間を聞き、9時半というので、「周囲を歩いてまた戻ってくる」と言ってコリアタウンを歩くも、特にこれといった店もなく、10分ほど後に再びモランボン音楽食堂に戻ってきた。再び、日本語で「いらっしゃいませ」と歓迎され、階段を上る。
日曜日ということもあったのか、店内には漢族(らしき人々)、朝鮮族、南朝鮮人民など、かなり多くの人がいた。前回とは大違いだったので、ドンムに「今日は日曜なので客が多いのか」と尋ねたところ、「開業後、3ヶ月経ったので定着しました」と。ということは、我らが9月に訪れた時は開業直後だったということになる。「思想・精神的に」にうるさい親善的日本人民が「よろしくない」と指摘した絵は、全てトイレの横の壁に移動されていたようだ(今一つ、確認が甘いが)。
ある筋の話しでは、丹東で10月末に朝鮮食堂に行ったところ、南朝鮮人と思われて入店拒否されたということであるが、モランボン音楽食堂には、南朝鮮人民もグループでおり、ドンムと話をしていた。地域によってなのか、店によってなのか分からないが、随分対応が違うようだ。
前回の経験があったので、ビールははじめから大同江ビールを注文した。前回の写真と比較してみる必要があるが、今回は、ビールの表のラベルには、中国語表記もあり、裏のラベルには丹東の輸入販売会社も記されていた(写真は、後日)。もしかすると、中国向けの大同江ビール生産を本格化し、丹東に輸入販売会社を設けて朝鮮食堂で供給できるようなネットワークが構築されつつあるのかもしれない。その大同江ビールの値段は、37元であった。
前回の報告では、1曲50元で歌えると書いたが、今回確認したところ、モランボン音楽食堂ではカラオケサービスはないということが判明した。弟子同志は、「音楽食堂というのにそんな」と不満そうだったが、まあ、そういう規則らしい。系統的には、延吉の白雪会館と同じなのだが、この辺り、おもしろい。
例によって、入店時には、古い曲が流れていたので、モランボンか青峰に変えてくれとリクエスト。前回同様、「行こう、白頭山へ」からモランボン楽団シリーズが流れる。すると、遠くの角に立っていたドンムが口をパクパクさせながら歌い出し、ドラムを叩くような素振りを始める。やはり、モランボン楽団の楽曲は、若い朝鮮人民の曲なのであろう。
今回は、朝鮮族のサッカーチームが打ち上げをやっていて、店内は「乾杯(朝鮮語で)」の声などでかなり騒々しかった。そんなこともあり、こちらもあまり気にせず、弟子同志と一緒にかなり大きな声でカラオケ画面を見ながら歌っていた。お咎めがあれば止めればいいやという程度であったが、お咎めは一切無し。連発でモランボン楽団の歌を歌っているとドンムの視線がこちらに集中し、カウンターでは、厨房にいるオジサン(朝鮮人民かは不明)まで出てきて、ニコニコしながらこちらを眺めている。唖然としているのは、南朝鮮人民。何だあいつらはということをドンムに質問していたのかもしれない。
親善的日本人民とはいえ、全てのモランボン楽団の歌を完璧に歌えるわけではない(例えば、『海、豊漁歌』、『チョンリョンのリンゴの海』など、民謡調の歌)。さびは知っていても、その前後はという曲は何曲もある。そんな曲で戸惑っていると、ドンムがやって来て、我らの席の横で歌い出した。自分が歌うというよりも、親善的日本人民をリードするような感じで歌っている。そんなこともあり、次々と流れる、モランボン楽曲をドンムと共に歌うという大変楽しい状況になった。しかも無料(もちろん、マイクはないが)。
そうこうしているうちに、第1回公演が始まった。入店直後、古い歌ではなくて、新しい歌を中心にやってくれるようリクエストしておいたかいがあってか、2曲の中国曲を除いて、全て新しい朝鮮曲。しかも、中国曲の1曲は『時の流れに身を任せ』。まあ、歌詞は中国語であるが、日本で流行した歌であるということを知って選曲したのであれば、かなり心憎い。
モランボン音楽食堂の前回の演奏は、特に感激するようなものはなかったが、今回はドラムのドンムがとても凄かった。クライマックスで演奏する「これ見よがしに」など、これまで「朝鮮中央TV」で聞いたことがないほどドラムのビートを効かせた演奏をしている。どこかに楽譜があるのか、自分たちでアレンジしているのかは分からないが、ともかく凄い演奏だった。
と・・・まだあるが、本日ここまで。
<追記1>
『これ見よがしに』で1つ思い出したので、寝る前に書いておく。公演前に『人民の歓喜』が流れたので、かけ声のように歌う部分をモランボン楽団声楽組がやるように歌ったら、、大変受けていた。親善的日本人民が、超親善的日本人民になった瞬間であった。
<追記2>
追記に時間がかかってしまった。まず、上で話題にした大同江ビールの写真から。
中国側の輸入業者は、「丹東中威工貿易公司」となっており、製造年月日か輸入年月日かは分からないが、「2016/08/02」と記されている。このラベルは、明らかに中国輸出用のラベルで、朝鮮で製造された時点で添付されているのか、中国で添付されているのかは不明。

次に表面のラベルであるが、これには「大同江ビール 大同江ビール工場」とだけ記されている。延吉の白雪食堂にあったビールのラベルには、「2番」と記されていた。これ、ドンムに「何番ビールか」と質問したのでよく覚えている。したがって、延吉で出された大同江ビールと上海のそれのラベルは異なることになる。

また、瓶の栓も異なっている。左が延吉のもので右が上海のもの。印刷のクオリティーは、上海のものの方がよさそうに見える。

この辺りの違いが、北朝鮮の生産ラインで発生しているのか、あるいは輸入ルートで発生しているのか、はたまた中国で偽物が流通しているのか、もう少しサンプルを集めてみないと分からない。
さて、ドラムを叩いたドンムの話を上に書いたが、演奏者の服装についてである。楽器は、ベース(ギターだったかも、失念)、ドラム、オルガンが基本となっており、サクソフォーンのソロもあった。サックス奏者の服装は忘れてしまったが、歌唱組のドンムがサックスを演奏していたはずなので、チマチョゴリにサックスという組み合わせだったかもしれない。ベース(ギター?)、ドラム、オルガン奏者は、キラキラ光るメラのワンピースを着用していた。朝鮮人民にしては、スカートの丈が短い(とはいえ、モランボン楽団ぐらいであるが)、「思想・精神的」には完璧とはいえない衣装であった。しかし、やはり「間違い」は犯さないように、ドラム奏者はワンピースの下にしっかりと膝まであるスパッツを着ていた。「モランボン楽団」のドラムは、長ズボンを着用しているので、それに習えばよさそうなものだが、衣装がなかったのかもしれない。
ミソン・ドンムは、寒空の中(とはいえ、上海は東京よりもかなり暖かかった)、チマチョゴリの上にジャンパーを羽織って、遅くまで呼び込みをしていた。第1回公演が終わる頃に上に上がってきたので、「歌唱指導」をしてくれたドンムにミソン・ドンムを呼んでくれるように頼んだ。「今、奉仕中なので、終わったら来るように伝えます」とのことだったが、しばらくしたらこちらにやって来た。情報提供者にはリワードを手渡すというのが、工作員の鉄則。少ない工作資金を工面し、ミソン・ドンムに近所の百均でチョコレートを何枚か買って、お土産として持って行った。「色々と話をしてくれたから、お土産だ」と出すと、「結構です」と取りあえず拒絶。これは、想定内だったので、そのお土産に「深く刻み込まれた事由」について説明をした。詳細は長くなるので省くが、一言でお土産は拙宅の「芸術家」から朝鮮のお姉さんへということになっている。そのお土産に「深く刻み込まれた事由」を聞いたドンムは、お土産を受け取ってカウンターに預けていた。「ドンムたち、みんなで分けて食べて下さい」と言っておいたので、みんなで食べてくれたことを願っている。一応、ペコちゃんだとか、アンパンマンだとか、日本のキャラクターが箱に描かれているチョコを選んでおいた。「少年大将」があれば言うことないが、さすがに百均では売っていない。
2回目の公演は10時半に始まった。こちらは、古い曲が主体であったが、1曲だけ例のドラムのドンムが爆発する曲を演奏してくれた。「モランボン楽団」の楽曲であるが、曲目は失念。2回目の公演が終わると、人々がすっと帰って行った。
例の朝鮮族サッカーチームは飲み過ぎなのか、ステージの前で踊っていた。そこまではよいのだが、ステージに上がり、ドンムに接近。そこで登場したのが、前回の記事でも紹介した朝鮮族のアジュミ。凄いパワーでステージ上の朝鮮族を引き下ろした。しかも、何回も。引き下ろされた後、その男はアジュミに何か言われていたようだったが、素直に引き下がっていた。一方、ずっと下を向いている人がそのグループの中におり、床をかなり汚したようだ。彼らが帰った後、朝鮮人民らしき男性にドンム達全員が呼びつけられ、カウンターの前でなにやら深刻な顔で男性の話を聞いていた。雰囲気的には、叱られていたようだ。その後、数人のドンムが床掃除を始めていた。ただこの男性、その後は、ずっとスマホで遊んでいたので、「思想・精神的」に悪いものを見ていたのか、本国の指令を受けていたのか、はたまた朝鮮族だったのかは不明である。否、「朝鮮中央TV」のストリーミングを見ていたという可能性ももちろんある。
思い出せる限りではこのぐらいであろうか。現時点では、12月に別の学術会議があり北京に行く予定があるので、夜、解放されれば、北京の朝鮮食堂も「探索」してみようと思っている。
<追記3>
もう一つ思い出した。この食堂でもカラオケマシンについて尋ねてみた。というのも、『祖国賛歌』をリクエストしたところ、「機械が古いからその曲は入っていない」とドンムが言ったからだ。では、ということで「朝鮮のカラオケマシンが欲しいのだがどこで売っているのか」とドンムに尋ねた。ドンムは、「分かりませんから聞いてみます」と、上に書いた朝鮮人民らしき男性の所に行って聞いていた。戻ってきて言ったことは「大使館に行けばあります」。ま、あるのだろうが、北京の北朝鮮大使館に行って「カラオケマシンを買いに来ました」と言ったところで、追い払われるのが関の山であろう。まあ、北朝鮮大使館なるもの見たことがないので、次回の北京行きで時間があれば見に行こうと思う。カラオケマシンは・・・・だが。
今回、上海では、人民服を買いたいと思っていた。実は、横浜中華街の雑貨屋で人民服らしきものを購入したのだが、ペラペラで見るからに作業服。秋口ぐらいには、ちょうどよい感じなので着ていたら、、ついに「なんだ、その作業服みたいなのは」と言われてしまった。そんなこともあり、上海では、もう少しまともな人民服を買いたいと思っていた。淘宝网で「中山装」(中国語では、このように呼んでいるらしい)をキーワードに検索すると200元ぐらいからたくさん出てくる。これだけ出てくるのならば、どこでも売っていると思ったのだが、中国の学生に検索してもらっても、売っている店が全く分からない。
「南京西路付近のデパートに行けばありそうだ」というところまで分かり、とにかく地下鉄で南京西路まで行ってみた。中国の先生が同行して下さったのだが、色々な人や店に聞いても「わからない」という答えばかり。まあ、この辺りの反応は、日本のネットにもたくさん書かれている。中国の先生が色々と聞いて下さっている間、周りを見回していると「制服」とかかかれた店が見えた。1人で取りあえず入ってみると、品のよさそうなオバサンがいて、英語で話しかけても通じない。「今、人を呼ぶからちょっと待って」(というようなことを言って)と携帯で誰かに連絡をしているところに、中国の先生が入ってきて通訳をして下さった。その店、オーダーメードの店で、つり下げ品はない。ところが、何と偶然に、サンプルとして作ったグレーの人民服の上着があり、着てみるとピッタリ。延吉の朝鮮食堂カラオケマシンよろしく、これを買っていくがいくらだと聞いたところ、2000元と。その後、オバサンが「社長」なる人に携帯で連絡を取りながら値段交渉をし、結局1500元で決着。現金を出して、「これを受け取らなければ帰る」という素振りをしたところが効いたようだ。結果として安かったのか高かったのかは分からないが、歩き回ることなく買えたのでよしとする。質は作業服とは比較にならず、生地も「ウール100%」と言っていた(日本のようにタグはないが)。回し者ではないが、人民服(中山装)が欲しいというニーズはあるようなので、下に店のURLを記しておく。店構えは小さかったが、大きな洋服屋の支店のようだ。オーダーメードの店なので、ある程度の滞在期間がないと現地受け取りは厳しいかもしれない。
HUAXIA, http://www.hxsuits.com/
人民服が直ぐに手に入ったので、少し休んでから、モランボン音楽食堂に向かった。今回は、3人で向かったが、そのうち1人は朝鮮語が話せる私の弟子同志。驚いたのは、店から数十メートル離れたところで、チマチョゴリを着たドンムが我々に手を振っていたことである。否、我々に手を振っているなどとは思いもしなかった。ところが、そのドンム、親善的日本人民の顔を覚えていたようで、店の前で日本語で「いらっしゃいませ」とか言いながらはしゃいでいる。実は、親善的日本人民はこの9月に話をしたドンムの名前も顔も忘れており、手を振っているドンムに「ミヨンドンム(前回話をしたドンム)はいるか」と大変「思想・精神的」によくない質問をしてしまった。ドンム曰く、「ミソンならいますが、ミヨンは・・・」と。手まで振ってくれたのに、顔も名前も忘れるというのは、工作員としての訓練が全く不足している証拠。その時は、公演時間を聞き、9時半というので、「周囲を歩いてまた戻ってくる」と言ってコリアタウンを歩くも、特にこれといった店もなく、10分ほど後に再びモランボン音楽食堂に戻ってきた。再び、日本語で「いらっしゃいませ」と歓迎され、階段を上る。
日曜日ということもあったのか、店内には漢族(らしき人々)、朝鮮族、南朝鮮人民など、かなり多くの人がいた。前回とは大違いだったので、ドンムに「今日は日曜なので客が多いのか」と尋ねたところ、「開業後、3ヶ月経ったので定着しました」と。ということは、我らが9月に訪れた時は開業直後だったということになる。「思想・精神的に」にうるさい親善的日本人民が「よろしくない」と指摘した絵は、全てトイレの横の壁に移動されていたようだ(今一つ、確認が甘いが)。
ある筋の話しでは、丹東で10月末に朝鮮食堂に行ったところ、南朝鮮人と思われて入店拒否されたということであるが、モランボン音楽食堂には、南朝鮮人民もグループでおり、ドンムと話をしていた。地域によってなのか、店によってなのか分からないが、随分対応が違うようだ。
前回の経験があったので、ビールははじめから大同江ビールを注文した。前回の写真と比較してみる必要があるが、今回は、ビールの表のラベルには、中国語表記もあり、裏のラベルには丹東の輸入販売会社も記されていた(写真は、後日)。もしかすると、中国向けの大同江ビール生産を本格化し、丹東に輸入販売会社を設けて朝鮮食堂で供給できるようなネットワークが構築されつつあるのかもしれない。その大同江ビールの値段は、37元であった。
前回の報告では、1曲50元で歌えると書いたが、今回確認したところ、モランボン音楽食堂ではカラオケサービスはないということが判明した。弟子同志は、「音楽食堂というのにそんな」と不満そうだったが、まあ、そういう規則らしい。系統的には、延吉の白雪会館と同じなのだが、この辺り、おもしろい。
例によって、入店時には、古い曲が流れていたので、モランボンか青峰に変えてくれとリクエスト。前回同様、「行こう、白頭山へ」からモランボン楽団シリーズが流れる。すると、遠くの角に立っていたドンムが口をパクパクさせながら歌い出し、ドラムを叩くような素振りを始める。やはり、モランボン楽団の楽曲は、若い朝鮮人民の曲なのであろう。
今回は、朝鮮族のサッカーチームが打ち上げをやっていて、店内は「乾杯(朝鮮語で)」の声などでかなり騒々しかった。そんなこともあり、こちらもあまり気にせず、弟子同志と一緒にかなり大きな声でカラオケ画面を見ながら歌っていた。お咎めがあれば止めればいいやという程度であったが、お咎めは一切無し。連発でモランボン楽団の歌を歌っているとドンムの視線がこちらに集中し、カウンターでは、厨房にいるオジサン(朝鮮人民かは不明)まで出てきて、ニコニコしながらこちらを眺めている。唖然としているのは、南朝鮮人民。何だあいつらはということをドンムに質問していたのかもしれない。
親善的日本人民とはいえ、全てのモランボン楽団の歌を完璧に歌えるわけではない(例えば、『海、豊漁歌』、『チョンリョンのリンゴの海』など、民謡調の歌)。さびは知っていても、その前後はという曲は何曲もある。そんな曲で戸惑っていると、ドンムがやって来て、我らの席の横で歌い出した。自分が歌うというよりも、親善的日本人民をリードするような感じで歌っている。そんなこともあり、次々と流れる、モランボン楽曲をドンムと共に歌うという大変楽しい状況になった。しかも無料(もちろん、マイクはないが)。
そうこうしているうちに、第1回公演が始まった。入店直後、古い歌ではなくて、新しい歌を中心にやってくれるようリクエストしておいたかいがあってか、2曲の中国曲を除いて、全て新しい朝鮮曲。しかも、中国曲の1曲は『時の流れに身を任せ』。まあ、歌詞は中国語であるが、日本で流行した歌であるということを知って選曲したのであれば、かなり心憎い。
モランボン音楽食堂の前回の演奏は、特に感激するようなものはなかったが、今回はドラムのドンムがとても凄かった。クライマックスで演奏する「これ見よがしに」など、これまで「朝鮮中央TV」で聞いたことがないほどドラムのビートを効かせた演奏をしている。どこかに楽譜があるのか、自分たちでアレンジしているのかは分からないが、ともかく凄い演奏だった。
と・・・まだあるが、本日ここまで。
<追記1>
『これ見よがしに』で1つ思い出したので、寝る前に書いておく。公演前に『人民の歓喜』が流れたので、かけ声のように歌う部分をモランボン楽団声楽組がやるように歌ったら、、大変受けていた。親善的日本人民が、超親善的日本人民になった瞬間であった。
<追記2>
追記に時間がかかってしまった。まず、上で話題にした大同江ビールの写真から。
中国側の輸入業者は、「丹東中威工貿易公司」となっており、製造年月日か輸入年月日かは分からないが、「2016/08/02」と記されている。このラベルは、明らかに中国輸出用のラベルで、朝鮮で製造された時点で添付されているのか、中国で添付されているのかは不明。

次に表面のラベルであるが、これには「大同江ビール 大同江ビール工場」とだけ記されている。延吉の白雪食堂にあったビールのラベルには、「2番」と記されていた。これ、ドンムに「何番ビールか」と質問したのでよく覚えている。したがって、延吉で出された大同江ビールと上海のそれのラベルは異なることになる。

また、瓶の栓も異なっている。左が延吉のもので右が上海のもの。印刷のクオリティーは、上海のものの方がよさそうに見える。

この辺りの違いが、北朝鮮の生産ラインで発生しているのか、あるいは輸入ルートで発生しているのか、はたまた中国で偽物が流通しているのか、もう少しサンプルを集めてみないと分からない。
さて、ドラムを叩いたドンムの話を上に書いたが、演奏者の服装についてである。楽器は、ベース(ギターだったかも、失念)、ドラム、オルガンが基本となっており、サクソフォーンのソロもあった。サックス奏者の服装は忘れてしまったが、歌唱組のドンムがサックスを演奏していたはずなので、チマチョゴリにサックスという組み合わせだったかもしれない。ベース(ギター?)、ドラム、オルガン奏者は、キラキラ光るメラのワンピースを着用していた。朝鮮人民にしては、スカートの丈が短い(とはいえ、モランボン楽団ぐらいであるが)、「思想・精神的」には完璧とはいえない衣装であった。しかし、やはり「間違い」は犯さないように、ドラム奏者はワンピースの下にしっかりと膝まであるスパッツを着ていた。「モランボン楽団」のドラムは、長ズボンを着用しているので、それに習えばよさそうなものだが、衣装がなかったのかもしれない。
ミソン・ドンムは、寒空の中(とはいえ、上海は東京よりもかなり暖かかった)、チマチョゴリの上にジャンパーを羽織って、遅くまで呼び込みをしていた。第1回公演が終わる頃に上に上がってきたので、「歌唱指導」をしてくれたドンムにミソン・ドンムを呼んでくれるように頼んだ。「今、奉仕中なので、終わったら来るように伝えます」とのことだったが、しばらくしたらこちらにやって来た。情報提供者にはリワードを手渡すというのが、工作員の鉄則。少ない工作資金を工面し、ミソン・ドンムに近所の百均でチョコレートを何枚か買って、お土産として持って行った。「色々と話をしてくれたから、お土産だ」と出すと、「結構です」と取りあえず拒絶。これは、想定内だったので、そのお土産に「深く刻み込まれた事由」について説明をした。詳細は長くなるので省くが、一言でお土産は拙宅の「芸術家」から朝鮮のお姉さんへということになっている。そのお土産に「深く刻み込まれた事由」を聞いたドンムは、お土産を受け取ってカウンターに預けていた。「ドンムたち、みんなで分けて食べて下さい」と言っておいたので、みんなで食べてくれたことを願っている。一応、ペコちゃんだとか、アンパンマンだとか、日本のキャラクターが箱に描かれているチョコを選んでおいた。「少年大将」があれば言うことないが、さすがに百均では売っていない。
2回目の公演は10時半に始まった。こちらは、古い曲が主体であったが、1曲だけ例のドラムのドンムが爆発する曲を演奏してくれた。「モランボン楽団」の楽曲であるが、曲目は失念。2回目の公演が終わると、人々がすっと帰って行った。
例の朝鮮族サッカーチームは飲み過ぎなのか、ステージの前で踊っていた。そこまではよいのだが、ステージに上がり、ドンムに接近。そこで登場したのが、前回の記事でも紹介した朝鮮族のアジュミ。凄いパワーでステージ上の朝鮮族を引き下ろした。しかも、何回も。引き下ろされた後、その男はアジュミに何か言われていたようだったが、素直に引き下がっていた。一方、ずっと下を向いている人がそのグループの中におり、床をかなり汚したようだ。彼らが帰った後、朝鮮人民らしき男性にドンム達全員が呼びつけられ、カウンターの前でなにやら深刻な顔で男性の話を聞いていた。雰囲気的には、叱られていたようだ。その後、数人のドンムが床掃除を始めていた。ただこの男性、その後は、ずっとスマホで遊んでいたので、「思想・精神的」に悪いものを見ていたのか、本国の指令を受けていたのか、はたまた朝鮮族だったのかは不明である。否、「朝鮮中央TV」のストリーミングを見ていたという可能性ももちろんある。
思い出せる限りではこのぐらいであろうか。現時点では、12月に別の学術会議があり北京に行く予定があるので、夜、解放されれば、北京の朝鮮食堂も「探索」してみようと思っている。
<追記3>
もう一つ思い出した。この食堂でもカラオケマシンについて尋ねてみた。というのも、『祖国賛歌』をリクエストしたところ、「機械が古いからその曲は入っていない」とドンムが言ったからだ。では、ということで「朝鮮のカラオケマシンが欲しいのだがどこで売っているのか」とドンムに尋ねた。ドンムは、「分かりませんから聞いてみます」と、上に書いた朝鮮人民らしき男性の所に行って聞いていた。戻ってきて言ったことは「大使館に行けばあります」。ま、あるのだろうが、北京の北朝鮮大使館に行って「カラオケマシンを買いに来ました」と言ったところで、追い払われるのが関の山であろう。まあ、北朝鮮大使館なるもの見たことがないので、次回の北京行きで時間があれば見に行こうと思う。カラオケマシンは・・・・だが。