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    「金正恩 社会主義強盛国家建設の要求に合うように国土管理事業で革命的転換をもたらすことについて 党・国家経済機関、勤労団体の責任者とした談話」(2012年5月9日「労働新聞」) 

    金正恩さんの「労作」第2作が「労働新聞」に掲載された。

    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-05-09-0001

    「国土管理事業」ということで、農地、山林、水産、道路、環境問題など広範な国土開発事業について述べている。金正日さんがこのような問題について「労作」を残していれば、それと読み比べる必要があろうが、その作業をせずして敢えて述べるのであれば、北朝鮮が抱える問題を率直に認めながら、実現が相当に困難であると思われることも含めて、いろいろな提案がなされている。ここでは、そのいくつかを見ていくことにする。

    まず、平壌市の開発と地方都市の開発について述べている。平壌市の開発は「革命的首領観が打ち立てられた都市」として開発を続けなければならないとし、公園や遊園地の建設や緑地の造成を進めるべきであるとしている。最近、「朝鮮中央TV」は金正恩さんが、ルンラ人民遊園地の建設現場で強風によるほこりが舞い上がる中での現地指導の様子を伝えたが、これも国土管理事業の宣伝キャンペーンの一環であろう。

    KCTVの動画:
    http://www.uriminzokkiri.com/php_tmp/download.php?categ1=12&no=9661

    一方、「いま、地方がうまく開発されておらず」とし、地方の開発が遅れていることを認めて、さらに「道都所在地の開発を見ても地方別の特色がない」としながら、中央の指示に盲目的に従ってきた地方都市の開発を問題視し、「地方の特色が生かされるように」しなければならないとしている。そして、「地方の建設に対して中央で統制しすぎないようにし、地方毎に建設を地方の特性に合わせてできるようにしなければならない」と指示している。このことからすると、金正恩さんの構想としては、中央集権型の国家開発を弾力化し、地方の自治権を拡大しようという意図があるのかもしれない。もちろん、中央で負担しきれなくなったので、地方へ押しつけているという解釈も可能であるが、超中央集権体制の変革への兆しとみたい。

    次に、「いま、地方を回ると、土がむき出しになっているところが多く、見た目も良くないし、風が吹くとほこりが舞う」という地方都市の現状を描いている。そして、こうした状況が洪水を引き起こし、農地に大きな被害を及ぼしているとしながら、「荒れ地を一坪の農地にでもしようと努力している人が、本当の愛国者である」とし、さらなる土地活用を求めている。また、耕地整理が十分に行われていない点も指摘し、「人目に付かない農地」まで整理するようにと指示している。北朝鮮の農地改革・耕地整理は、金日成さんが韓国に先だち実施し、成功させたということになっているが、このような指示は金日成さんが実施した事業に不十分な点があったことを認めて、それを改善しようとする姿勢にも見える。

    山林保護については、「いま、我が国には、はげ山になった山がたくさんあります。地方に行くと、『山林愛護』、『青年林』、『少年団林』などと書かれた山でも木がほとんどない山が少なくありません」とキャンペーンと実態の乖離を指摘している。そして、10年以内にはげ山を全て緑の山にすることが「党の確固たる決心であり意思である」としている。山林を伐採し、農耕地を増やすという政策も金日成時代に「主体農法」の一環として進められた(はずである)が、結局、丘陵地の表土を流出させ、丘陵地での農耕が困難になっただけではなく、流出した表土により河川が浅くなり洪水を引き起こすなどの被害をもたらす原因となった。金正恩さんは、形式的な「かけ声」ではなく実質的な形での国土緑化を考えているのかもしれない。

    その例として、こんなことも言っている。「植林は、適地・適種の原則で行わなければなりません」。至極当然のことのように思われるが、北朝鮮のような超中央集権的な国家では、中央の指示で無条件同種の植樹がなされることは十分に考えられる。金正恩さんも金正日さんがどれそれの木が良いと指摘したが、他にも良い木はあるとして数種類の木を紹介している。この指示は、指導者の言うことに無条件、教条的にしたがうのではなく、各自が合理的な判断をすることを勧奨しているようにも読める。

    山林保護との関連で、「山林を保護するには、人民の燃料問題を決定的に解決しなければなりません」とも述べ、北朝鮮の特に農村地帯の燃料が蒔きに依然として依存していることを認めている。その解決の方策として、炭鉱の開発、メタンガスの開発、超無煙炭の活用などを挙げているが、いずれも北朝鮮の深刻な燃料問題の抜本的な解決策となり得るとは考えられない。

    交通インフラについては、「木の橋をコンクリートの橋に改造しなければなりません」、「高速道路の両側にガードレールを作らなければなりません」、「道路標識を国際的に通用する規格で作らなければなりません」などと述べている。平壌から開城に通じる高速道路を走ったことがあるが、中央分離帯も中央線もないだだっ広い直線道路である。走っている車もほとんどなく、運転ミスで道路から飛び出す以外には交通事故など考えられない道である(道路から飛び出したところで、周囲に通行人はいない)。そんな道になぜガードレールが必要なのか分からないが、要するに近代化をしたいということであろう。北朝鮮の道路案内標識はほとんど記憶にないが、高速道路に「ソウルxxKm」と書かれていたのだけは覚えている。

    水産資源については、「いかなる機関も魚種別に漁を禁止されている期間に漁をしたり、水産資源に被害を与える禁止された漁具や方法で漁をしながら、魚の生育条件を破壊し、幼魚を捕ることが絶対にないように厳格にに監督しなければなりません」とし、北朝鮮でこうした問題が発生していることを認めている。特に、水産物は対中国輸出の重要な産品の一つであるので、漁場を抱える沿岸地方で組織ぐるみの密漁が行われているのかもしれない。

    地下資源については、「国家の地下資源を大切にし、積極的に保護しなければなりません。今、わずかな外貨を稼ごうと国家の貴重な地下資源をむやみに開発し、輸出しようとしていますが、これは遠い未来を考えず目先のことだけを見ている近視眼的な態度であり、愛国心もないあらわれです」と現在行われている対中国地下資源輸出を批判している。そして「国家の地下資源開発を国家資源開発省と非常設地下資源開発委員会で検討・承認する手続きを厳格にし、地下資源をむやみに開発したり地下資源開発に無秩序さを作り出すことがないようにしなければなりません」と戒めている。何の輸出産業もない北朝鮮は、対中地下資源輸出を中止することはできないはずである。すると金正恩さんは、党組織や軍の利権と結びついている地下資源利権にもメスを入れようということであろうか。

    国土管理事業を推進するにあたり「外国や国際機関との科学技術交流事業も活発に推進しなければなりません」のべ、「国土管理と環境保護部門でも世界的な発展趨勢と外国の先進的で発展した技術を受け入れることが多いです」としながら、北朝鮮としては珍しく「ウリ式」よりも進んだ技術を進んで受け入れることの必要性を認めている。さらに「私がかねてから言っているように、インターネットを通して世界的な趨勢資料、外国の先進的で発展した科学技術資料を多く見られるようにし、代表団を外国に派遣し必要なことを多く学び、資料も収集してくるようにしなければなりません」と、北朝鮮の国境を越えたインターネットの活用や技術者の海外派遣も積極的に進めようという意思を示している。これは「労働新聞」の記事であり、金正恩さんの「労作」であるので、原則的には全ての朝鮮人民が「学習」すべきものである。そこでインターネットに言及し、その開放を思わせるような文言が並んでいるわけだが、読んでいてとても驚いた。この辺に金正恩時代の新しい風が感じられる。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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