「宇宙征服の道で達成したもう一つの事変、新型の静止衛星運搬ロケット用大出力エンジン地上噴出実験で大成功」:出力向上、噴出口は1つ、静止衛星 (2016年9月20日 「朝鮮中央TV」)
20日、「朝鮮中央TV」が「宇宙征服の道で達成したもう一つの事変、新型の静止衛星運搬ロケット用大出力エンジン地上噴出実験で大成功、敬愛する金正恩同志が、西海衛星発射場を訪れられ、新型の静止衛星運搬ロケット用大出力エンジン地上噴出実験を指導された」という「録画報道」を放送した。
「報道」でも言っているように、実験した場所は、2016年4月9日報道にあった「大陸間弾道弾ロケット大出力エンジン地上噴出実験」と同じで、実験に使用したベンチも同じである。
2016年4月9日、『労働新聞』に掲載されたテストベンチ。

Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2016-04-09-0001_photo
今回のテストベンチ。ベンチに装着されたロケットエンジンの形状が4月のものと全く異なっている。衣服の関係かもしれないが、「元帥様」少し痩せたか。

Source: KCTV, 2016/09/20
エンジンの違いは、噴出される火炎の様子からも分かる。
4月の噴出の様子。上の写真からも分かるように、エンジンが非常に太い。これは、複数のエンジンを組み合わせて1つにしているものと思われるが、下の写真でも3本の筋が確認できる。

Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2016-04-09-0001_photo
ところが、今回のエンジンでは、筋は1本だけで、複数のエンジンを束ねたものではなく、1つのエンジンから噴出されていることが確認できる。

Source: KCTV, 2016/09/20
実験の様子を見る「元帥様」。4月は、室内から見ていたが、今回はテラスに出ている。

さらに、4月のベンチテストでは、火炎の色が赤っぽい。これは、炎の温度が相対的に低く、出力が弱いことを示しているのだと思う。最高出力に達した時点での撮影だとすると、炎の先端は、横の柵あたりにある。

Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2016-04-09-0001_photo
ところが、今回のテストで使われたエンジンを見ると、炎の色が白く、温度が高いことが分かる。また、上と同じ条件での撮影タイミングだとすると、炎の先端が柵より下にまで至っていることが分かる。

Source: KCTV, 2016/09/20

Source: KCTV, 2016/09/20
このように、今回の実験に使われたロケットエンジンは、完全な新型ではないかと思われる。北朝鮮は、このエンジンを「推進力は80tf」と発表している。1kgf=9.8Nなので、784KNとなる(計算は苦手なので、間違っているかも)。日本のH-2Aロケットの1段目の「空中推進力」は、1098KN(単ノズル)とあるので、かなりその出力に迫っている。
ロケットエンジン諸元等の資料
JAXA, MIssion3 ロケット、http://edu.jaxa.jp/materialDB/html/guidebook/guidebook/pdf/mission3.pdf
また、北朝鮮は、「作業時間を200sとした」としているが、「作業時間」の意味がよく分からない。想像では、噴出継続時間を200秒としたということのようだが。
そして、「新型の静止衛星運搬ロケット用大出力エンジンの地上噴出実験を通し、推進力をはじめとしたエンジンの技術的指標が予定値に正確に到達し、作業全期間、全ての系統の特性値が安定して維持されたことを完全に確認した」としている。
この「新型」エンジンの「大成功」にともない、「国家宇宙開発5カ年計画期間に、静止衛星運搬ロケットを確固と開発、完成できる科学技術的保証が作られ、地球観測衛星をはじめとした各種の衛星を世界的水準で発射できる運搬能力を円滑に備えるのようになった」としている。「元帥様」は、「我が国を数年内に静止衛星保有国にしなければならない」と述べているが、是非とも静止放送衛星を打ち上げてもらい、CS用程度の小型のアンテナを高角度の状態に設置しても、北朝鮮のテレビが見られるようにしてもらいたいものである。
雰囲気的には、「将軍様」の命日前後に、このエンジンを使ったロケット打ち上げがありそうだがどうだろうか。核実験も2回やっているし、「光明星3」の例からすれば、1年以内のインターバルでロケット発射は可能なはずである。
エンジン・テストのコントロール・ルーム

Source: KCTV, 2016/09/20
「報道」でも言っているように、実験した場所は、2016年4月9日報道にあった「大陸間弾道弾ロケット大出力エンジン地上噴出実験」と同じで、実験に使用したベンチも同じである。
2016年4月9日、『労働新聞』に掲載されたテストベンチ。

Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2016-04-09-0001_photo
今回のテストベンチ。ベンチに装着されたロケットエンジンの形状が4月のものと全く異なっている。衣服の関係かもしれないが、「元帥様」少し痩せたか。

Source: KCTV, 2016/09/20
エンジンの違いは、噴出される火炎の様子からも分かる。
4月の噴出の様子。上の写真からも分かるように、エンジンが非常に太い。これは、複数のエンジンを組み合わせて1つにしているものと思われるが、下の写真でも3本の筋が確認できる。

Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2016-04-09-0001_photo
ところが、今回のエンジンでは、筋は1本だけで、複数のエンジンを束ねたものではなく、1つのエンジンから噴出されていることが確認できる。

Source: KCTV, 2016/09/20
実験の様子を見る「元帥様」。4月は、室内から見ていたが、今回はテラスに出ている。

さらに、4月のベンチテストでは、火炎の色が赤っぽい。これは、炎の温度が相対的に低く、出力が弱いことを示しているのだと思う。最高出力に達した時点での撮影だとすると、炎の先端は、横の柵あたりにある。

Source: 『労働新聞』、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2016-04-09-0001_photo
ところが、今回のテストで使われたエンジンを見ると、炎の色が白く、温度が高いことが分かる。また、上と同じ条件での撮影タイミングだとすると、炎の先端が柵より下にまで至っていることが分かる。

Source: KCTV, 2016/09/20

Source: KCTV, 2016/09/20
このように、今回の実験に使われたロケットエンジンは、完全な新型ではないかと思われる。北朝鮮は、このエンジンを「推進力は80tf」と発表している。1kgf=9.8Nなので、784KNとなる(計算は苦手なので、間違っているかも)。日本のH-2Aロケットの1段目の「空中推進力」は、1098KN(単ノズル)とあるので、かなりその出力に迫っている。
ロケットエンジン諸元等の資料
JAXA, MIssion3 ロケット、http://edu.jaxa.jp/materialDB/html/guidebook/guidebook/pdf/mission3.pdf
また、北朝鮮は、「作業時間を200sとした」としているが、「作業時間」の意味がよく分からない。想像では、噴出継続時間を200秒としたということのようだが。
そして、「新型の静止衛星運搬ロケット用大出力エンジンの地上噴出実験を通し、推進力をはじめとしたエンジンの技術的指標が予定値に正確に到達し、作業全期間、全ての系統の特性値が安定して維持されたことを完全に確認した」としている。
この「新型」エンジンの「大成功」にともない、「国家宇宙開発5カ年計画期間に、静止衛星運搬ロケットを確固と開発、完成できる科学技術的保証が作られ、地球観測衛星をはじめとした各種の衛星を世界的水準で発射できる運搬能力を円滑に備えるのようになった」としている。「元帥様」は、「我が国を数年内に静止衛星保有国にしなければならない」と述べているが、是非とも静止放送衛星を打ち上げてもらい、CS用程度の小型のアンテナを高角度の状態に設置しても、北朝鮮のテレビが見られるようにしてもらいたいものである。
雰囲気的には、「将軍様」の命日前後に、このエンジンを使ったロケット打ち上げがありそうだがどうだろうか。核実験も2回やっているし、「光明星3」の例からすれば、1年以内のインターバルでロケット発射は可能なはずである。
エンジン・テストのコントロール・ルーム

Source: KCTV, 2016/09/20