中国外交部の「北朝鮮の第5回核実験非難声明」等、中国語オリジナルバージョン詳細の検討 (2016年9月11日 「中国外交部」)
過去記事で紹介した、「中国外交部」の北朝鮮による第4回と第5回核実験に対する声明の違いについて、中国語に通じた方にコメントにて詳しくご説明頂いたので記事にしておく。
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細かいところも含めて前回と今回の差をリストにすると、
・2段落目初頭、「半島非核化」が「朝鮮半島非核化」に(前回は他の個所でも「朝鮮半島非核化」とは言っていません)
・2段落目2文目、「强烈敦促」=「強く促す」という内容に「遵守安理会相关决议」=「安保理の関連決議の遵守」を追加
・3段落目、「维护半岛及东北亚和平稳定符合各方共同利益。」=「半島および東北アジアの平和と安定を維持することは、各方面の共通の利益にかなっている。」を削除
・中国側の立場の一つ、「六者会談の枠組みを通した半島の核問題の解決を守り抜く」から、「框架」=「~の枠組み」を削除、あわせて「半島の核問題」を「有关问题」=「関連する問題」に変更
・さらに、それを含む文全体にかかる形で「同国际社会一道,」=「国際社会と一緒に」を追加
となります。
細かいところの変更に意味があるかは分かりません。
ただ、「各方面の共通の利益にかなっている」という文を削除して「安保理」と「国際社会」を入れるところを見ると、前回の声明は「東北アジア」の関係諸国向け、今回の声明は(必ずしも利害の一致するとは限らない)国際社会向けという感じを受けます。
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上記の点に関して思ったことは、、「半島非核化」を「朝鮮半島非核化」としている点がまずある。中国語で「The Korean Peninsula」を通常どのように言っているのかは分からないが、韓国で使う「韓半島」ではなく、日本(や北朝鮮)で使っている「朝鮮半島」が一般的だと思う。中国で開催される、北朝鮮が参加していない国際会議で、中国語での報告者が「チャオシェンパンド」のような発音で「The Korean Peninsula」を示していることからすると、「朝鮮半島」が一般的なのであろう。1月に「朝鮮」を付けなかったのは、韓国への配慮だったとするならば、今回はTHAAD配備関連なのか、その配慮が薄れたような気がする。
「安保理の関連決議を遵守」を追加したことについては、表向きは北朝鮮へのメッセージであろうが、中国が同決議を遵守していることをアピールするためではないだろうか。
「各方面の共通の利益」の削除は、利益は一致せずとも、「平和と安定の維持」が必要であると言いたかったのか。
「枠組み」を外したのは、米国が拘る9.19合意履行を六者会談の再開の前提条件とすべきではなく、「関連問題」としたのは、THAAD韓国配備なども含めたより広範な問題について、リセットされた六者会談で話し合って行くべきだということを主張しているのかもしれない。
「国際社会と一緒に」は、上記の中国が安保理決議遵守など、国際社会と足並みを揃えているということをアピールすると共に、一部の国(必ずしも北朝鮮だけではない)の「利益」だけを考えた行動には中国は反対するとも読み取れる。
そんなに細かいことはどうでもよいのかもしれないが、中国にとって、朝鮮との関係は大変デリケートなのだと思う。それを示す一例として、最近、参加した中国で開催されたとある国際会議での報告要旨の副題に付けた、「-中朝関係を中心に-」という部分が、会場で配付された資料では、「- -」と検閲削除されていた。
もう一つ、同じ方からコメントを頂いている。これは、「summon」と「lodge」に関するものである。
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「summon」と「lodge」についてですが、中国語原文を見ると、
问:中国外交部是否已召见朝鲜驻华大使就朝鲜核试表达抗议?
(中国外交部は既に中国駐在朝鮮大使に呼び出して(召见)朝鮮の核実験に抗議を示したか?)
答:中国外交部负责人将向朝鲜驻华使馆负责人提出交涉。
(中国外交部の責任者が中国駐在朝鮮大使館の責任者へ交渉を提示するであろう。)
となっています。
(http://www.fmprc.gov.cn/web/fyrbt_673021/jzhsl_673025/t1396202.shtml)
全体的に、「大使」が「責任者」、「抗議」が「交渉」となっているほか、「こちらに呼び出す」のではなく、「こちらから申し入れる」という表現です。
中国のWikipedia的な百科事典ページを見ると、外交上の「抗議」は正式かつ最も厳重なものだそうで、例として2012年の「釣魚島」などが挙がっています。
(http://www.baike.com/wiki/%E5%A4%96%E4%BA%A4%E6%8A%97%E8%AE%AE)
「釣魚島」のときは、「外交部长杨洁篪召见日本驻华大使提出强烈抗议」=「外交部長楊潔篪が中国駐在日本大使を呼び出して(召见)強い抗議を提示した」ということです。
(http://www.fmprc.gov.cn/diaoyudao/chn/xwdt/t967841.htm)
中国側のソースが見当たりませんでしたが、最近ではTHAADに関連して、やはり韓国の中国駐在大使を外交部に「呼び出して」「抗議を示した」そうです。
(http://chinese.joins.com/gb/article.do?method=detail&art_id=154228)
なので、現時点でそこまで厳重に朝鮮政府側に抗議するつもりではないということを強調したのだろうと思われます。
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これについては、コメントを下さった方が書かれていることに尽きると思う。尖閣やTHAAD韓国配備関連の事案で「呼び出し」や「抗議」を使っていることと比較すれば、相当にソフトな対応のような感じを受ける。
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細かいところも含めて前回と今回の差をリストにすると、
・2段落目初頭、「半島非核化」が「朝鮮半島非核化」に(前回は他の個所でも「朝鮮半島非核化」とは言っていません)
・2段落目2文目、「强烈敦促」=「強く促す」という内容に「遵守安理会相关决议」=「安保理の関連決議の遵守」を追加
・3段落目、「维护半岛及东北亚和平稳定符合各方共同利益。」=「半島および東北アジアの平和と安定を維持することは、各方面の共通の利益にかなっている。」を削除
・中国側の立場の一つ、「六者会談の枠組みを通した半島の核問題の解決を守り抜く」から、「框架」=「~の枠組み」を削除、あわせて「半島の核問題」を「有关问题」=「関連する問題」に変更
・さらに、それを含む文全体にかかる形で「同国际社会一道,」=「国際社会と一緒に」を追加
となります。
細かいところの変更に意味があるかは分かりません。
ただ、「各方面の共通の利益にかなっている」という文を削除して「安保理」と「国際社会」を入れるところを見ると、前回の声明は「東北アジア」の関係諸国向け、今回の声明は(必ずしも利害の一致するとは限らない)国際社会向けという感じを受けます。
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上記の点に関して思ったことは、、「半島非核化」を「朝鮮半島非核化」としている点がまずある。中国語で「The Korean Peninsula」を通常どのように言っているのかは分からないが、韓国で使う「韓半島」ではなく、日本(や北朝鮮)で使っている「朝鮮半島」が一般的だと思う。中国で開催される、北朝鮮が参加していない国際会議で、中国語での報告者が「チャオシェンパンド」のような発音で「The Korean Peninsula」を示していることからすると、「朝鮮半島」が一般的なのであろう。1月に「朝鮮」を付けなかったのは、韓国への配慮だったとするならば、今回はTHAAD配備関連なのか、その配慮が薄れたような気がする。
「安保理の関連決議を遵守」を追加したことについては、表向きは北朝鮮へのメッセージであろうが、中国が同決議を遵守していることをアピールするためではないだろうか。
「各方面の共通の利益」の削除は、利益は一致せずとも、「平和と安定の維持」が必要であると言いたかったのか。
「枠組み」を外したのは、米国が拘る9.19合意履行を六者会談の再開の前提条件とすべきではなく、「関連問題」としたのは、THAAD韓国配備なども含めたより広範な問題について、リセットされた六者会談で話し合って行くべきだということを主張しているのかもしれない。
「国際社会と一緒に」は、上記の中国が安保理決議遵守など、国際社会と足並みを揃えているということをアピールすると共に、一部の国(必ずしも北朝鮮だけではない)の「利益」だけを考えた行動には中国は反対するとも読み取れる。
そんなに細かいことはどうでもよいのかもしれないが、中国にとって、朝鮮との関係は大変デリケートなのだと思う。それを示す一例として、最近、参加した中国で開催されたとある国際会議での報告要旨の副題に付けた、「-中朝関係を中心に-」という部分が、会場で配付された資料では、「- -」と検閲削除されていた。
もう一つ、同じ方からコメントを頂いている。これは、「summon」と「lodge」に関するものである。
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「summon」と「lodge」についてですが、中国語原文を見ると、
问:中国外交部是否已召见朝鲜驻华大使就朝鲜核试表达抗议?
(中国外交部は既に中国駐在朝鮮大使に呼び出して(召见)朝鮮の核実験に抗議を示したか?)
答:中国外交部负责人将向朝鲜驻华使馆负责人提出交涉。
(中国外交部の責任者が中国駐在朝鮮大使館の責任者へ交渉を提示するであろう。)
となっています。
(http://www.fmprc.gov.cn/web/fyrbt_673021/jzhsl_673025/t1396202.shtml)
全体的に、「大使」が「責任者」、「抗議」が「交渉」となっているほか、「こちらに呼び出す」のではなく、「こちらから申し入れる」という表現です。
中国のWikipedia的な百科事典ページを見ると、外交上の「抗議」は正式かつ最も厳重なものだそうで、例として2012年の「釣魚島」などが挙がっています。
(http://www.baike.com/wiki/%E5%A4%96%E4%BA%A4%E6%8A%97%E8%AE%AE)
「釣魚島」のときは、「外交部长杨洁篪召见日本驻华大使提出强烈抗议」=「外交部長楊潔篪が中国駐在日本大使を呼び出して(召见)強い抗議を提示した」ということです。
(http://www.fmprc.gov.cn/diaoyudao/chn/xwdt/t967841.htm)
中国側のソースが見当たりませんでしたが、最近ではTHAADに関連して、やはり韓国の中国駐在大使を外交部に「呼び出して」「抗議を示した」そうです。
(http://chinese.joins.com/gb/article.do?method=detail&art_id=154228)
なので、現時点でそこまで厳重に朝鮮政府側に抗議するつもりではないということを強調したのだろうと思われます。
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これについては、コメントを下さった方が書かれていることに尽きると思う。尖閣やTHAAD韓国配備関連の事案で「呼び出し」や「抗議」を使っていることと比較すれば、相当にソフトな対応のような感じを受ける。