「中国外交部定例記者会見」:中国のスタンスは変わらずか、「全当事者の利益を」 (2016年9月10日 「中国外交部定例記者会見」、「米国務省定例記者会見」)
9日の中国外交部定例記者会見(英訳)が出た。
記者から「中国は今回の核実験を受けてどのような対応をするのか」という質問が出されたのに対して、「朝鮮半島情勢では、今年の初めから地域の平和と安定を害する紆余曲折があった」と答えている。もちろん、その大きな要因は、北朝鮮によるロケット発射と「水素弾」実験、そしてその後、行われた弾道ミサイルに関わる各種実験を指しているはずであるが、韓国へのTHAAD配備それに含まれていることは間違いない。それを示すかのように、「各当事者の朝鮮半島に関わる安保問題は、全当事者の利益にかなう方向でのみ解決できることが証明された」と述べている。つまり、中国の安全を脅かすようなTHAAD配備に反対しているだけではなく、北朝鮮を一方的に不利な立場に追い込むことに反対していると読み取れる。そして、米国が単独行動に出ることに釘を刺すように、「自己の利益のための単独行動は、八方塞がりの状況を招くだけ」と警告している。そして、前の記事にも書いたように、「中国は六者会談の枠組みの中での対話を通じて朝鮮半島問題を解決に努めることを求める」とまとめている。
中国が最新の安保理決議2270を充分に履行していないという前提で出された「中国は、安保理決議をさらに強く支持するのか」という質問に対しては、「今後も中国は安保理常任理事国として、責任ある国際社会の一員として、安保理決議の完全履行を続ける」とし、安保理決議2270採択以降の中国の北朝鮮への対応に問題はなかったことを公式的には主張している。国際社会からの「対応が不十分」という非難を避けるためには、このように言うしかないのであろう。そして、安保理会合には「責任を持って、建設的な方向で参加する」としている。
「事前に北朝鮮から核実験に関する通告があったのか」という質問には、「提供すべき情報はない」としている。
それと関連し、「駐北京北朝鮮大使を召還し、抗議するのか」という質問に対しては、「中国外交部は、在北京北朝鮮大使館関係者を迎える」と答えている。中国語原文を見ないと分からないが、英訳では記者が「summon」という強い表現を使っているのに対し、報道官は「lodge」と弱い表現を使いながら答えている。中国側が北朝鮮大使以外にも召還する際、このような表現を使うのかは不明。
中国外交部、Foreign Ministry Spokesperson Hua Chunying's Regular Press Conference on September 9, 2016、http://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/2511_665403/t1396294.shtml
一方、米国務省定例記者会見でも北朝鮮の核問題が取り上げられた。記者の「米国は北朝鮮を核保有国として認めないというが、彼らは核爆弾を爆発させているではないか。あなたが嫌であっても彼らは核保有国ではないのか」という質問に対し、「それは確かにそうであるが、我々は彼らに(核開発を)止めさせる努力を続ける」と答えている。
この質問は、とてもおもしろい。北朝鮮の「核保有国」化は、彼らが憲法に「核保有国」を明記したということとは関係なく、また米国が核不拡散体制という制度上、北朝鮮を「核保有国と認めない」ということと関係なく、北朝鮮の核兵器の能力は向上という現実で進行している。米国務省報道官は、今回の核爆発の威力については答えなかったが、観測された地震の規模からして、これまで最高であることは間違いない。
US Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2016/09/261702.htm
日韓がいくら目くじらを立てても、北朝鮮の核開発は止めることができない。日本には使える有効なカード、つまり北朝鮮をとても困らせるカードはないし、韓国も開城工団カードを使ってしまった。残るは米国であるが、対話か軍事オプション以外には、もう何も残っていないと思う。軍事オプションは、中露が認めるはずがないし、一国あるいは有志連合で攻撃をするにしても、ソウルは無事ではいられない。その代償は大きすぎる。
すると対話ということになるが、米国が今提示している「完全廃棄」を前提とした条件に北朝鮮は乗ってこない。可能性としては、閏年の幻に消えた2.29合意のように「凍結」から入るしかないであろう。米朝の対話は、なぜかうまく行きかけると北朝鮮の指導者が死去する。「首領様」が死去したときもそうだったし、2.29も「将軍様」が死去しなければ、「元帥様」はロケットなど発射する必要もなかっと思う。そんなことを振り返ると、「白頭の血統」のDNAには、彼らすらコントロールできない「反米情報」が組み込まれているような気がしてならない。
記者から「中国は今回の核実験を受けてどのような対応をするのか」という質問が出されたのに対して、「朝鮮半島情勢では、今年の初めから地域の平和と安定を害する紆余曲折があった」と答えている。もちろん、その大きな要因は、北朝鮮によるロケット発射と「水素弾」実験、そしてその後、行われた弾道ミサイルに関わる各種実験を指しているはずであるが、韓国へのTHAAD配備それに含まれていることは間違いない。それを示すかのように、「各当事者の朝鮮半島に関わる安保問題は、全当事者の利益にかなう方向でのみ解決できることが証明された」と述べている。つまり、中国の安全を脅かすようなTHAAD配備に反対しているだけではなく、北朝鮮を一方的に不利な立場に追い込むことに反対していると読み取れる。そして、米国が単独行動に出ることに釘を刺すように、「自己の利益のための単独行動は、八方塞がりの状況を招くだけ」と警告している。そして、前の記事にも書いたように、「中国は六者会談の枠組みの中での対話を通じて朝鮮半島問題を解決に努めることを求める」とまとめている。
中国が最新の安保理決議2270を充分に履行していないという前提で出された「中国は、安保理決議をさらに強く支持するのか」という質問に対しては、「今後も中国は安保理常任理事国として、責任ある国際社会の一員として、安保理決議の完全履行を続ける」とし、安保理決議2270採択以降の中国の北朝鮮への対応に問題はなかったことを公式的には主張している。国際社会からの「対応が不十分」という非難を避けるためには、このように言うしかないのであろう。そして、安保理会合には「責任を持って、建設的な方向で参加する」としている。
「事前に北朝鮮から核実験に関する通告があったのか」という質問には、「提供すべき情報はない」としている。
それと関連し、「駐北京北朝鮮大使を召還し、抗議するのか」という質問に対しては、「中国外交部は、在北京北朝鮮大使館関係者を迎える」と答えている。中国語原文を見ないと分からないが、英訳では記者が「summon」という強い表現を使っているのに対し、報道官は「lodge」と弱い表現を使いながら答えている。中国側が北朝鮮大使以外にも召還する際、このような表現を使うのかは不明。
中国外交部、Foreign Ministry Spokesperson Hua Chunying's Regular Press Conference on September 9, 2016、http://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xwfw_665399/s2510_665401/2511_665403/t1396294.shtml
一方、米国務省定例記者会見でも北朝鮮の核問題が取り上げられた。記者の「米国は北朝鮮を核保有国として認めないというが、彼らは核爆弾を爆発させているではないか。あなたが嫌であっても彼らは核保有国ではないのか」という質問に対し、「それは確かにそうであるが、我々は彼らに(核開発を)止めさせる努力を続ける」と答えている。
この質問は、とてもおもしろい。北朝鮮の「核保有国」化は、彼らが憲法に「核保有国」を明記したということとは関係なく、また米国が核不拡散体制という制度上、北朝鮮を「核保有国と認めない」ということと関係なく、北朝鮮の核兵器の能力は向上という現実で進行している。米国務省報道官は、今回の核爆発の威力については答えなかったが、観測された地震の規模からして、これまで最高であることは間違いない。
US Department of State, Daily Press Briefing, http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2016/09/261702.htm
日韓がいくら目くじらを立てても、北朝鮮の核開発は止めることができない。日本には使える有効なカード、つまり北朝鮮をとても困らせるカードはないし、韓国も開城工団カードを使ってしまった。残るは米国であるが、対話か軍事オプション以外には、もう何も残っていないと思う。軍事オプションは、中露が認めるはずがないし、一国あるいは有志連合で攻撃をするにしても、ソウルは無事ではいられない。その代償は大きすぎる。
すると対話ということになるが、米国が今提示している「完全廃棄」を前提とした条件に北朝鮮は乗ってこない。可能性としては、閏年の幻に消えた2.29合意のように「凍結」から入るしかないであろう。米朝の対話は、なぜかうまく行きかけると北朝鮮の指導者が死去する。「首領様」が死去したときもそうだったし、2.29も「将軍様」が死去しなければ、「元帥様」はロケットなど発射する必要もなかっと思う。そんなことを振り返ると、「白頭の血統」のDNAには、彼らすらコントロールできない「反米情報」が組み込まれているような気がしてならない。