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    「金正恩 偉大な金正日同志を我が党の永遠の総秘書として高く頂き、主体革命偉業を輝かしく完成しよう 朝鮮労働党中央委員会責任者たちとした談話」(2012年4月19日「労働新聞」)

    昨日の「労働新聞」にこのように題する記事が掲載された。

    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-04-19-0001

    これは、4月6日に金正恩さんが朝鮮労働党幹部と行った「談話」ということであるが、今日の「朝鮮中央TV」では、金正恩さんの「労作」として紹介されている。そうだとすると、これは金正日さんの初めての「労作」ということになる。「労作」とは、金日成、金正日さんなどの書いたことや、語ったことで、それが党や政府の活動指針となるので、非常に重要である。そして、それがある程度集まってくると「労作集」として出版され、それを朝鮮人民が「学習」する。この「労作」も非常に長文で、読むのに苦労したが、いくつかポイントとなりそうな部分を拾い出してみた。

    まず、「我が党と革命は、金日成-金正日主義を永遠の指導思想」とするとしているが、「金日成-金正日主義」についての説明が興味深い。「談話」によると、「金日成-金正日主義」は、「金日成主義を時代と革命発展の要求に合うように発展・拡大させた将軍様の特出した業績であり、以前から我が党員と人民は首領様の革命思想と将軍様の革命思想を結びつけて金日成-金正日主義と呼んできており、金日成-金正日主義を我が党の指導しそうとして認めてきました。しかし、限りなく謙虚であられる将軍様は、金正日主義はいくら掘り下げても金日成主義以外の何物でもないとおっしゃりながら、我が党の指導思想をご自分のお名前とと結びつけることを強く拒まれました。」としている。実際に北朝鮮国内で「金日成-金正日主義」という用語が使われていたのかどうかについて私は確認するすべを持たないが、少なくとも公式文書にそうした用語がこれまで登場しなかったのは、金正日さんがその使用を拒否したからということで説明が付く。しかし、金正日さんが「拒否」した北朝鮮では非常に重要な「主義」のような言葉を勝手に党員や人民が使っていたとは考えにくい。したがって、過去記事にも書いたが、形式的には主体思想と先軍思想を受け継ぐことを宣言している金正恩さんあるいは彼のアドバイザーたちが、「金日成-金正日主義」という「新しい主義」としてまとめ、そこに自らの解釈を付け加えることで独自の「主義」や「思想」を作り出しているのではないかと推測される。それは、「金日成-金正日主義」についてい記されている最後の部分で「全社会の金日成-金正日主義化は、我が党の最高綱領です。全社会の金日成-金正日主義化は、全社会の金日成主義化の革命的継承であり、新たな高い段階への進化発展であります。」という言葉にも表れているのではないだろうか。

    次に、朝鮮労働党と労働党員のあるべき姿について述べているが、その中で党員を選ぶに際し「経済道徳生活において健全で、群衆の心棒がある人々をとうに受け入れなければなりません。」と述べている。2月頃であったか、「朝鮮中央通信」が中国共産党の汚職追放キャンペーンのニュースを盛んに配信していた時期があったが、朝鮮労働党でも同様のキャンペーンが展開・強化されていくのであろう。しかし、「経済道徳生活において健全」ということが、「汚職追放」なのか「資本主義的思想」の追放なのか、あるいはその両方なのかは分からない。

    また、私が金正恩さんのお母さんである高英姫さんを意識しすぎているだけなのかもしれないが、党と人民の関係を説明するために「オモニ(母)」という言葉を次のように繰り返し使っている。「党組織は、母になった心情でいつでも人々を心から大切にして愛し、彼らの政治的生命について最後まで責任を持ち光り輝かせてやらなければなりません。母が出来の悪い子供、問題が多い子供であるといって捨てるのではなく、より心配して接するように、党組織は全ての人々を党の懐に抱き、将軍様と情で繋がるようにしなければなりません。」

    次に、国防について、「国力が弱ければ、自己の自主権と生存権も守ることができ」ないとし、「軍事力を強化するための事業を一貫して推進していかなければなりません。」と述べ、「国防工業の主体化、現代化、科学化を高い水準で実現し、国家の国防力を物質・技術的にしっかりと担保しなければなりません。」とし、軍事力増強路線と軍事産業を発展させる方針を明示している。

    人民生活については、「我々は、人民生活の向上と経済強国建設において決定的転換を引き起こさなければなりません。」とし、「将軍様が大変苦労され作って下さった元手から銀を出すようにし」と述べているが、「決定的転換」なるものが何なのかについては具体的に触れられていない。

    そして、「我々は人民の食べる問題、食料問題を円満に解決しなければなりません。」と述べ、その施策として「農業生産に対する国家的投資を決定的に増やす」、「農業を徹底して科学技術的に行」うことで増産を目指すことなどを挙げている。そして、これらの施策を通して「人民に対する食料供給を正常化しなければなりません。」と述べているが、「科学技術的」なるものが「主体農法」のようなまやかしではなく、真の意味で「科学技術的」であって欲しい。過去記事に書いたような記憶もあるが、「科学農法」はFAOのような国際機関と協力しながら進めていけば、少なくとも間違った方向には向かわないであろう。そういえば、過去記事にも書いた、ジャンボタニシという「生物兵器」で水田の雑草駆除を行う有機農法はうまくいっているのであろうか。

    軽工業の発展については、「原料供給対策を徹底して樹立し、軽工業工場での生産を正常化させ、人民消費品生産を増やしその質を高め、誰もが我々が作った製品を選ぶようにしなければなりません。」と述べている。「誰もが我々が作った製品を選ぶ」というのは、どういうことだろうか。北朝鮮製品の質が悪いので、朝鮮人民が中国製品を欲しがっているという現実を吐露しているのであろうか。「誰もが」が外国のお客さんで、輸出を目指しているということはないと思うが。

    そして、経済問題を担当する部署を「内閣に集中される」とも述べている。金正日さんも経済問題を内閣に押しつけ、自らは一定の距離を置いて失敗したときの非難をかわしてきたが、金正恩さんもその路線を踏襲するのであろうか。それとも内閣には実務をやらせ、経済政策を自らが陣頭に立って指揮していこうとしているのだろうか。これまでの現地指導を見ると、極端に軍部隊に偏っているが、北朝鮮では軍を把握することが政権の安定に繋がるという事情からしてやむを得ぬことであったであろう。しかし、ともかくも第1秘書と国防第1委員長のポストを手に入れたこれからは、これまで内閣首班にやらせていた経済部門の指導に金正恩さんが出向かなければならないであろう。

    金正恩さんの初めての労作、「談話」とはいえ実態としては秘書が書いた作文に決済を下した上で読み上げただけであろうが、誰のアイディアでそれを金正恩さんがどのように受け入れているのかを知りたいところである。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「朝鮮中央TV」ワッチャー

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.

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