「天を嘲る者は誰であれ処罰を免れないであろう 朝鮮人民軍最高司令部スポークスマン声明」(2012年4月19日「労働新聞」)
太陽節が終わるやいなや、北朝鮮は再び李明博非難モードに入ったようだ。2月末から3月初旬にかけて行われたキーリゾルブなど、韓国軍や米韓合同訓練が行われていた頃、北朝鮮は李明博政権を強く非難していた。ところが、太陽節が近づくにつれ、李明博政権に対する非難はいったん後退し、「労働新聞」には散発的に記事が出たものの、今回のように「最高司令部スポークスマン声明」というような大々的なものではなかった。
今回、北朝鮮が怒っているのは、「大韓民国の父連合」の関係者がソウルの光化門広場で「我々の最高尊厳を傷つけ」たことは、「李明博逆賊一味」が指示によるものだということである。韓国の国内政治の記事をきちんとフォローしているわけではないが、「大韓民国の父連合」は保守系の団体であり、北朝鮮に融和的な野党候補者に対する抗議行動などを行っている団体である。その意味では「李明博逆賊一味」の支持者であるかもしれないが、当然のことながら、李明博さんが操っているわけではない。
このような事態に対し「朝鮮人民軍最高司令部は、傍観することはできない重大な事態が連続して発生している」ので「李明博逆賊一味を叩きつぶすための全軍、全人民の汎民族的な聖戦を既に宣布しており、より強力に推進することを内外に再び厳粛に明らかにする」としている。そして「たとえ、ソウルの中だとしても、我々の最高尊厳を傷つける挑発の原点となっているその全てを吹っ飛ばすための特別行動措置がとられるであろう」と威嚇している。
また、「新たな主体100年代」を「一方では強盛復興の歴史的な進軍を推進し、もう一方では取るに足らない逆賊一味をきれいに清算するための聖戦を同時に展開するであろう」と経済建設と軍事力強化を同時に行うという政策を示唆している。
「労働新聞」の記事:
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-04-19-0002
今回、北朝鮮がこうした声明を出したのは、太陽節が一段落し、4月25日の「建軍節」、すなわち朝鮮人民軍創設記念日に向けて対内的には戦時の雰囲気を醸しだし、朝鮮人民軍の存在意義を強調すること、韓国に対しては「李明博は戦争を導く」という恐怖心を韓国民に与え、12月の大統領選挙で北朝鮮に対して融和的な候補が有利になるような雰囲気を作るためであろう。特に、4月11日の韓国総選挙で野党は議席を増やしたものの、与党セヌリ党が過半数を維持する結果に終わり、北朝鮮が期待した結果にはならなかったので、今後さらに李明博非難キャンペーンは強化されるものと予想される。ただし、上に書いたように経済建設と軍事力強化を並立し、「聖戦」を実際に始めなくても経済建設で説明が付くような余地をきちんと残してあるので、ヨンピョン島砲撃のような実力行使には出ないのではないだろうか。
この記事を読んでいて、久しぶりに出会った朝鮮語(韓国語)の表現がある。上に書いた「大韓民国の父連合」の尊厳冒涜に動員されたのが「피도 마르지 않은 깡패대학생무리들」、「血も乾いていないチンピラ大学生たち」とでも訳そうか「青二才のチンピラ大学生」ということである。朝鮮半島は儒教の影響を強く受けている。韓国こそ「経済発展と世界化」の波にのまれ「古式ゆかしき儒教的伝統」が消滅しつつあるが、少なくとも私が韓国にいた80年代中頃は「피도 마르지 않은 놈이」(この青二才が)というような言葉はよく耳にした。もちろん、「古式ゆかしき儒教的伝統」がそのまま残る、より正確には主体思想に取り込まれて残る北朝鮮では、当然のことながら「血も乾いていない」輩は目下の扱いを受けるのが習いのはずである。「労働新聞」では同じ記事の中で「南側の人民も非凡特出な『青年指導者出現』」したと言っていると書いているが、「青年」は「血も乾いていない輩」である。何か非常に矛盾を感じるのであるが、「白頭の血統」の特別な血は生後28~9年で乾いてしまったということかもしれない。しかし、儒教的伝統は伝統である。金正恩さんが失政をしたとき、「血も乾いていない」は、必ずや朝鮮人民の間でささやかれるであろう。
今回、北朝鮮が怒っているのは、「大韓民国の父連合」の関係者がソウルの光化門広場で「我々の最高尊厳を傷つけ」たことは、「李明博逆賊一味」が指示によるものだということである。韓国の国内政治の記事をきちんとフォローしているわけではないが、「大韓民国の父連合」は保守系の団体であり、北朝鮮に融和的な野党候補者に対する抗議行動などを行っている団体である。その意味では「李明博逆賊一味」の支持者であるかもしれないが、当然のことながら、李明博さんが操っているわけではない。
このような事態に対し「朝鮮人民軍最高司令部は、傍観することはできない重大な事態が連続して発生している」ので「李明博逆賊一味を叩きつぶすための全軍、全人民の汎民族的な聖戦を既に宣布しており、より強力に推進することを内外に再び厳粛に明らかにする」としている。そして「たとえ、ソウルの中だとしても、我々の最高尊厳を傷つける挑発の原点となっているその全てを吹っ飛ばすための特別行動措置がとられるであろう」と威嚇している。
また、「新たな主体100年代」を「一方では強盛復興の歴史的な進軍を推進し、もう一方では取るに足らない逆賊一味をきれいに清算するための聖戦を同時に展開するであろう」と経済建設と軍事力強化を同時に行うという政策を示唆している。
「労働新聞」の記事:
http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-04-19-0002
今回、北朝鮮がこうした声明を出したのは、太陽節が一段落し、4月25日の「建軍節」、すなわち朝鮮人民軍創設記念日に向けて対内的には戦時の雰囲気を醸しだし、朝鮮人民軍の存在意義を強調すること、韓国に対しては「李明博は戦争を導く」という恐怖心を韓国民に与え、12月の大統領選挙で北朝鮮に対して融和的な候補が有利になるような雰囲気を作るためであろう。特に、4月11日の韓国総選挙で野党は議席を増やしたものの、与党セヌリ党が過半数を維持する結果に終わり、北朝鮮が期待した結果にはならなかったので、今後さらに李明博非難キャンペーンは強化されるものと予想される。ただし、上に書いたように経済建設と軍事力強化を並立し、「聖戦」を実際に始めなくても経済建設で説明が付くような余地をきちんと残してあるので、ヨンピョン島砲撃のような実力行使には出ないのではないだろうか。
この記事を読んでいて、久しぶりに出会った朝鮮語(韓国語)の表現がある。上に書いた「大韓民国の父連合」の尊厳冒涜に動員されたのが「피도 마르지 않은 깡패대학생무리들」、「血も乾いていないチンピラ大学生たち」とでも訳そうか「青二才のチンピラ大学生」ということである。朝鮮半島は儒教の影響を強く受けている。韓国こそ「経済発展と世界化」の波にのまれ「古式ゆかしき儒教的伝統」が消滅しつつあるが、少なくとも私が韓国にいた80年代中頃は「피도 마르지 않은 놈이」(この青二才が)というような言葉はよく耳にした。もちろん、「古式ゆかしき儒教的伝統」がそのまま残る、より正確には主体思想に取り込まれて残る北朝鮮では、当然のことながら「血も乾いていない」輩は目下の扱いを受けるのが習いのはずである。「労働新聞」では同じ記事の中で「南側の人民も非凡特出な『青年指導者出現』」したと言っていると書いているが、「青年」は「血も乾いていない輩」である。何か非常に矛盾を感じるのであるが、「白頭の血統」の特別な血は生後28~9年で乾いてしまったということかもしれない。しかし、儒教的伝統は伝統である。金正恩さんが失政をしたとき、「血も乾いていない」は、必ずや朝鮮人民の間でささやかれるであろう。