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    「The secret life of Kim Jong Un’s aunt, who has lived in the U.S. since 1998」:大変興味深く、信頼性が高い情報 (2016年5月27日 「The Washington Post」)

    高ヨンスクが語る「元帥様」と「白頭の血統」。商業メディアなので、全訳はできないが、追って要旨を書いておく。

    The Washington Post, The secret life of Kim Jong Un’s aunt, who has lived in the U.S. since 1998, https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/the-secret-life-of-kim-jong-uns-aunt-who-has-lived-in-the-us-since-1998/2016/05/26/522e4ec8-12d7-11e6-a9b5-bf703a5a7191_story.html

    <追記>
    以下、いくつかのポイント。

    1.「元帥様」の母、高英姫の姉妹、高ヨンスクは夫の李ガンと共にNYでクリーニング店を営んでいる。記事では、高ヨンスクが姉なのか妹なのかについては明らかにしていない。夫妻は匿名を条件に記者のインタビューに応じている。

    2.高ヨンスクは記者に「“My kids went to great schools and they’re successful, and I have my husband, who can fix anything. There’s nothing we can envy.”」と語っている。「There's nothing we can envy」は、まさに「この世に羨むものはない」であるが、本当に彼女の口からこの言葉が出たとすると、北朝鮮での歌曲『この世に羨むものはない』の扱いとも関連し実に興味深い。

    3.既に言われていることではあるが、高英姫の死因は乳癌。今まで考えたことがなかったが、「元帥様」が「平壌産院」になぜ「乳腺腫瘍研究所」を設立したのか、その理由が分かった。北朝鮮で女性の死因として乳癌が突出して高いとも思えなかったので、なぜ乳癌の研究所なのかずっと分からなかった。海外での治療のかいもなく死んでいった母親のことを考え、「自力自強」で同様な病の女性達を救おうと思ったのであろう。高英姫が公式に母として公開されていない北朝鮮では、彼女の死因が乳癌であることを人民は噂としてでも知っているのだろうか。

    4.高ヨンスクによると、「元帥様」が生まれた年は1984年。誕生日については不明。彼女は、「同じ年に生まれた自分の子供と彼(=「元帥様」)のおむつを一緒に交換していた」という。

    5.李ガンは、北朝鮮訪問、最終的には帰国を希望している。そして、「金正恩元帥様」と「元帥様」を呼んでいる。この辺り、「元帥様」に敬意を示しておくことで身の安全をある程度確保する目的なのか、本心なのかは不明。

    6.1992年に高ヨンスクは、金正哲と共にスイスのベルンに来た。「元帥様」は1996年、12歳の時。一方、「副委員長同志」については、「スイスに連れて来たり、平壌に連れ帰ったり」と証言しているので、兄貴達のようにベルンに留まって勉強した経験はないのかも知れない。

    7.高ヨンスクは、「元帥様」を「ユーロ・ディズニーに連れて行き」、「アルバムには、スイス・アルプスでのスキー、フランス・リベリアでの海水浴、イタリアのレストランでの食事の写真がいっぱい貼られている」と。WPの記者がこうした写真を確認していることから、「元帥様」の留学説は間違いないのであろう(もちろん、豪華なバケーションの可能性は依然として排除できないが)。

    8.「元帥様」は、「機械好きで、船が浮く仕組みや飛行機が飛ぶ仕組みに関心があった」と高ヨンスク。この点も、「元帥様」の飛行機好きや科学技術に対する高い関心と符合する。

    9.「元帥様」は、「いたずらっ子ではなかったが、頑固だった」と高ヨンスク。

    10.「元帥様」がバスケットボール好きであることも事実のようで、「好きなバスケットボールプレーヤーは、マイケル・ジョーダン」で、「夜はバスケットボールを抱えて寝ていた」と高ヨンスク。

    11.「元帥様」の権力継承は、「既に1992年に決まって」おり、「将軍服を着た8歳の彼(=「元帥様」)に、本物の将軍達が敬意を表した」と高ヨンスク。その上で、「あんな扱いをされながら育てば、まともな人間になるはずがない」とチクリ。しかし、後継者と確定した人間を海外になど出すであろうか。また、高が目撃した場面は、老将軍が8歳の子供と戯れていただけではないだろうか。

    12.夫の李ガンは、「金正日が直接、夫として選んだ」と。この辺り、注意深く読まなければいけないのだが、今日、やっと見終えた連続テレビドラマ『自分を捧げよう』の中にもあるように、(地元の)党幹部などが配偶者を「好意で紹介する」ことが北朝鮮では一般的に行われているようである。したがって、李ガンも「将軍様」の「好意」であったことは十分にあり得る。

    以下、高と李がどのようにして米国に亡命したのかや亡命後の生活について書かれており、

    13.あと一つ書いておくならば、「韓国に亡命した北朝鮮高官が、韓国のテレビで高と李が成形手術をしたとか金一族から数百万ドルを盗んだと」と彼らを非難したことに対して、「有名な弁護士を雇って名誉毀損で訴えたが、技術的問題(証拠収拾不能)を理由に不起訴になった」としている。この辺り、韓国に亡命した脱北者が、必ずしも北朝鮮の真実を語っていないということを示す興味深い情報である。

    李ガンは、「米国と北朝鮮の橋渡し役を担いたい」と言っているそうだが、それも含めて、彼らがこのタイミングで米国メディアのインタビューに応じている背景には、もしかしたら北朝鮮の意図が働いているのではないかとも考えたくなる。

    とにかく、一読する価値がある大変興味深い記事である。

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    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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