「金正恩同志が朝鮮労働党中央委員会事業総話報告をされた」:2016-2020「経済5カ年戦略」、中国共産党祝電の文言と類似、「敵対勢力であった」相手とも和解 (2016年5月7日 「朝鮮中央通信」)
一つ前の記事に「見られない」と書いた記事が、やっと掲載されたようだ。
8日、7日付けの「朝鮮中央通信」報道、「金正恩同志が朝鮮労働党中央委員会事業総話報告をされた」が掲載された。
2つ、あるいは3つの点で興味深い。
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2016年から2020年までの国家経済発展5カ年戦略を徹底して遂行しなければならない
2016년부터 2020년까지의 국가경제발전 5개년전략을 철저히 수행하여야 한다.
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このような「国家経済発展5カ年戦略」があると言うこと自体、これまで公開されていなかったはずだし、これまで用いられた「Xカ年計画」ではなく「戦略」と言っている。これだけでは何ともいえないが、純粋な社会主義的「計画」から、一歩踏み出した「戦略」を考えている可能性がある。鄧小平が「社会主義市場経済」という経済理論的にはあり得ない用語を作ったのと同様に、「元帥様」も「社会主義」の枠組みの中で、「市場経済」的な要素を取り入れる考えがあるのかもしれない。
もちろん
********************
政治思想強国、軍事強国の威力をさらに強固にしなければならない。
정치사상강국,군사강국의 위력을 더욱 튼튼히 다져나가야 한다.
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ともいっているので、金正恩体制はしっかりと堅持し、軍事力も強化していくことは宣言していることも見落としてはならない。
それにもかかわらず、
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戦争がない平和な世界を建設することは、わが党の闘争目的であり、地域と世界の平和と安全のために闘争することは、わが党と共和国政府の一貫した立場である。
전쟁이 없는 평화로운 세계를 건설하는것은 우리 당의 투쟁목표이며 지역과 세계의 평화와 안전을 위하여 투쟁하는것은 우리 당과 공화국정부의 일관한 립장이다.
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と言っている。「地域と世界の平和と安全」という文言、昨日、記事にした「中国共産党中央委員会」からの祝電の中にも類似したものがあった。中国共産党の祝電では「安定」が使われていたが、「元帥様」は、「安全」と言っている。少しの違いではあるが、これがまさに北朝鮮と中国の意識の違いであり、中国は自国が面倒な立場に追い込まれるので、東北アジアにおける「安定」を北朝鮮に阻害して欲しくない、「元帥様」は北朝鮮の「安全」をきちんと確保したいということを示していると考えられる。
しかし、
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共和国は、責任ある核保有国として侵略的な敵対勢力が核で我々の自主権を侵害しない限り、既に明らかにしたとおり、先に核兵器を使用しないであろうし、国際社会の前に、所与の核伝播防止義務を誠実に履行し、世界の非核化を実現するために、努力する。
공화국은 책임있는 핵보유국으로서 침략적인 적대세력이 핵으로 우리의 자주권을 침해하지 않는 한 이미 천명한대로 먼저 핵무기를 사용하지 않을것이며 국제사회앞에 지닌 핵전파방지의무를 성실히 리행하고 세계의 비핵화를 실현하기 위하여 노력할것이다.
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と言っている。一見、新しいことのように見えるが、北朝鮮が「核保有国」であるということを前提としており、「敵対勢力が核で我々の自主権を侵害しない限り・・・先に核兵器を使用しない」というのも、これまでと変わっていない。米韓合同演習が行われている期間、さかんに「核先制打撃」を北朝鮮は言っていたが、北朝鮮にとっては、米韓合同演習が「核で我々の自主権を侵害」していることになったわけで、それが取りあえず終わった今、このようなことを言うのは、矛盾してはいないし、新しいことでもない。もちろん「核保有国」の(米国もやっているような)「権利」として、さらなる核実験をするのかどうかは、まだ分からない。
そうではあるが、「敢えて」言っていることについては、注目しておく必要がある。それだけではなく、料理人に言い、日本のメディアで言ってもらった(宣伝させた)ことと同じことを繰り返している点も重要であろう。
そして、
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朝鮮労働党と共和国政府は、たとえ、過去に我々と敵対関係にあったとしても、我が国の自主権を尊重し、我々と友好的に向き合う国々とは、関係を改善し、正常化して行くであろう。
조선로동당과 공화국정부는 비록 지난날에는 우리와 적대관계에 있었다 하더라도 우리 나라의 자주권을 존중하고 우리를 우호적으로 대하는 나라들과는 관계를 개선하고 정상화해나갈것이다.
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とも言っている。「敵対関係にあ」る主要な「国々」(複数であることが重要)は、米国、そして日本である。米国は朝鮮戦争、日本は植民地期の敵であり、両国とも北朝鮮との和解ができていない。これも、決して新しいことではないが、このタイミングで「敢えて」こうした発言をしていること、北朝鮮外務省や関連委員会の談話や声明などではなく、「元帥様」が直接言っている点は重要である。
経済の問題、核の問題、米国との関係改善の問題など、中国の「安定を阻害」する要因を除去するような内容ばかりであるが、過去3ヶ月間、各種軍事的な実験をやって来たにもかかわらず、ここに来て、こうしたことを言い出しているのは、やはり、中国が言っていた「3ヶ月ぐらい後には」(過去記事参照)の表出なのかもしれない。中朝間で何らかの動きがあったのかもしれない。
김정은동지께서 조선로동당 중앙위원회 사업총화보고를 하시였다
8日、7日付けの「朝鮮中央通信」報道、「金正恩同志が朝鮮労働党中央委員会事業総話報告をされた」が掲載された。
2つ、あるいは3つの点で興味深い。
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2016年から2020年までの国家経済発展5カ年戦略を徹底して遂行しなければならない
2016년부터 2020년까지의 국가경제발전 5개년전략을 철저히 수행하여야 한다.
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このような「国家経済発展5カ年戦略」があると言うこと自体、これまで公開されていなかったはずだし、これまで用いられた「Xカ年計画」ではなく「戦略」と言っている。これだけでは何ともいえないが、純粋な社会主義的「計画」から、一歩踏み出した「戦略」を考えている可能性がある。鄧小平が「社会主義市場経済」という経済理論的にはあり得ない用語を作ったのと同様に、「元帥様」も「社会主義」の枠組みの中で、「市場経済」的な要素を取り入れる考えがあるのかもしれない。
もちろん
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政治思想強国、軍事強国の威力をさらに強固にしなければならない。
정치사상강국,군사강국의 위력을 더욱 튼튼히 다져나가야 한다.
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ともいっているので、金正恩体制はしっかりと堅持し、軍事力も強化していくことは宣言していることも見落としてはならない。
それにもかかわらず、
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戦争がない平和な世界を建設することは、わが党の闘争目的であり、地域と世界の平和と安全のために闘争することは、わが党と共和国政府の一貫した立場である。
전쟁이 없는 평화로운 세계를 건설하는것은 우리 당의 투쟁목표이며 지역과 세계의 평화와 안전을 위하여 투쟁하는것은 우리 당과 공화국정부의 일관한 립장이다.
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と言っている。「地域と世界の平和と安全」という文言、昨日、記事にした「中国共産党中央委員会」からの祝電の中にも類似したものがあった。中国共産党の祝電では「安定」が使われていたが、「元帥様」は、「安全」と言っている。少しの違いではあるが、これがまさに北朝鮮と中国の意識の違いであり、中国は自国が面倒な立場に追い込まれるので、東北アジアにおける「安定」を北朝鮮に阻害して欲しくない、「元帥様」は北朝鮮の「安全」をきちんと確保したいということを示していると考えられる。
しかし、
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共和国は、責任ある核保有国として侵略的な敵対勢力が核で我々の自主権を侵害しない限り、既に明らかにしたとおり、先に核兵器を使用しないであろうし、国際社会の前に、所与の核伝播防止義務を誠実に履行し、世界の非核化を実現するために、努力する。
공화국은 책임있는 핵보유국으로서 침략적인 적대세력이 핵으로 우리의 자주권을 침해하지 않는 한 이미 천명한대로 먼저 핵무기를 사용하지 않을것이며 국제사회앞에 지닌 핵전파방지의무를 성실히 리행하고 세계의 비핵화를 실현하기 위하여 노력할것이다.
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と言っている。一見、新しいことのように見えるが、北朝鮮が「核保有国」であるということを前提としており、「敵対勢力が核で我々の自主権を侵害しない限り・・・先に核兵器を使用しない」というのも、これまでと変わっていない。米韓合同演習が行われている期間、さかんに「核先制打撃」を北朝鮮は言っていたが、北朝鮮にとっては、米韓合同演習が「核で我々の自主権を侵害」していることになったわけで、それが取りあえず終わった今、このようなことを言うのは、矛盾してはいないし、新しいことでもない。もちろん「核保有国」の(米国もやっているような)「権利」として、さらなる核実験をするのかどうかは、まだ分からない。
そうではあるが、「敢えて」言っていることについては、注目しておく必要がある。それだけではなく、料理人に言い、日本のメディアで言ってもらった(宣伝させた)ことと同じことを繰り返している点も重要であろう。
そして、
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朝鮮労働党と共和国政府は、たとえ、過去に我々と敵対関係にあったとしても、我が国の自主権を尊重し、我々と友好的に向き合う国々とは、関係を改善し、正常化して行くであろう。
조선로동당과 공화국정부는 비록 지난날에는 우리와 적대관계에 있었다 하더라도 우리 나라의 자주권을 존중하고 우리를 우호적으로 대하는 나라들과는 관계를 개선하고 정상화해나갈것이다.
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とも言っている。「敵対関係にあ」る主要な「国々」(複数であることが重要)は、米国、そして日本である。米国は朝鮮戦争、日本は植民地期の敵であり、両国とも北朝鮮との和解ができていない。これも、決して新しいことではないが、このタイミングで「敢えて」こうした発言をしていること、北朝鮮外務省や関連委員会の談話や声明などではなく、「元帥様」が直接言っている点は重要である。
経済の問題、核の問題、米国との関係改善の問題など、中国の「安定を阻害」する要因を除去するような内容ばかりであるが、過去3ヶ月間、各種軍事的な実験をやって来たにもかかわらず、ここに来て、こうしたことを言い出しているのは、やはり、中国が言っていた「3ヶ月ぐらい後には」(過去記事参照)の表出なのかもしれない。中朝間で何らかの動きがあったのかもしれない。
김정은동지께서 조선로동당 중앙위원회 사업총화보고를 하시였다