「朝鮮労働党第1秘書であられる敬愛する金正恩同志の指導の下、朝鮮労働党中央委員会、朝鮮労働党朝鮮人民軍委員会、連合会議拡大会議が開催された」:ロケット発射に関する言及はないが「勝利の月桂冠」、思想引き締め・粛清?、黄炳瑞は大丈夫か? (2016年2月4日 「朝鮮中央通信」)
4日、「朝鮮中央通信」が、「朝鮮労働党中央委員会、朝鮮労働党朝鮮人民軍委員会、連合会議拡大会議が開催された」と報じた。「朝鮮労働党朝鮮人民軍委員会」は、あまり聞いたことがない「委員会」であるが、記事を読むと「朝鮮人民軍党委員会委員が参加」とあるので、人民軍内の党組織のことであろう。
「拡大会議」では、「党の歴史に新たな里程標を刻むこととなる朝鮮労働党第7回大会を迎え、革命的発展の要求に合うように、我々の党を栄光的な金日成、金正日同志の党としてさらに強化発展させていくことにおいて提起される原則的問題が深く討議され、党内に残っている特権・特勢・勢道と官僚主義が集中的に批判され、これを徹底して克服するための課業と方法が提示された」
******(注)******
uriminzokkiri『朝鮮語大辞典』による解釈
特勢(특세):何かに頼って、自分が特殊な存在であるかの如く振る舞いながら行う勢道
勢道(세도):古い社会で、①政治上の権勢、②勢力を使える社会的地位や権勢あるいは権勢を振るうこと
*************
とされている。「特権・特別勢力・権力掌握と官僚主義が集中的に批判され」とあるので、特定の人物か特定の集団が批判され、処分の対象となった可能性がある(討論者は、「内外の反革命勢力を粉砕し」と演説している)。出席者の具体的な名前は公開されておらず、「報告者と討論者」も誰なのか分からない。
「元帥様」は、「歴史的な結論」の中で「今回の会議が、党の唯一的領導の下、全党が一つとなり動き、党中央の周りに一つの思想意志で固く団結し、党を組織思想的にさらに強化することにおいて、重要な意義を持っていると強調」した上で、「全社会を金日成-金正日主義で一色化するための事業をさらに深化させ、党の唯一的領導体系を徹底して確立することにおける課業と方途を提示」しており、「課業と方途」のなかで思想的締め付け強化と反対勢力の除去を指示したのではないかと思われる。
記事をざっと読んだ限りでは、「第7回党大会に向けて唯一的指導体制を強固に」という内容が中心となっており、ロケット発射に関する言及はないが、「元帥様」は締めくくりで「朝鮮労働党第7回大会を迎え、我々人民に抱かせる勝利の月桂冠を準備するために、皆が総突撃、総邁進していこうと熱烈に訴えられた」としており、「勝利の月桂冠」という言葉で「衛星」を意味している可能性もある。しかし、「第7回大会」までにはまだ3ヶ月あるので、「水素弾実験完全成功」と「銀河4号(?)打ち上げ完全成功」という2つの「勝利の月桂冠」をこのタイミングで出してしまうのは早すぎるような気がしないでもない。ここで盛り上げておいて、特段行事がない3月を乗り切り、4月の「太陽節(金日成誕生日)」、そして「第7回党大会」へと繋げていくつもりなのだろうか。
<追記2>
「元帥様」は、「水素弾実験完全成功」に貢献した核科学者等に対する「国家表彰式」で、「水素弾の巨大な爆音を前進の原動力とみなし、今年を勝利者の年へと導き、強盛国家建設の大叙事詩を書き、全ての勝利と栄光の主人公である我々の人民にさらに大きな勝利の月桂冠を抱かせるであろう」と言っている。「さらに大きな勝利の月桂冠」とは、「衛星ロケット発射完全成功」を意味するのか。
『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 주체조선의 첫 수소탄시험성공에 기여한 핵과학자들과 기술자,
군인건설자,로동자,일군들에 대한 당 및 국가표창수여식이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2016-01-13-0001
<追記>
黄炳瑞をキーワードとして『労働新聞』を検索すると、1月20日、崔龍海と共に「元帥様」に随行して「新たに建設された青年運動史跡館」に行ったという報道以来、名前が出ていない。『労働新聞』DBにデータが残っている限りでは、2015年8月25日~9月8日に登場しなかったのが最長、しかも異例の長さであったが、今回はそれを越えている。この「拡大会議」はその性格上、「朝鮮人民軍総政治局長」の黄炳瑞は必ず出席していなければならない会議であるが、出席していたのだろうか。
崔龍海の復活と共に黄炳瑞が消えたとすると、2人の間に権力争いでもあったのであろうか。
『労働新聞』HPに掲載された写真を見ると黄炳瑞は「元帥様」の左横にいる。右が崔龍海。よって、上の推測は間違いであった。

Source: 『労働新聞』、「조선로동당 제1비서이신 경애하는 김정은동지의 지도밑에 조선로동당 중앙위원회,
조선로동당 조선인민군위원회 련합회의 확대회의가 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2016-02-04-0001_photo
<追記3>
「朝鮮中央TV」で写真付きの「録画報道」を見ていた。関連写真は後で掲載するが、見ていておもしろかったのは、上に書いたことは正反対に、「元帥様」は黄炳瑞と何か話している場面がたくさん映っている反面、崔龍海と話をしている場面は見られない(一部見落としているので要再確認)。会議の性格上、黄炳瑞と話をしているといえばそれまでであるが、それでもその場面を写した写真が多い。
二つ目は、崔龍海の様子である。「元帥様」の演説中、メモを取らずに正面を向いて場面が多いような気がした。これもきちんと見直す必要はある。
三つ目は、「元帥様」がひな壇中央で着座で演説から、演台に移動して演説を続けている点である。もしかすると、着座で何かを言っているのは「発言」で、演壇で話しているのが「歴史的結論」なのかもしれない。これも、もう一度、確認する必要があるが、「歴史的結論」の途中で移動したのであれば、おもしろい動きである。
<追記4>
写真を掲載しておく。
「4.25文化会館前」に並んだ人民軍のバス。これだけバスが集結した写真は見た記憶がない。

Source: KCTV, 2016/02/04
この会議、2月2日と3日、2日間にわたって開催された長時間の会議であったようだ。武大偉訪朝が2日~4日なので、そのタイミングに合わせて会議を開催し、場合によっては「衛星発射」を「歴史的な結論」の中に入れているのであれば、武大偉の説得など聞くつもりもなかったと解釈することもできる。
会議場に入場する「元帥様」

Source: KCTV, 2016/02/04
下の写真はおもしろい。崔龍海(「元帥様」の右)は姿勢はよいがメモを取っておらず、黄炳瑞(「元帥様」の左)はメモをしている。左右両端の幹部たちが驚いたような顔で「元帥様」の方を見ている。「元帥様」が崔龍海や黄炳瑞は知っていたが、序列の低い幹部では知らなかったような発言をしたのだろうか。

Source: KCTV, 2016/02/04
この「会議」の報道の中では、下に見られるように「元帥様」が黄炳瑞と何かを話している写真が数枚使われている。下は、金己男も話し合いに加わっているが、黄炳瑞とだけ話しているものもある。下の写真はく、金己男が演説中に黄炳瑞に「元帥様」が話しかけ、演説中の金己男まで駆けつけたという状況ではないだろうか。崔龍海が話し合いに加われない事柄だったのかもしれないが、彼は真っ直ぐに前を向いたまま座っている。

Source: KCTV, 2016/02/04
その崔龍海、「元帥様」の発言中、他の幹部がメモを取る中、手を動かしていない。長い会議だったはずなので、そのような瞬間があっても不思議ではないが、そんな写真を何枚か使っているところには、何らかの意図がありそうだ。復活したばかりなので、可能性は低いが、こうした態度は、「元帥様」と近いことをよいことに、「特権、特勢、勢道」で仕事をさぼっていると見ることもできる。

Source: KCTV, 2016/02/04
立って「演説」をする「元帥様」。ナレーションを聞いていると、「歴史的な結論」演説の途中で立ち上がったような感じがするが、2日間の会議の中で立ったり座ったりしながら発言した写真を混ぜて使っているだけであろう。演台で話しているのが「歴史的な結論」だと思われる。

Source: KCTV, 2016/02/04
「拡大会議」では、「党の歴史に新たな里程標を刻むこととなる朝鮮労働党第7回大会を迎え、革命的発展の要求に合うように、我々の党を栄光的な金日成、金正日同志の党としてさらに強化発展させていくことにおいて提起される原則的問題が深く討議され、党内に残っている特権・特勢・勢道と官僚主義が集中的に批判され、これを徹底して克服するための課業と方法が提示された」
******(注)******
uriminzokkiri『朝鮮語大辞典』による解釈
特勢(특세):何かに頼って、自分が特殊な存在であるかの如く振る舞いながら行う勢道
勢道(세도):古い社会で、①政治上の権勢、②勢力を使える社会的地位や権勢あるいは権勢を振るうこと
*************
とされている。「特権・特別勢力・権力掌握と官僚主義が集中的に批判され」とあるので、特定の人物か特定の集団が批判され、処分の対象となった可能性がある(討論者は、「内外の反革命勢力を粉砕し」と演説している)。出席者の具体的な名前は公開されておらず、「報告者と討論者」も誰なのか分からない。
「元帥様」は、「歴史的な結論」の中で「今回の会議が、党の唯一的領導の下、全党が一つとなり動き、党中央の周りに一つの思想意志で固く団結し、党を組織思想的にさらに強化することにおいて、重要な意義を持っていると強調」した上で、「全社会を金日成-金正日主義で一色化するための事業をさらに深化させ、党の唯一的領導体系を徹底して確立することにおける課業と方途を提示」しており、「課業と方途」のなかで思想的締め付け強化と反対勢力の除去を指示したのではないかと思われる。
記事をざっと読んだ限りでは、「第7回党大会に向けて唯一的指導体制を強固に」という内容が中心となっており、ロケット発射に関する言及はないが、「元帥様」は締めくくりで「朝鮮労働党第7回大会を迎え、我々人民に抱かせる勝利の月桂冠を準備するために、皆が総突撃、総邁進していこうと熱烈に訴えられた」としており、「勝利の月桂冠」という言葉で「衛星」を意味している可能性もある。しかし、「第7回大会」までにはまだ3ヶ月あるので、「水素弾実験完全成功」と「銀河4号(?)打ち上げ完全成功」という2つの「勝利の月桂冠」をこのタイミングで出してしまうのは早すぎるような気がしないでもない。ここで盛り上げておいて、特段行事がない3月を乗り切り、4月の「太陽節(金日成誕生日)」、そして「第7回党大会」へと繋げていくつもりなのだろうか。
<追記2>
「元帥様」は、「水素弾実験完全成功」に貢献した核科学者等に対する「国家表彰式」で、「水素弾の巨大な爆音を前進の原動力とみなし、今年を勝利者の年へと導き、強盛国家建設の大叙事詩を書き、全ての勝利と栄光の主人公である我々の人民にさらに大きな勝利の月桂冠を抱かせるであろう」と言っている。「さらに大きな勝利の月桂冠」とは、「衛星ロケット発射完全成功」を意味するのか。
『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 주체조선의 첫 수소탄시험성공에 기여한 핵과학자들과 기술자,
군인건설자,로동자,일군들에 대한 당 및 국가표창수여식이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2016-01-13-0001
<追記>
黄炳瑞をキーワードとして『労働新聞』を検索すると、1月20日、崔龍海と共に「元帥様」に随行して「新たに建設された青年運動史跡館」に行ったという報道以来、名前が出ていない。『労働新聞』DBにデータが残っている限りでは、2015年8月25日~9月8日に登場しなかったのが最長、しかも異例の長さであったが、今回はそれを越えている。この「拡大会議」はその性格上、「朝鮮人民軍総政治局長」の黄炳瑞は必ず出席していなければならない会議であるが、出席していたのだろうか。
崔龍海の復活と共に黄炳瑞が消えたとすると、2人の間に権力争いでもあったのであろうか。
『労働新聞』HPに掲載された写真を見ると黄炳瑞は「元帥様」の左横にいる。右が崔龍海。よって、上の推測は間違いであった。

Source: 『労働新聞』、「조선로동당 제1비서이신 경애하는 김정은동지의 지도밑에 조선로동당 중앙위원회,
조선로동당 조선인민군위원회 련합회의 확대회의가 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2016-02-04-0001_photo
<追記3>
「朝鮮中央TV」で写真付きの「録画報道」を見ていた。関連写真は後で掲載するが、見ていておもしろかったのは、上に書いたことは正反対に、「元帥様」は黄炳瑞と何か話している場面がたくさん映っている反面、崔龍海と話をしている場面は見られない(一部見落としているので要再確認)。会議の性格上、黄炳瑞と話をしているといえばそれまでであるが、それでもその場面を写した写真が多い。
二つ目は、崔龍海の様子である。「元帥様」の演説中、メモを取らずに正面を向いて場面が多いような気がした。これもきちんと見直す必要はある。
三つ目は、「元帥様」がひな壇中央で着座で演説から、演台に移動して演説を続けている点である。もしかすると、着座で何かを言っているのは「発言」で、演壇で話しているのが「歴史的結論」なのかもしれない。これも、もう一度、確認する必要があるが、「歴史的結論」の途中で移動したのであれば、おもしろい動きである。
<追記4>
写真を掲載しておく。
「4.25文化会館前」に並んだ人民軍のバス。これだけバスが集結した写真は見た記憶がない。

Source: KCTV, 2016/02/04
この会議、2月2日と3日、2日間にわたって開催された長時間の会議であったようだ。武大偉訪朝が2日~4日なので、そのタイミングに合わせて会議を開催し、場合によっては「衛星発射」を「歴史的な結論」の中に入れているのであれば、武大偉の説得など聞くつもりもなかったと解釈することもできる。
会議場に入場する「元帥様」

Source: KCTV, 2016/02/04
下の写真はおもしろい。崔龍海(「元帥様」の右)は姿勢はよいがメモを取っておらず、黄炳瑞(「元帥様」の左)はメモをしている。左右両端の幹部たちが驚いたような顔で「元帥様」の方を見ている。「元帥様」が崔龍海や黄炳瑞は知っていたが、序列の低い幹部では知らなかったような発言をしたのだろうか。

Source: KCTV, 2016/02/04
この「会議」の報道の中では、下に見られるように「元帥様」が黄炳瑞と何かを話している写真が数枚使われている。下は、金己男も話し合いに加わっているが、黄炳瑞とだけ話しているものもある。下の写真はく、金己男が演説中に黄炳瑞に「元帥様」が話しかけ、演説中の金己男まで駆けつけたという状況ではないだろうか。崔龍海が話し合いに加われない事柄だったのかもしれないが、彼は真っ直ぐに前を向いたまま座っている。

Source: KCTV, 2016/02/04
その崔龍海、「元帥様」の発言中、他の幹部がメモを取る中、手を動かしていない。長い会議だったはずなので、そのような瞬間があっても不思議ではないが、そんな写真を何枚か使っているところには、何らかの意図がありそうだ。復活したばかりなので、可能性は低いが、こうした態度は、「元帥様」と近いことをよいことに、「特権、特勢、勢道」で仕事をさぼっていると見ることもできる。

Source: KCTV, 2016/02/04
立って「演説」をする「元帥様」。ナレーションを聞いていると、「歴史的な結論」演説の途中で立ち上がったような感じがするが、2日間の会議の中で立ったり座ったりしながら発言した写真を混ぜて使っているだけであろう。演台で話しているのが「歴史的な結論」だと思われる。

Source: KCTV, 2016/02/04