「感謝文」(2012年3月26日「朝鮮中央通信」)
金正恩さんの朝鮮人民に対する「感謝文」を「朝鮮中央通信」が報じている。恐らく、「感謝文」はトップニュースとして「労働新聞」にも掲載されることになろうが、現時点ではまだ3月27日付けの「労働新聞」がインターネット配信されていないので確認はできていない。金日成さんの死去に際して、金正日さんがこうした「感謝文」を発表したのかどうかは、きちんと確認しなければならないが、私の記憶にはない。
「感謝文」では、「我々人民ほど自らの指導者に心から従う人民はこの世の中にどこにもおらず、将軍様がいつも言われたように、我らの人民は本当に良い人民であるということをこれまで以上に強く感じました」と金正日さんの死去に際して忠誠を誓った人民を持ち上げている。そしてさらに「私は、偉大な将軍様を日がたつにつれ想い出し、我が党と革命の永遠の指導者として高く頂こうとする千万軍民の白い球のような忠誠の情に大きな感動を受け、そこから強い力と勇気を得ました」とした上で、「全ての党員と人民軍将兵と人民たち、海外同胞に心より感謝いたします」と、謙譲表現(「감사를 드립니다」)を使いながら感謝の意を示している。金日成さんや金正日さんは、このような表現を朝鮮人民に対して使ったことはあるのだろうか。使わなかったとすると、若い金正恩さんはこうした表現を使いながら、「若く謙虚な指導者」というイメージを作りだそうとしているのであろうか。
そして今後、北朝鮮が進むべき道として「首領様が開拓し、将軍様が指導された主体の道、先軍の道、社会主義の道を変わりなく引き継いでいくことは、我が党の確固不動の意思である」とし、「主体・先軍」路線を当面は引き継ぐことを表明している。現時点では、「主体・先軍」に繋がる新たな路線を、アイディアはあるとしても具体的な形として金正恩さんは持ち合わせていないのであろう。
そして「強盛国家建設」については、「偉大な将軍様が強盛国家建設のために一生の労苦と心血を注ぎながらまかれた貴重な種をうまく育てて、輝かしい現実として花咲かせなければならない重要な課題が残されている」としながら、過日の記事にも書いたように、金正日時代に「強盛国家」実現ができなかったことを認めつつ、金正日さんがやったことを「種をまいた」という言葉を使いながら、その基礎を作ったと評価している。
そして「経済建設」については、「年代と年代を飛び越える飛躍的な闘争を展開することで、人民生活向上において多階段で変化させ、経済強国宣言の誇らしい祝砲が一日も早く響き渡るようにしなければなりません」としている。ここでも、金正日時代に完成しいなかった経済建設を「年代と年代を超えて」と金正恩時代に引き継いだことを認め、「多階段で変化させ」というよく分からない表現(私の誤訳の可能性もあり)を使い、漸進的に進めながら「経済強国宣言」に向けて努力するとしている。
そしてそのためには、「全党員と人民軍将兵と人民たちが、党中央委員会の周りに心を一つにして固く団結」しなければならないとし、「党中央委員会」を前面に出しているが、これは4月の党代表者会で金正恩さんを「総秘書」に「推戴」し、朝鮮労働党が実態としてリードする形で、北朝鮮の進路を決めていくという考えの表出なのかもしれない。
<追記:2012年3月27日 07:57>
本記事投稿直後に「労働新聞」を確認したところ、「感謝文」はやはり一面トップに掲載されていた。
「感謝文」では、「我々人民ほど自らの指導者に心から従う人民はこの世の中にどこにもおらず、将軍様がいつも言われたように、我らの人民は本当に良い人民であるということをこれまで以上に強く感じました」と金正日さんの死去に際して忠誠を誓った人民を持ち上げている。そしてさらに「私は、偉大な将軍様を日がたつにつれ想い出し、我が党と革命の永遠の指導者として高く頂こうとする千万軍民の白い球のような忠誠の情に大きな感動を受け、そこから強い力と勇気を得ました」とした上で、「全ての党員と人民軍将兵と人民たち、海外同胞に心より感謝いたします」と、謙譲表現(「감사를 드립니다」)を使いながら感謝の意を示している。金日成さんや金正日さんは、このような表現を朝鮮人民に対して使ったことはあるのだろうか。使わなかったとすると、若い金正恩さんはこうした表現を使いながら、「若く謙虚な指導者」というイメージを作りだそうとしているのであろうか。
そして今後、北朝鮮が進むべき道として「首領様が開拓し、将軍様が指導された主体の道、先軍の道、社会主義の道を変わりなく引き継いでいくことは、我が党の確固不動の意思である」とし、「主体・先軍」路線を当面は引き継ぐことを表明している。現時点では、「主体・先軍」に繋がる新たな路線を、アイディアはあるとしても具体的な形として金正恩さんは持ち合わせていないのであろう。
そして「強盛国家建設」については、「偉大な将軍様が強盛国家建設のために一生の労苦と心血を注ぎながらまかれた貴重な種をうまく育てて、輝かしい現実として花咲かせなければならない重要な課題が残されている」としながら、過日の記事にも書いたように、金正日時代に「強盛国家」実現ができなかったことを認めつつ、金正日さんがやったことを「種をまいた」という言葉を使いながら、その基礎を作ったと評価している。
そして「経済建設」については、「年代と年代を飛び越える飛躍的な闘争を展開することで、人民生活向上において多階段で変化させ、経済強国宣言の誇らしい祝砲が一日も早く響き渡るようにしなければなりません」としている。ここでも、金正日時代に完成しいなかった経済建設を「年代と年代を超えて」と金正恩時代に引き継いだことを認め、「多階段で変化させ」というよく分からない表現(私の誤訳の可能性もあり)を使い、漸進的に進めながら「経済強国宣言」に向けて努力するとしている。
そしてそのためには、「全党員と人民軍将兵と人民たちが、党中央委員会の周りに心を一つにして固く団結」しなければならないとし、「党中央委員会」を前面に出しているが、これは4月の党代表者会で金正恩さんを「総秘書」に「推戴」し、朝鮮労働党が実態としてリードする形で、北朝鮮の進路を決めていくという考えの表出なのかもしれない。
<追記:2012年3月27日 07:57>
本記事投稿直後に「労働新聞」を確認したところ、「感謝文」はやはり一面トップに掲載されていた。