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    「社説 偉大な金正日同志の遺訓を掲げ主体革命の新たな勝利を達成しよう」(2012年3月25日「労働新聞」

    「労働新聞」に社説が出た。金正日さんの哀悼期間100日というタイミングであるが、社説の内容は金正日体制の決算と金正恩さんの正統性と偉大さ、そして金正恩体制完成への道筋提示である。その意味で、1月に出された「新年共同社説」と同じぐらい意味のある「社説」といえる。

    http://www.rodong.rep.kp/InterKo/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2012-03-25-0001

    1.金正日体制の決算
     まず、「強盛富強」が金正日時代に達成されたのかという点であるが、「社説」ではまだ「これから」という扱いになっている。例えば、「敬愛する将軍様の強盛富強の理想が輝かしく実現される偉大な主体の強国を必ず見ることになるであろう」とし、「強盛富強」は実現するであろうものの、これからであるし、それが「いつ」であるのかということも明確にしていない。しかし、「意味深い今年を強盛富強の旗がたなびく誇らしい勝利の年に輝かせるための総進軍に拍車をかけなければならない」とし、「強盛富強」を年末まで持ち越したとみられる表現もしている。
     そして、金正日さんの「強盛富強」のための業績を次のように総括している。「敬愛する将軍様は、生涯の最後の時期まで大高潮進軍を精力的に導かれ、父なる首領誕生100年となる2012年の偉大な勝利のために、できることは全てなさった」とし、「我々は大高潮進軍速度を最大に高め、党の強盛国家建設構想を年代と年代を飛躍しながら実現しなければならない」としている。つまり、金正日さんは強盛富強に向けて最大の努力をしたものの、その実現には至らず、朝鮮人民は党の指導の下に強盛富強に向けた努力を続けなければならないということである。ただし、ボールド部分の「年代と年代を飛躍しながら」という表現は意味深長である。というのは、「年代と年代」を「金正日時代と金正恩時代」とも理解できるし、「2012年とそれ以後の年」とも理解できる。いずれにしても、2012年の強盛富強は不可能と言うことを暗に認めているのであろうか。なお、「できることはすべてなさった」と「年代と年代を飛躍しながら」という表現は、「社説」の最後の部分で繰り返されている。
     では、金正日さんは何を達成したのだろうか。「偉大な将軍様の代に強国の地位を堂々と得た」としており、「強盛富強」あるいは「強盛大国」と使い分けている。ここでいう「強国」とは、かつてより北朝鮮が主張している軍事強国、特に「核保有国」になったことにより「強国」の地位を得たということであろう。そして「敬愛する金正恩同志が導かれる時代に、さらに隆盛繁栄する主体の社会主義強盛大国として輝かせること、これが我々の世代に課された神聖な使命である」とし、「強盛大国」建設を金正恩時代の課題としている。この表現からすると、上記の「年代と年代を飛躍しながら」というのは、金正日時代から金正恩時代にと考えた方が良いのかもしれない。なお、上の括弧内「敬愛する・・・使命である」もやはり「社説」の最終部分で繰り返し強調されている。
     北朝鮮が直面する問題としては、2012年の新年共同社説がそうであったように「人民生活の向上」を挙げている。「社説」では、「人生活の向上を最も重要な課題とし、全党的、全国家的な力を集中させなければならない」とし「人民生活に直結する問題に大きな力を入れ、人民のための良い仕事をさらに多く」すべきであるとしているが、「良い仕事」が労働党の下級職員や朝鮮人民を動員した「仕事」であるのか、軽工業部門へ向ける資金増大など国家的な事業を意味しているのかは分からない。しかし、「社説」では「偉大な将軍様の愛国遺産である国防工業を強化発展させることに続けて大きな力を入れなければならない」ともしているので、そのバランスという問題となって来るであろう。この「人民生活の向上」についても、「社説」の最後で繰り返し強調されている。

    2.金正恩継承問題
     金正恩継承問題については、その安定的な推移と党代表者会での「総秘書推戴」を予測させる内容が書かれている。まず、「歴史では、指導の代が代わる時期に政治的混乱と社会的不安定がもたらせる例が少なくはなかった。我々、軍隊と人民は、民族の大きな国喪に直面したが、敬愛する金正恩同志の周りにさらに堅く団結し、主体革命偉業一路に力強く前進している」とし、世代交代の不安定説を強く否定している。
     「社説」には金正恩さんは金正日さんと「全く同じ」という表現が相変わらず何回か登場するが、特徴的なことは、「全く同じ」だけではなく金正恩さんの指導力を強調している点である。例えば、「過去100日は、敬愛する金正恩同志の思想と指導が全面的に具現され、我々の革命の継承が力強く誇示された日々であった。(中略)金正恩同志の卓越した偉人的風貌は、我々人民の心臓の奥深くに刻み込まれ、世界を驚嘆させた」とこれまでにないレベルの表現を使いながら金正恩さんを称賛している。そして、「革命偉業継承問題を完全に解決された偉大な将軍様の不滅の業績を切に感じている」とし、金正日さんが生前に金正恩継承体制の準備をし、それが問題なく完結されつつあることを強調している。
     そして、「我々は、遠からず党の歴史に特記される朝鮮労働党代表者会を迎える。我々は、党代表者会を契機に全党と全社会に敬愛する金正恩同志の唯一的指導体系をさらに徹底して打ち立て」るとしている。これは、ほぼ確実に金正恩さんを4月中旬の党代表者会で「総秘書」に「推戴」することを予告するものであろう。ただ、最高人民会議についての言及がないばかりか、「全軍」という言葉は慎重に避けているので、「国防委員長」への就任は見送られるのかもしれない。この代表者会についての部分も「社説」の終わりで繰り返されている。

    3.北朝鮮が進む道
     社説は「我々の革命の前途は依然として遠く険しい。我々が勝利する道は、偉大な首領様が開拓した道、敬愛する将軍様が生涯を通じて戦いながら歩んできた道以外にない」とし「革命と建設において提起される全ての事業を先軍の要求通りに行いながら、全ての社会に銃隊重視、軍事重視の気風を確固として打ち立てなければならない」として、「先軍路線」を継続すると述べている。しかし、「社説」全体を通じて言えることは、「先軍」路線を強調する言質が減っているような印象を受けることも事実である。

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    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.


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